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和解

輝く照明で作られた、幻想の世界は人々を惑わす。

それは支払う者も、受け取る者も同じである。

光の当たらない場所にも、大切な物は隠れている。


夏の夜も10時を過ぎた、PGの幻想のフロアーは熱を帯び。

戦士達は集中力を増している、顔には微笑みを湛えながら。

2×2の体制によるボーイの数が、圧倒的に足りない状況で。

主力の女性達は、アイコンタクトで動いていた。

最も顕著なのが四季である、客に悟られないように目で会話する。

ケイに聞いて私も興味を持って見ていたが、その巧みさに驚いていた。


PGに来店するお客の中で、最近回数が増えてきたが誰も指名をしない客を、徹底的に攻める。

一人が付き、自分じゃ指名取るの無理そうだと感じるとサインを送る。

そうやって4人が違う雰囲気で、違う話題を振るのである。

それだけでも、お客は4回楽しんで帰るのだから、充分成り立っている。

四季はプロ思考ではなかった、千秋さんをはじめ3人が女子大生、一人が専門学校生だった。

しかしマダムにもユリさんにも認められていた、その新しい感覚を。


そしてそのフロアーの裏で、ケイが格闘しているのである、どのお客のヘルプに誰を付けるか。

何も見ないで、頭に中に書き記した物を見ながら。

お客の嗜好を考え、若手にできるだけ平等に、チャンスを与えるように。

全てはケイが決めるのだ、私はそのケイを見ながら、ケイが愛されている理由を感じていた。

『ケイ姉さん、トイレとTVルームに行ってきます』と声をかけると。

「お願いね」と可愛く微笑んだ。


私がTVルームに行くと、マダムと松さんがいた、3人娘は眠っていた。

「チャッピー、明日早出してくれんか?」マダムが言った。

『いいですよ、何?』と返事をして、マダムを見た。

「エミとミサを10時に迎えに行って、連れてきてほしいんや」とマダムが言った。

『了解、ブティックに行けばいいんだね』と言うと。

「頼むな」と笑顔を見せた。

TVルームに出て指定席に戻ると、終焉が近づいて、残り2組になっていた。


「今夜も無事に終わりそうね」ケイが来てそう言った。

『ケイ姉さん何か食べました?』とケイを見た、多分ケイは休憩もしてないと思っていた。

「あなたが美味しそうに食べるから、ケーキを1個食べたよ」そう言ってニッと笑った。

『旨かったでしょう』と笑顔で言うと。

「美味しかったけど、あなたのような表情はできなかったわ」と微笑んだ。

『役者ですから』とニヤで言うと。

「役者ね~」と笑っていた。


最後の客が帰り、終焉を迎えた。

私がTVルームに戻ると、サクラさんが帰る準備をしていた、私はミサを抱き上げた。

「ありがとう、明日よろしくね」と美しく微笑んだ。

『おまかせ下さい』と私が言うと、笑顔でエミを抱いた。

エレベーターにはカズ君がいた。

「チャッピー、明日エミの様子見ててくれない?」私がサクラさんを見ると「明日、主人の手術なの」と真顔で言った。

『了解です』と私は笑顔で答えた。

サクラさんがエミを抱いて乗り、ミサをそっと乗せようとした時、頬にキスされた。

『また起きてたね~』と言うと「おやすみ」とミサが笑った。

『おやすみ、あすお迎えに行くから』と言って見送った。


TVルームに戻ると、蘭が私服を着て待っていた。

疲れているように見えて、隣に座ると顔を私の肩に乗せてきた。

《何年分も泣いたからな》私はそう思っていた。

ユリさんが来て私がマリアを抱き、タクシーに蘭が乗り、私がマリアを抱いて乗りユリさんが乗った。

タクシーが走り出したとき蘭が言った。

「ユリさん、ありがとうございました」静かに「私少し和解できました、あの頃の自分と」前を見て、自分に語りかけるように言った。

「分かってたわ、今日あなたをPGで見た時に。凄く嬉しかった」優しかった、圧倒的に暖かかった。

「必ずいつか全てと和解できる時がくるわ、」ユリさんも前を見て。

「あなたが、自分を裏切らない限りは」最後は厳しさも忘れずに。

「やってみます、もう目を逸らさずに」最後はユリさんを見て、私越しに見つめあっていた。

2人とも微笑んで、私はそれを感じながらマリアを見ていた。

ユリさんのマンションに着き、マリアを渡すと。

「これで払ってね」とタクシーチケットを渡された、蘭と二人でお休みをした。


私が蘭と間を空けて座ると、腕を引かれた。

「肩」そう言って微笑んだ、私は蘭と触れ合うまで側によった、蘭が肩に顔を置いた。

蘭の髪の香りがしてきた。

「今日沢山泣いたから、寝物語をして、面白いのがいい」そう囁いた。

『取っておきのをしてあげる、笑い死ぬなよ』と私も囁いた。

「楽しみ~」と言う蘭に。

『1つだけ条件がある、蘭はベッドで横になって聞くこと』できるだけ優しく言って。

『怖い、襲われそうで?』と聞いてみた。

「全然、あなただけは私を、絶対に傷つけないもん」蘭はそう言って目を閉じた。


タクシーの車窓から見える、平和台の平和の塔のシルエットが見えた。

守るべき者に出会えた感動を味わっていた。

その繊細で壊れやすい者を、大切に肩に乗せていた、ただ蘭の香りに包まれていた。


部屋に帰り、蘭が化粧を落としベッドに横になって微笑んだ。

私は電気を消して、カーテンを開けた、微かな月光の光で、蘭の顔が見えていた。

私は蘭の顔の少し後ろでベッドにもたれて座った。

「わくわく」そう蘭が満開で言った。

『それは俺がチャッピーと呼ばれる2年前、小1の時のお話しです・・・』蘭は私を見ている。

窓からの微かな光が2人を見守るように照らしていた。

『9月末だったと思う、いつものように台風が来た、わりと大きい・・・』

その頃の私達は、台風が過ぎると大淀川の小船の桟橋に行って、激流が運んできた物を見に行くのが、習慣だったんだよ。

たまに凄い珍しいもんとか有るんだよ、まぁ小1には何でも珍しいから。


『蘭、エミをイメージしたら駄目だよ』と言うと、蘭は微笑んで。

「分かってる、もっと愚かで鼻を垂らしてるイメージだから」と笑った、私は蘭の高い鼻先を優しくつねった。

「早く、早く」蘭の声に促され、続けた。


その日は日曜日、台風が夜通過して、朝はまさに台風一過の快晴だった。

私は6時過ぎには、こっそり家を抜け出したんだ、ばれると怒られるから。

まぁ相当危険だからね、今思うと怖いよ。

近所の悪ガキ仲間のマサを誘って、桟橋に行ったんだ。

堤防を桟橋に下りる頃には、2人ともそれに気付いていたけど、お互いに何も言わなかった。

沈黙のまま桟橋の中央まで行くと、2m先ぐらいに浮いてるんだ。

俺が先に『マサ、あれはあれだよな?』と聞くと「あれだよ、多分」て言うから。

俺達は二人で顔を見合わせて、沈黙が流れたんだ。


「だれか大人を呼びに行こうや!サキの家が近いが!」てマサが言ったんだ。

そこで俺は考える訳、天才だからさ。

蘭を見ると笑顔で大きく頷いた、私は右手でVサインを作った。

俺はその時サキが好きやったんよ、でもサキの親父は俺ら悪ガキを嫌ってたから。

《間違いは許されん》そう思ったんだよ、馬鹿だよな~。

で言ったんだ『違うかもしれんが!』て叫んだのマサに。

「じゃあお前が調べろよ」って返された。

『どうやってや?』と聞くと、長い竹を指差して。

「それでひっくり返せばいいんやが」て言われた。

まずいって思ったら。

「おじっか?(怖いのか)」て俺の一番嫌いな言葉で、とどめ刺しやがった。

『おじことねーわ』そう言って竹を拾って、桟橋に乗ったんだよ震えながら。

もう気付いたかも知れないけど、浮いていたのは女性の死体だったんだ。

背中を見せて浮いてる、髪の長い全裸の。

蘭の目は期待で輝いている。


俺は恐る恐る竹を当ててみたんだ、そしたらクルンって。

俺もマサも凍ったよ、その顔は苦痛に歪み、限界まで口を開き、目には生命の光が無かったんだ。

『うおーーーーーー』って叫びながらサキの家まで走ったよ、逃げるように。

サキの家には親父もいて、「本当に死体やなっ!」て聞くから。

『間違いない、女ん人や!』て言ったんだ、その顔を親父が見て、警察に連絡してから。

サキの親父と桟橋に行った、その時にはもう得意満面でさ。

蘭はそれは興味津々で、疲れも眠気も忘れたようだった。

私は加速した、沸点に向けて。


桟橋が見える所まで来たら。

「しまったー」とサキの親父が呟くの。

その時遠くから、パトカーがサイレン鳴らしながら近づいて来たんだ。

パトカーは3台も来て、《Gメンみたいやかっけー》て暢気に思ってた。

サキの親父の所に私服刑事が来て、「通報された方ですね」と聞くと。

「申し訳ございません、こん子らが見つけて確認もせんと通報しました」って必死で謝るの。

俺達は訳が分からんで、ただ見てた。

「君達が見つけたの?」て刑事に聞かれたから、直立不動で『はい』って答えたら。

「危ないから、台風後の桟橋なんか来たら駄目だよ」って言われて、直立不動のまま。

『はい』って答えた、もう敬礼しそうな勢いで。

そしたら制服警官が来て、「○○さん、どうしますか?」って聞いたら。

「こんだけ野次馬が来てるんだ、シートをかけて回収して、撤収」って指示した。

見たら野次馬が凄いんだ、でも皆笑ってる。

でサキの親父に聞いたんや、『どうかしたと?』って。

「お前らが悪くは無い、あれは死体じゃない、大人が遊ぶ玩具や」ってね。

「グッグッ」っと言って蘭は口を両手で必死に押さえ、声を出さないように笑ってた。


私はその笑顔に。

『おしまい、もう寝なさい』と優しく言った、蘭は笑いが治まるのをのを待って。

「ありがとう最高だった」と言って、「私をマリアだと思って寝るまで、そこで見てて」と甘えた。

『蘭だと思って見てるから、安心して寝なよ』笑顔で言うと。

「おやすみ」と言って目を閉じた。


私は月明りに照らされる、愛すべき美しい寝顔を、飽きる事無く見ていた。

蘭が深い眠りに入っても。


その日が私の成長したのかを問う、1教科目の試験日とも知らぬまま・・・。





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