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再会Ⅰ

海からの香りを乗せた、南風が吹いていた、微かな潮の香りも連れてきた。

遥かなる薔薇に抱かれ、私はただその短い時を楽しんでいた。


「マリア抱っこしてね」と薔薇の微笑で囁いた、私はただユリさんを見ていた。

覚めやらぬ想いで。


TVルームに2人で戻ると。

「遅かったですね~」と蘭がニヤニヤしながら言った。

「いい線まで行ったけど、振られちゃった」とユリさんが微笑んだ。

「本当に伝説を作る男だったりして」とマリアを抱き上げた私に蘭が言い、全員が笑っていた。

『そんな大それた事、夜街の歴史に残る程度です』とニヤで返した。

「少なくともPGの歴史には残ったわ、現時点でも」とユリさんが微笑むと。

「汚点にしないように」と蘭が満開で言って。

『がんばります』と笑顔で答えた。


ユリさんのマンションで2人と別れて、蘭に肩を貸しながらアパートに帰った。

いつもの様に化粧を落とし、パジャマでベッドに入り。

「ワク、ワク」と笑った。

私は電気を消して、カーテンを開けて定位置に座った。

「今夜は、素敵なクリスマスの話です・・・」

そう言って、豊兄さんと恭子さんの、結婚承諾の話【原点回帰 参照】を話した。

「今夜のは特に素敵だった」と蘭が満開で微笑んだ。

『もう、おやすみ』と私も微笑んだ。

「おやすみ」と言って、蘭は目を閉じた。

私の大好きな時間が来た、ただ蘭だけを何にも邪魔されず、見ているだけの時間が。


翌朝、洗濯機のゴトゴトという音で目が覚めた。

蘭は余裕の表情で、眉毛の手入れをしていた。

『おはよう、今日は余裕だね』と声をかけた。

「今日は靴屋遅出だから、夕方は行けないからね」と鏡を見て言った。

『了解、ビルの下までタクシーで来いよ』と言うと。

「は~い」と明るい声で返事を返した。


「怖くないですか?旦那」と聞くから。

『自分に向けられるのは怖くないけど』蘭を見て。

『蘭や、他の皆や、特に3人娘に向けられると思うと・・怖いよ』と答えた。

「無茶しないでね」と蘭は深い目をして言った。

『約束するよ』と微笑んで返した。

「うん」と蘭も満開で微笑んだ。


蘭が出掛け、私は11時位のバスで出掛けた、ケイがその位には来るからだ。

PGは鍵がかかってた、暇なので1階の倉庫から箒と塵取りを出して。

ケイの真似して掃除をしていた。

「おっ、何か悪さしたな不良少年」と声をかけられた、【魅宴】と言う大きなクラブのママだった。

ユリさんとの挨拶回りの時に、ユリさんが会いに行った人なので、覚えていた。

『昨夜、店の女の子と、手を繋いで街を歩いたもんで』と笑顔で返した。

「そりゃーまずかったね」と笑った。

和服を着たこの大柄なママを、皆【大ママ】と言って慕っていた。

どこか男っぽい、サバサバした魅力の人だった。


「ケイは、フロアーデビューするの?」そう言って横から、ケイぐらいの少女が出てきて聞いた。

『もうすぐ、みたいですね』と笑顔で返した、その子の不思議な魅力を感じながら。

「私も頑張らないと」とその子が呟くと。

「がんばっておくれ」と大ママが笑顔で言った。

『ケイ姉さんも、強いライバルが多くて大変ですね』と笑顔で、その子を見た。

「私なんて、目立たないから」とケイのように考えた。

『それは女性目線ですよ』と言うと。

「男性目線は?」と聞いた、調子にのるなよと自分に言い聞かせたが、やはり乗った。

『凄く懐かしい感じ、初恋の・・それも告白すら出来なかった、時期のような』少し照れながら。

『心に残る、淡い思い出に触れるような感じです、これは男にはたまらない魅力だと』と言って。

『中坊の私だからよく分かります』そう笑顔で言った。

又調子に乗ったと反省していた。


「チャッピーだったっけ?」と大ママが笑顔で言った。

『はい、可愛いでしょ』と笑顔で返した。

「今んとこ追い出されたら、家にきな」とニッと笑った。

『経験無いから、優しく教えて下さい』とニッで返した。

「いいよ~、手取り足取り教えてやるよ」と笑った。

『追い出されるように、頑張ります』と笑顔で返した、その子は笑って見ていた。


「なんか楽しそうだと思ったら、大ママと絡んでるとは」とマダムがやってきた。

「おはようございます、マダム」と大ママとその子が頭を下げた。

「おはよう、お稼ぎかね」とマダムも微笑んだ。

「おはようございます、大ママ」と小走りに来たのか、ケイが息を切らしていた。

「ケイ、おめでとう、いよいよデビューらしいね」と大ママが笑顔で言った。

「ありがとうございます、がんばります」とケイが微笑んだ。


「ワシはまだ、チト早い気がするんだが、ユリが許可したからの~」とマダムが言った。

「マダムの寂しさは、分かりますわ」と大ママが優しく言った、マダムも笑顔だった。

「ところで、こ奴が何か失礼を?」とマダムが笑った。

「スカウトしてたんですの、マミの勉強係りにいいかと」と笑った。

「それは、困るの~、ケイの会話練習ロボットじゃから」と言い。

「オンボロやけどな」と言った言葉で、4人で笑った。

『ギーガシャン・ギーガシャン』とすると、それを見ながら大ママとマミは、笑顔で帰って行った。

マミと言うなぜか忘れられない、少女との出会いだった。


「関心やな~掃除とは」とマダムが言うので。

『大事なケイを出来るだけ、外に出したくないからね』と笑顔で返した。

「お前、ホストにはなるなよ」とマダムが笑った。

『その道があったか!』と言うと。

「怖いからやめて!」とケイが笑った。


その日は、フロアーの模様替えで忙しく、3時過ぎにやっと一息ついた。

マダムとケイと3人で、カスミのお土産のういろうで休憩していた。

「チャー」と言ってマリアが駆けてきた、私は受けとめて膝に抱いた。

「おはよう」と言ってユリさんが入ってきた。


「マダム、今日大ママと会いました?」ユリさんが座りながら聞いた。

「下で会ったぞ」とマダムが答えた。

「出る前に電話があって、ケイがデビューする時に、無報酬でいいからマミちゃんを、2週間研修させてくれないかと、お願いされたんです」とユリさんが言った。

「何かしたな」とマダムが私を見た。

『何もしてませんよ』と慌てて返事をした。

「あら、やっぱりあなた」とユリさんが微笑んだ。

「何したの?」とケイが突っ込んだ。


「まぁ、事件も終わった後だろうし、マミちゃんの勉強になるでしょうから」とユリさんは微笑み。

「大ママの頼みでもありますから」とマダムを見た。

「ワシは全然かまわんよ」とマダムも笑顔だった。

ケイとは違う挑戦者が来る事が決まった、不思議な魅力の少女が。


その日は、サクラさんが休みで、松さんが遅れるので、私はマリアの相手をしていた。

『マリア、何するの?』と笑顔で言ったら。

「ままこと」と言って、ままごと道具を並べだした。

『チャーは何?』と聞くと、私をジーと見て。

「チャー、ワン」と言って、犬のぬいぐるみをくれた。

『ワンか~』と言いながら遊んでいた。


その頃である、フロントに背の高い男が尋ねて来ていた。

受付にケイがいた、後にケイは初めて、男に見惚れたと話してくれた。

その男は190cm近い長身で、白のパンツに白いシャツに麻のジャケットを羽織り。

日に焼けた、黒い端正な顔を強調するように、髪を綺麗にオールバックにしていた。

「すいません、酒は飲まないので、入れてもらえませんか?」とケイに聞いた、開店前の7時35分だった。

ケイが返答に困っていると。


「かまわんよ、3番にお通ししろ」と徳野さんが後ろから言った。

「ありがとうございます」と深々と頭を下げて、徳野さんと目が合い、暫く二人は見ていたと、ケイに聞いた。

ケイが3番に通すと、銀の扉からユリさんが出てきて。

3番に歩いてくるところだった。

PGの3番席とは特別な席で、常連でも簡単には座れない、特別席だった。



ユリさんは3番席に行き、深々とお辞儀をして横に座った、その男も立って返礼していた。

「ユリと申します、社会見学かしら?」と笑顔で聞くと。

「家出少年に会いに来ました」と微笑んだ。

「やはり、そうですか・・連れ戻しに?」と聞くと。

「帰るかを決めるのは、奴自身の問題ですから、私は久しぶりに会いたくて来ただけです」と微笑んだ。

ユリさんも薔薇の微笑を返した。


「あら、ごめんなさい、何をお飲みになりますか?」と聞いた。

「牛乳はありますか?」と答えた。

「勿論あります」とオーダーした頃、蘭が店に駆け上がって来た。

「蘭姉さん」ケイは待っていた、「ちょっと」と受付裏に連れて行った。

蘭はその男を見るなり。

「すぐに準備するから、絶対に待たせといて」とケイに頼み、駆け出した。


フロアーに集まりだした、女性の視線を気にする事無く、その男は座っていた。


ただ優しく前だけを見て・・・。







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