表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/454

好敵

争うのではない、競うのだ、同じものを目指すなら競い合う。

結果は自らが下す、そこには勝敗というものは、無意味だと書いてある。

競い合った時間が、宝なのだと。


PGの入るビルを、ケイと2人で眺めていた、幼い兄弟のように手を繋いで。

雑居ビルの密林を、冒険者や狩人が徘徊している。

その中に紛れて、あの目が見ているような気がしていた。


PGに戻ると、やはりどこか違う緊張感に包まれていた。

しかしそれを振り払うように、ドレスの女優達は笑顔を振り撒いていた。

11時を過ぎた頃マダムが来た。

「予約は済んだか」とケイに聞いた。

「入店は終わってます」といつもの様に、即答した。

「じゃあ、今日はもう入れんかい、回転させろ」と指示を出した。

「分かりました」とケイが頷くと、マダムはTVルームに帰った。

「リン姉さん回転行きますね」とケイが言うと。

「了解、全組もう良いと思うよ」とリンさんが微笑んだ。


「チャッピー、そこからユリさんと、蘭姉さんかアイ姉さん見える?」と聞いた。

「全員見えるよ」と答えた。

「ユリさんに、こうやってサイン出して」と右手の手のひらを回す動作をした、私がユリさんにすると、微かに頷いた。

『ユリさん頷いたよ』とケイに言うと。

「ありがとう、そこにいてね」と微笑んだ。

『ケイ姉から離れないよ』と笑顔で言うと。

「じゃあ、お泊りに来るんだよね」とフロアーを見ながら笑った。

『優しく教えてね』と笑顔で返すと。

「私も知りません」・「あっ!」と言って俯いて照れた。


『聞こえなかったことでいいです』と笑顔で言うと。

「よかった~」と笑顔で言うので。

『聞こえなかった券は、あと2枚です』と笑うと。

「もう、話さない」と可愛く微笑んだ。

『そう言わないで、カイテンって何?』と聞いた。

「めったに無いけど、お店がお客様を出したいときに、気持ちよく出させる事よ」と笑った。

「これが、最高に難しいのよ」とフロアーを見ている。

「今夜は、蘭姉さんとアイ姉さんとサクラ姉さん、3人揃ってるからいいけど」と言いながら、目はフロアーに集中している。

「これは、プロじゃないと難しいの、四季でさえ回転やると、疲れるって言うぐらい」と言って私を見て。

「本当のレベルが試されるって、ユリさんが言ってた」と可愛く微笑んだ。


「ケイ」とカスミが来て呼んだ。

「なんですか?」とケイが言うと。

「教えて、今はどういう状態?」と真剣な眼差しで聞いた。

「回転と言って、お客を早めに返すための非常手段です」とケイも真剣に。

「ようするに、楽しませながら時間を意識させて、話しが盛り上がってところで、サイン出してチェンジします」と言った。

「わかった、やっぱり頼りになるね、早く来いよ」とカスミが微笑んだ。

「できるだけ、早く行きます、カスミ姉さんの一人舞台になる前に」とケイが微笑んだ。

私はその台詞に驚いていた、ケイの言葉とは思えなかったから。


「うん、その意気だよ」とカスミは本当に嬉しそうに笑って。

「中々のもんかもな」と私を見て戦線復帰した。

「なんで、何も言わないの?」とケイはフロアーを見ながら私に言った。

『ライバルって必要でしょ?』と聞くと。

「今のこの空気だけで、あんな目であれだけの反応を、カスミ姉さんにされたら、私だって燃えるよ」と微かに微笑み。

「だって競えるとしたら、最高の相手だもん」と言った、ケイの横顔は美しく、輝きを増していた。


「来るよ、蘭姉さん。こういう時は一番頼りになるの」とケイが言い、「えっ!」と言った。

『どうしたの?』私はケイに聞いた。

「チェンジのサイン、カスミ姉さんに直接出した」と驚いていた。

「私を見ながら、カスミ姉さんに直接出したの」と言ったケイは目は、静かに深く澄んで来た。

「蘭姉さんも早く来いって、今私にサイン出したんだ」と呟いた。

『蘭姉さんらしい、招待状だね』と私が言うと。

「うん、嬉しい。がんばるよ~」と言ってフロアーを見ていた、ケイの忘れられない横顔だった。

あの時多分ケイは踏み出したのだろう、巣から一歩を。


ケイの格闘を横目に、まずアルバイトの女性が銀の扉に消えた。

「あと、何組?」と後ろから声がした、私はあまりに意外で振向いた。

そこにユリさんが立って微笑んでいた。

「2組です」ケイは前を見たまま答えた。

「さあ、腕の見せどころがくるわ」と私の横に並んで、フロアーを見てた。

「ユリさん、私18にならないと駄目ですか?」とケイが聞いた。

「そんなこと、誰が言ったのかしら?」とユリさんが聞き返した。

「マダムも私も良いことばかりする人間じゃないわ」と言って私に微笑んだ、私は照れて笑った。

「がんばります」とケイがフロアーを見ながら、強く言った。


「カスミちゃんの魔法、私にもお願いしようかしら」とユリさんが私を見た。

『なにもしてませんよ』と返した。

「いいえ、あなたはエミちゃんにも魔法をかけたわ」と薔薇で微笑んだ。

『それは、私がかけられてた魔法を、そのままかけただけです』と笑顔で返した。


「蘭がくるわね?」とユリさんがケイに聞いた。

「はい、多分・・あそこを笑顔で締めます」とケイが前を見て言った。

『ユリさんはなぜ、ここに居るのでしょう?』と私は素朴な質問をした。

「やりにくいでしょ、私がいたら」と薔薇で微笑んだ。

「それに、こんな経験中々できないのよ」と微笑み「四季はよくやってるわ」と呟いた。

「本当ですね」とケイも呟いた。

「でも、カスミ姉さんがやっぱり凄い」とケイは微笑んだ。

その横顔を見ているユリさんは嬉そうだった。


「本当は蘭も下げるといいんだけど、まだ荷が重いでしょうね」とユリさんも真剣な眼差しで、フロアーを見ている。

『やっぱり、凄いんだ~』と私は呟いた。

「当然よ、私が産休の時、ずっとNo1で店を引っ張ったのよ」と私に微笑んだ。

『そうなんだ~』私は最後の客を相手する蘭を見ていた。

「今のように毎日、昼と夜働いてたわ」とユリさんも蘭を見ていた。

「蘭は私のヘルプって、皆誤解してるけど、PGのヘルプをしたと、マダムも私も思っているわ」と私を見て。

「辛いことを、乗り越えてる時期だったのに」と微笑んだ。


蘭は最後のお客と談笑している、カスミと2人で・・その瞳を見ていた。


どんなことにも揺るがない、自分を信じる強さを秘めて。


青く燃えていた、全てを溶かすように・・・そして包み込むように。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ