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問いかけの権利

時が経てば忘れる事も重要とされる、どんなに時が経っても忘れえぬ想いもある。

証なら覚えておこう、それが存在した証になるのなら。

私は問われている、今でも・・その状況に直面すると、問われている。

その次は?・・それの延長上にある物は?・・そう問いかけてくる。


私は沙紀の描いた蘭の絵を見ながら、沙紀に笑顔を見せて手を握った。

『沙紀・・ありがとう、蘭は絶対に、嬉しいと思うよ』と笑顔で言った。

《蘭ちゃん、また来るよね》と返してきた。

『もちろん、蘭もユリカもまた来るよ』と笑顔で返した、強い波動が来た。

《沙紀も嬉しいよ、ユリカちゃんが、今約束してくれた》と嬉しそうに伝えて来た。

『そうだね、ユリカの約束の空気の波だったね』と笑顔で言った、強い波動が何度も来た。


『沙紀・・関口先生の許可取ったから、今度ピアノを聴きに行こうね』と伝えた。

《沙紀、また嬉しい出た、ピアノ聴いてみたい》と嬉しそうに返ってきた。

『うん、それと今日か明日に、沙紀がその人を見ながら、描いて欲しい人を連れて来るね』と笑顔で言った。

《うん、初めてだね、小僧ちゃんがそれを言うの、沙紀は楽しみだよ》と返してきた。

『うん、沙紀・・楽しみにしててね、裏表の無い大人の人だから、沙紀が感じたままに描いてね』と伝えた。

《分かった、楽しみに待ってるね》と返してきた沙紀を遊戯室に見送った。

ミホは診察なのか、いなかった。

私は沙紀の棚に置いてある、紙のケースに蘭の絵を大切に入れて病室を出た。


由美子の病室に向かうときに、廊下で若いナースに会った。

「小僧ちゃん、学校は?」と二ヤで聞かれた。

『テストだから、半日なのだよ』と二ヤで返した。

「そっか~・・ねぇ演奏会楽しみなんだけど~」と横に並び笑顔で言った。

『婦長に言っといて、土曜の夕方・・夕食後に、外出許可を頂きたいとね』と笑顔で返した。

「了解・・私も行くよ・・楽しみだ~」と嬉しそうに微笑んだ。

『店を見て、転職を考えるなよ・・素質あるからな~』と二ヤで返した。

「有ると思うの~・・嬉ね~」と二ヤで返された。

『素質は充分だよ・・でも、白衣の天使の素質の方が勝ってるよ』と笑顔で言って、笑顔のナースと別れて由美子の部屋に入った。


祖母が笑顔で迎えてくれた、立派な額に入った由美子の絵が飾られていた。

『沙紀も喜びますよ、こんな立派な額に入れてもらって』と笑顔で言った。

「足りない位ですよ・・主人が絵を見て、すぐに買って来ました」と祖母が笑顔で返してきた。

『そうですか・・今からかも、作品が増えますよ』と笑顔で言って、由美子の横に座り手を取った。


『由美子・・起きてるね、ご機嫌かな?』と笑顔で言った。

《うん、沙紀ちゃんの絵が見えるし、遊びに来てくれるから》と元気良く由美子が返してきた。

『そうだね~・・沙紀は由美子が、大好きだからね』と笑顔で言った。

《小僧ちゃん・・由美子、教えて欲しいの・・小僧ちゃんはヒトミちゃんを、絶対に忘れないの?》と由美子が聞いてきた。

私はその真剣な熱が染みてきて、由美子を見ていた、その時に北斗と関口医師が入って来た。


『由美子・・お話するから、由美子は何も言わないで良いよ、聞いてるだけで』と笑顔を意識して言った。

《分かった・・ありがとう》と由美子が返してきた。

私は関口医師を見た、笑顔で私を促した。


『由美子・・俺がヒトミと初めて会ったのは、小学3年生の秋だったんだよ。

 俺もヒトミも9歳で、今の沙紀と同じ歳だった。

 ヒトミは東京の病院から、生まれ故郷の宮崎の病院に転院してきたんだ。

 俺は学校に上がった7歳から、小児病棟に遊びに行ってたんだよ。

 家が近くてね・・夏、涼しくて、冬、暖かいからね。

 それに友達が沢山いて楽しかったから、晩飯食べて家を抜け出していたんだ。

 俺は・・由美子も知ってるけど、お喋りさんだから。

 小児病棟で遊んでる時も、障害や病気の子と楽しく遊びたくて。

 自分の気持ちを伝えたくてね、その時には目で伝える事が少し出来ていた。

 そんな生活をしてる時に、ヒトミに会ったんだよ。

 目も耳も、もちろん言葉も・・体を動かすことさえ出来ないヒトミにね。

 俺はそんなヒトミを、好きになっていたんだよ。

 ヒトミの周りに優しい何かがあったから、毎日ヒトミに話をしてたんだ。

 そしてどうしてもヒトミと交信がしたくて、色々考えたんだよ。

 ヒトミに触れる事が出来るのは、由美子と同じで左手だけだった。

 だから左手を握って話をしてたんだ、ヒトミは多分・・温度で伝えてくれていた。

 でもその時は何も感じなかったんだよ、微かな温度の揺れにね。

 その時ね・・俺は好きな人がもう一人いて、それは幼稚園の時の先生だったんだよ。

 ヒトミに会わせてくれたのも、その先生だったんだ。

 ヒトミのお母さんと、その先生がお友達でね。

 その日・・その先生が結婚するって教えてくれた、俺は寂しくて・・悲しくてね。

 ようするに、失恋したんだよ・・どうにもならない恋だとは、なんとなく知っていたけど。

 そして悲しくてね、でも誰にも言えなかった・・その事は。

 寂しい心のまま・・ヒトミの手を握ったんだ、その時に感じたんだよ。

 ヒトミの温度の揺れをね、ヒトミが最大限の力を出して伝えてくれたんだ。

 俺の寂しい心を感じて、必死で伝えてくれた・・自分がいるってね。

 ヒトミが俺の側に付いてるって・・自分には意思があるってね。

 それを感じた時には、寂しさは忘れてたよ・・嬉しくてね。

 俺はヒトミと話がしたくて、ヒトミの優しさに応えたくて。

 一生懸命に温度の言葉を覚えたんだ、それは・・ヒトミが好きだったから。

 動けなくても、目や耳が使えなくても・・言葉が話せなくても。

 そんな事は関係なかったんだよ、ヒトミの優しさが好きだったから。

 それからヒトミと、沢山の話をしたよ・・俺の事は正直に、ヒトミを好きだと言う事も。

 でもね、ヒトミは体が弱っていた・・由美子と違って、体の限界が近づいていたんだよ。

 俺も関口先生も、それは分かっていた・・ヒトミもね。

 そして俺はヒトミに頼まれるんだよ・・道を教えて欲しいと。

 左手に心を誘って欲しいとね・・もう左手を動かすだけの力しか、残ってないからって。

 俺は考えたんだよ・・由美子・・俺は由美子との約束は守るからね。

 由美子には何も隠さない・・それは、由美子には可能性が有ると信じてるから。

 由美子はヒトミとは違うから、体が全然違うから・・由美子は強いからね。

 ヒトミのお願い・・それをしたら、俺はヒトミの・・残り時間を減らすと思ったんだ。

 俺は正直に、その気持ちをヒトミに言った。

 そうしたらヒトミはこう言ったんだ・・それまでのどんな事より、強く伝えて来た。

 1年ただ寝て生きるより、1ヶ月意思を示して生きたい。

 ヒトミが泣きながら伝えて来た、俺はそのヒトミが愛おしかった。

 その気持ちが流れ込んできて、ヒトミの願いだと強く感じたんだよ。

 だからヒトミのお父さんと、お母さん、関口先生にその事を話したんだ。

 お父さんも、お母さんも・・とっても辛かったと思う・・もちろん、関口先生も。

 両親はずっと考えて・・最後は、ヒトミの願いを叶えて欲しいと言ったんだ。

 俺は嬉しかった・・もちろん辛い事だったけど。

 でもね・・由美子・・俺は嬉しかったんだよ、ヒトミの願いだと思ってたから。

 だからヒトミの心を左手に誘う時に、約束したんだよ。

 俺はヒトミを愛してるから・・どんな事があっても・・忘れないって。

 だからヒトミの体が消滅しても、俺の側にいて見ててくれって。

 ヒトミが側に寄り添って、感じていて欲しいって・・そうヒトミに伝えた。

 ヒトミは約束してくれた・・ずっと見てるって、そして伝えてみせるって。

 ヒトミがどうしても伝えたい事は、どんな手段を使っても、俺に伝えてくれるって。

 そう約束してくれた・・だから俺はヒトミを誘ったんだ、意思を示せる場所に。

 ヒトミが左手に来てから、皆にヒトミの意思を示していた。

 そして体の限界が来て・・ヒトミの体は無くなってしまった。

 でもね・・由美子は知ってるよね、ヒトミと友達になったんだから。

 俺は絶対に、ヒトミを忘れない・・だから今までに、何度も伝えてくれた。

 病院の床から熱で来たり、由美子に出会った時は・・空気の波に乗ってきた。

 由美子・・覚えておいてね、俺はもう少ししたら。

 由美子を一度、左手に誘う・・そうして由美子の体の、筋力を付けたい。

 由美子は絶対に大丈夫・・由美子の強い体を、より強くしてから。

 それから始めようね・・由美子の病気との戦いを、皆で・・全員で。

 北斗もお父さんも、お婆ちゃんも、お爺ちゃんも、関口先生も婦長さんも。

 ナース全員・・そして俺も沙紀も・・全員で戦うから。

 俺は由美子に約束する・・由美子に何があっても、由美子を忘れたりしない。

 そして絶対に諦めない、由美子が治ると信じてる・・俺は後悔してるんだ。

 俺もどっかでヒトミが治らないと、諦めていた事を、俺一人でも信じるべきだったと。

 どんな状況になっても・・俺だけは諦めてはいけなかったと。

 由美子・・俺は諦めない、そして心から信じているよ。

 由美子が治ると信じてるよ・・俺もヒトミも』


私は必死だった、泣かないように必死で伝えた、強い波動が何度も来た。

それに乗り何度も伝えられた、ヒトミの優しい言葉が響いていた。

《私の事で何も後悔しないで・・由美子の事で何も後悔を残さないでね》そうヒトミの言葉が強く響いていた。


《小僧ちゃん、ありがとう、ヒトミちゃんの言うとおりだよ、ヒトミちゃんも嬉しかったんだね》と由美子が優しく伝えて来た。

『ありがとう、由美子・・由美子、忘れないでね・・そして絶対に諦めさせないよ』と優しく伝えた。

《うん、それは出来ないよ、ヒトミちゃんに怒られるから》と返してきた。

『そうだよ・・由美子にはヒトミが付いてる、だから負ける事は出来ないんだ』と笑顔で言った。

《うん、由美子頑張るから、その時は左手に誘ってね》と嬉しそうに返してきた。

『了解、由美子・・少しお休み』と優しく伝えて、由美子の返事を聞いて手を離した。

私は限界を感じて、北斗に微笑んで、そのまま病室を出た。

病院をトボトボ歩き、正面玄関から出た時に、フォルクスワーゲンが入って来た。


ユリカが運転席から降りて、爽やか笑顔で手を振った。

私も笑顔で駆け出した、ユリカの優しさに感謝しながら、守られてる幸せを感じながら。

「ふ~・・意外に元気そうだね」と助手席に飛び乗った私に、ユリカが微笑んだ。

『うん、守られていたよ、ユリアとヒトミに』と笑顔で返した。


「凄すぎるよ・・シズカもマキも、そして美由紀も。

 美由紀の言ったあの言葉・・そんな悲しい問いかけを許されるのは。

 世界中で由美子だけだって言った、あの言葉・・重過ぎるよ。

 北斗姉さんは、あなたを追うことも出来なかった。

 それだけ感動していたんだよ、あなたと美由紀とマキとシズカに。

 自分では語れないと言ったマキ、そして挑戦が始まると、美由紀に言ったシズカ。

 その言葉の重さは・・計り知れない・・無責任な言葉じゃない。

 自分達も覚悟しようと言ったんだね、その確認を自分自身にしたんだね。

 それが小僧に関わる人間の宿命だと、美由紀のように強くなろうと。

 そう自分自身に強く言った・・そんな言葉だったんだね。

 今から蘭を誘おうね・・その絵を受け取るなら、知らなければならない。

 ユリ姉さんも蘭も、当然私も・・沙紀のメッセージの、奥に流れてるから。

 全員で力を合わせようと・・由美子を心から支えようと。

 そう強く言ってると思ったよ・・さぁ行こうね・・次の段階に」


ユリカが静寂を連れて、強く言葉にした、私もユリカを見て強く頷いた。

車を赤玉に止めて、蘭を見てサインを送った。

蘭は私の紙のケースを見て、【了解】【15】と満開で送ってきた。

ユリカが2人分の弁当を買い、笑顔のユリカとTVルームに入った。


TVルームにはマダム・ユリさんと裏方4人組が揃っていた。

ハルカの晴々とした顔が、充実感を漂わせていた。

マリアが賭けてきて、私が抱き上げると、天使全開で充電してくれた。


「今日、学校は?」とハルカが二ヤで聞いた。

『テストで半日・・ハルカ、何おねだりした・・嬉しそうに』と二ヤで返した。

「何もしてないよ・・来年、車買ってくれるって言われただけ」と微笑んだ。

『サーフボード積めるやつにしてね』とウルで返した。

「ミサキがそうするって言ってたよ、今・・日焼け対策研究中だって」と笑顔で返された。


『ミサキは良い子だ・・ねぇハルカ、後でシオンを貸して』と笑顔で言った。

「ちょっと、マダムがいるんだから、マダムの許可を取ってよ」とハルカが真顔で言った。

『何言ってるの・・裏方の時間の内は、ハルカの許可が最重要だよ』とマダムを見て二ヤで言った。

「ハルカ、エースの言う通りじゃよ・・ワシはハルカに任せちょるよ」とマダムが真顔で言った。

「はい!・・ありがとうございます・・それで、用件は」とマダムに頭を下げて、私を見た。

『沙紀に会ってもらう・・シオンを見ながら、描いてもらうんだ』と笑顔で答えた。


「もちろん良いけど・・その意図を、正直に教えて?」とハルカが真顔で言った。


『皆、沙紀の絵を見て感じたと思うけど。

 もうすぐ蘭が来るから見せるけど、その蘭の絵で確信したんだ。

 沙紀は本質を描く、その隠された内面にまで迫っていく。

 だからこそ感じさせたい、裏表の無い大人も存在すると。

 それを感じれば、沙紀は考える・・なぜ裏表があるのかと。

 沙紀にそこまで行ってもらう、考えて欲しいんだ。

 そしてシオンには、嬉しくて泣けない状況で感じて欲しい。

 沙紀に伝えて欲しいんだ、シオンの心を。

 シオン・・描かれてる時に、沙紀にお話をしてあげて。

 普通と見られないで、子供の頃にどう感じていたのか。

 それを正直に、シオンの言葉で伝えて、シオンにしか出来ないから。

 シオン・・シオンにとって卒業試験、第一弾だからね。

 その頃の自分と向き合って、誤魔化しは絶対に通用しない相手だよ。

 沙紀はシオンの全てを感じるからね、出来るよね・・シオン』


真剣な美しいシオンの顔を見ながら、真顔で言った。

「先生・・出来るよ・・伝えるよ、シオンの気持ちを」とシオンがニコちゃん笑顔で言った。


『うん、ありがとうシオン・・そして、レンとハルカとマキ。

 今ここでお願いするよ、手を貸して欲しいから。

 沙紀と由美子に対しては、どうしても協力が必要だから。

 その時が来たら、お願いします・・その心を伝えて欲しい』


そう3人の真剣な顔を見て、真剣に言って頭を下げた。

「もちろん良いよ・・私達も、それが望みだよ」とレンが美しく微笑んで、ハルカとマキも笑顔で頷いた。

「ワシも、してやれる事は協力するぞ」とマダムが笑顔で言った。


『それもあるんです・・今週の土曜の夕方に、演奏会をしたいんです。

 ミホと沙紀と美由紀を呼んで、聴かせてやりたい。

 あの心に直接響かせる、それが出来る・・久美子がいるから。

 そしてペダルが踏めないと諦めた、美由紀にも感じさせたい。

 そんな事は些細な事だと、本気で何かを表現したい時には、必要無いんだと。

 ミホと沙紀の外出許可の条件は、病院関係者で聴きたい人、全員の受け入れです。

 土曜で忙しいですが、開店に支障ないように準備します。

 マダム・・第一回演奏会の許可を願います』


マダムを見ながら真顔で言って、頭を下げた。

「許可するよ・・4人組も準備に気を配るように、第一回だからの」とマダムが笑顔で言った、私と4人組が笑顔で頭を下げた。

その時に蘭が満開で入って来た、挨拶をして私の横に座った。

私は笑顔でケースを渡した、蘭は少し緊張した表情で絵を取り出した。

テーブルの上に絵を置いて、俯いて震えながら泣いていた。


「素晴らしいですね・・確かに本質を描いてます、蘭の理想とする世界ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「そうじゃね~・・青を炎としなかった、海としたんじゃね・・素晴らしいよ」とマダムが笑顔で言った。

「そして、今の蘭の心に深く存在する・・イルカまで辿りついている」とユリカが爽やか笑顔で言った。

蘭はただ俯いて頷いていた、その背中が嬉しそうだった。


「私から皆さんに話しておかねばならない事が、今日また発生しました。

 今日のエースが由美子に伝えた話を、それを聞いて感じたんです。

 マキとシズカと美由紀の凄さを、改めて感じました』


ユリカが美しい真顔で、全員を見回した。

「ユリカ・・お願いします、大切な話を」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


「今日・・エースは由美子に問われました。

 ヒトミを忘れないのかと・・エースは正直に話しました。

 美由紀の言った、世界中で由美子にしか出来ない、悲しい問いかけの答えを。

 エースは・・・・・・」


ユリカが静かに話していた、全員が真剣に聞いていた。


「そう由美子に伝えて、エースは病室を出ました。

 私は感じました、そしてマキとシズカの言葉を思い出した。

 2人は、自分自身に対して、覚悟をしたのだろうと感じました。

 エースに関わる以上、避けては通れない現実・・それに対する自分の覚悟。

 美由紀は既に出来ている、いえ・・美由紀は常時出来ているんでしょう。

 私達も、それを自分自身でしなければならない、そうしないで関わったらいけない。

 由美子に対しては、どんな状況になろうとも・・最後まで信じる。

 そして結果を恐れない・・その終着点の悲しみに、翻弄されないように。

 強い意志を、自分に植え付けないといけません。

 生命と向き合うのなら・・自分と向き合ってからだと感じました」


静寂を連れた、ユリカの強い言葉が響いていた、全員がその言葉を噛み締めていた。

「ありがとう、ユリカ・・皆それぞれでやりましょう、自分らしく」とユリさんが真顔で言った。

「はい」と蘭と4人組が静かに返事をした。

「先生・・私は今のままで良いんですか?・・由美子ちゃんに会って?」とシオンが真顔で聞いた。


『シオン・・シオンは今のままで良いんだよ。

 シオン・・シオンの物事の整理の仕方は?

 嫌いな物は?・・蛇は嫌いなの?』


私は笑顔でそう聞いた、シオンはニコちゃんに戻った。

「シオン・・嫌いな物は無いよ。

 蛇は嫌いじゃないよ・・怖いんだよ。

 好きの中の怖いだよ・・そうなんだよ、先生」


ニコちゃんシオンが微笑んだ、私も笑顔で頷いて立ち上がった。

シオンがマダムに挨拶をして、立ち上がって私の側に来た。

「さて、いよいよシオン覚醒第二弾だね・・うかうかしてると、背中が見えなくなるよ」と蘭が満開二ヤで言った。

「好きの中の何かに・・感動してる場合じゃ無かった」とレンが微笑んだ。

「セリカさんも見に行かないと、銀河よりも怖い気がする」とハルカが微笑んだ。


『明日のローズ・・期待してるよ、マキに押されるなよ』と二ヤで言った。

「私にも昨日リアンから電話がありました、マキは今までで一番期待できるとね」とユリさんが薔薇二ヤで言った。

「えっ!・・あのリアン姉さんが、仕事で人を褒めたんですか」とハルカが驚いてマキを見た。

「褒めざる得なかったね・・私でも驚いたよ、その接客は」とユリカが微笑んだ。

「エース・・最後にその凄さを、述べよ」とレンが真顔で言った。


『もちろん、本当に重要な部分は言えない。

 マキが自分で感じていく事だと思うから、俺が思った事は。

 マキはやはり今までと違う、相手に対して仲間意識すら芽生えさせる。

 男同士の気を使わない相手のように、その容姿だけでない会話も駆使して。

 その魅力は・・表現できないよ、ただ強い力にはなるだろうね。

 でもまだ船出もしてないんだから、未知数だよ。

 ただ、ユリカもリアンも・・その言葉に、嘘は無いよ』


私は笑顔で言って、ニコちゃんシオンと腕を組んだ。

真剣なレンとハルカに二ヤを出して、空の紙ケースと勉強道具を持った。

満開蘭に見送られ出かけた、光降り注ぐ場所に。

通りに出て、シオンが車だったので、駐車場を目指した。


『ご機嫌ですね~・・シオン』と笑顔で言った。

「沙紀ちゃんに会えるんだもん、私を描いて貰えるんだよ・・嬉しいです、シオン」と最強ニコちゃんで腕を引いた。


私も笑顔で歩いていた、シオンの喜びが伝わる温度を感じながら。

沙紀と由美子の嬉しいを感じながら、夏の主張が強い、光射す場所を。

純白の心に手を引かれて、待っている嬉しいに向かって・・。


美由紀の言った言葉、確かに真実を表現していた。


私は今でも結論が出せない、それで良かったのか?


その問いかけの答えを出せていない、いや・・今では答えを求めなくなった。


それがヒトミの願いだった、それだけが真実だと思っている。


それに付随して発生した現実は、重要じゃないと教えられた。


由美子が、その生き方で教えてくれた、その強い心で訴えてきた。


私は由美子をどこまで書こうか、それだけを今考えている。


夏物語の終着駅は出来ている、しかし由美子の部分だけ迷っている。


伝えるべきだと感じながら、それでも迷宮に入ってしまう。


人はなぜ産まれたのか?どうして悲しみを覚えてのか?


その本質に迫って行く、由美子の生き方・・それは激烈なものだった。


由美子は、答えを探していたのだろうか?


そうじゃなかった・・今はそう思える・・由美子の求めたもの。


それは・・やはり【愛するとは何か?】だった・・そう確信している。


読まれた方の想像にお任せした、由美子の夏物語以降。


それを続編で登場させます、東京物語を書こうと思います。


由美子の事で、まだ迷ってるから・・ヒトミが逃げるなと、怒ってくれるから。

  

 

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