10年後の解答
晩夏の宵闇の中に、光り輝く場所がある。
幻想の灯火に、寂しがりの放浪者が闊歩している。
子供の私はその風景に溶け込めず、流れに逆らい歩いていた。
ミチルの店は満員状態で、私はカウンターの奥で座って見ていた。
ミチルと目が合い、妖艶笑顔で近づいてきた。
「完全復活だね、おめでとう」とミチルが微笑んだ。
『やっと自分でも、自覚出来てるよ』と笑顔で返した。
「今夜はただの巡回?・・連絡事項があるの?」と妖艶に微笑んだ。
『ミチル・・北斗を知ってる?』と笑顔で聞いた。
「私らの年代で、夜の仕事をしていて、その源氏名を知らない奴はモグリだよ」と笑顔で答えた。
『北斗をジンの派遣会社の最初の登録者にした、北斗は今夜PGで復活した。
もちろん6店全てに出てもらう、当然ミチルのこの店にも。
今の若い挑戦者に見せる、北斗という生き方を。
その前向きで、どんな事も笑顔で乗り越える・・強い精神力をね』
私は驚いているミチルを見ながら、笑顔で言った。
「エース・・最高だよ、緊張するけど・・月曜にでも会いに行くよ、会いたいからね」と妖艶笑顔で返された。
『うん、待ってるね・・開店少し前には来てると思うよ、ホノカに北斗の事を話といてね』と笑顔で言って立ち上がった。
ミチルにドアまで見送られて、笑顔で別れた。
人混みの本通りを避けて、裏路地を歩いていた。
怪しすぎる風俗嬢に手を引っ張られて、ウルで看板の18禁を指差して笑いあっていた。
その時に声をかけられる、夜街のドン小林の爺さんが大声で呼んだ。
「エース・・暇か?」と相撲取りのように太ったドンが、多分微笑んでいた。
ドン小林は大きなキャバレーを3店と、妾にスナックをやらせていた。
私は存在こそ知っていたが、話した事は無かったのだ。
『嬉しいですね~、ドン小林に名前を覚えてもらえるなんて』と笑顔で近づいた。
「何を言うか・・こっちこそ知っていてくれて嬉しいよ」とニヤリという感じで笑った。
『それで何でしょう?・・楽しい話ですかね~』と探りを入れた。
「まぁな・・ちと付き合えよ」と言ったドンに並んで世間話しながら歩いた。
呼び込み達のドンへの挨拶の仕方が、あまりにも丁寧なので二ヤで見ていた。
「なんか・・楽しいのか?」とドンが笑顔で言った。
『ドンは凄いね~・・挨拶の仕方から違うよ』と二ヤで返した。
「なんせこの街が出来た時からいるからな~」と前を見て言った。
中央通の大きなビルの3階に上った、キャバレー・ホノルルの大看板が歓迎してくれた。
ドンに案内され、一番奥の豪華なVIPBOXに入った。
店内は想像よりも明るく、女性たちのスカートの短さ以外は、PGと変わらなかった。
『思ってた以上に明るいんだね、もっと暗いのかと思ってた』と笑顔でドンに言った。
「今日は土曜日だから、照明を明るくしてるのさ」とドンが笑顔で返してきた。
『土曜だから明るいの?・・なぜでしょう、ご教授お願いします』と笑顔で聞いた。
「PGも・・どこの店も、土曜は客の回転率を稼ぎたいだろ。
暗いと客はリラックスするんだよ、少しだけ明るくすると現実に戻るんだ。
だから長居はしなくなるんだよ、キャバレーは特にそうなんだよ。
入店料が美味しいからな、延長料金なんて土曜はいらないのさ。
だから客が押し寄せるような週末は、少しだけ明るくしてるんだよ」
ドンが笑顔で丁寧に説明してくれた、私も笑顔で頷いた。
『やっぱり凄いな~・・さすがにドンだね』と少年の笑顔で言った。
「お前だけだよ、俺に面と向かってドンと言うのは」とドンが嬉しそうに笑った。
30前後の美しい女性が、シャンパンと豪華なフルーツ盛を持ってきた。
私にもシャンパンが注がれ、3人で乾杯をした。
「酔う前に聞きたいんだが、良いかな?」とドンが真顔で言った。
『何でもどうぞ』とメロンを食べながら、笑顔で返した。
「お前が提案した、共同体の話を・・アスカから聞いてな。
凄い事だと関心したんだよ、そして将来的には女性の派遣を考えてると聞いてな。
その基本的な考え方を、聞きたいと思って誘ったんだよ。
共同体の趣旨と、今後の展開と、今の問題点を聞きたい。
ワシも3店持ってるが、時代の先端を走る店を次に考えているんだよ。
東京の六本木で今話題になりつつある、キャバクラってやつだよ。
ようするに、キャバレーとクラブの中間って感じかな。
クラブほどの料金を取らずに、キャバレーほど激しくない。
宮崎では、PGとゴールド・ラッシュがその分野に入ると思うよ」
ドンはその物腰の落ち着きで、安心感が桁違いにあった。
私は興味津々で聞いていた、ドンは中学生の私に真剣に言ってくれた。
『今現役No1ホストのジンが、3年後をめどに、人材派遣の会社を作りたいと言って。
それに大ママとユリさんが、提案したんだよ。
夜の女性の派遣はどうかと、ジンは考えて・・興味を持ったらしい。
そして俺も3年後に、バイトで手伝うと約束したんだ。
俺はPGに来て思ってた事があって、それをそのタイミングで提案したんだよ。
俺は夜のルールが、その世界を狭くしてると思ったんだ。
客が流れるから・・女性を他店に出さない。
意味は分かるけど、それじゃあレベルも上がらない。
未来永劫に、男が酒を店で飲む文化が続くとは限らない、それを守るには。
飽きさせない変化し続けるしかない、それが出来るのは女性達だけなんだよ。
どんなに奇抜な趣向の店でも、長続きはしない。
長続きする店は、結局女性のレベルが高いんだよ。
もちろん容姿も重要だけど、会話も・・極論言うと内面も。
だから俺は五天女とゴールドの千鶴に提案した、相互交流をして刺激し合おうと。
それでしか底辺は上がってこない、レベルを押し上げるのは多数だから。
飛び抜けた5人が存在しても、夜街全体のレベルは上がらない。
それは自分の店の一人しか見れないから、同じの舞台に立たないと感じないから。
だから大ママに提案した、共同体でやってみないかと。
五天女も千鶴も賛成してくれて、今リアンとユリカを動かしている。
当然クラブの若手も、スナックのフォローに入る。
そこで気づくんだと思う、多数を相手にする事で気づくんだ。
全体の空気を読むという事を、大きな流れを感じて接客することを。
俺は経験させてやりたいんだよ、自分で選んだ場所が素敵な場所だと。
大切な季節を賭けて、必死で走ってるフィールドは素敵な場所なのだと。
個性の異なる本物達を感じさせて、全力で走りきり、心残り無く引退させてやりたい。
若い挑戦者に経験するチャンスを与える、そして夜街のレベルを底上げする。
それが今回の共同体の趣旨だよ、今スタートしたばかりだけど』
そこまで言って、シャンパンを一口飲んだ。
ドンも女性も興味津々笑顔で、頷きながら聞いていた。
『今からの展望なんだけど・・ユリさんが公然と発表したから言うけど。
現段階での俺の最終目標は、東京PGの成功なんだよ。
ドンが今言った六本木の話し、さすがだと思ったよ。
東京が日本一の街ならば、それに挑戦するしかない。
ユリさんも俺も見せたいんだ、宮崎のレベルは充分トップレベルだと。
夜街を引退した女性から、今挑もうとしている女性まで全てに。
理由があって、夜の仕事を選んだ女性も多いだろうけど。
全員に誇りに思って欲しい、大切な季節を賭ける意味のある場所だと。
夜の仕事をしたことに対し、誇れる何かをプレゼントしたいんだ。
5年後・・東京に殴り込む、その為に底辺を押し上げる。
俺の勝手な夢だけど、その為に今後を展開していく。
現時点での問題点は、まだ浮き出てこない。
これから様々な問題点が出てくる、それを3年でクリアーして、1つの形にしたい。
ドンにも利用してもらえる、女性の派遣を出来るようにね』
ドンの嬉しそうな笑顔を見ながら、笑顔で伝えた。
「噂以上に面白いな・・エースと呼ばれる男は。
期待してるよ・・問題点が出たらまた話してくれよ。
俺も自分の3店のシステムを考えてみるよ、たしかに底辺が上がらんと駄目や。
ユリとお前ならやってくれると思ったよ、東京に見せ付けてくれよ。
宮崎のレベルは、東京にも一歩も引けをとらないとな」
ドンが笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。
『じゃあドンが相談に乗ってね・・それが一番心強いから』と笑顔で言った。
「おう・・いつでも来いよ、俺は暇な隠居だからな」と笑っていた。
それから私の聞き魔癖が出て、ドンに夜街創世記の話を聞いた。
帰りに女性がエレベーターまで送ってくれて、笑顔で手を振って別れた。
私は呼び込みさん達の事情聴取を、とぼけながらかわしてPGに戻った。
指定席に行くと、満席状態継続中で、熱が高かった。
私は座った時に感じた、女性が二ヤで私を見ている事に。
私は不思議に思って、客席を見回して完全凍結した。
3番に清次郎と鬼瓦と極マサが来ていた、蘭とカスミと北斗が付いて笑顔が溢れていた。
私は慌ててマキを見た、最強二ヤで私を見ていた。
『意味が分からない・・どうなってるんだ』とマキに近づき言った。
「私の就職先の訪問だって・・清次郎ちゃんこういう店、一人で来れなかったみたいよ」とマキが二ヤ継続で言った。
『なぜ・・よりによって、鬼瓦と極マサの最強コンビを』とウルで返した。
「清次郎ちゃんが呟いたら、2人が進んで手を上げたって言ってたよ」とマキが笑った、私はウルで返した。
3番は鬼瓦と極マサを、カスミと北斗で盛り上げて。
清次郎爺さんは、蘭と笑顔で静かに話していた。
蘭の満開がずっと咲いていて、清次郎も嬉しそうで、私も嬉しかった。
私は挨拶をしなかった、いくら清次郎といえども、こんな場所で現役生徒には会えないと思っていた。
私は清次郎の優しさに感謝していた、その来店が意味する大きさを感じていた。
「北斗姉さん、どんな感じ~」と後ろからリアンが抱きついてきた。
『リアン、土曜の夜だよ・・さぼったら駄目でしょう』と二ヤで言った。
振り向くとリアンの瞳に涙があった、私は北斗の姿に感動したのだと思っていた。
「清次郎先生・・」とリアンが3番を見て呟いた、私は驚いていた、リアンの涙の訳に。
『リアン・・清次郎と知り合いなの?』と抱きついているリアンに囁いた。
「中3の時の担任・・いや・・恩人だよ」と強く抱きついて、私の耳元に囁いた。
『そっか~・・マキも中3の時の担任で、今の俺の担任だよ』と囁いて返した。
「そうなの!・・不思議な巡り合わせだね、確立的には相当低いよね。
今でも教壇に立つんだね、出世よりも・・教壇を、生徒を愛するんだね。
私が高校をなんとか卒業出来たのも、今・・こうして、夜街にいるのも。
全て清次郎先生のおかげなんだよ、先生が教えてくれたんだ。
高卒で昼の仕事に1ヶ月で挫折した私に、昼しかないのか?
そう問いかけてくれた、私の生きるステージは昼しかないのかとね。
それで気がついた、私のようなはぐれ者でも、認めてくれる場所があるかもとね。
そして清次郎先生が、教え子のいたPGを紹介してくれた。
そして出会ったんだ、北斗姉さんとユリ姉さんに。
ユリ姉さんも嬉しいはずだよ、清次郎先生の来店はね。
素敵な教師だとあの時言ってたから、私に絶対に汚すなと強く言ってくれた。
18歳の・・私の身元保証人は、清次郎先生なんだよ。
教師なのに、公務員なのに・・なんの躊躇もなく、なってくれたんだよ。
だから私はここまでこれた・・汚せない大きな愛があったから」
リアンが優しく囁いた、私は心地よさを感じて聞いていた。
さすがリアンだと思っていた、無変換で愛には愛で応える言葉が。
その時ゆりさんから、サインが飛んだ・・リアンに、【指名】【3番】と薔薇の微笑で。
リアンは震えながら、最大級の炎を出して・・強く頷いた。
「エース・・私が3番に入るの見たら、ローズにこの事を伝えて・・出来るだけ早く帰るから」と極炎の微笑で言った。
『了解・・マキを同行させるから・・3人を引っ張って来いよ』と二ヤで言った、リアンは最強ニカで頷いた。
「愛の問題の宿題を提出してくる・・10年で導き出した解答書を」
リアンは、極炎の潤む瞳で強く言った、私は真顔で頷いて、リアンの背中を優しく押した。
リアンは準備に行くのに、マキに声をかけた・・マキが真顔で強く頷いた。
私はその無変換の2人を見ていた、シオンも嬉しそうにマキを見ていた。
静寂が訪れるまでに、5分あっただろうか・・それほど早かった。
銀の扉が静かに開いた、女性達が一瞬固まった。
真赤な情熱のドレスを纏ったリアンが現れた、その体全体から炎が燃え上がってるようで。
全てを燃やし尽くすと主張していた、大切な恩師にその姿を・・解答を見せる為に。
3歩進んで神聖な場所に深々と頭を下げた、そして頭を上げて3番の清次郎に微笑んだ。
清次郎は嬉しそうな笑顔でリアンを見て頷いた、蘭は清次郎とリアンを見て満開で笑った。
3番に向かうリアンは視線を集めていた、その極炎が燃え上がっていた。
カスミが席を立ち、リアンが笑顔で挨拶をして、清次郎の横に座った。
そして何も言わずに、清次郎に抱きついて・・泣いているようだった。
私はユリさんの言葉を思い出していた、メモの絵画を見たときに言った言葉を。
《それがプロなのか、私はまた突きつけられました》そう言った薔薇の言葉を。
嬉しそうな清次郎の胸で泣くリアンは、中3の少女のようだった。
夜街の身元保証人に、その恩人に・・リアンは、10年の歴史を見せた。
フロアーを暖かい何かが包んでいた、ユリカの最強の波動がフロアーに向かって流れた。
私はリアンの涙で思っていた、沙紀に伝えたいと・・強く想っていた。
嬉しいの涙を・・その美しい涙の存在を、伝えたいと。
私はマキを見た、真剣なマキの表情で、リアンが何を言ったのかが想像できた。
私はマキと出かけた、マキは集中してるようで、声をかけなかった。
ローズに入り、いつもの女性がいたので、リアンの状況を言って。
マキを紹介した、やらせてみて欲しいと、リアンも私も思っていると伝えた。
女性は笑顔で頷いて、マキと挨拶をして、マキをカウンターに連れ出した。
若いサラリーマンと、上司であろう中年のサラリーマン2人の、3人組の前にマキを立たせた。
マキは笑顔で頭を下げた、中年の上司が自分の頭をオールバックにかき上げながら。
何かを笑顔で言った・・それを受け、マキもリーゼントをかき上げて。
「マキです・・そこんとこ、よろしく」とエーちゃんを真似て、唇を歪めて笑顔で返した。
紹介した女性も、カウンターの3人組も、その隣の4人組の若者客も爆笑した。
それで3人に火が点いた、沸点に向けて加速を始めた、同じエーちゃん好きの話題で。
私は気配を消して、厨房に入り・・奥の丸い椅子に座って見ていた。
斜め後ろから、マキの話術の巧みさを見せ付けられていた。
時に少女になり、時に美しい女性になり、時に爽やかな男になっていた。
「ちょっと・・PGの新兵器、凄すぎるよ」とローズの女性が美しく微笑んだ。
『まだまだだよ・・照れが残ってる、16歳だから仕方ないけど』と二ヤで返した。
「16歳!・・私は女帝の誕生を、目撃してるのかもしれない」とマキを見ながら囁いた。
「奥のBOX、もうすぐ空くから、一応予約でとっとくね」と笑顔を私に向けた。
『うん・・多分リアンが、3人を引っ張ってくるよ』と笑顔で返し、笑顔で頷いた女性を見送った。
そして私は衝撃さえ受ける、マキが3人組と4人の若者達を1つにしたのだ。
上司2人に笑顔が溢れていた、若者達も年長者を立てていた。
マキが2組に話題を提供して、全員がその話の流れに乗っていた。
4人組みは、春に大学を卒業した、大学の頃の友人グループだった。
就職しての悩みを相談していた、中年の2人は嬉しそうにアドバイスをしていた。
そして少し歳上になるのであろう、3人組の若者が、経験からのアドバイスをしていた。
マキは笑顔でそれを聞いていた、優しい瞳で7人を見ていた。
カウンターの女性が大丈夫と判断したらしく、私に目で合図を送ってBOXのフォローに向かった。
マキはそつなく水割りを作り、笑顔で対応していた。
私はまたも自分の想像力の無さを感じていた、マキがフロアーで見せるものも。
今までに無いものだと感じていた、その姿を見れるのが待ち遠しかった。
1時間ほど経ったころ、リアンが3人を連れて入ってきた。
マキの事を一瞬で理解したらしく、嬉しそうにマキに微笑んだ。
清次郎達を奥のBOXに案内して、カウンターのお客に笑顔で挨拶をした。
「シオンより、マキの方が妹に見えるよ」と中年の上司が笑顔で言った。
「そうでしょ~・・並ぶと似てるでしょ」とリアンが7人に微笑んだ。
7人が全員笑顔で頷いた、私もそう思っていた。
リアンが笑顔で挨拶をして、厨房を覗くふりをして私を見た。
「ユリ姉さんの許可はとった、マキを今夜借りるから・・エースもそこで大人しくしててね」と可愛いリアンを出して微笑んだ。
『了解・・マキは見てて楽しいよ』と笑顔で返した、リアンも笑顔で頷いてBOXに向かった。
カウンターの4人の若者が笑顔で席を立ち、3人組にお礼を言って帰った。
暫らくして、3人組も笑顔で立った、新しいボトルを入れてくれた。
マキは見送りに行って、カウンターを片付けて・・BOXの清次郎の所に歩いた。
清次郎も鬼瓦も極マサも、嬉しそうな笑顔で迎えていた。
PGは終演が迫ってきたな、北斗順調に初日を乗り切ったなと思っていた。
私は冷蔵庫からコーラを出して飲みながら、リアンとマキの笑顔を見ていた。
炎姉妹の笑顔は、嬉しさに満ち溢れていた。
その時6人組の若者が覗いた、カウンターでも良いとリアンに言っていた。
そして私はまたも衝撃を受ける、蘭が満開でニコちゃんシオンと入ってきた。
「どうぞ~・・すぐに準備しますね」と満開笑顔で客をカウンターに招待した。
リアンは蘭に極炎で微笑んだ、蘭は満開で微笑んで頷いた。
蘭とシオンがカウンターの中に入り、シオンがお客のボトルを出して準備した。
蘭はいきなり一番年上であろう男に点火した、5人が爆笑して、その男が嬉しそうに照れていた。
シオンは準備をしながら、蘭の凄さを間近で見ていた、最強ニコちゃんが出ていた。
蘭がシオンの天然を引き出して、シオンもニコちゃんでそれに乗っていた。
蘭がリードするコンビネーションが絶妙で、シオンも自然に溶け込んでいた。
6人の笑いが止まらずに、全員が楽しんでいるのを感じていた。
さすがに蘭だな、レベルが違う・・私は関心しながら、満開笑顔を見ていた。
リアンが嬉しそうな笑顔で、蘭とシオンを見ていた・・炎を放出しながら。
そしてユリカが入って来た、爽やか笑顔を蘭とシオンに向けて、BOXに歩いた。
清次郎たちの前に行き、爽やか笑顔で挨拶をして、最高の笑顔の極マサの横に座った。
豪華なメンバーの華麗な宴が行われていた、笑顔でない者を探したが、存在しなかった。
ローズの終演は2時を少し過ぎた時だった、私と蘭とユリカとシオンとマキでBOXに座っていた。
リアンが極炎笑顔で、マキに封筒を差し出した。
「マキ・・ありがとう、本当に助かったよ」とリアンが微笑んだ。
「ありがとうございます・・少しでもお役にたてたなら、良かったです」と笑顔で立って受け取った。
「少しなんてもんじゃないよ・・私は驚いたよ、16歳の実力を」とローズの女性が笑顔で言って、他の3人の女性も笑顔で頷いていた。
マキも嬉しそうに笑顔で頭を下げた、リアンとユリカと蘭とシオンが優しい瞳で見ていた。
「蘭とシオンは、今度夕食をご馳走するよ・・もちろんマキもエースも一緒に」とリアンが微笑んだ。
「楽しみにしてます、リアン姉さん」と蘭が満開笑顔で返した。
ローズの女性が帰るのに挨拶をした、私は一人がPG、もう一人が魅宴に挑戦と言ったので。
調整して連絡すると返して、見送った。
「私は今夜また嫉妬した、リアン姉さんとマキとあんたに・・あんな素敵な教師に巡り合った、その幸運に」と蘭が満開で微笑んだ。
その笑顔に充実感が溢れていて、私は近いと確信していた。
蘭の覚醒の時が来ていた、全てを凌駕する・・青い炎の本当の力が、頭を持ち上げていた。
蘭が実家に帰り、父親と和解して目覚める・・圧倒的な温もり。
その日になっていた・・9月は始まったばかりだった・・。
私が高2の春に、清次郎に会いに行った。
清次郎は教職を定年して、ボランティアで施設の子供達に勉強を教えていた。
「どうしたのかの~・・らしくないぞ、小僧」と私を見て、清次郎がいきなり言った。
私はその一言で、自分に戻った・・ミホの事で悩んでいた自分から。
本当に優しい人間だった、絶対に差別をしない男だった。
そしてその深い戦争経験を、私達に正直に話してくれた。
私達生徒は、清次郎の涙で感じていた・・その悔しさと悲しみを。
大切な話を・・静かに、優しく語りかけた。
教壇で嬉しい涙も、悔しい涙も見せてくれた・・その高みに存在していた。
ユリさんが言った・・フロアーで泣ける位置に存在する、大ママに感動したと。
私はその言葉で感じていた・・成し遂げた人間じゃないと、その場所で泣けないのだと。
その場所で、嬉しい涙を流せるのは・・到達した者の特権だと思っていた。
東京PGの開店の日に、豪華な百合のアレンジフラワーが届いた。
差出人は・・ユリカ・リンダ・マチルダと連名で書いてあった。
受け取ったユリさんは号泣した、東京PGのフロアーで。
女性達を前に、蘭に抱かれて・・ただ泣いていた。
私は到達したのだと感じていた、その遥か高みに。
しかしそこも通過点だった・・ユリの生き方にとっては。
私は涙を必死で我慢する蘭を見ていた、到達出来ていないと、強く主張していた。
目指すべき遥かなる頂を抱きながら・・蘭も私も、ユリカを想っていた。
あの爽やかな笑顔と・・深海の瞳と・・重い言葉を・・。