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愛の描写

情熱のフロアーに響く、強く優しい旋律。

弾き手は冷静でない、内包する熱い塊を吐き出そうとする。

その椅子に座ると人格まで変る、白と黒の鍵盤と闘うかのごとく躍動する。


私は指定席に座り、ジャズの調べを楽しんでいた。

四季が揃い、ユメ・ウミが入った、シオンとマキが加わって談笑していた。

その時カズ君に連れられて、J・塚本が私の所に笑顔で歩いて来た。

私は椅子を用意して、隣に招いた。


「一瞬で分かったよ・・レベルが違う、凄い子だな~」と嬉しそうに塚本が笑った。

『今からですよ・・盛り上がります』と笑顔で返した、塚本は頷いて瞳を閉じた。

久美子は面接官の来場を感じたのか、サマータイムに入った。

強い久美子のアレンジで、リンダの叫びを表現していた。

レンと私服のハルカが入場し、ナギサ・蘭・サクラさん・アイさんと入場した。

女優が揃ったのを確認して、久美子が止まった、塚本は目を閉じたままだった。

久美子が私を見て頷いた、私も笑顔で頷いた。


激しい旋律が響いた、久美子は座る事を拒否して弾いた。

圧倒的迫力で、鍵盤を叩いた・・魂の叫びが木霊して誰も話してなかった。

久美子は瞳を閉じて、汗を流して・・狂おしく舞いながら弾いた。

最後まで座る事はなかった、弾き終わった時に静寂が訪れた。

J・塚本は俯いて泣いていた、私は音楽を深く愛する人だと感じていた。


「素晴らしい・・本物のジャズだ」そう叫んで、塚本が立ち上がり拍手をした。

女性達も我に返り、笑顔で拍手をした。

「本当にあの子が、やりたいと言ってるのか?」と塚本が私に笑顔で言った。

『リッチハートの舞台に立ちたいんだって、夜街の音楽家として』と笑顔で返した。

「俺達も・・頑張らないと」とニヤで言った時に、久美子が笑顔で歩いて来た。


『塚本マスター、久美子です・・久美子、知ってるだろうけど、J・塚本さん』と互いを紹介した。

「よろしくお願いします」と久美子が笑顔で深々と頭を下げた。

「こちらこそよろしく・・久々に泣けたよ、嬉しくて」と塚本が笑顔で返した。

「嬉しいです・・塚本さんに言われると」と久美子が微笑んだ。

「保護者の方に、一応挨拶したいんだけど」と塚本が微笑んだ、久美子が困って私を見た。


『久美子、TVルームのマネージャーマダムに会ってもらえば、お話しならそこでゆっくりと』と笑顔で言った。

「そうですね、行きましょうか」と久美子が微笑んだ。

「エース、サンキュー・・たまにはバーに来いよ、フリーパスだからな」と塚本が笑顔で言って。

久美子と笑顔で話しながら、TVルームに消えた。


「久美子も次の段階に入りましたね、後押しを頼みますよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

『了解です・・久美子は女性達にとって、希望の光ですから』と笑顔で返した。

美しい薔薇の笑顔を残して、ユリさんが女性達の円を目指した。

絶対に崩れない、美しい後姿を見送りながら、俺も頑張ろうと思っていた。


「千春・・疲れが取れましたね。

 9月に入りました・・生活の状況も変ると思います。

 まだ暑さが主張してます、体調管理に気をつけて。

 栄養摂取を怠らないように、カスミのように自分の体を理解して。

 調整に心がけて下さい、楽しみはこれからですから」


ユリさんが薔薇で微笑んだ、カスミの嬉しそうな笑顔があった。

「はい」と全員が笑顔で返した。

「それでは今夜も開演しましょう」の言葉に、「はい」のブザーを鳴らした。

ハルカが緊張気味に歩いてきた、私はニヤでハルカを見ていた。


『緊張してるね・・ハルカ』と笑顔で言った。

「誰かさんが、最初にミチルママを指名するから」と微笑んだ。

『リアンやユリカじゃ、ハルカに緊張感が出ないでしょ』とニヤで言って、腕をくの字に曲げた。

「よし・・見せてあげる、ニューハルカを」と笑顔で言って腕を組んできた。


ハルカと腕を組み通りを歩いていると、呼び込みさん達に冷やかされた。

『ハルカの時は、嫉妬が多いな~』と笑顔で言った。

「私とミサキはこの街のアイドルだからね、すぐにマキとヨーコに変るけど」と微笑んだ。

『そっか~・・ハルカも見られてるね、その生き方まで』と微笑んだ。

「うん・・だから中途半端は出来ないの、お世話になったから」と笑顔で言った。

美しい笑顔だった、巣立った雛が羽を広げた。

その羽は美しく輝き、強く柔軟であった・・どんな逆風でも飛べるように。


ミチルの店の前で、ハルカが体のチェックをして、大きく深呼吸した。

私は緊張しているハルカ見ていた、美しく微笑んで頷いた。

私が先に店に入り、ハルカが続いた。

ミチルが顔を出して、妖艶に微笑んだ。

ハルカが笑顔で挨拶をして、ミチルも嬉しそうに微笑んで。

お店の女性達に紹介した、ハルカが笑顔で挨拶をして、女性達も笑顔を返していた。

私はカウンターに座って、その光景を見ていた。


「エース・・私達もクラブを経験出来るの?」といつもいる可愛い女性が微笑んだ。

『魅宴かPGかゴールドならね』と笑顔で返した。

「PGは凄いんでしょ?ハルカちゃん」と笑顔で聞いた。

「難しさは変りませんね、ゴールドは知りませんけど・・PGは楽しめますよ」とハルカが微笑んで返した。

「PGだな・・やっぱりユリさんを近くで見たい」と女性が私に笑顔で言った。

『日程決まったら、ハルカに連絡して・・ここにカスミを投入するから』と笑顔で返した。


「ホノカとカスミのコンビが見れるんだね~・・少し怖いね」とミチルが妖艶ニヤを出した。

『楽しみでしょ~・・蘭とナギサもすぐに投入するよ』と笑顔で返した。

「凄い名前がどんどん出てくるから、ワクワクする~」ともう一人の女性が笑顔で言った。

『ファイナルは・・ミチルとユリのコンビだよ』とニヤで言った、静寂が包んでいた。

「凄すぎる・・想像もできない」と女性が微笑んだ。

「か~・・楽しみだね、1度で良いから一緒に仕事をしてみたかったよ」とミチルが楽しそうに言った。

『その前に、ミチルのクラブ活動があるよ』とニヤで返した。

「いつでも良いよ・・心の準備は出来てるから」と妖艶ニヤで返された、私も笑顔で頷いた。


その時、市役所の22名の若手の団体が覗いた、ミチルが笑顔で受けた。

私はミチルに呼ばれて、BOXのソファーの椅子の配置を変えた。

『ミチル・・疲れ気味、後で強制ユリカスペシャル』と囁いた。

「本当に嬉しいよ、ありがとう・・いつも見ていてくれて」と囁いたミチルに笑顔で返して。

BOXに向かうハルカにニヤを送って、店を出た。


私は帰りに魅宴を覗いた、少し賑やかなフロアーを見ていた。

「瞑想は良い効果があるね~・・ミサキも行きたいと言ってきたよ」と大ママが笑顔で言った。

『うん・・リョウの姿に少し感動したよ』と笑顔で返した。

「リアンの前に、誰か投入予定があるのかい?」と大ママが微笑んだ。

『うん・・俺は魅宴の第一弾は、ナギサ復活を考えてる』とニヤで言った。

「そうか~、ありがとうエース・・リョウとミサキが感動するよ」と大ママが嬉しそうに微笑んだ。

『魅宴のナギサ、それを経て・・ナギサは完全復活に入ると思うから』と笑顔で返して、大ママに見送られ魅宴を出た。


PGに戻り指定席に座り、フロアーの状況を確認した。

客は8割入っていて、熱が上がり始めていた。

私はシオンの所に行った、マキが簡単なサインを繋いでいた。

『シオン・・追加の宿題してくる』とウルで言った。

「先生頑張って下さい・・英語ならシオンに聞いてね、他は駄目ですよ」とニコちゃんで言った。

『シオン・・短大生のくせに、数学教えて』とニヤで言った。

「それはぜっっったい、無理です」とウルで返した。

「言わなくても分かってるだろうけど・・私にも聞くなよ」とマキがニヤで言った。


『あ~・・頼れるのは、四季だけだな~』とニヤで返した。

シオンもマキもウルで頷いた、私は蘭に勉強するポーズで伝えた。

蘭は満開で微笑んで、最後にニヤを出した・・女性達がニヤで見ていた。

TVルームに戻ると、久美子とエミが宿題をしていた。

『ラッキー・・久美子がいた、数学教えて』とニヤで言って、エミの隣に座った。


「私を誰だと思ってるの・・久美子は音楽科です」とウルで返してきた。

『ただの、連立方程式だよ』とニヤで言った。

「何それ・・美味しいの?」と私を真似てとぼけた。

『頼りにならない人ばかりだ・・エミ早く来てね』とウルでエミに言った。

「は~い・・がんばります」とエミニヤできた。

私は数学のプリントを出して、考えていた。

エミが興味津々でプリントを見ていた、その瞳の強さが嬉しかった。


「そっか~・・ようするに、XとYが何かを考えるんだね」とエミが笑顔で言った。

『そのようだね~』とウルで返した。

「がんばれエース・・Xが蘭ちゃんでYがユリカちゃんだと思えば、エースなら解けるよ」と少女の笑顔で言った。

『なるほど~・・さすがエミだね』とその感性に驚きながら、笑顔で言った。

私はシズカが強く言った、【あの子なら、出来るよ】と言う言葉を思い出していた。

小3用の図形の角度を出している、エミを見ていた・・学ぶ事の楽しさに魅入られた少女を。


1時間ほど取組んで、疲れてやめた・・久美子が3人娘と遊んでいた。

エミを見て・・私はまたも凍結した、子供用の英語の本を見ていたのだ。

『エミ・・それはイングリッシュじゃないかね』と笑顔で言った。

「オー・イエス」と両手を広げて、マチルダを真似た笑顔で返された。

『オー・マイ・ガット』とウルで返した。

「エミ・・エースの英語力はそこまでだよ」と久美子がニヤで言った。

「でも良いよね~・・エースは語学がいらないから」とエミが笑顔で言った。


「エミ・・変なものに憧れるなよ」と松さんがニヤで言った。

「うん・・変な者には憧れないよ」とエミが私にニヤをした。

『俺嬉しくて泣いたのに、エミが愛するエースって言ってくれたから』とウルウルで言った。

「愛するエースだよ・・エースがユリカちゃんを愛するのと同じだよ」とエミが微笑んだ。

静寂が支配した、私は感動していた・・そして幸せを感じていた。

『ありがとう、エミ・・俺は幸せだよ』と笑顔で言った、エミが少女の輝きで頷いた。

マダムと松さんと久美子が、優しい瞳で英語の本を見ているエミを見ていた。


4人娘が歯磨きをして、私は一人一人を抱き上げて、チェックをした。

エミの照れた笑顔と、ミサの自慢話と、レイカのマユの秘密話を笑顔で聞いた。

最後にマリアを抱き上げて、寝かしつけた・・マリアは穏やかな温度で眠りについた。


「エース、ありがとう・・採用されたよ」と久美子が微笑んだ。

『良かったね、久美子・・俺も楽しみだよ』と笑顔で返した。

「塚本の兄ちゃん、良い中年になったよ」と松さんが微笑んだ。

「やんちゃも、無駄にならんかったの~」とマダムも微笑んだ。

「マネージャーですって、2人を紹介したら・・塚本さん焦ってたよ」と久美子がニヤで言った。

『さぞ怖い過去が、あるんだろうね~』とニヤで返した。


「怖い過去なんて、ありゃしないよ」と松さんが笑顔で言った。

『ねぇ松さん・・松さんが出会った中で、1番凄いと思った夜の女性は?』と笑顔で聞いた。

「真希とアスカとユリ・・比べようがない、その3人は」と笑顔で返してきた。

『やっぱり・・比べられないんだね』と笑顔で言った。

「じゃが・・女としての生き方で言ったら、圧倒的に律子だよ」とニヤで返してきた。


「私・・泣きそうだった、律子さんが・・久美子、母さんって呼びなさいって言ってくれて」と久美子が真顔で言った。

「律子がここに来る事が、どんなに素敵な事なのか・・いつか分かる時が来る」とマダムが笑顔で言った。

「多分・・自分の子供を持って、悩んだ時に・・感謝するよ」と松さんも微笑んだ。

『そうかも知れないね・・自分の悩みなど小さいと、律子はシズカと俺の母親だったんだってね』と笑顔で返した。

3人の笑顔を見て、TVルームを出て指定席に座った。

フロアーは満席状態で、熱が高く笑顔が溢れていた。


その時【受付】とユリさんからサインが来た、私が受付を覗くと。

狸院長と関口医師と婦長が来店していた、カズ君に案内されて3番に入った。

ユリさんと蘭が3番に向かった、挨拶をして笑顔が溢れた。

蘭が関口医師と話して、婦長と笑顔で言葉を交わし・・私に【指名】とサインを送ってきた。

私は裏を回り、3番に行って挨拶をした。


『関口先生・・ご無沙汰してます』と笑顔で言って、婦長の隣に座った。

「元気そうだね・・そしてありがとう、あの絵は感動したよ」と優しい笑顔で言った。

「私も本当に感動したよ・・あなたも沙紀の父親に会ったら、感動が倍増するよ」と婦長が微笑んだ。

「素敵なお話しですよね・・私も蘭も聞いて感動しました」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「そう思って・・どうしても2人に見せたくてね」と院長がクリアファイルを鞄から出した。

ユリさんも蘭も最高の笑顔になった、院長が笑顔でユリさんに渡した。


ユリさんと蘭が真剣に見ていた、その横顔が嬉しかった。

ユリさんと蘭の美しい横顔が、そのメモ用紙に魅入られていた。


「沙紀は、自閉症の9歳の少女です。

 でも私は自立できると思っています、だからこそミホと同室にしました。

 互いが刺激になるのではと思って・・挑戦です、小僧に教えられた挑戦。

 ミホが転院して来ると聞いて、小僧が動いたと感じました。

 院長と婦長に小僧の話をして、院長が小僧に会ってくれました。

 そして今日、小僧がミホを尋ねて来た。

 そして沙紀に出会った、小僧はまたも私の想像を遥かに超えた。

 沙紀のその絵も本当に驚いた、でも1番驚いたのは。

 母親の変化です・・小僧が伝えた、その沙紀の本質。

 母親はどんなに感動したのでしょう、そして覚悟を決めたようです。

 母親が私に言いました、もちろん絵も嬉しかったけど。

 個性と言われた事が、1番嬉しかったと・・泣いていました。

 私はまた気付かされた・・医師としてしか関わってなかったと。

 まず伝えるべきは母親にでした、沙紀が自立出来ると信じるなら。

 母親とじっくり話すべきでした、私にも・・病院としても。

 小僧をお借りしたい・・それをどうしても伝えたくて参りました」


関口医師が、その真摯な姿勢で、ユリさんと蘭に伝えた。

「本当に嬉しいお話です・・そしてこの絵、どんな芸術より強く主張してますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「愛情に満ち溢れてる・・父親に対する想いが、描がかれていますね」と蘭が満開で微笑んだ。


「父親が夕方来て・・その絵を見て、廊下の隅で号泣していました。

 若い看護婦がそれを見て、貰い泣きして大変でした。

 そして看護婦達が、夜勤との引継ぎで言いました。

 沙紀には、思ったっままを表情に出そうと。

 教える時には真剣に、怒るべき時は真剣に怒ろうと。

 私は嬉しかった・・その変化が、仕事に対する責任感が出ていて。

 私はこの子に賭けました・・必ずミホの笑顔を見せてくれると。

 明日からが楽しみです、いつか私を現場で号泣させてくれると思うから」


婦長は笑顔で、ユリさんと蘭に言った。

ユリさんの薔薇と、蘭の満開が咲いて頷いた。


「この絵を一晩だけ、お借りしていいでしょうか?

 女性達に見せてあげたい、大切な想いを気付かせてくれるから。

 大切に扱って、明日小僧に返却させますから」


ユリさんが真顔で院長に言った、蘭も真顔で見ていた。

「かまいませんよ・・明日、返して頂ければ」と院長が笑顔で言った。

「ありがとうございます」とユリさんが薔薇で微笑んで頭を下げた、蘭も頭を下げていた。

「小僧・・感謝を込めて特別許可を与える、面会時間を気にしないでいいぞ」と院長が笑顔で言った。


『ありがとうございます・・何も出来ないけど、諦める事も絶対に出来ない。

 私の想いはただそれだけです、私も沙紀が自立できると確信しています。

 あの子は強い意志を持ってますから、大丈夫・・負けない子です。

 私が教えたいのは・・普通などでなくて良いと言う事です。

 人に優劣は無いと信じているから、もし優劣が存在するのならば。

 私は沙紀より劣っている人間だと感じます、沙紀の心は自由です。

 常人・・普通と言われる人間では、絶対に辿り着けない。

 その世界に踏み込めます、このメモ用紙にポールペンで描いた。

 この絵だけで・・人々に何かを強く伝えられるのだから。

 未来は決まっていないから、ミホにも沙紀にも素敵な未来もあるから。

 それを探しに行きたいんです、手を繋いで・・怖くないよと言いながら。

 それしか出来ないから・・それだけが俺の望みだから』


5人を見て笑顔で伝えた、蘭の満開笑顔が嬉しかった。

私は5人に挨拶をして、ユリさんからクリアファイルを大切に受取り。

笑顔で頭を下げて、3番を後にした・・女性達の視線を感じていた。

通路の奥に小さな体が見えた、ユリカが静寂を連れて微笑んでいた。

私はユリカに歩み寄り、手を引いて小窓の所まで行った。

そしてユリカにファイルを渡した、ユリカはそのまま暫くファイルを見ていた。

何かを感じて、それに応えてるようだった、私はユリカの美しい横顔を見ていた。


そしてユリカが絵を見た、震えながら・・泣いていた。

涙で滲ませないように、少し離して見ていた。


「素敵だね・・本当に素晴らしいね。

 愛情が溢れている、言葉に出来ない愛情が・・すべて詰まってるね。

 そしてユリ姉さんも蘭も凄いね、これを見て涙を我慢できたのだから」と静にユリカが囁いた。


『絵じゃないよね・・それは絵じゃない、愛情表現だよね』と私も囁いて返した。

「うん、そうだね・・本当に大切な事が、この中に溢れてるね」とユリカが呟いた。

ユリカの肩を抱いて、その温かい温度を感じていた・・小窓から光が侵入していた。


「すっごく元気が出た・・私は人に物を贈った事が、こんなに嬉しい事は初めてだよ」とユリカが爽やかに微笑んだ。

私はユリカを通りまで送り、笑顔で手を振って別れた。

裏ドアから入ると、久美子が待っていた・・笑顔で私に手を出した。

「マダムも松さんも待ちきれないって、私もだけど」と久美子が微笑んだ。

『見たら大切に預かってて、見る時に離して見ろよ・・涙で滲ませるなよ』と笑顔で言って渡した。

「了解・・今で泣きそう」と久美子が言って、TVルームに消えた。

私はエミを帰りに起こして、見せようと思っていた。

父親を想う、同じ世代の強い想いを・・エミは感じてくれると思っていたから。


私は指定席に座ってフロアーを見ていた、院長と関口医師と婦長が笑顔だった。

婦長が楽しげに何か言って、院長がウルウルを出していた。

シオンとマキがコーラを持って、休憩に来た。


「先生・・シオン、素敵な予感がしてますけど~」とニコちゃんで言った。

『3番のお客さんが、ミホの病院の関係者・・沙紀の絵を見せに来たんだ』と笑顔で返した。

「もしかして・・見れるんですか!」とシオンが驚いて言った。

『仕事が終わったら、皆に見せるよ・・仕事中に泣かれると困るからね』とニヤで言った。

「嬉しいです~・・楽しみだね、マキ」とシオンが微笑んだ。

「はい・・きっと素敵な絵ですね」とマキが笑顔で返した。

私はシオンの変化が激しいのに、驚いていた、シオンが他人を呼捨てにするのを初めて見た。

それが自然に流れて、マキはシオンの事を完璧に信頼してると感じていた。


「それは本当の話だね?」とカスミが笑顔で言った。

『カスミは離して見てね・・絶対に号泣するから』とニヤで言った。

「く~・・楽しみだ~」と笑顔で言って、銀の扉に消えた。

私はコーラを飲みながら、シオンとマキの笑顔の会話を聞いていた。

情熱のフロアーを、温かい何かが包んでいた・・9月はスタートしたばかりだった。


沙紀のメモ用紙の絵画は、女性達に大きく響いた。


カスミは1度実家に帰り、今の現状の報告を両親にしてきた。


ハルカも実家に一泊で帰り、両親と触れ合っていた。


四季もユメ・ウミも実家に帰って、その事を笑顔で話してくれた。


そしてナギサが覚醒する、その絵を見て号泣したナギサ。


魅宴復活後に見せてくれる、その自由な心を広げて・・愛を表現した。


そして私は蘭に付き添って、蘭の実家を訪ねる。


蘭の満開が咲き誇り、精神的な春を表現してくれた。


私は色々と爆弾を用意したが、夏物物語で一番強力な爆弾は。


今でもこの沙紀の絵だと思っている、愛情に満ち溢れた絵だった。


言葉が使えない少女が描いた、父親に対する愛だった。


感謝が溢れ出していて・・そして夢まで描いていた。


私が父親に会った時の感動は・・今でも忘れられない。


その正確な描写の中に、唯一想いを込めたのであろう・・目の描き方。


その絵の父親は・・強い瞳で描かれていた。


実際の父親は優しい目をしていた・・沙紀は本質を描く。


父に強く生きて欲しいと願ったのだと・・私は感じた。


娘を心配しないでと、強いメッセージで描いた。


私は今でもはっきりと覚えている・・あのメモの絵画を。


沙紀の心が描いた・・大切なメッセージだから・・。

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