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従順

ルールは自らが自らに課す、何の罰も罪さえ、問われないであろう。

だが守らねばならない、それだけは絶対に。

そうしないと、舵が利かなくなるのだ。

流れは必ず楽な場所に向いている、流されだしたら止まらない。

常に心に《面舵一杯》と、指示を出してから。

心に問う、そこが目指す場所か?・・・辿り着きたい世界なのかと・・・。


受付のケイの所へ、裏の小さな潜り戸を抜けて向かった。

『ケイ姉さん、カスミ姉さんがすぐ出れるそうです』とケイに報告した。

「ありがとう、最高のタイミングだわ」とケイが言って、リンさんを見た。

「これで大丈夫ね、場も暖まった所だし」リンさんも一安心という感じだった。

「ユリさんに、報告はいいですよね?」ケイが聞いた。

「カスミなら、問題ないわ」そうリンさんが微笑んだ。


私は指定席に座り、ケイに開封を頼まれた、タバコのカートンを開封していた。

私の真後ろの、銀の扉が開くのを背中で感じた。

【カツ・カツ・カツ】ピンヒールの床を鳴らす音が響き、私の顔の真横で止まり。

深々とお辞儀をした、神聖な場所に敬意を示すような感じだった。

私は見上げた、黒い体の線を強調する、タイトなドレスを纏ったカスミを。

カスミはゆっくりと顔を上げ、正面を見て微笑んで、僅かにモンローウォーク気味に戦場に踏み出した。

カスミを確認しユリさんと、蘭が動いた。

お偉いさんであろう人の間に、カスミの戦場を作った。


「紹介の意味よ、カスミ姉さんフロアーに出てまだ3ヶ月だから」ケイがいつの間にか私の横にいて、そう言った。

『そうなんだ~』と私はカスミの輝きを見て呟いた。

「見た感想は?」ケイは興味津々の表情だ。

『なんか、心が戦闘態勢に入った、そうしないと生き残れないって感じがしたよ・・その位の迫力が体全体にあった』と私は正直に言った。

「ふ~ん、会話ロボットの先生今後ともよろしく」とケイが笑顔で言った。

『ヨ・ロ・シ・ク』とロボット語で言うと、ケイも笑顔で。

「今は暇だから、見てるといいよ、今まで重鎮の場を、静かにユリさんと蘭姉さんが暖めてたから」ケイはそう言って、10番席の戦場を見て。

「カスミ姉さんの登場で、一気に沸点まで持っていくはずよ、蘭姉さんがね」そう言って受付に戻って行った。


私が見ると、確かに四季が担当してる若いお客の方は、その時点で笑顔が溢れ、かなり盛り上がっている。

お偉いさんの方は、静かに会話を楽しんでいる感じだった。

ユリさんと、蘭とカスミに囲まれたその場所は、《破壊力抜群だな》と思い見ていた。

見ていると笑顔が増え始め、蘭が急に立ち上がり、カスミの胸の谷間を覗き込んだ。

カスミは胸を張って威張って見せている、蘭は自分の胸に手を当てて、俯いて顔を両手で覆って泣きまねをした。

ユリさんは薔薇で微笑んでいる、お偉いさんが本当に楽しそうに何かを言って。

皆が笑顔で盛り上がり出した、沸点を目指して、蘭は炎のスイッチを入れたなと思っていた。

【それが金を取る、仕事というものや】ユリさんが教えてくれた、マダムの言葉を思い出していた。


午後8時を過ぎると徐々にお客も、女性も増えはじめ。9時には満席状態だった。

「う~ん、チャッピー」千秋さんだ「6番お茶農家タッチしすぎ、ユリさんヘルプ」そう微笑んだ。

『了解、今夜は一気するなよ、千秋』とわざと睨むと。

「嫌、酔ってまた抱っこしてもらうもん」そう千秋が言ったとき。

「だめ~私の専用」と後ろに蘭が立っていた。

「ちゃんと、なんか貰って食べなよ」私にそう言って、控え室の銀の扉に向かった。

「どこで拾ったんですか~、私も欲しい」と千秋さんが、蘭に言って。

「公園、多分まだ2人残ってるよ」と蘭が言って笑いながら、扉に消えた。


私がケイを探していないので、リンさんに千秋さんのリクエストを伝えた。

「了解」とリンさんが微笑んだ。

リンさんが、客の入店管理と清算をする。

30代前半の理知的な美人で、常に冷静な大人の女性だった。

席に戻るとケイが、焼き鳥といなり寿司とイチゴのショートケーキを盛った皿を持ってきて、私に渡しながら。

「ごめんね、今こんな物しかなくて」とコーラを差し出したので。

『ありがとう、充分です』と言いながら、私はケイのその視野の広さを関心していた。

かなり離れたあの場所で、この宴の騒ぎの中、蘭の言葉を聞き分けたのかと。


ケイは仕事に従順だった、この時まだ17歳。

PGに来て雑用を初めて、まだ1年半である、その時も自分の能力の全てを、惜しげもなく使っていた。

ケイは面をあらゆる角度から見る、自分の立つ場所を中心にして。

そして点で動く、フロアーデビューしても、その感性は衰えるどころか拡がっていった。


私は社会に出た時、このPGでの経験が最も役にたった。

仕事をしながら常にケイを思い出した、俺は全て使っているかと、問いかける事ができた。

ケイのあの従順で真摯な瞳に見られながら。

ケイはきちんと準備していた、巣で過ごす時に自分の飛ぶ空をイメージしていた。

飛ぶための訓練を必死にやった、そして飛び立っても常に巣を想っていた。


「私の原点は、ここなの」ケイがトップになったころだった。

久々に会って食事をして、一番街を歩いていた時に言った、角のその場所を指差して。

「迷ったらいつもここに来るの、ここで自分のルールの確認をするの」美しい翼を得たケイは、静かに。

   

         「辿り着きたい世界は見えているかと、流されてないかと」 


「確認するのよ」と微笑んだ。

私はその日の帰り、若草公園のあの場所に行った。

ベンチは無かったが、教会はあった。

そして問いかけた、辿り着きたい世界はどこかと。

その精神世界に辿り着きたいと、再確認していた。


この時の私は、ケイに対する感情は複雑で、歳が近く可愛いケイを好きだった。

でもそれは恋愛感情ではなく、仲間意識のような物だったのかもしれない。

私が座って最後のケーキを食べていた。

「チャッピー」耳元で囁かれ、ギクっとして顔を向けると。

私の顔のすぐ前に、屈んだカスミの顔があった。

「2番の初客、酒癖C」と微笑んだ。

『了解です』私はあまりのカスミの近さに、そう言うのがやっとだった。


カスミは意味深に笑うと、顔を私に近づけてきて、硬直してる私の顔の前まで来て。

顔を下げて、私が持つてるケーキを一口食べて。

「下着姿の見物料」と微笑んで、戦場復帰して行った。

私はケーキを見ながら《間接キス》なんて馬鹿な事を考えていた、その時後ろから。

「親分、奴は危険ですぜ、女子の笛こっそり舐めるタイプですぜ」と千秋さんが隣の蘭に言った。

「うむ、ワシも気をつけよう、笛は金庫に保管するとしよう」と蘭が、私にあの小動物の笑顔で舌を出して、2人で戦場復帰して行った。

私がケーキを食べ終わると視線を感じた、見るとリンさんとケイがニヤニヤしながら私を見ていた。

私は大袈裟に頭を掻いて見せた。


ユリさんが私の所に来て。

「チャッピー、時間がある時マリアの寝顔を見てきて」と薔薇で微笑んだ。

「あなたを感じると、マリア安心するみたいだから」とユリさんが言った、私は嬉しくて。

『了解しました』と笑顔で返した。

「今度、日南の話聞かせてね」そう言って、控え室に消えた。

やはり別格だな~と感じていた。


そして心の中に蘇ってきた、マダムの言葉が。

さっき自分で真似をした、あの言葉が。

【ユリはユリ・蘭は蘭・ケイはケイ】それぞれの物で仕事をすればいいと、伝えた言葉が。


私は蘭を探した、恋愛対象として愛する者は、蘭一人だと再確認できたから・・・。

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