Perfect Balance
赤い花びらが舞い散る、暖かい場所に凛とした笑顔がある。
その視線は優しさを湛え、揺れる事なく前を見ている。。
その視線は、愛する者を捉えていると感じる。
薔薇の微笑みの背景に、赤い花びらを散らせて。
「素敵~・・喜びの中のユリ姉さん、完璧なユリ姉さんだ」と蘭が入ってきて、満開で微笑んだ。
「ワシは絶対に描いてもらわんぞ・・この精密さで皺を描かれたら、絶望しそうじゃ」とマダムが言って、全員が笑った。
美由紀を蘭とユリカで挟んで座って、談笑していた。
私は美由紀からマリアを受け取って、寝かしつけていた。
「しつじ・・めしつかい・・どれい~」とマリアが天使不敵で言った。
『美由紀~・・マリアにいけない言葉教えたね~』と美由紀に微笑んだ。
「覚えたのよ・・マリアには重要な事だから・・マリアにとってエースは?」と二ヤで言った。
「どれい~・・まりあのえーしゅ・・どれい」と不敵継続のマリアを見て、ウルウルしていた。
『マリア・・豊兄さんは?』とウルで聞いた。
「ゆたか・・しゅき・・きょうこだめ~、かすみだめ~、まきだめ~、みゆきだめ~」と天使にに戻って微笑んだ、カスミがウルで見ていた。
カスミとマキと美由紀がウルでマリアを見た。
『美由紀・・どうしてくれる、マリアが長文を話しだしたじゃないか』と美由紀に言った。
「出し惜しみするからよ・・自分一人で楽しもうと思って」と美由紀が二ヤで言った。
「やっぱりそうでしたね~・・美由紀は誤魔化せないですね」とユリさんが薔薇二ヤで言った。
『マリア・・助けて』とマリアにウルで言った。
「ウルだめ~・・だっこねんね」と言ってマリアが瞳を閉じた。
「さぁ困ったね、最後の砦が眠って」と蘭が満開で微笑んだ。
「病院に行くしかないね・・由美子も味方じゃないみたいだけど」とユリカが微笑んだ。
「どうでした?・・ユリカ姉さん」と蘭が真顔で聞いた。
「マキの言うとおりだったよ・・蘭、由美子に触れてごらん、大切な事を感じるよ」と爽やか笑顔で返した。
「由美子ちゃんは、どんな個性?」と美由紀が私に聞いた。
「美由紀・・ヒトミと同じらしいよ」とマキが真顔で答えた。
「そうなんだ!・・ごめんね小僧、それで上がってるのに・・分からなかった」と美由紀が真顔で言った。
『美由紀・・大丈夫だよ、由美子は体が強いよ』と笑顔で返した。
「良かった~・・あの消耗していくヒトミは、私も辛かった・・それでも伝えようとするから」と美由紀が真顔で言った。
『ありがとう、美由紀・・俺は乗り越えられそうだよ、ヒトミの事を』と優しく言った、美由紀も笑顔で返してきた。
「まだあるんだね・・ヒトミの真実が」と蘭がマキを見て真顔で言った。
「あります・・それはエースか美由紀じゃないと語れません。
私達のは、どこか客観的な話だから、もちろん触れ合って感じたけど。
レベルが違うから、エースはもちろんだけど、美由紀も違います。
その経験に裏打ちされた、悲しみに対する敏感度が、私達と違いすぎる。
だから私達では語れません、そのヒトミの命を削る行為は」
マキが真剣に言った、全員が静かに聞いていた。
「無理なんだろうか・・美由紀、小僧じゃ絶対に話してくれないから」と蘭が真顔で言った。
「小僧・・挑むんだね、由美子に・・全てを賭けて」と美由紀が強く言った。
『覚悟を決めたよ・・由美子に本気じゃないと、ミホなど到底無理だと思ってる』と真顔で返した。
「ふ~・・いずれお話します、ただこれは・・マキ先輩も言ったけど。
私にとっても感覚的な話です、確証がある話じゃないんです。
小僧には聞けないから、その答えを小僧に求める事など出来ない。
そんな悲しい問いかけを、許されるのは・・この世界で由美子だけでしょう。
小僧の今言った覚悟・・それは旅立つ時が来る・・その覚悟です。
もう少し由美子と小僧が触れ合って、小僧が由美子の信頼を勝ち得たら。
その時に、お話します・・その時は、由美子の保護者の方も交えて。
私は本心を言えば、誰かに聞いて欲しかった、皆さんになら聞いて欲しいから」
美由紀は静かに、しかし強く言葉にした。
「美由紀ちゃんありがとう、由美子の母親はこの店の最初のNo1です。
昨夜、エースに母親の輝く姿を、由美子に見せないといけないと強く言われて。
今夜から復活します、充実の中にしかない輝きを取り戻すために」
ユリさんが美由紀を見て、最後は薔薇で微笑んだ。
「そうですか・・大切な事なんですよね。
両親が自分の犠牲で生きていると感じたら・・辛いんです。
私なんか・・たかが両足が無いだけですけど、分かります。
ヒトミのような病気は、常に死と隣り合わせで生きるから。
感性が鋭すぎます・・全てのエネルギーを生きる事に使うから。
自分が病気なのは、誰の責任でも無いと思っているでしょう。
運命なんて言って、簡単には片付けられないけど。
背負うのは自分だけで良いと思っています、その方が自分も楽だから。
だからこそ・・生きる意味を感じたいのでしょう、自分は動くことも出来ないから。
母親が充実して生きる姿・・それだけが、由美子の望みでしょうね。
由美子は植物人間じゃない、感受性も意志もある人間ですから。
ただ・・動けない、見れない、話せないという・・個性なだけ。
自分が何の固定観念も持たずに会えば、必ず感じます。
そして問われる・・なぜ生きるのかと、純粋に問われる。
私はその答えを探す事で・・現実を受け入れられました。
私はたかだか・・足が無いだけの個性だと」
美由紀は少女の輝きを発散して、笑顔で言った、重い言葉を軽々と。
「重いですね・・やはり美由紀が言うと、響いてきますよ・・奥まで」と薔薇の微笑みで返した。
「早く会いたい・・由美子に、私は何の固定観念も無く会えると思えるよ・・美由紀のおかげで」と蘭が満開で微笑んだ。
「ここにいる皆さんは、大丈夫ですよ・・受け入れる力がありますから」と美由紀が笑顔で返した。
「最高に嬉しいです・・美由紀の言葉は」とシオンがニコちゃんで言った。
「ねぇ美由紀・・美由紀も瞑想したりするのか?」とカスミが言った。
「もちろんしますよ・・私、和尚が大好きだから、よく寺に行きます」と微笑んで返した。
「やらないと駄目ですね・・若手の中では、シオン姉さんとマキ以外は」とハルカは真顔で言った。
「私が一番必要だよ・・エースはそう言いたいんだと、思ってるよ」とカスミが私を見た。
「良いんじゃないの・・そろそろ、カスミの飛び級のヒントを出しても」とユリカが微笑んだ。
「実家に一度帰る約束もしたんだし、出してあげなよ」と蘭が満開で微笑み、カスミが真顔で頷いた。
『俺がこの前言った・・強さとは、柔軟性って言う話。
それを俺に教えてくれたのは、美由紀とこの車椅子・・YUTAKAⅡなんだ。
美由紀が同じ歳であるヒトミと触れ合い、その後に見せてくれた。
両足の無い事を克服して・・今ではその個性を笑いに変える。
美由紀は多分・・ヒトミに勇気を貰った、だから自分のテーマもそれなんだ。
美由紀が言った、たかだか両足が無いだけ・・今は心から言っている。
どうしたら自分が人に、勇気を与える事が出来るのか・・それなんだろう。
そこに辿り着くまでの、汗も涙も・・俺だけは見てきた、見せてくれた。
だから俺と美由紀の関係は、お互いにもうそんな段階じゃないと思ってる。
俺は心から贈ったんだよ、【永遠の片思い】って言葉を。
それは憧れてるから・・美由紀の心に憧れてるから。
健常者では辿り着けない世界に、憧れ続けると思ってるから。
その心の柔軟性は・・どんな衝撃を受けても、笑顔で逃がすんだ。
波に逆らわない、だけど絶対に流されない・・その柔軟な心は。
豊兄さんとシズカが考えた、この2号機・・そのテーマこそが柔軟性。
その時にシズカが言った、硬く強すぎるからいけないと。
強度が上がることが、安全性が上がる事ではないと。
組み合わせの中で、探していくんだと・・その硬さをしなやかさに変える地点を。
シズカは多分、健常者では誰よりも車椅子を理解している、ずっと乗ってたから。
病院で使用しなくなった、古い車椅子を譲り受け、乗り回していた。
それは俺や豊兄さんでは分からない世界、腕力の無い女子として。
そして今、導き出してる・・その最大のテーマが硬すぎる事なんだ。
だから動くだけで疲れてしまう、起動にも静止にも無駄に力がいる。
その原因を・・強く硬く作れば良いと思ってる事だとね。
安全性とは使用者が信頼できる上にあると、無機質を信頼できるには熱が必要だと。
それは難しい事なんだと、それを与えるには・・作り手の熱が必要なんだと。
妥協はある・・現時点でという妥協は、しかし理想を追わない限りその上は無い。
商売としてうま味が無いから、車椅子は進化が遅い。
優秀な頭脳は、高い報酬の場所にしか目を向けない。
無いからと言って諦めない・・豊兄さんは、絶対にそれは言わない。
無いならば作れば良いだろ、絶対にそう言うんだ・・そして挑戦するんだ。
シズカは豊兄さんの妹であり助手であり、そして大切な提案者なんだよ。
今年の春から2人で取り組んだ、この2号機・・現時点での2人に出来る最新型。
でも美由紀に贈った今は、もう2人の心は3号機に入っている。
この前、蘭とマチルダと行った時に、整備工場にフレームの試作が置いてあった。
理想を追い求めるのが楽しいから、美由紀の為だけじゃない・・存在しないから。
そして今の自分たちで作る事が出来る素材だから、楽しんでやっている。
そうでないと熱は乗移らない、信頼性のある物は出来ない。
自分が自分を信じない限り、信頼性は産まれない。
シズカにそう教えてもらった・・妥協点は常に存在すると。
その時点では受け入れないといけない、でも絶対に次の理想を追う準備をする。
美由紀が言う・・この車椅子はラブメイドだと。
その言葉こそが、信頼の証だと・・豊兄さんもシズカも思ってる。
俺は近い内に、会わせようと思ってた・・カスミに。
美由紀とこのYUTAKAⅡを感じて欲しいと、理想とはそうやって追うものだと。
それを感じて欲しかった、飽くなき理想を追い求める・・カスミに。
2度と心が折れて欲しくないから、その姿だけは見たくないから。
俺が考える理想を・・カスミが持っているから。
俺の出来る限りの強度・・柔軟性は上げてみたい。
俺が【永遠】を使って表現した、大切な2人目の存在。
完成しない事が・・その本質である・・カスミと言う存在だから』
私は真剣に想いを伝えた、カスミの輝く笑顔を見ながら。
「了解・・私はエースの、ラブメイドなんだね」とカスミが美しく微笑んだ。
「やっぱり・・ひいきしてる、カスミ姉さんは特別・・永遠の憧れだね」とレンが微笑んだ。
「私は、また間違いに気付きました・・シズカは別の世界に、絶対に必要な存在ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「永遠の憧れか~・・なるほどね、贅沢な男だ~」と美由紀が微笑んだ。
「現時点での妥協点か~・・豊もシズカも凄いね~」とユリカが爽やかに微笑み。
「自分を本当に理解してないと、出来ませんよね・・それはどこか辛いことだし」と蘭が満開で微笑んだ。
「辛いことですよね・・だから大切な事なんですね」とハルカが真顔で言った。
小さな空間に、暖かい流れがあった・・美由紀の微笑を真ん中に置いて。
その時にドアが開き、シズカが制服で入ってきた。
「こんにちわ~・・お!美由紀・・お久~」と全員に挨拶して、美由紀に微笑んだ、美由紀も嬉しそうな笑顔で返した。
「噂をすると、なんとやら・・鋭いね~シズカ」とユリカが二ヤで言った。
「悪い噂をしてましたね~・・変わり者とか、色気が無いとか」と私に二ヤで言った。
『してないよ~・・何の用で来たのかな?』と私は笑顔で返した。
「あっ・・これ・・蘭姉さんに渡しとくね、あんたの成績表・・今後の参考に」とシズカがニヤニヤで渡した。
「ありがとう、シズカ・・後でユリカ姉さんとチェックするよ」と満開二ヤで受け取った。
「それは楽しみだ~・・今度なにか悪さしたら、ここに張り出そうね」とユリカが爽やか二ヤで言って、全員の二ヤで見られていた。。
「でも、意外と驚きますよ・・それ以上に上げたいなら、エミ位の意識が必要ですよ」とシズカが言って、車椅子に座って動かした。
「それはかなり良いという、事なのかしら?」とユリさんが微笑んだ。
「もちろんユリさんや、エミちゃんレベルじゃないですけど。
小僧はその能力を持ってますから、人の話を聞く能力を。
だから授業を受けていれば、ある程度はそれだけで良いんですよ。
小僧は意外に思いますが、授業中は真面目なんです。
元来人の話を聞くのが好きだから、お喋りはその倍ぐらい好きだけど。
だから、成績は悪くないですよ・・ただ自分の好きな事以外は、学ばないだけです」
シズカが笑顔でユリさんに答えた、薔薇の微笑で頷いた。
「そうか~・・こんな風になるのか~・・美由紀は全てに対し、優しいね」と車椅子に乗ったシズカが微笑んだ。
「シズカ先輩・・」とまで美由紀が言った時に。
「美由紀・・礼など言うなよ、それは今の私を愚弄する行為だよ・・私の約束を忘れてないのなら」とシズカが笑顔で言った。
「もちろん、覚えてます・・私をいつか、両足で走らせてくれると言った言葉は」と美由紀は嬉しそうに微笑んだ。
「それが、美由紀ちゃんに対する・・シズカちゃんの目標なの?」とユリさんが驚いて言った。
全員が驚いてシズカを見た、シズカは笑顔で返した。
「目標というか・・美由紀は実験台です、きわめて短足だから。
そして前向きだから・・私の考えの間違えを指摘してくれる。
大切なモルモットです、私は美由紀に出会って・・自分のしたい事がわかりました。
出会った頃は、美由紀の笑顔が・・嘘ついていたから。
心の壁が、言い訳ばかりしてたから・・だからマシーンを作ってやった。
豊君と私の考える、飛行装置を・・壁も山も谷も越える物を。
美由紀は私達の予想の記録を、完全に塗り替えた・・だから私は約束しました。
美由紀に両足の義足をいつか作ると、そして私に夢を見せてくれたお返しに。
美由紀の夢である、走るという事を考えると・・いつの日か作り上げたい。
立ち上がり走る美由紀が見たい、その姿が地雷などという卑劣な武器で傷ついた。
善良な子供達の希望に繋がると思ってますから、それまではモルモットです。
飼育係は小僧が担当で、永遠に前向きでいさせるでしょうから。
私はたかだか足が無い事で、走れないとは思っていません。
世界記録レベルで走らせてやりたい、私の可愛いモルモット・・美由紀だから」
シズカが美由紀を見ながら、ニヤニヤで言った、シズカの言葉で。
「シズカ先輩・・短足とモルちゃんで、意地悪2点足しときます」と美由紀が笑顔ウルで言った。
「事実でウルするな・・小僧に洗脳されてるよ、美由紀」とシズカが笑った、美由紀も笑っていた。
「凄すぎるよ、シズカも美由紀も・・それで笑いあえる、信頼関係が」とカスミが微笑んだ。
「ならカスミ姉さん、測らせて下さいね・・その綺麗な足を、義足の設計図を作る時に」とシズカが笑顔で返した。
「もちろん良いよ・・良かったな~美由紀、最高のサンプルが側にいて」と不敵で威張った。
「はい・・出来れば胸も測って、義胸が欲しい」と美由紀が笑顔で返した。
「それは私も欲しいから、モルで実験して・・完成型を自分に使おう」とシズカが微笑んだ。
「シズカ・・私のも測って良いわよ」と蘭が満開で微笑んだ。
「ありがとう、蘭姉さん・・マニア向けに測っときます」とシズカが二ヤで返した。
「シズカ・・姉に対して・・意地悪3点」と満開ウルで返した。
「危ない宗教団体のように、小僧に影響受けている・・危険だ」とシズカが笑って、全員が笑った。
「ねぇシズカ・・車椅子に乗って感じる優しさって、どんな感じなの?」と蘭が満開で聞いた。
「またまた・・ケンメリのフルチューンに乗ってる人が。
ようするに物って、出来上がりは、使用者が使ってからなんですよ。
車でも有るんでしょ?使用者の乗り方で癖みたいなのが。
そんな感じがあるんですよ、作り手には分かります。
どんな風に乗ってるかは・・雑に扱えば、雑な感じになる。
不満があって乗れば、それを感じるんです。
だから大切に優しく乗ってれば、優しさを感じます。
それが作り手の喜びです・・それが楽しみなんですよ」
シズカが蘭を見ながら笑顔で言った、蘭も満開で頷いた。
「それは良く分かるよ・・車は特に癖が強く出るよね、同じ車でも全然違うよ」と蘭が満開で微笑んだ。
「ありますね~、クラッチでもブレーキでも・・車体の全体的な感じでも」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「じゃあシズカ・・どうしてユリさんが成績優秀だったと、確信的に思ったの?」とカスミが微笑んだ。
「それは・・例えばカスミ姉さんが、ユリさんを全く知らないとしても。
出会えば直感的に分かるでしょう、夜の世界で遥か上に存在する人だと。
それはその世界で真剣に、上を目指しているからだと思うんです。
そうでないと感じない、中途半端の世界の事は感じないと思っています。
私は今は学びたいから、その学ぶ世界で真剣だから。
その部分で圧倒的な人は分かります、ユリさんは圧倒的です。
そしてエミは衝撃的でした・・それだけは感じました」
シズカはカスミを見て、笑顔で言った、カスミも笑顔で返した。
「なるほど~・・分かりやすい・・律子さんの娘、シズカか~」とカスミが微笑んだ。
「そうですよね~・・律子母さんのイメージをシズカ先輩が。
勝也父さんのイメージを、マキ先輩が持っています。
小僧は小児病棟と施設の子供って、イメージですから。
私達後輩は、限界トリオの誰かに憧れたんですよ。
全員が各々違う・・自己完結をしますから」
美由紀が笑顔で言った、全員が笑顔で美由紀を見ていた。
「私はやっぱり勝也父さんなんだ・・少し複雑な心境」とマキがウルで言った。
「マキが男ならな~って言うのが、父の口癖です」とシズカが二ヤで言った。
「できの良い息子が欲しかったんだね・・勝也父さん」とユリカが私に二ヤで言った。
「口ごたえばっかりする、常識外の息子しかいないから・・かわいそうな父さん」と蘭が満開ウルで言った。
「でも父には最高の・・豊君がいますから~、物作りの継承者が」とシズカも二ヤで言った。
「贅沢と言えば、贅沢な事だな~」とカスミが不敵で言った。
「皆は感じねばならんぞ、今がどんなに良い時期なのかを。
エースのおかげで揃ったんだから、今、美由紀に会って確信したよ。
マキがPGに挑戦してくれた事も、シズカが来てくれる事も。
豊と恭子が来てくれる事も、そして何より。
勝也と律子が来てくれる事を、そして美由紀・・遠慮なしに顔を見せておくれ。
お前が伝える事は、素晴らしい事じゃね・・ワシはそう思ってる。
女性達にも、子供達にも・・だから顔を見せてくれよ。
ワシらはいつでも歓迎するから、美由紀にも刺激になると思ってるからの」
マダムが笑顔で美由紀に言った、全員が笑顔で頷いた。
「ありがとうございます・・私、遠慮はしない女ですから。
ご好意に甘えるのが得意技です、私も見たいですね。
皆さんの全力の姿を、そしてお会いしたい・・由美子ちゃんのお母さんに」
美由紀も笑顔で言った、マダムの嬉しそうな顔があった。
「美由紀・・タイヤの右側が磨り減る原因は?」とシズカが真顔で聞いた。
「身体バランスの問題だと思っています、やはり利き腕が強いからじゃないかと」と美由紀が笑顔で答えた。
「短足は何センチ差だったっけ?」とシズカが二ヤで聞いた。
「正確には・・右が9mm長いです、1年前のデーターですけど」と美由紀が笑顔で答えた。
「大きいよな~・・9mm差は」とシズカが車椅子で回転しながら言った。
「9mmが・・大きい差なんだね」とハルカが少し驚いて言った。
「大きいですよ・・特に非力な女子には、女は男に比べて身体的バランスが悪いから」とシズカが笑顔で返した。
「それは悪いよな~・・生きる上でも、難問だよ」とカスミが微笑んだ。
「そうですね~・・矯正は出来ませんから、理解して対応するしかないですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
シオンとレンとハルカが、聞きたそうな顔をしていた。
「3人でそんな顔をして~・・シズカ、詳しく説明せよ」とカスミが笑顔で言った。
「女子は胸が有りますから、胸はご存知の通り左右対称じゃありません。
諸説あるみたいですが、血流が違うからとか・・心臓を守ってるなんてのまで。
まぁ重さの違いは、何gの世界かもしれませんが、その何gでバランスが崩れるんです。
だから一流の短距離選手には、豊満な胸の人は殆んどいません。
幼い頃からそれを目指すと、体が感じて、大きくなるのを拒絶するんでしょうね。
競技を引退して、いきなり大きくなる人もいるみたいです。
人間は自立式2足歩行型ですから、バランスの僅かな違いでも大きいんです。
その体のバランスを取るのは、背骨ですよね・・だから背骨が曲がる人がいます。
背骨は無数の小さな骨が、弾力材のようなクッションで繋がれてます。
だから各部位で受ける力が左右非対称だと、クッションが変わってくるんですよ。
靴の擦れ方だけでも分かりますよ、自分のバランスがどっちに向いてるのかが。
この車椅子・・YUTAKAⅡに対する、豊君のテーマはバランスでした。
だから車輪を繋ぐシャフトを支えるリング、その左右の精度にこだわりました。
多分0.何ミリの世界です、プロが本気で仕上げる時は0.0何ミリでしょうね。
そして溶接も見えない所までこだわっています、最終的にバランスを保つために。
手を抜いても全く問題ない箇所も、美由紀が見ることは絶対にない部分でも。
手を抜かない・・なぜならば・・自分が見てるからなんです。
豊という人間は、それだけはしません・・自分を誤魔化す事だけは。
そして納得いくバランスで、固体が完成してからが、本当の仕上げです。
使用者が乗って分かる、少しのバランスの違い・・それを改良していく。
そこからが仕上げなんです・・物を作るという行為の仕上げ。
美由紀がどんなに問題無いと言っても、擦れていく過程で証拠が残る。
美由紀が動くときに無意識で調整する、その無意識まで消してやりたい。
完全バランスは無理だなんて、口が裂けても言いたくない。
私の物作りの師匠である、勝也も豊もそれを許さないから。
私が自分で見てるのに・・自分を誤魔化す事は出来ません。
だから美由紀の体のバランスまで考慮する、そうしないと行けない。
次のテーマに移行出来ない、次を楽しみたいなら・・前を誤魔化さない。
それが大切だと・・最近気づきました、美由紀のおかげで」
シズカは最後に美由紀に微笑んだ、美由紀も嬉しそうに笑顔で返した。
「か~・・シズカ、ありがとな・・大切なヒントまでくれて」とカスミが微笑んだ。
「小僧が内心怒ってます・・小僧の者作りを進ませたから~」とシズカが二ヤで返した。
「シズカ・・今の小僧のもの作りの、ものの漢字表記は?」とユリカが爽やか二ヤで聞いた。
「もちろん・・人を表す・・者です」とシズカが笑顔で言った。
「自分が常に自分を見てる、だから誤魔化さない・・本当に素晴らしい事ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ユリさんの、その言葉が最高に嬉しいです・・完全バランスに、一番近い人の言葉だから」とシズカが嬉しそうに笑顔で返した。
「面白いでしょ~、シズカ・・エミに何を教えるのやら」とマキが微笑んだ。
「私の考えてきた、学は・・全部教えるよ、託して余りある存在だから」とシズカが返した。
「エミはユリの果たせなかった、もう1つの夢を叶えるかもしれんな」とマダムが言った。
「なんなんですか?・・マダム」とハルカが聞いた。
「東大合格じゃよ」とマダムが笑顔で言った、全員がユリさんを見た。
「無茶したんですよ・・相当無理しました」とユリさんが薔薇テレで言った。
「私には、わざと落ちたような気がしますね~・・実は行きたくなかったとか、別の夢があって」とシズカが二ヤで言った。
「シズカ・・二ヤはやめなさい、考え過ぎですよ」とユリさんが薔薇で笑った。
『動揺しましたね~・・怖い人だ』と私が二ヤで言った。
「エースが言うと、本当にそうみたいでしょう・・ユリカは黙ってなさいよ」とユリさんが笑顔で返した。
全員が二ヤでユリさんを見ていた、楽しそうに笑う薔薇の笑顔を・・。
シズカの言った、自分が見てるから、誤魔化さない。
豊を的確に表した表現だった、豊かは美由紀の為でもあったが。
存在する物が、あまりにお粗末な物しか無かったので、夢中になったんだろう。
後に豊を車椅子のメーカーの人が訪ねた、その時に豊は自分の技術を無償で渡した。
それにより車椅子が少しでも改良されれば、それで良いだろ。
そう豊は笑顔で言った、その為に時間を費やしたんだと言うように。
蘭がケンメリを豊に託すようになって言った、安心感が上がったと。
改造車として、どっかに負荷がかかる感じが、小さくなったと。
豊が目指すもの・・それは完全バランスである。
人としても・・心と体のバランスにこだわった。
自分に対し正直に生きる事で、作り上げた・・そのバランス。
栄光を拒絶する者・・修羅場に選ばれし者・・豊。