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後悔の通訳

夏の陽が降り注ぐ小部屋、希望でも夢でもなく目標を掲げた。

そうであって欲しいと願っていた、そして信じようとしていた。

少ない可能性を追い求め、絶望的な実績を捨てる決意を示していた。


「由美子ちゃんは、どうなのかな?・・今は体力は十分だと思うけど」と関口医師が言った。

『問題ないでしょう・・沙紀には話しときました、一度に長時間は駄目だと』と笑顔で返した。

「沙紀ちゃんの、自主性に任せるんだね?」と関口医師が真顔で言った。

『はい・・ナースの皆さんが気にかける程度で、大丈夫だと思います』と答えた。

「了解です・・引継ぎしときます」と婦長が微笑んだ。


私は蘭と立って、6人に挨拶して、北斗に今から由美子に蘭を会わせると告げた。

蘭が北斗に満開で微笑んで、北斗も笑顔で返した。

部屋を出て、由美子の部屋の前で蘭を見た。

満開に微笑んで頷いた、私は二ヤで返してドアを開けた。

入った瞬間に、蘭は大丈夫だと思って、由美子の方に歩いて行った。


由美子は起きてるようで、左手が少し動いた。

『由美子・・おはよう、今日も起きたね』と左手を握り笑顔で言った。

《小僧ちゃん、おはよ、今日も素敵な人連れてきたのね》と由美子が返してきた。

『うん、蘭ちゃん・・由美子に会いたかったんだって』と笑顔で返して、蘭の手を握らせた。

蘭は満開で微笑んで、左手を握り、自己紹介をしていた。

私は少し下がって、丸い椅子に座って2人を見ていた。


蘭は青い炎を出して、優しく語り掛けていた。

由美子も蘭を受け入れたらしく、優しい空間が出来ていた。

北斗と祖母が帰ってきて、ソファーに招かれた。

私はソファーに座って、北斗が見ている絵を見ていた。


「最高の贈り物だったよ・・本当に嬉しかった」と北斗が微笑んだ。

『そうだね・・素敵な絵だよ』と笑顔で返した。

「後で額を買ってきましょう、そして部屋に飾らないと」と祖母が嬉しそうに言った。

『由美子・・血色が良くなったね、少し楽しみが出てきたかな』と由美子を見ながら呟いた。

「来週から・・温度の会話の初期講座、よろしく」と北斗が微笑んだ。

『了解・・マリアでやろう』と笑顔で返した。

「マリアは出来るの!」と北斗が驚いた。

『マリア・・凄い子供なんだよ、もう少し由美子が慣れたら、マリアに会わせるよ』と返した。


「楽しみだよ・・そっか~、マリアは出来るのか~」と北斗が嬉しそうに由美子を見ていた。

「ヒトミちゃんは、最初から出来たのかしら?」と祖母が笑顔で聞いた。

「多分・・出来てたんだと思います、俺が分からなかっただけで」と笑顔で返した。

「由美子もすぐに出来たし、沙紀ちゃんも出来た・・日本語なのかな?」と北斗が聞いた。


『感覚的には、何語でもないよ・・アメリカ人とも少し出来たし。

 俺は説明出来ないから、原始の伝達方法と言ってる。

 人間が言葉を持つ前の、今の動物達がしてる、コミニケーションみたいな感じ。

 多分誰もがDNAには持ってると思う、必要なくて使わないから。

 退化してしまったんだと・・でも由美子や沙紀は言葉を使えないから。

 その部分が発達したんじゃないかな、産まれたばかりの乳児は使えるよ。

 言葉を持たない時代は、多くの乳児が使っている。

 母親に伝えるために、泣くのもその中の一種類だと思うよ。

 だから難しくなるんだ・・泣くという行為がね。

 嬉しいで流す涙を、由美子も沙紀もまだ理解できない。

 悲しい事だと思ってしまう、だから北斗や沙紀の母親にも言ってるんだ。

 今は嬉しい涙は見せないで欲しいとね、由美子は北斗の涙を見ると混乱する。

 北斗を愛しているから、だから嬉しくて泣いたとしても。

 その部分を出さなくなるんだ、北斗を悲しませないようにね。

 そうなってしまったら、中々戻らないんだよ。

 今からは変化が激しくなって、大変だろうけど・・北斗頑張ってね。

 俺もさっき、その絵を渡されて・・危なかったよ。

 嬉しいを伝え終わるまで、頑張ろう・・そしたら堂々と、嬉しくて泣けるからね』


北斗と祖母の笑顔を見ながら、笑顔で伝えた。

「了解・・頑張ってやってみるよ」と北斗が微笑んだ。

「私が一番気を付けないと・・涙腺が緩いから」と祖母も笑顔で言った。

その時に蘭が私を見て、満開で頷いた、私は蘭と交代した。


『由美子・・沢山お話したね・・疲れてないかな?』と笑顔で聞いた。

《大丈夫、素敵な人だね、ヒトミちゃんが言った通りだった》と由美子が伝えてきた。

『ヒトミが教えていたんだね、仲良しだね』と笑顔で言った。

《うん、仲良しだよ》と返してきた。


『由美子・・沙紀が由美子の所に遊びに来るから、お話してね。

 でも一度に長い時間は駄目だよ、由美子は今から病気を治す力がいるからね。

 由美子が出来るのなら、沙紀のプレゼント見せてあげるよ』


由美子の喜びを感じながら、笑顔で伝えた。

《約束するから、見せて》と由美子が返してきた。

私は北斗に絵を持ってきてもらい、北斗を由美子の前に座らせた。

そして北斗に由美子の手を握らせて、目を閉じて手だけに集中してと言った。

北斗は真剣な顔で頷いて、瞳を閉じた。

私は北斗の握ってる由美子の手を上から握り、由美子に伝えた。


『由美子・・沙紀が描いてくれたよ、これが由美子なんだよ』と言って、顔の前に絵を広げて見せた。

「あっ!」と北斗が叫んで、私は北斗を見た・・北斗は固まっていた。

蘭が静かに近づいて、北斗を誘って廊下に出て行った。

私は由美子の手を握り、笑顔で由美子を見ていた。


『由美子の嬉しい、見つけたよ』と優しく言った。

《嬉しい、沙紀ちゃんが描いてくれた、由美子、嬉しい》と返してきた。

『うん、部屋の由美子が見える所に、飾ってもらうからね』と笑顔で言って。

『由美子・・少しお休み、後で沙紀が来ると思うから』と優しく伝えた。

《うん、おやすみ、小僧ちゃん》と由美子が返してきて、静かになった。

私は祖母に笑顔で挨拶をして、廊下に出た。


長椅子で蘭に抱かれて、北斗が泣いていた。

『嘘じゃなかったでしょ、さすが北斗だよ・・一回で感じるんだから』と笑顔で言った。

「感じたよ・・はっきりと、由美子は生きてるね」と北斗が泣きながら微笑んだ。

「生きてますよ、元気に・・私もそれだけは感じました」と蘭が満開で微笑んだ。

「ありがとう、蘭・・エース・・私は最高に嬉しいよ」と北斗が微笑んだ、美しい顔で。

落ち着いた北斗と別れて、病院を出てケンメリに乗った。


「本当に大切な事を感じたよ・・私も嬉しかった、ミホも沙紀も由美子も」と満開で微笑んでエンジンをかけた。

『3人もそう思ってるよ・・久美子の段階を上げてやる、久美子が本気で伝える響きが聴きたい』と二ヤで返した。

「楽しみだね~・・絶対に凄いよ」と満開で微笑んで、南に進路を向けた。

懐かしい蘭と行った、日南に進路をとった。

蘭の目には迷いは無く、喜びに溢れていて、私も爽快な気分になっていた。


海沿いの日南海岸を走って、日南市に入ってすぐに右折をした。

そして城下町【飫肥】に入った、新しい建物も、デザインを城下町風に統一されていた。

飫肥の中心街を少しそれて、小道を入ると、大きな家の敷地に入った。

蘭は庭の軽トラの横にケンメリを止めた、庭で大柄のオヤジがコンバインを整備していた。

蘭が降りて私も続いた、コンバインの方に歩いて行った。


「おう・・珍しい娘が、また綺麗になったな」とオヤジが笑顔で言った。

「前から、綺麗よ・・ただいま」と蘭が笑顔で言った。

「この子は、夜の店で一緒に働いてる・・小僧ちゃん、飫肥に来たことないって言ってたから」と蘭が私を紹介した。

『小僧と呼ばれています、よろしくお願いします』と笑顔で言って近づいて、ボルトを締めているシャフトを押さえた。

「機械が好きなんだな」とオヤジが笑顔で言った。

『三度の飯の次に』と笑顔で返した。


「一年に一度しか使わないから、痛みが激しくてな~」と言いながら、額に汗を流してボルトを締めた。

蘭は私達を見て、満開笑顔になって家に入っていった。

『稲刈りだけなんだ~・・なんかもったいないね』とシャフトを回しながら笑顔で言った。

「策略だよ、農機メーカーの・・そうしないと奴らも食えんかいな」と二ヤで返してきた。

『なるほど~・・暴利を貪るんですね』と二ヤで言った。

「あこぎな商売だよ、農協もそれで金を貸して、金利を取るんだからな~」とオヤジが少し強めに言った。

『お米は儲からないの?』と少年らしく聞いてみた。

「米なんて金にならんよ、作るの減らせと国は言うしな・・先行き暗いよ」と笑顔で返してきた。


ジャッキで反対側を持ち上げて、中を覗いた・・綺麗に整備されていた。

『オヤジさん、機械が好きですね~・・綺麗に整備してある』と笑顔で言った。

「三度の飯の次にな」と笑顔で返された。

『なんで、給食はパンなんだろう・・米の方が腹持ち良いのに?』と疑問を言ってみた。

「敗戦国だから・・パンは小麦で作る、その小麦はアメリカから輸入するんだよ」と真顔で返してきた。

『やっぱり駄目だな~・・勉強ばかりした奴とか、その家に生まれたからなんて奴が、政治家だから』と二ヤで言った。

「ほう・・面白いね~・・小僧ちゃん」とオヤジが嬉しそうに笑った。

『ちゃんはやめてよ、オヤジちゃん』と二ヤで返した。

2人で笑っていた、蘭父さんの安心感に包まれて、私は好きになっていた。


2人でファンベルトを交換しながら、オヤジが笑顔で言った。

「例えば、お前ならどうする・・小麦を強引に買わされたら」とオヤジが聞いた。

『断れないなら・・大きな貸しを相手に付ける、まぁ相手の将来性の見極めが肝心だけど』と二ヤで返した。

「ほう、それで」とオヤジが楽しそうに、ベルトを交換しながら聞いた。

『そいつが、一段階上がったら、さも自分が小麦を買ってやったからと意識させる』と笑顔で返した。

「よしよし、そこで行かないんだな」とオヤジが二ヤで聞いた。

『必要に迫られない限り、そこでは行かないよ』と二ヤで返した。

「よし・・続き」と促した、蘭と似てるな~と思っていた。


『次の段階に上がった時に、貸しを返してもらう・・少なくても倍以上で。

 その貸しが次回またこっちに来るけど、その次があるからOKだと思ってね。

 だって国と国がやることなら、自分の報酬には響かないって設定が基本だけど。

 まぁ裏で金が動いて、自分も潤うんだろうけど・・そこで問われるんだよね。

 金に負ける奴は話にならないよ、億万長者になって何がしたいのって思う。

 自分を曲げて得た金で、本当に楽しめるのかって思うんだよ。

 金にも権力にも屈しない、その精神力の勝負なんだと思う。

 交渉ってそういうもんだとね、日本人はどこかで主張しない事を美徳としてる。

 騙されてるんだよ・・統制するのにその方が楽だから。

 でも今はそんな、カリスマ性のある政治家はいないと思うんだ。

 全体を統率して、良い方に導くなんて理想を持ってる人は。

 だいたい理想を持ってるのかさえ、疑問に思う奴が多いから。

 国際舞台で交渉するのが、そんな政治家や公務員じゃ駄目だよ。

 相手はプロ中のプロが来るんだから、信頼とか信用なんてする奴は論外だよ。

 ヤクザの金庫番かなんかをスカウトしてやらせれば、相当の利を上げてくるよ。

 国益を声高に叫ぶのなら・・交渉のプロを育てて。

 CIAを作らないと駄目だね、良い人じゃ国益は損なわれる。

 泥水を飲んでも、笑ってる奴じゃないと駄目だね。

 戦争をするんじゃない・・国益を守る戦いなら、悪徳にやらせるんだよ。

 なんて・・子供の考えは・・笑えるでしょ』


楽しそうに聞いているオヤジに、最後は笑顔で言った。

「面白い・・気に入った、ビール飲めるのか?」と私の肩に手を置いて、笑顔で言った。

『13歳だから・・飲めます』と二ヤで返した。

「交渉人になれよ・・その顔なら、やれるだろ」と笑顔で言って、納屋に2人で歩いた。

納屋の小さな冷蔵庫を開けて、ビールを差し出した。


『ありがとう・・秘密の場所に、ごっそりと有りますね~』と二ヤで言った。

「特権だよ・・農家の特権、汗かいたらビールを飲むのは」と笑顔で返してきた。 

『良いな~・・うちの親父大工だからな~』と日陰に座ってビールを飲んだ。

「良いな~・・大工、憧れたな~」と私の口調を真似て、オヤジが言った。

『やっぱり、家業を継ぐときに、悩んだんだ~』と二ヤで聞いた。


「今の時代なら・・悩んだろうな、あの当時は農家で良かったと思う、時代だったからな」と懐かしそうに言った。

『そっか~・・終戦の混乱期だからね』と笑顔で返した。

「混乱期は、ガキの頃・・そんなに歳じゃないぞ」と口調だけ怒った。

『物作りが好きだもんね~・・オヤジさん』と笑顔で返した。

「農作物を作ってるから、特にな・・形あるものを残したいと思うよ」と笑顔で言った。

『確かに・・うちの親父も台風の後は、手がけた家を見て回ってるよ』と笑顔で返した。

「大事な事だよ・・仕事に誇りを持つのは」とオヤジも笑顔で言った。


「1つ聞いて良いかな?」とオヤジが2本目のビールを開けて言った。

『難しくない事なら』と笑顔で返した。


「お前がもし、農家の息子で・・親にも他人にも、上手く自分の気持ちを言えない人間で。

 頑固親父に家業を押し付けられて、農業高校に行かされたら。

 そこで人生が終わったら・・後悔すると思うか?・・自分の人生を」


オヤジが前を見て言った、私は亡くなった息子の話だと気づいていた。


『するね・・絶対に後悔する・・主張しなかった自分を。

 もし生きていても、嫌々始めた仕事に生きがいを見つけたら、その時に後悔するよ。

 どうしてあの時に、言えなかったのかとね。

 農業をやって良かったて、言えなかったかと・・後悔する。

 後悔って・・やった事にしか出来ないと思う、やれば良かったなんて言い訳だから。

 親に逆らえなかったとか、主張を出来なかったとか・・全て自分の問題だから。

 嫌なら・・本当にやりたいことが有るなら、俺は生家を出ると思う。

 内気だとか、人付き合いが苦手とかは・・自分で克服していくものだから。

 高校生じゃ出来なくても、働き始めたら出来るよ。

 本当に自分のやりたい事があればね、どんな人間でも出来るよ。

 後悔って・・やった事に対してだから、後悔するのなら。

 主張を出来なかった自分に対して、後悔するんだと思う。

 実は俺も親父と喧嘩して、今家を出てるけど。

 親に対してとか、他人に対してとか・・大きく言えば社会に対してとか。

 そんな不満は実は無いんだよ、でも近くにいるから・・ぶつかってしまうんだ。

 不満の全ては自分に対してなんだよ・・未熟で、何も持たない事が怖いんだよ。

 将来なんて漠然としてるし、幸せの意味すら分からない。

 やりたい事を探したいけど、それが本当にやりたい事かも分からない。

 そんな時代なんだよ・・物が豊富に有って、選択肢も無限にある。

 幸せな事だけど・・当事者には、不幸な事でもあるんだ。

 見えてこない・・選択肢が多すぎて、覚悟が出来ない。

 これで良いのかと・・常に迷いを抱えてる・・そんな季節なんだ。

 親が何を言おうと・・そんなのは関係ないんだよ。

 次の季節が来たら、多分・・他の何かが、自分の中に産まれると思ってる。

 どんなに内気でも、主張が出来なくても・・今を精一杯生きてるんだよ。

 子供には避けられない・・子供の世界がある。

 高校に行ってる以上・・何か楽しみがあったはず。

 心の中に、好きな女の子もいて、その子の姿を見るだけで楽しかったし。

 親に押し付けられたと自分に言い訳してるけど、本心は違うんだよ。

 いつかオヤジに、正直に言おうと思ってたはず。

 俺はそんなに嫌じゃなかったよ、本当は嬉しかったよって。

 だから高校にも行ったし、家業も継ごうと思ったんだと。

 その先が分からないなら・・良い方に想像しようよ。

 そうしないと・・怒ってるよ、若くして亡くなった息子さんが。

 親父は俺の事、そんな風に思ってるのかって・・怒られるよ。

 俺は確信的に思う・・俺がその立場になって、陰から見守る立場になったら。

 親父のその姿が・・一番の後悔になる・・どうして俺は伝えなかったんだと。

 親父がこんなに悩んでるじゃないかと、自分を責めてるじゃないかと。

 その親父を見て・・後悔する・・どうして言わなかったんだろうと。

 俺は親父が好きだって・・どうして言葉に出来なかったのかと思うよ。

 俺はそう思うよ・・13歳だから・・俺はそう確信してる』


私は思ったままを言葉にした、感情的な自分を静めようともしなかった。

ユリカの強烈な波動が何度も来て、後押ししてくれた、オヤジは静かに聞いていた。

気づくと玄関に泣いている母親を抱いた、蘭が私を見ていた、涙を流し満開で頷いた。


「小僧・・ありがとな、お前は凄いよ・・心に響いた・・そうだよな、後悔ってそうなんだよな」とオヤジが私を見た。

『そうだと信じてる・・酔ってないよ、もう一本』と二ヤで言って、冷蔵庫を開けた。

「全部飲んでいいぞ・・特別サービスや、他に欲しいものあるか?」とオヤジが笑顔で聞いた。


『娘さん・・俺がきちんと仕事をして、幸せに出来る男になったら・・10歳年下を、反対しないで』とウルで言った。

「よし!・・約束する・・その時を心待ちにするぞ」とオヤジが強く言った。

『出来るだけ早く・・お孫を見せます』と笑顔で返した。

「孫か~・・楽しみだよ・・頑張れよ、さぁ泣き虫母さんを紹介するよ」と笑顔で立った、私も笑顔で立ち上がり玄関に歩いた。

母親が笑顔になって頭を下げた。


『すいません・・聞いていなくて、お姉さんがいるなんて知らなかった』と笑顔で言った。

「あら~・・良い子ね~、早く息子になってね」と母親が笑顔で言った。

『妹さんは、お姉さん似ですね』と二ヤで返した。

「そうなのよ・・調子には乗りますよ」と笑顔で言って、家に案内してくれた。


応接間の大きなテーブルに、豪華な料理が並んでいた。

『親不孝娘が久々に帰ってくると・・何かと大変ですね~』と母親に笑顔で言った。

「こら!・・家出中の人間が言わないの~」と蘭が満開で微笑んだ。

「大変なんだよ・・娘は難しくて」とオヤジが手招きながら言った。

『お父様・・良い方法を伝授しますよ』とオヤジの向かいに座り笑顔で言った。

「お!・・良いね~・・よろしく頼むよ」とオヤジが笑顔でビールを注いでくれた。

『でも・・貸しですよ、かなり大きな』と二ヤで言った。

「ならやめとく・・それで娘を取られたら、かなわんから」と笑った。

『もったいない・・惜しいことを・・聞くなら最後のチャンスですよ~』とウルで言った。

「残念だが・・ワシは信頼も信用もせん、交渉のプロだよ」と笑顔で言った。

『私としたことが・・話の順番間違えました~』とウルウルで返した。

オヤジも母親も蘭も楽しそうに笑っていて、私も嬉しかった。


楽しい食事が始まり、私も笑顔で食べていた。

蘭が聞かれるままに、私の事を話していた、私は茶化して笑いを取っていた。

蘭が今日の病院の話をして、ヒトミの話をした。

両親が真剣になって、私を見た。


「子供相手なら・・出来るの、まだ1歳だけど」と母親が言った。

『過度な期待はしないで下さい、でも会ってみたいですね』と笑顔で返した。

「誰かいるの?」と蘭が真顔で聞いた。

「鈴ちゃんに子供が出来たんだけど、まだ全然言葉が出なくて・・歩こうともしないのよ」と母親が言った。

「呼んでやれよ・・俺はこの小僧にだけは、期待するよ」とオヤジが笑顔で言った。

母親が頷いて、電話に向かった。


「鈴ちゃんって、私の1つ下でね・・千鶴姉さんの妹だよ」と蘭が囁いた。

『えっ!そうなの・・実家同士が、近いんだね』と笑顔で言った。

「ごめんね・・すぐに来るって、なんか千鶴に聞いてたみたい」と母親が微笑んだ。

『千鶴って本名なんですね、源氏名かと思ってた』と笑顔で返した。

「この子がさっきの話の、ミホちゃんに・・・」蘭が私とミホの再会に、千鶴が力を貸してくれた事を話した。

両親は笑顔で頷いていた。

その時に玄関から声がして、母親が迎えに行き、女性が乳児を抱いて入ってきた。

 

私はその千鶴にそっくりな美しい母親と、抱かれている可愛い女の子を見ていた。

「こんにちわ・・実は姉の千鶴から話を聞いてて、今度訪ねようと思ってました」と笑顔で母親が言った。

『そうですか・・お姉さんには、お世話になってます』と言って立ち上がり、手を出した。

母親が優しく渡してくれた、抱っこして、その子を見て感じたことが確信になっていた。


「1歳1ヶ月になります・・名前は・・蘭です」と母親が蘭を見て、笑顔で言った。

「えっ!そうなの」と蘭が驚いて言った。

「はい・・憧れの先輩の源氏名を、いただきました」と笑顔で返した、蘭は嬉しそうに満開笑顔で返した。


『ちなみに・・蘭ちゃんの何が心配なんでしょう?』と二ヤで聞いた。

「言葉が・・遅くて、ハイハイや立っちはするのに・・歩こうとしないんです」と真顔で言った。

『蘭~・・悪い子でちゅね~・・ママが心配すると、何でもしてくれると思って』と二ヤで乳児に言った。

私の目を探るように見ていた、私は小さな可愛い手を握って伝えた。

『駄目でちゅ~・・これも出来るんです~』と温度で言ってみた。

《にょっ!》という感じの反応があった、それで確信した。


『鈴さん・・言っていいですか』と真顔で真剣に言った。

「良いですよ」と鈴は座り直し、緊張した。

私は鈴の向かいに座り、乳児の蘭を膝に抱いた。

『この子は、病気です・・後天性甘えん坊過剰症という難病です・・原因は母親です』と笑顔で言った。

鈴がハッとして私を見た、乳児の蘭が私を見上げた、悔しそうな温度が伝わっていた。


『鈴さん・・蘭ちゃんの最初の言葉の、希望は何ですか?』と二ヤ二ヤで言った。

「えっ!・・えっ!・・やっぱり、ママです」と鈴が笑顔になった。

『じゃあ今日デビューします、可愛い悪魔・・その名も、らん~』と言って蘭を立たせた。

鈴は心配そうに、オロオロと蘭を見ていた。


『鈴・・手を出さないの、蘭が可愛いなら』と真顔で言った、鈴も真顔で頷いた。


『蘭・・楽しいんだよ、自分で歩けると・・こっそりおやつをつまみ食いできるし。

 それにね、どんなに綺麗に掃除しても、床や畳にはばい菌さんがいるんだよ。

 ハイハイすると、それを吸い込むんだよ~・・怖いね~。

 それにママって呼ぶと・・今より蘭を、ヨチヨチしてくれるよ。

 さぁ蘭・・今から始めよう、1歳の世界に踏み出せ。

 俺が後ろから見てるから・・ママの所まで歩こうね。

 そして呼んでごらん・・大好きな蘭のママを』


蘭の耳元に優しく囁いて、温度で伝えた・・頑張れと。

《もう》と蘭が返してきた。

『観念しなさい・・もうなんだよ』と囁いて伝えた。

それで交信できてると信じたのか、一歩踏み出した。

私は支えてる手を離して、頑張れと囁いた。

蘭はフラフラと泥酔者のように3歩歩いて、座ってしまった。

『まだ!・・もう1つの約束が』と手を出そうとした鈴を制した。


「まま」と鈴を見て蘭が言った、可愛い声だった。 

「蘭~・・今ママって言ったの・・ねえもう一度言って・・ねえお願い」と蘭を抱き上げて、鈴が言った。

『あ~あ・・この難病は完治が難しい、お砂糖ママがいるから~』と二ヤで鈴に言った。

「あっ!・・ごめんなさ~い、明日からお塩ママになりますから~」と鈴が舌を出して笑った。

オヤジも母親も、そして蘭も楽しそうに笑っていた。

晩夏の南国の夏を、海風が冷ましてくれた・・後悔する心も。


私は満開の蘭を見ていた、その満開が咲き乱れていて、精神的な春を感じさせた。

私はそれだけで良かった・・ただ蘭の笑顔が見ていたかった・・。


私はこのオヤジに話した、後悔の話だけは、今でもはっきりと覚えている。


日記に書きながら、この長文がスラスラ出てきた。


しかし自分でよく言えたな~と思っていた、何も意識せずに言葉に出した。


確かにこの物語の進行から言うと、そのレベルには到達していたのかも知れない。


でも自分の言葉とは思えなかった、日記に書きながらも、半信半疑だった。


何か他の力が作用したのでは、私はそう思っていた。


その事をユリカにだけ話した、蘭には話の内容上、言い難かったのだ。


ユリカは驚いていた、そして言った・・私は聞いてないよと。


その時、ユリカは・・土曜の疲れが出て、遮断してお昼寝中だったと言うのだ。


じゃあ・・あの波動は、ユリアが一人で出してたのか?・・そう思って考えた。


そこまでにしよう・・考えたらいけないよ。


ユリカが爽やか笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。


私は今この物語を書きながら、また考えてしまった。


やはり・・何か他の力が介入していた、私は言葉として発しただけだった。


ユリアの何度も来る波動の、温度の言葉を無意識に、通訳しただけだった。


今はそう思っている・・それ以上は考えるのをやめよう。


でもオヤジの顔を見ながら話していて、嬉しさが湧き上がっていた。


その真実だけを・・ここに追記とします。



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