純白のモデル
光射す場所に隠れている、影の世界にも大切な物は有る。
向き合うことは難しいのだろう、しかしそれをしなければ前には進めない。
嘘や誤魔化しは通用しない、その相手は自分自身なのだから。
晩夏の昼下がり、ニコちゃんシオンと駐車場を目指していた。
シオンは本当に嬉しそうに歩いていた、私はそのニコちゃんを見ていた。
さすがシオン、全く心が構えてないな・・そう感心していた。
シオンの可愛い車に乗り、病院を目指した。
平日の午後で国道は空いていて、5分程で病院に着いた。
私は記名を先程していたので、詩音とだけ書いてミホの病室に入った。
沙紀は起きていて、TVを見ていた、私とシオンを見て起き上がった。
私は沙紀の手を握った、その嬉しそうな熱に驚いていた。
『沙紀・・シオンちゃんだよ、描いてあげてね・・その時にシオンちゃんが、お話してくれるから』と笑顔で伝えた。
《小僧ちゃん、沙紀嬉しいよ、初めて感じた、シオンちゃん》と返して来た。
私は笑顔でニコちゃんシオンを見て、沙紀の横の椅子にシオンを座らせた。
シオンはニコちゃんで沙紀の手を握り、沙紀の瞳を見ていた。
「沙紀ちゃん、シオンです・・会いたかったんですよ、沙紀ちゃんの絵が大好きです」とシオンが最強ニコちゃんで言った。
沙紀も何か伝えてるようだった、シオンはニコちゃん継続で頷いていた。
私は驚いていた、そして思い出した、シオンはマリアの伝達を理解できる。
それは言葉だけではない、そう思ってシオンを見ていた。
沙紀が手を離し、スケッチブックを出した。
シオンは嬉しそうに、ニコちゃんで沙紀を見ていた。
「じゃあ沙紀ちゃんにお話するね、シオンの子供の頃の話を。
シオンは9歳年上に、お姉ちゃんがいます・・リアンって言うの。
とっても素敵な人なんです、私は子供の頃から大好きでした。
シオンはね、人と同じに出来ない子だったの・・・・・」
ニコちゃんで話すシオンを見ながら、沙紀がピンクの色鉛筆を手に取った。
そして一気に描き始めた、その沙紀の情熱とシオンの言葉がシンクロしてるようだった。
私は邪魔しないように、寝ているミホのベッドの横のテーブルを出した。
そして明日の数学の試験対策をしていた、シオンの言葉が心地よく響いていた。
沙紀の母親が入ってきて、シオンがニコちゃんで挨拶をした。
母親も笑顔でシオンを座らせて、シオンと私にジュースを出してくれた。
「ありがとう、シオンちゃん素敵ね・・あなたの考えが少し分かったわ」と母親が微笑んだ。
『うん・・良い感じだと思ってるよ、絵が楽しみです』と笑顔で返して、沙紀の方に戻る母親を見送った。
沙紀は無心で描いていた、シオンはニコちゃんで、辛い話をしていた。
この時の話は、後記します・・素敵な話だったので。
私はシオンの言葉と、沙紀の色鉛筆で描く、微かな音に押されて。
数学に取り組んでいた、集中していたのだろう、気が付くとミホが教科書を見ていた。
私はミホの方に教科書を向けて、手を握った。
『ミホ・・明日、テストなんだよ~』と笑顔で言った。
ミホは無表情のまま立って、私の横に椅子を持ってきて座った。
私は嬉しくて、何も言わずに数学に取り組んだ。
ミホは飽きもせず、数学の教科書と私のノートを見ていた。
「素敵な光景ね~・・ミホちゃんも、勉強に興味あるんだね」といつもの若いナースが笑顔で言った。
『ねぇ、美しいナースのお姉さん、昔の教科書あったら、ミホにプレゼントして』と笑顔で言った。
「了解・・ほんのちょっと前の、小学校の算数でも持ってくるね」と二ヤで返された、私も二ヤで頷いた。
「しかし・・次から次に素敵な女性が来るよね~・・他の病棟でも、男の先生達の噂になってるよ」と笑顔で言った。
『まだまだこれからだよ・・お楽しみに』と笑顔で返して、笑顔のナースを見送った。
私がミホを見ると、ミホの手が動いていた、私は驚いて未使用のノートを出した。
そしてボールペンをミホに握らせた、ミホはノートに数字を書いていた。
罫線の枠からはみ出さない、可愛い数字を見ていた。
ミホは何度も同じ数字を書いて、自分の書いた字をじっと見ていた。
『ミホ・・上手だね~、いつでも学校行けるね』と笑顔で言った。
ミホはその言葉には反応せずに、夢中で数字を書いていた。
私は嬉しくて数学を続けた、ミホが隣で必死に数字を書くのを感じながら。
2時間程経った頃、ミホがトイレに出て行った。
私はミホが書いていたノートの表紙に、MIHOと書いて日付を入れた。
その後、私にとって大切な思い出になる、一冊目のノートがスタートしていた。
沙紀を見ると、最後の色付けなのだろう、必死に色を塗っていた。
シオンはお話も終わり、沙紀の母親と笑顔で話していた。
ミホがトイレから帰ってきたので、シオンを呼んだ。
私はミホの手を握り、ノートのプレゼントとシオンを紹介した。
シオンはニコちゃんでミホの手を握り、自己紹介をして、ミホが可愛いと言って話していた。
私は沙紀の横に座った、その色を塗る速さに驚いていた。
全く迷い無く塗るスピードと、その集中力に見惚れていたのだ。
沙紀が絵を確認して、黒の色鉛筆を取った。
そして右下にSAKIとサインをしたようだった、そして私に手を出した。
私は笑顔で手を握り、沙紀の充実感を感じていた。
『沙紀・・上手く描けたみたいだね』と笑顔で言った。
《うん、沙紀も好きな絵になった、シオンちゃんのお話も嬉しかったよ》と返してきた。
『そうだね・・素敵なお話だったね』と笑顔で言うと、沙紀がスケッチブックを差し出した。
私は笑顔で受け取った、後ろに立つ母親の笑顔で、その絵の素敵さが想像できた。
しかし私は想像力の乏しい人間だった、その絵の世界に、私は一瞬凍結したのだ。
真ん中に大きく、最強ニコちゃんシオンの顔が描かれていた。
最初に手にしたピンクは唇を描いたのだろう、美しく艶のある唇に生命感があった。
シオンの顔が今までにないアップで描かれて、髪の生え際まで緻密に描写されていた。
ニコちゃんの目の輝きに、喜びが溢れていた。
しかしその緻密な描写の顔のアップの左右に、シオンの横顔が描かれていた。
左横のシオンは真顔で、瞳が寂しそうだった。
そして右横のシオンは強い瞳で描かれていた、それは私も見たことが無い表情だった。
私はその時にハッとして感じた、振り向いている、動きを表現してる。
左横の寂しいシオン・・シオンの言う、【もう一人のシオン】なんだと思った。
そして真ん中の正面に描かれているのが、今現在のシオン。
ならば・・右の横顔は・・将来のシオンなのか!
私はその絵に魅せられていた、その変化する表情の背景に描かれている光景を感じて。
ブルーの湖が広がっていた、高原の爽やかな風を受けて振り向いた。
後ろを振り向かずに、前を見るシオン・・美しい横顔に寂しさは無かった。
強い瞳で前を見ていた・・未来を見つめているようだった。
私は感動していた、そして強烈な波動に包まれていた。
私は笑顔で沙紀の手を握った、沙紀は喜びを表現してくれていた。
《小僧ちゃんの嬉しいと、ユリカちゃんの嬉しい見つけた》と沙紀が伝えてきた。
『うん、俺もユリカも嬉しいよ・・そしてシオンの最高の嬉しいも感じてね』と笑顔で言って、シオンを呼んだ。
ニコちゃんで頷いて、ミホに別れの挨拶をして歩いてきた。
私はシオンを座らせて、絵を見せた、シオンもニコちゃんのまま凍結していた。
そして最強ニコちゃんになって、沙紀を抱きしめた。
沙紀もシオンの背中に小さな腕を回し、嬉しそうに抱かれていた。
私はミホの側に行き、眠そうなミホの額に手を当てた。
ミホの体重がかかるのを感じて、ミホを優しく寝かせて、また明日と囁いた。
シオンの絵を紙のケースに入れて、シオンが沙紀にまた来ると告げて病室を出た。
シオンは紙のケースを大切に抱えて、最強ニコちゃん継続で歩いていた。
『嬉しかったね、シオン』と笑顔で言った。
「はい・・多分・・今までで一番の嬉しいでした・・右の顔、シオンの理想です」と私を見て微笑んだ。
その美しさに見惚れていた、そして感じていた・・右横のシオンを。
多分リンダとマチルダと旅をして、辿り着くであろう、その世界にいるシオンを。
その微笑の中に、感じていた・・しかし私には寂しさは無かった。
シオンが望んでる事だと感じたから、必ずあの強い瞳のシオンに辿り着くと感じていた。
由美子の病室の前で、シオンを見た、最強ニコちゃんで頷いた。
私は静かにノックをして、病室に入った。
祖母が裁縫をしていた、私は静かに歩み寄り、シオンを紹介した。
シオンはニコちゃんで挨拶をして、由美子をニコちゃん継続で見ていた。
《間違いないな、さすがシオン・・由美子と交信出来るかも》と心で囁いた、強い波動が同意を示した。
私はシオンと由美子の横に行って、シオンを椅子に座らせた。
『由美子・・今日も素敵な人を紹介するね・・シオンちゃんです』と手を握って伝えた。
《本当に素敵な大人の人だね、早く手を握って欲しい》と由美子が返してきた。
『は~い・・シオン、由美子が早く握って欲しいって』と笑顔でシオンに言った。
『嬉しいです~・・由美子ちゃん、シオンです・・会いたかった~』とニコちゃんで手を握って言った。
そしてシオンは由美子の返しを感じようとしていた、その表情で確信した。
シオンはすぐに出来るようになると、伝達方法を覚えていると思っていた。
私はソファーに行き、祖母の横に座った。
「さっきの話・・ありがとう、嬉しかったですよ」と祖母が微笑んだ。
『うん・・初めて人に話しました・・由美子だから』と笑顔で返した。
「ヒトミちゃんとの思い出は、楽しい事が多かったのね」と祖母が優しく微笑んだ。
『はい・・今では、全てが楽しい思い出ですね。
俺は夢中でやっていました、ヒトミとの季節は半年もなかったけど。
濃密で充実した時間でしたね、学校にいる時も楽しかった。
ずっと楽しい事を探していました、ヒトミに話したくて。
ヒトミが聞いてくれたから、そして問いかけてくれたから。
でも今考えると、俺は全然伝えきれていなかった。
幼かったし、未熟でしたから。
でもそんな後悔など関係無く、由美子には伝えたいですね。
俺は自然に由美子を好きになりました、だから覚悟なんて必要無かったです。
どんな結末でも、心で由美子を・・一生背負っていく事が出来ます。
沢山の見送った仲間が教えてくれました、全員が後悔は無いと言っていました。
ただ早くて残念なだけだと、そう両親に伝えてくれと言っていましたから。
どんなに医学が進歩しても、救えない命はあるんでしょうね。
でも・・救える心はあると思っています、俺は自己満足と言われて良いんです。
俺がヒトミや由美子と関わる理由は、唯一つです。
好きだから・・ヒトミや由美子が愛おしいからです。
俺は自分の気持ちは全て伝える、愛する由美子に聞いてほしいから』
私は何も考えずに、由美子とシオンを見ながら言った。
祖母の優しい瞳と、熱く強い波動に包まれていた。
「ありがとう・・由美子の事も、娘の事も。
美千代は源氏名である北斗を、大切にしてきました。
私には分かります、その名前に誇りを持っているのでしょう。
あの子はあなたの想像通り、はぐれ者でした・・不良じゃないけど。
感覚が人と違ってましたから、自分自身もそれで苦しんだのでしょう。
学生時代は友達も少なかった、でも夜街で変わりました。
千花の面接を受けた日に、本当に嬉しそうに言いました。
自分が普通に思えたと、真希と飛鳥と言う人に会って、そう強く感じたと。
そう言って泣いていました、私も嬉しかった・・だから会いに行きました。
そして2人を見て感じました、美千代は自分で生きる場所を探し当てたと。
美千代の2度目の北斗復活は、ユリさんを見て決めましたね。
素晴らしい才能に伝えたい、自分の考える理想の姿を。
そう楽しそうに言っていました、充実していましたね・・あの自由な心が。
そして今回の3度目の北斗復活、あなたが伝えてくれた・・由美子の想い。
美千代は本当に喜んでいました、自分に出来る最高の提案をされて。
自らの強い意志で復活を決めました、その喜びを感じていますよ。
北斗と言う源氏名に、真希さんが込めた想いを再確認して。
今は迷い無く生きていますね・・北斗・・それは復活の星ですから」
祖母は笑顔でそう言った、私も笑顔を返していた。
『やっぱり真希さんは、伝説以上ですね・・復活の星ですか、北斗らしいですね』と笑顔で返した。
祖母の頷くのを見て、シオンに視線を向けた、ニコちゃんで楽しそうに話していた。
『そろそろ良いかな・・由美子が疲れるから』と祖母に笑顔で言って、シオンの側に歩いた。
『シオン・・今日はその位にしよう、由美子が疲れるから』と笑顔で言った、シオンはニコちゃんで頷いた。
「じゃあ由美子ちゃんまた来ますね、今度来るときは写真を持ってきます・・少しお休みしてね」とニコちゃんで言った。
私は由美子の手を取って感動していた、その強い温度の揺れを感じて。
『由美子・・良かったね、シオンとお話できたね』と優しく言った。
《うん・・シオンちゃん、感じてくれたよ、次の時はお話できそう》と由美子が嬉しそうに返してきた。
『そうだね、凄いねシオンは・・由美子、お休み・・また明日』と笑顔で言った。
《お休み、小僧ちゃん》と言って静かになった。
私はシオンと祖母に挨拶をして、病室を出た。
シオンは最高ニコちゃん継続で、手を繋いできた。
私は繋いだ手だけでシオンに言った、《楽しそうだね、シオン》と伝えた。
「えっと~・・嬉しそうかな?・・楽しそうかな~?」とニコちゃんで私に聞いた。
『楽しそうだねって、聞いたんだよ・・凄いなシオンは』と笑顔で言った。
「間違ってなかったの・・由美子ちゃんの気持ち、少し分かったよ」と驚いて言った。
『間違ってないよ・・シオンはマリアの伝達を、言葉だけで理解してないよね。
多分、自分も知らない内に、他の何かで感じてるんだね。
でもねシオン、それが何かを考えなくて良いよ。
考え過ぎると、消えてしまう事があるからね。
今のまま自然に任せていれば、すぐに由美子の言葉も入ってくるよ。
そしてシオンの気持ちも伝えられるから、そうしてね・・シオン』
私は最強ニコちゃんシオンに、笑顔で伝えた。
「はい、先生・・シオン本当に毎日が楽しいです、マキも側にいてくれるし」と笑顔で言って、車に乗った。
「先生・・シオンこのまま帰って準備するから、絵をTVルームに持って行って下さい」とシオンが言った。
『了解・・自慢したいんだね~・・シオン』と二ヤで言った。
「はい・・自慢したいです~・・それと先生、今度リアンを由美子ちゃん会わせてね。
リアン、迷ってるみたいで・・会いたいみたいだけど。
リアンは、北斗さんに対する想いが強いから。
由美子ちゃんと向き合えるかと思ってるみたいで、今は迷ってる感じなの。
でもリアンは心から会いたいと願ってる、先生しか背中を押せないよ。
よろしくね・・先生」
シオンの言葉が優しい歌声で響いて、私は自然に笑顔になった。
『了解、シオン・・でもねシオン、背中を押すのは俺じゃないよ。
それはマキにやってもらおう、俺はリアンと手を繋いで、由美子に会いに行くよ。
シオンは感じてるだろう、リアンのマキに対する感情を。
シオンが海外に行ってる時に、リアンの心を支えられるとしたら。
それは俺でもユリカでも蘭でもない、マキだと思ってるよ。
だからリアンに対する問いかけは、マキに任せよう。
俺は出来ると信じている、マキなら・・リアンの心に問いかける。
熱には熱で・・愛には愛で応える2人だからね』
前を見てニコちゃんで運転するシオンに、笑顔で言った。
「はい、先生・・シオン、嬉しいです・・マキがリアンと仲良くなってくれて」と微笑んだシオンを見ていた。
美しい微笑が、シオンの今までと違う魅力を出していた。
私は橘通りで車を降りて、靴屋で蘭に紙のケースを見せて、満開蘭に手を振った。
PGに歩いていると、腕を組まれた、私はその熱に驚いていた。
輝きを発散して、カスミが微笑んだ。
『カスミ・・楽しかったみたいだね、甘えてきたな』と二ヤで言った。
「うん・・おかんに甘えてきたよ、おとんとも和解できた気がするよ」と笑顔で返してきた。
『了解・・飛び級試験を用意するよ』と笑顔で返した。
「お願いするよ・・私はカスミが好きになってきたよ」と言ったカスミは、強く輝いていた。
終わりの無いカスミの覚醒が始まっていた、私は自分に言い聞かせた。
俺は想像力の乏しい人間だと、自分に確認させていた。
カスミとTVルームに入った、マダムとユリさんがいて、マリアはお昼寝中だった。
カスミが挨拶をして、お土産の辛子明太子をマダムに渡した。
「カスミちゃん、良かったですね・・輝きが増しましたよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ありがとうございます・・自分で感じています、充実してる事を」と輝く笑顔で返した。
「飛び級試験、一科目目は何かしら?」とユリさんが私に薔薇で微笑んだ。
『一科目目は・・過去との和解です、自分の言葉にして伝えてもらいます。
カスミの熱い言葉で、絶対に誤魔化しの出来ない相手に。
まずはお見せします、シオンも自慢したいと言っていましたから。
裏表の無いシオン・・それを間近で見て描いた、沙紀はこう見ました。
これが沙紀の見た、シオンです』
私は紙のケースからシオンの絵を出して、テーブルに置いた。
静寂が包んでいて、暖かい波動に包まれていた。
「まさにシオンですね・・左の寂しそうなシオンが、もう一人のシオンですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「右は近い将来のシオンなのか・・素敵過ぎるよ、この絵も沙紀も」とカスミが呟いた。
『そう・・沙紀は本質を描く、だから最初のモデルはシオンにした。
シオンは裏表が無い、数少ない大人だからね。
沙紀はそれを感じた、シオンが子供の頃の気持ちを素直に伝えたから。
だからこの絵になった、過去から未来に目を向ける。
そのシオンを描いた・・沙紀の気持ちを込めて、エールを詰め込んで。
だからこそ、沙紀の目の前に座るモデル第二段は、プロのモデルにやってもらう。
その時には、カスミに話をしてもらう、子供の頃からモデルになるまでを。
沙紀の前では嘘はつけない、沙紀に話すという事は、自分に語りかけるという事だから。
そして由美子に会ってもらう、カスミの輝きを見せたい。
カスミはその輝きで伝えて欲しい、生きる事は素敵な事なんだと。
由美子に憧れを持たせてやって欲しいんだ、俺はカスミなら出来ると信じてる。
飛び級第一試験は、過去との和解、後悔との決別・・そして永遠の憧れの本質を問う。
試験管は最強の少女・・沙紀と由美子。
どうするカスミ、辛い試験だよ』
私は美しい真顔のカスミに、最後は二ヤを出して言った。
「もちろん受けるさ・・最も重く、意味のある試験だから。
私は完敗したんだ・・自分は強い心を持っていると、自負してきた。
でも完全に敗北した、清々しい程に・・美由紀に完敗した。
そして今のエースの言葉で分かったよ、両親と和解しても足りないんだね。
和解すべきは、あの頃の自分なんだな・・それを後悔する心なんだな。
そうしないと、背中すら見えて来ない・・私が今、憧れ続ける。
美由紀の精神世界の扉すら見えない、自分を本当に愛せないと駄目なんだ。
後悔を背負って進まないと、目を逸らしていては絶対に辿り着けない。
五天女や蘭姉さんのような、真の意味での美しさを手に入れられない。
OK・・試験を受けるよ・・そして必ず合格点を貰う。
北斗姉さんのように・・カスミと言う源氏名に、誇りを持っているから。
マキのように・・将来、自分の子供に自慢話をしたいから」
カスミは熱い想いを一気に吐き出した、私は嬉しくて笑顔で聞いていた。
『OK、カスミ・・リアンがマキを認めたよ。
そしてもちろん・・カスミを認めてる、今の流れるような言葉で確信したよ。
リアンとカスミとマキ・・その無変換の言葉。
愛には愛で応える女・・情熱3姉妹、それに成りうるカスミとマキ。
期待してるよ、カスミ・・俺もリアンも』
カスミの嬉しそうな顔を見ながら、笑顔で伝えた。
「最高だよ・・絶対にそこまで辿り着くよ・・だから今から付き合え、瞑想の場所に」とカスミが微笑んだ。
「情熱3姉妹ですか・・リアンが喜ぶでしょうね、エースの付けた称号ですから」と薔薇で微笑んだ。
「確かに、熱の種類は違うが・・情熱3姉妹だよ、もう少しだなカスミ」とマダムが微笑んだ。
カスミは嬉しそうに2人を見て、輝く笑顔で強く頷いた。
私はカスミに腕を組まれて、光射す場所に出た。
夏の輝きを押し返して、カスミが発光していた。
充実感を漂わせて、無変換の言葉を得て・・愛を表現しようとしていた。
沙紀の描いたシオンの絵、それを最も喜んだのはリアンだった。
リアンはシオンを心から愛していた、歳の離れた妹を。
シオンが憧れだったんだ、私にとって・・シオンの心が憧れだった。
私は20年以上シオンと暮らした、だけども一度も傷つけられなかった。
その心は優しさに包まれていた、私はシオンに守られていたんだよ。
リアンが酔ってそう言った、35歳になったリアン。
女帝の名を汚す事無く、正直に生きていた。
そしてユリカを失った私を、常に側にいて支えてくれた。
その愛は全裸の愛だった、何も隠さずに強く言葉にしてくれた。
私のユリカへの想いを、一番理解していたのもリアンだろう。
リアン・・情熱の女・・その容姿も心も極炎の中にある。
その熱は全てを溶かす、そして新たな芽を育む。
一度全てを焼き払い、そこから作り出す・・それが炎の女。
私は一生燃やし続けるよ、そうすれば・・消さないといけないと感じれば。
必ずユリカが消しに来る・・私の熱は、ユリカの水でしか消せない。
いつか再会できると信じてるよ、ユリカは必ず消しに来る。
それが私とユリカの絆・・火と水の、永遠の絆だから。
リアンはそう言って、美しく微笑んだ。
私もそう思っていた・・いつの日か、ユリカが消しに来ると。
波動にユリカの大きな喜びが、溢れていたから。
その強い想いを感じていたから・・。