表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/454

月光の誓い

情熱の場所に、暖かく爽やかな風が吹き抜けた。

女神達は集中の中に入った、遥か高みに咲く薔薇に包まれながら。

私は最上部からそれを見ていた、熱が目で見えるようだった。


「久美子・・素晴らしかったです、その状況を読む感性。

 マキを想い奏でた心、どんなに強く激しい曲よりも響きました。

 土曜日が楽しみです、あなたが何を語りかけるのか。

 そしてマキ・・私もリアンとユリカと同じ言葉を贈ります。

 あなたのその視野、そして全てを伝えたいという心。

 無変換の言葉・・そして何より、自分から絶対に逃げない生き方。

 私も今までで一番期待する少女です、梶谷さんの涙でそう確信しました。

 私達もその経験と感性を見せましょう、16歳の大切な2人の妹に。

 今夜も開演しましょう」


ユリさんの流れる美しい言葉に、「はい」のブザーで応えた。

3番に北斗とユリさんが上がってきた、マキは立ち上がり北斗を見ていた。

北斗はキングに微笑んで、美しい姿勢で頭を下げた。

マキがキングに挨拶をして、戻ろうとした時、北斗がマキを抱きしめた。

マキも北斗を優しく抱いていた、目を閉じて母を感じようとしていた。

キングもユリさんも優しい瞳で見ていた、北斗が体を離し微笑んだ。

マキも微笑んで、北斗をキングの隣に促した。


ユリさんとマキはキングに一礼して、笑顔で3番を後にした。

私は楽しそうに話す、2人の後ろを歩き指定席に戻った。

女性達の熱が、開店前に上がっていた、マキを感じて燃え始めていた。

マキはニコちゃんシオンに迎えられ、笑顔で指定席に着いた。

その時に開店した、順調な客足に熱が上がり続けていた。


私は30分ほど状況を見て、フロアーの動きが安定してきたので。

満開蘭に【勉強】サインをウルで送って、女性達のニヤに見送られてTVルームに戻った。

TVルームでは、久美子とエミが勉強をしていて、その隣でミサとレイカが平仮名を書いていた。

私はレイカの隣に数学の教科書を持って座った、マダムと松さんは静かにTVドラマを見ていた。

マリアは両足を広げる、蛙のような寝姿を披露していた。


『おっ!ミサもレイカも上手だね~』と笑顔で言った。

「エース、その部分でゴマをすらないでね」とエミが二ヤで言った。

『は~い、エミ先生』とウルで返した。

「エース・・【む】っていう字が難しいの」とレイカが可愛く微笑んだ。

「うん、上手く書けない」とミサも笑顔で私を見た、私は2人のノートを見た。

5歳の字とは思えぬ、綺麗な文字が並んでいた。


『【む】、か~・・難しいよね、むのお母さんは丸なんだよ。

 一度丸を書いて、その丸の中に書いて練習すると綺麗に書けるようになるよ。

 【の】とか【ぬ】とかも丸の仲間だね、仲間で分けるんだよ。

 【あ】も【お】も仲間かな~、仲良しグループを作ってみるんだ。

 漢字になったら仲良しグループ分けが、役に立つからね。

 2人とも上手だよ・・でももっと上手くなりたいって思うのは大切だね。

 字でもピアノでも・・何にでも、もっと上手くなりたい。

 知らないから、知りたい・・とても大切な事だよ。

 エミ姉ちゃんを追いかけなくていいんだよ、自分の知りたいを探すんだ。

 ミサが言ったよね、ユリちゃんになりたいって。

 その気持ちを忘れないで、どんなお仕事をしたいかなんて、今の俺でも分からない。

 ゆっくり考えればいいんだよ、それが決まるまでは・・ユリちゃんになりたいって。

 そう思っていてね、そうすれば成りたいものが見つかった時。

 それを目指すことが出来るから・・今は頑張らなくていいんだよ。

 お勉強は大切だけど、人と競う事じゃないよ・・エミは人と競ってないでしょ。

 字を覚える時も・・楽しいやりかたを考えてね。

 俺はミサとレイカが可愛い大人になった姿が、今からとっても楽しみです』


可愛い2人を見ながら、笑顔で伝えた。

「その時は、抱っこと添い寝してね」とミサが笑った。

「私も~・・お風呂も~」とレイカが笑った。

「エミちゃんは?・・言っておかなくていいの?」と久美子がエミに微笑んだ。

「私・・考えてたの、私ね・・今で・・7歳で、エースとお風呂は恥ずかしい」とエミが照れて笑った。

「それは成長早すぎです・・成長は、お勉強の部分だけにしなさい」と久美子が笑顔で言った。

「は~い・・久美子先生」とエミが笑った。

ミサとレイカがケラケラと笑い、マダムと松さんも笑顔でエミを見ていた。


30分程して、ミサとレイカが歯を磨き、お休みをした。

私は2人を交互に抱き上げて、温度と鼓動のチェックをしてベッドに寝かせた。

「エース・・ミサとレイカに、由美子ちゃんを会わせるの?」とエミが言った。

『うん・・来週かな・・もちろんエミも会ってね』と笑顔で言った。


「うん・・嬉しい・・私のステップアップの提示ね。

 私はマキちゃんに聞いたの、恭子ちゃんに負けた話。

 自分はどうかって思ってるの、そして考える事はやめたよ。

 ミサやレイカは、絶対に自然に友達になるよ。

 ミホちゃんとも、由美子ちゃんとも、沙紀ちゃんとも。

 私は心で負けたくない、だって・・お医者さんを目指すって言ってるんだから。

 私は私らしく、会ってみる・・とっても楽しみなんだよ」


静寂が訪れていた、エミの言葉が響いていた、強烈な波動が感動を伝えていた。


『よし・・エミ、俺の本音を言うよ、そしてエミに挑戦権を与える。

 俺は沙紀に対しては、ステップアップを要求する。

 週末、久美子があの魂の音色で、沙紀の心に直接何かを伝える。

 そして美由紀がステップアップを要求する、それは文字を覚えるという事なんだ。

 沙紀にとっては平仮名でも、難しい事なんだよ、その勉強道具を千秋と美冬が渡す。

 近い将来教師になる2人が手渡す、そして教える・・でもそれだけじゃ無理なんだ。

 沙紀が必死になっても、多分覚えるのは難しい・・俺の知る限りそれが出来るのは。

 沙紀の心に直接、文字を覚える事の意味をを伝えられるのは・・エミだけだと思ってる。

 沙紀に対しては、俺はエミに一番期待している。

 エミは自分らしく沙紀と触れ合って、そしてエミの心を正直に話して。

 それだけで沙紀は感じる、2歳年下の素晴らしい少女を。

 そうなれば・・沙紀は必ず取り組む、その文字という難解な問題に』


この言葉からだった、私がエミを子供として接しなくなったのは。

エミの瞳は強く輝いていた、私はそれだけで嬉しかった。

「エース・・ありがとう、私には今まで生きてきて・・一番嬉しい言葉だった」とエミが微笑んだ。

『期待してるよ、エミ・・俺の大切な、愛する・・エミ』と笑顔で言って、両手を広げた。

エミは私に抱きついた、私はそのまま抱き上げて、TVルームを出た。

マダムと松さんと久美子の微笑が優しかった、ユリカの波動が優しく何度も来ていた。


裏階段を上りながら、エミを見た・・瞳を閉じて静かだった。

私は最上階まで上り、ユリカの店の明かりを見ていた。

平穏で少し熱いエミの温度を感じていた、私は原作者に語りかけた。


《原作者、聞いてるかな・・最近忙しそうだね。

 あんたが俺に提示した難問・・ミホの突破口が見えたよ。

 あんたは意外と優しい奴だね、俺にこんなに武器を持たせてくれて。

 でもね、あんたは想像力の乏しい奴だよ、エミを甘く見すぎてる。

 俺は今、この時から、エミを子供と思わない。

 自分と同等の年齢だとして接する、エミは絶対に答えを出し続ける。

 あんたや俺じゃ想像も出来ない答えを、あんたを凌駕した、あのマリのように。

 あんたの浅知恵を看破した、マリの恐怖を忘れたんだね。

 次はエミを送り出す、あんたのあの恐怖の表情がまた見れるよ。

 あんたの最強の武器、時を越えて見せる。

 時を戻したマリ・・そして次は、時を追い抜くエミだよ。

 俺はエミを最後まで見守る、エミがリンダの右腕になるまで。

 大切に育てる・・託して余りある存在・・エミをね。

 そして由美子には、ミサとレイカで行くよ、同じ歳のお友達として。

 あんたがどんなに引き裂こうとしても、それは無理な話だよ。

 だってその後ろにいるんだから、あんたが絶対に手を出せない。

 天使のマリアが立っている・・永遠に羽を携えてね。

 白旗を掲げろよ、原作者君・・今なら許してやる。

 蘭の弟の事も、幼くして亡くなった友の事も。

 そして・・ヒトミの事も・・俺はここまで来たよ。

 会えるのを楽しみにしてるよ・・震えるあんたを見るのをね》


私は強烈な波動を受けながら、月に語りかけた。

その時に鮮明な映像が流れた、ニューヨークであろう高層ビル群の上を飛行して。

一軒の大きな家に入った、リビングのソファーに座る2人の後姿が見えた。

ブロンドとプラチナブロンドの後姿が、そしてリンダが振り向いた。

リンダが美しい笑顔で言った、「マチルダ・バック・ユー」と私に分かるように英単語で微笑んだ。

そしてマチルダが振り向いて言った、「待ってろよ・・すぐに帰るから」と微笑んだ。

そこで映像が切れた、私はただ嬉しかった。


《ユリカ・・俺にもう1つ、最強の武器が手に入るよ。

 今、リンダが贈ってくれた・・俺の最強の武器、マチルダが帰ってくる。

 絶対に由美子の為に・・俺は嬉しいよ・・ユリカ》


そう心に呟いて、月を見ていた、月光の下に蘭の満開を感じていた。

ユリカの最強の波動が、私の後ろから月に向かって飛んだ。

私は月光に誓いをたてた、絶対に諦めないと・・その月光の先にいるであろう、蘭に向かって。

私は月に二ヤを出して、エミを優しく抱きながら、TVルームに戻った。


私は裏階段を下りながら、ハッ!としていた。


《役者が揃いだしている、やはりあれが来る・・由美子の体が強くても、来るんだな。

 でも大丈夫だと思ってるよ、今は最強のメンバーがいる・・ユリカもそう思うだろ》


私は心で囁いて、ユリカの優しい同意の波動を受けながら、TVルームに入った。

私はエミをそのままベッドに寝かせて、手を握ってチェックしていた。

「お前・・サクラが泣くぞ、エミの成長で」とマダムが微笑んだ。

「ほんとだよ~・・シズカ効果だけでも凄いのに」と松さんが微笑んだ。

「私にも、プレッシャーをかけ続けるんだね・・良いよ、絶対に伝えてみせるよ」と久美子が真顔で言った。


『久美子よろしくね・・何かが大きく動き出している。

 今・・リンダからメッセージが届いた、マチルダが帰ってくる。

 俺は、絶対に由美子だと感じている、今の全ての流れは由美子に向かっている。

 俺は何なのか分かっている・・その対応の為には・・絶対に沙紀の覚醒が必要なんだ。

 沙紀だけが伝えてくれる、由美子の居場所を。

 マダム、松さん・・北斗を頼みます・・支えて下さい、あの強い心が折れないように。

 俺は少し急ぎます、必ず近いうちに・・全員が1つに成る時が来る。

 その先に有ると信じます、由美子の希望ある未来が。

 それを感じたんです、あの最高峰の女性・・リンダが感じてる。

 だから最強の武器を貸してくれた、マチルダが笑顔で帰ってくる。

 何かを伝えに・・そして見せてくれる、今度こそマチルダの本質を。

 俺は楽しい緊張感の中にいます、明日・・律子に会ってきます。

 俺にはどうしても必要だから、だからきちんと話してくる・・俺の想いを。

 美由紀を明日、ミホと沙紀と由美子に会わせます・・美由紀の全力を出し切らせる。

 全ては未来の為に・・由美子の未来こそが、全員の進むべき場所の道標になる。

 久美子・・今、2人で誓おう・・俺達は絶対に諦めないと』


私は正直に想いを話した、久美子は立ち上がり私を抱きしめてくれた。

「誓うよ・・私も絶対に諦めない・・最後の挑戦者のように」と久美子が優しく囁いた。

私は強烈な波動に包まれて、久美子に抱かれていた。

「エース・・私らも誓うよ・・絶対に諦めないとな」とマダムが言った。

「諦めるもんかい・・由美子は自立するんだろ」と松さんが強く言った。


『ありがとう・・由美子に会って、ユリカの所に行ってきます』と笑顔で返してTVルームを出た。

ユリカの波動を道連れに、病院まで歩いた、暗い1階のロービーを抜けて階段で上がった。

小僧と記入して、静かな廊下を歩いて、ミホの病室に入った。

眠っている沙紀の手を握って、温度を確かめて、《お休み》と囁いてミホの所に行った。

ミホはベッドに座り、月を見ていた、可愛い横顔だった。

私が静かに歩み寄ると、ミホが振り向かずに、私に右手を出した。

私はミホの横に密着して座り、ミホの手を握った。


『ミホ・・俺を見ててね、俺はそれだけで勇気が出るから。

 明日連れて来るよ、ミホの大好きな・・美由紀を。

 ミホ・・俺は今ね、楽しいんだよ・・ミホと沙紀と由美子に会えたから。

 俺のミホに対する想いを、先に由美子で見せるから。

 感じていてね・・ミホ』


私は優しくそう言って、ミホの額に手を当てた。

ミホは瞳を閉じて、私に体重をかけてきた、私はミホを優しく寝かせた。

『ミホ・・お休み・・また明日』と囁いて病室を出た。

私は高揚してる気持ちを抑えずに、廊下を歩いていた。

そして静かに由美子の病室に入った、由美子は左手を上げて待っていた。


『由美子・・消灯時間過ぎてるよ・・悪い子です』と手を握り笑顔で言った。

《本当だ、小僧ちゃん・・温度の言葉、綺麗になったね》と由美子が返してきた。

『えっ!・・そうなの、嬉しいな~』と笑顔で返した。

《うん・・何か良い事を、お話に来たんでしょ》と由美子が言った。

『うん、由美子・・ママが温度の言葉、YESとNOが分かるようになったからね』と優しく言った。

《小僧ちゃん、ありがとう、由美子嬉しい》と強く返ってきた。


『うん、でも強く伝えたら駄目だよ、すぐにママが慣れるから。

 最初に強く伝えると、ずっとそうしないといけなくなるからね。

 それは由美子の体力を無駄に奪うから、出来るよね・・由美子』


私は優しく囁いた、由美子の側にいる時の、いつもと違う強い波動が何度も来た。

《うん、出来るよ、今まで待ってたんだから》と由美子が言った。


『うん、そうだよね・・由美子、1つだけ約束して。

 どんなに小さい事でも、体調の変化を全て俺に伝えてね。

 それを約束してくれるなら、明日・・素敵な人に会わせてあげるから』


私は優しく由美子に伝えた、由美子は嬉しそうだった。

《はい・・約束します、全部教えるよ》と可愛く返ってきた。

『よし、由美子・・もうお休み・・眠るまでここにいるから』と優しく言った。

《小僧ちゃん、ありがとう、おやすみ》と返してきて、由美子は静かになった。

私は由美子を見て、由美子の絵を見ていた。

そして衝撃を受ける・・沙紀の底知れぬ、強い愛を感じる。


私は絵に近づき、間近で確認した、もう一人の自分を出して、感情を切っていた。

ユリカに悟られないように、明日ユリカがこの絵を見るのに、先入観を持たないように。

ユリカの強烈な波動が何度も来て、意地悪、意地悪と言われていた。

私は由美子の額にキスをして、病室を出た、そこで感情を戻した。

《ユリカ、ごめん・・居眠りしてた~・・今から行くね》と囁いて。

ユリカの波動に説教されながら、狭い路地を歩いていた。


私は初めて感じる充実感を背負い、狭い路地を通りユリカの店を目指していた。

ユリカの店に入ると、ユリカが二ヤで待っていて、奥のBOXに引っ張られた。

「マチルダが・・帰ってくるの」と爽やか笑顔で聞いた。

『うん、映像で強いメッセージを貰った・・マチルダ・バック・ユーって、リンダから』と笑顔で返した。

「リンダ、上手になったね・・エース式英会話」とユリカが楽しそうに笑った、私はウルで返した。


「私も感じてるよ・・夕方から、あのマリの話から・・何か大きな変化を」とユリカが美しい真顔で言った。

『うん・・実は俺も、昨日の蘭を見ながら・・感じてたよ』と真顔で返した。

「明日・・学校に迎えに行くよ、あんたと美由紀を」とユリカが微笑んだ。

『よろしく、11時には終わるから・・それから律子に会いに行く』と笑顔で言った。

「とうとう、登場するのね・・律子母さんの本質・・その伝達能力が」とユリカが微笑んだ。

『さすがユリカ・・感じてたね』と二ヤで返した。

「もちろん・・あなたが母さんに頼る、その重さも感じてるよ・・蘭も私も」とユリカが微笑んだ。


『その時が来たら、律子に側にいてもらう・・俺が限界が来た時の、保険でね』と真顔で返した。

「どんな事だと感じているの?」とユリカが真剣に聞いた。


『ヒトミの時も何度かあった、あの病気は成長の段階の節目で奪おうとする。

 その生命の灯火を・・由美子の意思が消える、原作者が誘拐する。

 その時に強く呼び戻さないといけない、その時に問われるんだ。

 どこまで本気だと、どれだけ由美子を愛しているのかと。

 由美子がどれだけ必要なのかと、ヒトミの時は俺も体力が無くて。

 限界が来た、その時に律子が代わってくれた。

 律子はその時に見せる、その本質を・・強く伝達する、自由とは何かを伝える。

 俺は今までで、ただ一人・・原作者に従わなかった人間を見た。

 マリだよ・・でもその強い意志を植えつけたのは、律子なんだよ。

 俺は絶対に由美子を呼び戻す、原作者に挑戦する。

 その悪質なシナリオに挑む・・だからユリカ・・その時は側にいて。

 そして波動で力を貸して、俺にはユリカの波動と、蘭の青い炎が絶対に必要なんだ。

 リンダが感じてる・・リンダは感じるんだよ、悪質なシナリオに挑み続けてるから。

 だから俺の心が折れないように、最強の戦士を貸してくれた。

 マチルダが側にいてくれる、俺は今・・その時を楽しみにしてるよ・・絶対に諦めない。

 由美子を連れ戻す・・明るい未来に続く道まで』

 

私は真剣な深海の瞳に、真剣に伝えた。

「完璧だったよ、心を完全に追い越してた・・もちろんずっと側にいるよ、蘭も私もマチルダも」と爽やかに微笑んだ。


『ありがとう、ユリカ・・今夜の報告会で全員に伝える。

 北斗との約束を守るよ、全てを隠さずに伝えるという約束を』


私は爽やか笑顔のユリカに見送られ、エレベーターに向かった。

「由美子の絵、本当に楽しみだよ・・意地悪されたし」と爽やか二ヤで言った。

『それはお楽しみに、明日待ってま~す』とユリカに笑顔で手を振って別れた。

そのまま魅宴を覗いて、ナギサが輝きながら華やかさを撒き散らす姿に見惚れていた。

ナギサと目が合い、二ヤでサインを送り、魅宴を出た。


夏の熱が少し冷めていて、時が確実に動いているのを感じていた。

私は高揚している気持ちを楽しみながら、指定席に戻った。

終演前の熱いフロアーを見ていた、久美子が椅子を持ってきて、私の横に座った。

その行動で女性達が感じた、何かがあると感じたようだった。


『久美子・・俺が報告会で話をする、その時にサマータイムを弾いてよ。

 リンダを側に感じさせて、それだけで・・俺は正直になれるから』


フロアーを見ながら、静かに囁いた。

『了解・・リンダのサマータイムを弾いてあげる、あなたの夏が終わらないように』と久美子もフロアーを見ながら囁いた。

その時に終演を迎えた、久美子がピアノに向かい、私は10番の前に立った。

女性達全員が集まっていた、ユリさんも、サクラさんもアイさんも。

蘭が深い瞳で私を見て、静かに促した、久美子のサマータイムが響いてきた。


『今夜、俺はメッセージを受け取った、崇高な高みにいるリンダから。

 最強の戦士、マチルダを派遣すると・・マチルダが帰ってくる。

 俺はその理由を感じている、今・・大きく何かが動いている。

 それは全て・・由美子に向かっている、全員で気持ちを1つにしないといけない。

 由美子の病・・それは成長過程で何度も、その命の灯火を消そうとする。

 由美子の心をどこかに連れて行く、そして諦めさせようとする。

 全員で心を1つにして、呼び戻さないといけない時が、近づいている。

 北斗と俺だけじゃ、到底届かない場所に、由美子の心が誘拐されるから。

 悪質な原作者が、その隠れ家で微笑んでいる。

 俺は絶対に諦めない・・必ず由美子を探し出し、連れ戻す。

 その為に・・全員の力を貸して欲しい、心で由美子を呼んで欲しい。

 生きる事は素敵な事だと叫んで欲しい、その心で伝えて欲しい。

 由美子に生きようと・・諦めるなと、そう伝えて欲しい。

 どこからでも届く・・その想いに嘘が無いのなら、絶対に届く。

 サクラさんユリさん・・エミとミサとマリアを借ります。

 あの子達なら、絶対に届く・・由美子の心に直接訴える。

 俺は大至急、沙紀の覚醒を促します・・沙紀だけが由美子の居場所を教えてくれる。

 絶対に探し出して、描いてくれる・・その囚われてる場所を。

 俺は全てを賭けて挑む・・蘭の青い炎とユリカの波動も駆使して。

 必ず連れ戻す・・たとえ律子を使ってでも、必ず連れ戻してみせる。

 だから全員の力を貸して欲しい、由美子を呼び戻す力を。

 久美子が奏でてくれている、サマータイム・・俺はリンダに誓う。

 俺は絶対に諦めない・・リンダがアルバムを見せた、誇り高い人間として』


久美子の熱いサマータイムに守られながら、強く言葉にした。

「お前・・何言ってるんだ・・貸して欲しいじゃないだろ、一緒にやろうだろ」とカスミが立ち上がって強く言った。

「そうだよ・・そう言って」とハルカが立ち上がって叫んだ。

『出来るんだな・・じゃあ一緒にやろうか』と私は不敵で言った。

「それでこそ、エースですよ・・私も伝えてみせます」とユリさんが薔薇で頷いた。

「もちろん私も・・そしてエミもミサも」とサクラさんが微笑んだ。

「よし、やろう・・その時は、絶対に呼び戻そう」と美冬が叫んで、全員が立った。

北斗だけが俯いて泣いていた、ユリさんが優しく北斗を抱いていた。


『北斗・・立てよ・・そして今ここで誓って・・絶対に諦めないと』と私は強く言った。

北斗が顔を上げて私を見て、強い瞳の笑顔で立って、私に歩み寄った。

「みんなありがとう・・私は今ここに誓います・・由美子に・・絶対に諦めないと」と北斗が強く言って頭を下げた。


全員が笑顔で拍手をした、拍手は暫らく鳴り止む事はなかった。

まるでカーテンコールのように、過ぎ行く夏に・・アンコールを求めるように響いていた。


映像が伝えてくれたメッセージ、そのリンダの強いブルーで感じていた。


そしてマチルダの微笑で確信した、その時が近づいている事を。


私は忘れられない、この時のカーテンコール。


全員の気持ちが1つになっていた、本当に嬉しかった。


クライマックスを前に、蛙のような姿で眠る、天使の覚醒が始まっていた。


その圧倒的な破壊力が目覚めようとしていた、原作者の想定外の破壊力が。


その時ニューヨークの空港に、緑の瞳が座っていた、ピンクのリュックを隣に置いて。


コーヒーを飲みながら聴いていた、スピーカーから流れるサマータイムを。


そしてもう一人、最後の重要人物が感じていた、俯きがちな姿勢で夜空を見ていた。


黒目の部分が恐ろしい程大きい瞳で、少し上目使いで、月を見ていた。


マリが感じていた・・何かの始まりを、そしてその結末を探していた。


唇にだけに、微かな笑みを湛えながら・・原作者のシナリオを解析しようとしていた。


そして美由紀が月を見ていた、眠れない夜を楽しんでいた。


美由紀とマリが、同じ月を見ていた。


その月に・・由美子が浮かんでいるようだった・・。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ