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愛無きルール

小鳥達も学校が始まったのだろうか、早朝からチュンチュンと歌っている。

朝陽の熱量は夏の主張が強いが、吹き抜ける風に爽やかさが乗ってきていた。

南国の夏はゆっくりと進む、爽やかな秋にバトンを渡すまで。


私は小鳥の校歌斉唱で目覚めた、蘭は熟睡状態で二ヤ顔だった。

私は洗面所に行き、歯を磨き顔を洗った。

キッチンでご飯を確認して、卵焼きを焼いて、納豆と味付け海苔を用意した。

まだ時間が早かったので、部屋で日記を書いていた。


「おはよ~・・日記毎日大変だね、書くこと多くて」と満開で微笑んだ。

『うん・・大変・・はい、蘭』と二ヤでプリントを渡した。

「ドキッ!」と言葉で言って、真顔で受け取った。

プリントを読みながら、段々と満開笑顔になっていった。

参観日のお知らせプリントだった、蘭は読み終わり楽しそうに洗面所に向かった。


私は朝食の準備をして、日記を書いていた。

「素敵~・・和食も良いよね~」と満開で微笑んだ。

『蘭の気持ちは分かってるよ、炊飯器のタイマー炊きの意思は』と二ヤで返して食べていた。

「実はかなり羨ましかった・・ユリカ姉さんの、あの絵」と蘭が満開に微笑んだ。

『そうだね~・・あれは宝物だよね』と笑顔で返した。

「うん・・私も会いたくてたまらない、ミホと沙紀と由美子に」と満開笑顔で言った。

『うん、俺は蘭とユリカは心配してないから、ユリさんは完璧だったし』と笑顔で言った。

「でも、一応教えといて・・ユリカ姉さんも聞きたいはず」と蘭が真顔で言った。

強い波動が返ってきて、私は真顔で頷いた。


『ミホは、全く問題無い・・笑顔で話しかければ。

 ミホは無表情だし、今は何も返して来ないから。

 沙紀は・・あの病気特有の、視点が定まらないんだよ。

 だけど話す時は全体的に、瞳を見て話すんだ。

 これが案外難しい、人は目を逸らしたくなるからね。

 そして由美子・・それは覚悟していて欲しい。

 病室には、ありとあらゆる医療機器が置いてある。

 そして由美子の体には、栄養摂取の為の管や、排泄の為の管。

 それが無数に伸びている、初めて見ると衝撃なんだよ。

 今日、マキと話せる時間があったら、マキに聞いて。

 その対応力は、俺の知る中で・・マキとシズカ最も優れてる。

 由美子は鋭すぎる感性を持っている、だから瞬時に感じる。

 少しでも心が引いていたら、その相手を受け入れない。

 そこが肝心・・だからマキに聞いて、マキはその覚悟が表現できるから。

 大丈夫・・俺は蘭もユリカも、何の心配もしてないよ』


真剣な蘭の顔を見ながら、最後は笑顔で言った、強い波動が了解を示した。

「凄く大切な経験になるんだね、生きる意味として」と蘭が真顔で言った。

『絶対に何かを感じるよ・・常日頃意識してない何かをね』と笑顔で返した、蘭も満開に戻り微笑んで頷いた。


私は支度をして、蘭の満開に見送られ、チャリに乗り出かけた。

少し爽やかになった風を受けて、快調に漕いでいた、朝陽に輝く町並みを。

洋風の家のガレージに、チャリを押し込み、笑顔で玄関を開けた。


『みゆ~きちゃん・・がっこ行きますよ~』と声をかけた。

「ちょっと待って~」と美由紀の声がして、母親が牛乳を持ってきてくれた。

「汗かいたでしょ・・はい、筋肉増強剤」と笑顔で言って差し出した。

『さすが・・節子は朝から、素顔も美しいな~』と笑顔で受け取り、一気に飲んで返した。

「むむ・・戻ったの、昨日も感じてけど・・強まってるね」と笑顔で返された。

『うん・・ミホに会ってる』と真顔で返した。

「小僧・・頑張れよ、最近で一番嬉しい話だよ」と節子が微笑んで、奥に消えた。


「そうなんだね、ミホちゃんに会ってるんだ・・よし、私が毎日学校で回復してやる」と美由紀が笑顔で言った。

『キスで回復して・・美由紀の唇で』と二ヤで言って抱き上げた。

「それが必要だと感じたら、迷わずするから・・覚悟しな」と耳元に囁いた。

『楽しみだ~・・元気出てきた』と笑顔で返して、車椅子に乗せて出かけた。

ユリカの楽しげな波動が何度も押し寄せて、背中を押してくれた。


「さぁ・・今日から物語を聞かせて、家出シーンから」と美由紀が振り向いて笑顔で言った。

『夏休みに入った直後、俺は親父の大切なカメラを持って・・シティのプールに・・・』私は美由紀に物語調に話始めた。

美由紀の背中は優しさが出ていて、私は素直に自分の感情まで込めて話していた。

【それが必要だと感じたら、迷わずするから】美由紀のこの言葉に、どれほど勇気を貰っただろう。

私はその後、卒業するまで・・一緒に登下校する時は、美由紀に話した。

その行為が私に気づかせてくれた、私の間違いを。

美由紀の笑顔と涙が教えてくれた、それで良かったんだと伝えてくれたのだ。


緩やかなスロープを登り、教室に入った、楽しげな声が響いていた。

「小僧・・遅い、マコさんが来てる、公園に」とバルタンが飛んできた。

『それで・・何の用事かな?』と笑顔で返した。

「分からない・・今、ノリがギブスのまま行った」とバルタンが言った。

『番長行ったんなら、いいじゃん・・そんな怖い話じゃないよ』と二ヤで返した。

「ん~~・・そうだとは思うけど」とバルタンが考えた。

『バルタン・・はっきり教えろ、そうすれば行くから・・どこまでやられた、バルタン?』と強く聞いた。


「押し倒されて・・キスされそうになった」とバルタンが悔しそうに言った。

『バルタン・・ノリ番長が好きなんだな?』と優しく囁いた。

「うん・・そうかもって・・思ってる」と俯いて恥ずかしそうに言った。

「小僧・・レッツゴ~・・怪我するなよ、抱っこ出来なくなるから」と美由紀が微笑んだ。

私は頷いて、駆け出した・・公園に向けて。


学校横の小さな公園に、ノリ番長とマコちゃんとミチオの姿が見えた。

私は笑顔で歩み寄って、ノリ番長の後ろから、ミチオを見ていた。

「小僧・・久しいの~」とマコちゃんが笑顔で言った。

『マコちゃん・・またかっこ良くなったね、女だな』と笑顔で返した。

「まぁそんなとこだよ・・お前が俺に喧嘩売るって言ったから、この馬鹿が焦ってな」と真顔で言った。

『うん・・その馬鹿が分からないようだから、それしかないね』と真顔で返した、ノリ番長が慌てて私を見た。


「そうだよな~・・こいつらの責任は俺にあるよな」とマコちゃんがミチオを見て、振り向いた。

「ノリ・・すまんかった、ミチオに2度と手を出させん・・本当に悪かった」とマコちゃんが頭を下げた。

ミチオも慌てて頭を下げた、ノリ番長は驚いて固まっていた。

『どうする番長・・許せないなら、全面戦争になるよ』と静かに言った。

「マコトさん頭を上げて下さい・・ありがとうございました、俺も生意気でした」とノリ番長が頭を下げた。

『じゃあ手打ちだね・・俺、清次郎に怒られるから、ダッシュで帰りま~す』と笑顔で言って、走り出した。

校舎の窓から生徒達が大勢見ていた、そして正門の横の木陰で極マサと鬼瓦が見ていた。

そんな時代だった、だから強く伝わった・・行動に対する責任の重さを。

豊世代の当時の3年生にとって、無益な暴力は恥だとされていた。

それをやる事は、豊の顔に泥を塗り・・豊に喧嘩を売る行為だと、悪達は思っていた。


教室に帰ると、清次郎が朝の挨拶をしていた。

「おや?・・おやおや?・・美由紀と登校してたよね~小僧君」と清次郎が二ヤで言った。

『花壇のお花が枯れそうで、お水を飲ませていました・・偉い?』と笑顔で聞いた。

「ほ~・・皆も見習うように、公園の花にも愛情を注ぐ小僧を」と笑顔で返された。

どっと笑いが起きて、私は照れた笑顔で頭をかいて誤魔化した。

ユリカの波動が笑っていて、美由紀も笑っていて、私も嬉しかった。


それから、退屈と戦って・・悪質な原作者のシナリオ【お昼寝】と真っ向勝負した。

ギリギリ勝利して、美由紀と下校しながら、話の続きをしていた。

この時に使った仮名を・・この作品に全て採用した。

美由紀を家用の車椅子に乗せて、母親が持ってきたカスピスを一気に飲んで。

美由紀と母親の笑顔に見送られ、アパートに向かってチャリを漕いだ。

部屋に帰り、シャワーを浴びながら、悪戯をした。


《なんだ~・・ここに生えてるの・・これはもしかして!》と強く心に囁いた。

強い波動が動揺を示して、私はニヤニヤでシャワーを浴びて。

《ユリカのエッチ》と囁いて、何度も来る言い訳の波動を楽しんでいた。

着替えてバスで出かけて、カスミに手を振り、靴屋で蘭に手を振った。

その時にユリカに腕を掴まれた、爽やかテレで微笑んだ。


「蘭・・スペシャルで良い?・・マキ講座聞くでしょ?」とユリカが蘭に微笑んだ。

蘭が満開笑顔になって頷いて、【10】とサインを飛ばした。

『あと10分だって』とユリカに笑顔で言った。

「先に行ってるね~」とユリカが爽やか笑顔で言って、ユリカと腕を組み弁当屋に向かった。

スペシャル幕の内を3個買って、ユリカが支払いPGに向かった。


「学校だけで、笑い死にそうなんだから・・変な悪戯しないの」と睨まれた。

『ユリカのエッチ』とニヤニヤで返した。

「修行決定」と爽やか二ヤで返された、私はウルウルで返してTVルームに入った。


TVルームには、マダムとユリさんに裏方4人組がいて、マリアはお昼寝していた。

ユリカが挨拶して座った、私もユリカの隣に座った。

「ユリ姉さん・・少し寝不足ですね」とユリカが爽やかに微笑んだ。

「あれから、ローズで3人で盛り上がって・・3時でした」と薔薇で微笑んだ。

「リアン、完全復活しましたね・・強烈な演出もするし」とユリカが私に二ヤをした。

「そうですよ~・・あそこまで火力を上げて、火曜の魅宴が怖いです」と薔薇で微笑んだ。

「最後にリアン姉さんの一番素敵な部分を、確認させるしね~」と蘭が満開二ヤで入ってきた。

「あの台詞は感動しました・・全裸で抱いてやる、リアンにしか言えません」と薔薇で返した。

ユリカも蘭も笑顔で頷いた。


「マキ・・今日はマキにお願いがあって・・私とユリカ姉さんが・・・」蘭がマキに話をした。

マダムもユリさんも4人組も真剣に聞いていた。


「・・・ユリ姉さんは完璧に出来たらしい、私は自信が持ちたい。

 中途半端な気持ちでは、会ってはいけないと思ってる。

 だからマキ・・教えて、アドバイスして・・心が揺れないように」


蘭が真剣にマキに話して、ユリカも真顔でマキを見ていた。

「マキ・・私達からもお願い、大切な事だから」とシオンが言った、美しい真顔で。


「私はヒトミに会う時に、小僧に同じ事を言われました。

 その事を限界トリオ3人で話しました、どう覚悟すれば良いのかを。

 実はその部分で最も優れているのは、恭子なんです。

 恭子はイメージで物事を見ません、だから漠然とした恐怖など持っていない。

 だから私たちにヒントをくれる為に、ヒトミに会いに行きました。

 そして帰ってきて、笑顔で言いました。

 全然大丈夫だよ・・だってあれはヒトミにとって、良いことなんだから。

 あれをしてもらえるヒトミは、幸せなんでしょ・・してもらえない子供もいるんだから。

 それで亡くなった子供も沢山いるよね、お金や設備や技術が無くて。

 どうして動揺するの?・・幸せな事なのに、私はそっちの方が分からないよ。

 恭子は笑顔で言った、私もシズカも何も返せなかった。

 それが真実だから、それを見て動揺するのは。

 自分勝手な、独善的な考えだと言われたと思いました。

 その日の夜、整理しようとシズカと約束して、考えました。

 考えてると、恭子が笑うんです・・瞑想に出てきて。

 考える事なの~・・何を考えて、何を正すの~。

 そう言って笑うんですよ・・私は段々悔しくなって、考えないって叫んだ。

 そしたら恭子が、正解って笑って消えた。

 私はそれでハッとして気づきました、考えては駄目なんだと。

 小僧を見ろと、何も考えずに飛び込んで・・それから考えると。

 ユリカ姉さん、蘭姉さん・・それなんです。

 自信を持ちたいとか、ここを気をつけようとか・・その想いが間違いなんです。

 あの病の少女は、鋭すぎる感性ですから。

 心のままに会うしかないんです、自分をさらけ出す覚悟で。

 考えを捨てて、人と人の純粋な出会いとして。

 それが大切なんだと、私は思っています。

 アドバイスになりませんけど、それがエースの言いたい事ですよ」


マキは真剣に流れるように言葉にした、全員が真剣に聞いていた。

「マキ・・最高のアドバイスだよ、ありがとう」とユリカが爽やか笑顔で言った。

「すごく良く分かった・・小僧じゃ無理なんだね、小僧は恭子と同じだから」と蘭が満開で微笑んだ。

「最近大切な話が多すぎて、整理しないと」とハルカが笑顔で言った。

「恭子も欲しい」とユリさんが呟いた。

「ユリ・・最近そればかりやぞ、北斗まで復活するのに」とマダムが二ヤで言った。

「シズカと恭子を感じると、欲しくなりますわ」と薔薇テレで返した。

全員に笑顔が戻って、私たちは弁当を食べていた。


「セリカは何時から?」とユリカが聞いた。

『2時過ぎに行こう・・ゴールドのフロアーでやるよ、その方が素直に泳げるから』と笑顔で返した。

「いよいよ、セリカちゃんも次の段階ですね・・先生、シオンは?」とニコちゃんで言った。


『シオンは来週早々に・・沙紀にシオンを会わせて、シオンを描いてもらう。

 昨日のユリカの絵で感じた、沙紀は感じる・・その内面まで。

 だからシオンしか出来ないかも知れない、沙紀の前に座って描いてもらえるのは。

 シオン・・お願い、沙紀にもとっても良い事だから』


私は最高ニコちゃんシオンを見ながら、笑顔で伝えた。

「先生・・ありがとう・・シオン最高に嬉しいです」とニコニコちゃんで言った。

『うん・・シオンよろしく』と笑顔で返した。

「相互効果・・絶大だね、怖い気がする」と蘭が満開で微笑んだ。

「蘭、エースのこの上がり・・それにはもう一人登場してない、重要人物がいるんだよ」とユリカが爽やか二ヤで言った。

「マキ・・重要人物を述べよ」と蘭が満開で促した。


「両足を付け根から失っても、明るく前向きな可愛い少女。

 エースの同級生で、学校のアイドル。

 その名は・・美由紀です」とマキも笑顔で返した。


「本当にマキも凄いね~・・言われた事の意味を、すぐに理解して言葉にできる」とレンが微笑んだ。

「いるんですね・・エースを学校で見守る女性が」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「いますね~・・その存在は圧倒的です、エースの心を浄化するほどの」とユリカが微笑んで返した。

「マキお願い・・美由紀第一章」と蘭が満開笑顔で言った。


「皆さんお気づきかと思いますが、エースの話には昨年があまりありません。

 それは全てを注ぎ込んだから、全員が1つになって同じ目標に挑んだからです。

 美由紀は小学校に上がる前に、事故で両足を付け根から切断しました。

 小学校は特別な学校に通っていました、でも本当に前向きな明るい少女です。

 美由紀は月に何度か、あの総合病院で検査を受けていました。

 そして夏休みに出会ってしまう、小児病棟に美由紀が訪ねてきて。

 エースに会ってしまうんです、エースはいつもの調子で話して。

 自分と同じ学年で、校区も同じだと知るんです。

 そして母親とも仲良くなって、過ごしていきます・・エースがヒトミに会う前位です。

 エースは美由紀の家にも遊びに行って、もうそれは恋人のように接する。

 そして美由紀もその想いを返す、エースがミホで挫折した時に。

 エースの心を守り続けたのは、美由紀なんです・・その前向きな心で。

 だからエースも自傷の女神に、向き合えたんだと思います。

 その間も・・今でも美由紀は、エースの守り神でしょう。

 そして昨年の春が過ぎた頃、美由紀に届くんです。

 中学の案内が、その時に始めてエースは美由紀の涙を見る。

 普通の中学に行きたいと、母親にすがりつき泣くんです。

 エースはその姿が耐え切れず、約束します・・必ず行かせてやると。

 そう誓って、美由紀を豊君と私達3人に会わせるんです。

 そして豊君が見せます、その意志を・・美由紀の車椅子を研究するんです。

 徹底的に、軽くして強度を上げて乗りやすく・・それを始めます。

 私達3人は担任に相談しました、その時の担任・・今のエースの担任。

 林 清次郎という、話の分かる最高の教師に・・シズカが詰め寄る。

 どうして受け入れられないのかと、その迫力は怖かった。

 清次郎先生は調べてくれました、そして教えてくれました。

 自分で教室の移動が出来て、自分でトイレに行けて。

 介助できる者が常に存在する、それが決まりになっていると。

 そして今からでは、予算が取れないから・・現状で組織に頼むのは無理だと。

 シズカは悔しさを滲ませて、その時は引きました。

 そしてそれをエースに話しました、エースは考えていました。

 そしてエースが見せます、美由紀に対する愛の深さを。

 エースが土下座するんです・・勝也父さんに。

 そして頼むんです、設計図を書いて欲しいと・・車椅子で上がれるスロープの。

 そう真剣に頼みました、勝也父さんは・・分かったと言って受けました。

 そして勝也父さんが、シズカに渡すんです・・この角度なら問題ないと。

 シズカはそれで始めます、私達2人も手伝って・・測量をするんです。

 もちろん専門知識もないから、徹底的に測って・・シズカが徹夜して作った。

 1階のこの教室なら、可能だと言って・・設計図を作って清次郎先生に渡します。

 清次郎先生は笑顔で受け取り、校長も交え教師全員で会議を持ってくれました。

 翌日・・清次郎先生は朝礼で言いました、卒業制作を発表すると。

 夏休み少し前の頃でした、そして黒板に書いた。

 教室のスロープ・・・そう強く書きました。

 私は初めて見ました、その級友全員の歓喜の声を聞いて・・学校で泣くシズカを。

 そして夏休みになり、教師総出で・・生徒も他のクラスからも出てきて。

 土を盛り、固めて、作業をしました・・全員で・・受験生が。

 資材は家にある者が持ち寄って、土木関係の父親がアドバイスして。

 そして最後に勝也父さんが、コンクリートミキサーで乗りつけた。

 余ったから・・捨てるのもったいないから、くれてやると笑顔で言った。

 完成した時に、皆で泣きました・・生徒も教師も。

 そして2年生の技術の時間で、木工製作のテーマが階段に備え付ける傾斜版でした。

 2年生男子が全員で取り組みました、校内の段差を女子が測って。

 1階の全てをそれで繋ぎました、理科室も音楽室も保健室も。

 それを1年生が車椅子に乗り実験して、ベストな配置で全て備え付けた。

 全校生徒の力で校舎を結んだ・・車椅子の道を。

 そして豊君の挑戦が始まる、試作車を持ってきて・・自分で乗って試す。

 改良に改良を重ね、作りだす・・YUTAKAⅠと呼ばれる車椅子を。

 美由紀の中学を決めなければならない、その期日ギリギリ12月に全て完成します。

 美由紀が母親と学校に来て、号泣するんです・・私達はそれを見て嬉しかった。

 そして審査官みたいな人の前で、美由紀が教室に上がれるかのテストがありました。

 そのYUTAKAⅠに乗った美由紀は、スムーズに上がって見せました。

 全校生徒が拍手で、美由紀を称えた・・美由紀は笑顔で返しました。

 そして卒業生が積み立て金で、改良してくれたトイレも合格した。

 教室の移動も完璧に出来ました、美由紀は終始笑顔でした。

 そして介助の項目がきました、教師ではそれになれないという。

 公務員が馬鹿な頭で作った、愛の無いルール・・その大問題。

 美由紀は体の大きな方で、どうするのかと皆が思っていました。

 そこにやって来ました、その想いを叶えるために・・エースが。

 全ての時間をそれに費やし、病院の専門家に徹底的に指導を受け。

 そして体を鍛え上げた、エースが愛無きルールに挑みました。

 全ての条件をクリアーしたエースは、美由紀を抱いたまま。

 一回転して、頭を下げました・・美由紀は笑顔を振りまいていました。

 エースの体は、ブルース・リーに憧れたからじゃない。

 そんな事では、あの歳であの体は作れない。

 あの体は愛の表現方法だから・・だから出来上がった。

 愛無きルールに対して挑戦した、全てを投げ出し・・全てを賭けて。

 その全ての愛に、美由紀は今でも応え続けています。

 車椅子に座り笑う美由紀が、どれほど生徒に勇気を与えるでしょう。

 美由紀は2度と泣かないでしょう、見せてくれたから。

 本当の愛情を見せてもらえたから、笑顔で応援するでしょう。

 素敵な愛する、仲間達を・・いつまでも。

 私達にとって・・あの校舎が誇りです。

 強い気持ちで成し遂げたから、豊君に対し1つの答えを出せたから。

 エースの抱っこの意味・・その安心感・・それは愛で出来ているからです」


マキは最後は泣きながら伝えた、私は嬉しかった・・その表現が。

「ありがとう、マキ・・それが第一章なの?」と蘭が涙を流して聞いた。

「はい・・序章です」とマキが笑顔に戻って返した。

「私は贅沢な事をされてるんだね・・毎日抱っこしてもらって」とユリカも潤む瞳で微笑んだ。

「そうでもないですよ・・抱っこ趣味ですから」とマキが微笑んで返した。


「第二章が楽しみです」とシオンが微笑んだ。

「シオン姉さん・・第二章はさらに泣けますよ、エースを復活させる美由紀ですから」とマキが微笑んだ。

「それは素敵です~・・楽しみです」とニコちゃんで返した。

「マキやめて・・もう昼休みが・・聞きたい衝動が怖いから」と蘭が満開ウルで言った。


「美由紀に会いたい・・私は美由紀に合格しないといけない」と蘭が私を見た。

『参観日に来るんだろ・・蘭』と笑顔で返した、蘭も満開で頷いた。

「まぁ素敵・・参観日は蘭が行くんですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「蘭・・仕事休めない時は、私が行くからね」とユリカが爽やか二ヤで言った。

「あれ・・私は2人で行こうと思ってたのに」と満開二ヤで返した。

「可愛い妹~」とユリカが笑顔で蘭に抱きついた。

「ユリカと蘭が参観に行ったら、教師も男子生徒も全員見に来ますね」とユリさんが私に薔薇二ヤで言った、私はウルウルで返した。


「それは怖い・・想像を超える」とレンが微笑んだ。

「レン・・怖いの意味を述べさせるよ~」とユリカが爽やか二ヤで言った、レンはウルウルで返していた。


蘭が靴屋に帰り、4人組が仕事に向かった。

「さて・・今夜から大変です、北斗姉さんの復活・・想像すらしたこと無かったです」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「私も自分の店に立ってくれると聞いて・・緊張してます」とユリカが爽やかに微笑んで返した。

『あっ!・・肝心な大ママに話してない』と思い出して言った。

「ゴールド行く前に、報告しますかね」とユリカが微笑んで立った、私も笑顔で立ち上がった。

「エース・・由美子と沙紀とミホを頼みますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


『ユリさん・・シオンが終わったら、沙紀にはマリアを借ります』と笑顔で返した。

「もちろん・・相互効果なんでしょう、律子姉さんの言葉で気づきました・・あなたならいつでも、マリアの言葉は引き出せるのね」と真顔で言った。

『どうでしょう・・私はマリアに教えられるばかりだから』と笑顔で返して、TVルームを出た。


夏の陽射しが降り注ぐ、通りをユリカと腕を組んで歩いた。

土曜日の期待感に包まれる夜街を、その物語の幕開けを待っているようだった。

魅宴の裏口から入り、フロアーに向かった。

土曜の打ち合わせを、大ママ・ミコト・リョウ・ミサキとヨーコでしていた。


「大ママ・・少し報告があって」とユリカが笑顔で言った。

「まぁおいでよ・・また泣かそうと思っても、駄目だよエース」と二ヤで言われた。

『そんなたいした事じゃないよ・・派遣登録1号が出来て、魅宴もどうかと思って』と笑顔で言った。

「経験者なんだね?」と大ママが微笑んだ。

『うん・・俺的には、実力は未知数だし、ブランク長くて・・今一押せなくて』と真顔で言った。

「それは難しいね~」と大ママも真顔で考えた。

『そうだよね~・・じゃあ魅宴は保留にします、PGで様子見るよ』と二ヤで返した。

「エース待ちな・・その二ヤは・・その子の源氏名を教えて?」と真顔で言った。

『変な源氏名で・・誰がつけたのか・・北斗って言います』と笑顔で答えた。


「本当の話だろうね・・ユリカ?」と大ママが驚いて言った。

「はい・・私はOKして、今緊張してます」とユリカが微笑んだ。

「エース・・良くやった、もちろん魅宴もOKだよ・・PGの歴史に残るNo1だからね」と大ママが嬉しそうに微笑んだ。

『全盛期の飛鳥に、10代で真っ向勝負を挑んだ女だし・・皆さんお楽しみに~』と二ヤで言った。

「く~なんか悔しい・・リョウ、エースをこらしめて」とミコトが二ヤで言った。

「ユリカ姉さんが付いてるのに・・無理です」とウルで返した。

「根性ないね・・やっぱり最終兵器・・ヨーコ行け」とヨーコに二ヤをした。


「エース・・何か今の状況話したでしょう。

 さっき若草通りで・・美由紀とお母さんに会ったよ。

 美容院の後、靴屋に行きたいって言ってたよ。

 どうして美由紀が、靴を見たがるのかな~」


ヨーコが二ヤで言った、私は驚いていた。

「ヨーコ、良くやった・・動揺したねエース」とミコトが微笑んだ。

『うん・・少し』とウルで返した。

「なんで毎日が、こんなに楽しいの~」と言ってユリカが引っ張った、私はウルウルで5人と別れた。

光射す通りに出て、ユリカのご機嫌笑顔を見ていた。


『ご機嫌ですね・・姫』と笑顔で言った。

「会える気がする、車椅子の守護者に・・その前に、セリカを水冷にするよ」と爽やかに微笑んだ。

深海の瞳が輝いて、夏の光を押し返した。


9月の最初の土曜日が、動き出していた・・ドラマの配役を揃えた。

原作者は台本も演出も無しに、舞台に上げる・・感じたままに動けと囁いて。

出会いの輪廻が速度を増し、夢舞台は幕を上げる。

後悔も挫折も悲しみも・・道連れにして・・。


美由紀の第一章、私も他人事のように聞いていた。


私の知らない部分も多かった、シズカの強い意志を感じていた。


美由紀はその想いに、何倍もの想いで応えた。


だから私達同級生は、甘えも挫折も経験しなかった。


美由紀と比べていたから、その過酷な事実と向き合い続ける姿を見ていたから。


挑むべき壁が見えたら、怯む事無く真っ向から挑めた。


美由紀が車椅子に座り、笑顔で細かく拍手してくれるから。


「まさか、まさかと思うけど・・・」と2度強く言う口癖で、背中を押してくれるから。


全力で挑み、敗北した時は・・動かずに待っててくれたから。


だから・・美由紀を押すために、立ち上がり前に進めた。


卒業アルバムの、最後の思い出写真の真ん中に、真赤なマシーンに乗る美由紀が微笑んでいる。


左手の親指を立てて、こっちを見ている・・私達は辛いことがあると開く。


美由紀が【頑張ったね】と・・親指を立てて微笑んでくれるから。


それだけで・・次に進めるから・・それだけで・・強くなれるから。




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