メモの絵画
終わらぬ夏を駆け抜ける、黒いボディーに包まれていた。
前に座る2人の女性は、姉妹だった・・心の通う言葉で話していた。
私は懐かしい町並みを見ながら、出会えた幸せを感じていた。
実家の駐車スペースに車を入れ、蘭とマキと3人で実家に入った。
「素敵だね~・・さすが大工の家だ」と蘭が関心しながら言った。
『ただの純日本風な家だよ』とニヤで返した。
蘭は私の部屋をニヤで覗き、マキと一緒にリビングに行った。
私は洋服等を荷造りしていた、ダンボールを探しに行くと。
リビングで母を交えて、3人が笑顔で話していた。
「清次郎先生の、許可は取ったの?」と母ニヤで聞いた。
『入れ知恵したな~・・説明は不要だった』と笑顔で返した。
「私じゃないわ・・シズカだよ」と笑顔で返してきた。
『シズカ・・何か企んでる、妙に優しい』とウルで言って部屋に戻った。
リビングからの笑い声を聞きながら、ケンメリに荷物を積んだ。
私がリビングに行くと、3人で台所に立って昼食の準備をしていた。
蘭が母の横で満開笑顔で、包丁を握っていた。
「まっ!・・もう嫁と姑が同じ台所に立ってる~」とシズカが帰宅して、ニヤで言った。
「シズカ、ドラマの見すぎだよ~」とマキが微笑んだ、シズカはニヤでマキに近付いた。
「短期間で、そんなに変るのか~・・良い匂いもするし」とマキに密着してクンクンしていた。
「クンクンしないの・・年齢から来る当然の色気よ~」とマキがニヤで返した。
「お母様・・マキがいけない世界に入ってますよ~」とシズカが母にウルで言った。
「シズカも少し色気出しなさい・・男に全く興味が無いんだから」と母がニヤで言った。
「蘭姉さん・・色気の為に、NO1ホストを紹介して下さい」とシズカが蘭に微笑んだ。
「それなら私より、小僧の方が仲が良いよ」と満開ニヤで言った。
「こじょ~ちゃん・・お願い」とシズカがウルで言った。
『仕方ないな~・・清次郎爺さんの件もあるし』とニヤで言った。
「ジッちゃん、元気だった?・・あと2年で定年なんだから、いじめるなよ」と笑顔で睨まれた。
『元気だよ・・少し縮んだ感じがするけど』とウルで返した。
「相変わらず馬鹿だね~・・あんたがでかくなったんだろ」とニヤで返された。
昼食の準備が出来て、5人で食事をした、私は久々に母の味を感じていた。
「母さん、すいません・・生活費あんなに頂いて」と蘭が笑顔で頭を下げた。
「いいのよ~・・食費が人一倍かかるでしょ」と母が笑顔で返した、蘭も満開で頷いた。
「でも、小僧は手がかからないでしょ?」とシズカが蘭に微笑んだ。
「確かに手はかからないよね~・・朝食まで作ってくれるし」と満開で返した。
「シズカ・・小僧最近ウインナーの、カニさんタコさん作れるらしいよ」とマキがニヤで言った。
「私の弁当も作ってくれよ~・・一度で良いから~」とシズカがウルで言った。
「シズカ・・私の弁当じゃ不満なのね」と母ウルを出した。
「たまには、男の愛情も感じてみたい」とニヤで返した。
『ジンに言っとくよ』と笑顔で言った。
「えっ!・・やっぱりNO1はジンさんなの」とシズカが驚いて言った。
「おや~・・なぜ女子高生が、ジンを知ってるのかな~?」と蘭が満開ニヤで言った。
「妹さんが、先輩なんです・・ジンさんに、病院で会ったんです」とシズカが笑顔で言った。
「そっか~・・恭子の先輩だったね、それで豊君だったね」と蘭が微笑んだ。
「そこまで知ってるんですね~・・もう時効だから、良いよね?」とシズカがマキに言った。
「良いんじゃない」とマキは笑顔で返した。
「これはその先輩に固く口止めされていました・・小僧には言わないでと、ジンの妹さんは・・自傷の女神よ」とシズカが真顔で私に言った。
『えっ!・・そうなの、美男・美女の兄妹だな~』と私は笑顔で返した。
「昨日の話が途中の・・あの子?」と蘭が満開でマキに聞いた。
「はい・・その人です、だから小僧には口止めされました」とマキが笑顔で返した。
「小僧が聞いたら、絶対に逆上して・・相手を潰しに行くから」とシズカが微笑んだ。
「だから恭子は豊に振ったのね・・あの子も凄い子だね~」と母が笑顔で言った。
「すごーく感動する話を・・皆さんあっさり言われるんですね」と蘭が満開ニヤで言った。
「蘭、この位でイチイチ感動してたら、小僧と生活すると疲れるよ」と母が笑顔で言った。
「確かに・・マキとヨーコが来てから、毎日感動話が聞けますよ」と満開に微笑んで返した。
「なんせあの時はヤクザ相手だったから・・絶対にやばいって思ってたよね~」とシズカが言った。
「豊君突っ込んじゃって・・怖い話だよ、そして小僧・・ヤクザの親分の家に殴りこみに行ったし」とマキが笑顔で言った。
「豊君が突っ込んだのには、訳があるの・・・」蘭がジンと豊兄さんの事を話した。
「なるほど~・・それで理解できたわ、豊も小僧も被害者を知らないのにって思ってたの」と母が微笑んだ。
「小僧が被害者知ったら・・その日に突っ込んだね」とマキがニヤで言った。
『小6で・・ヤクザ4人相手に出来ないよ~』とウルで返した。
「そんなに思い入れ強いんだ~・・自傷の女神」と蘭が満開ニヤで言った、シズカとマキがニヤで頷いた。
「ジンさん争奪のライバルは・・ホノカさんね」とシズカがニヤで言った。
「シズカ・・ホノカ姉さんに会ったら、ライバルって言えないかもよ」とマキがウルで言った。
「そんなに、素敵なの」とシズカがウルウルで返した。
「自傷の女神レベル・・似てるよ、凄く」とマキがニヤで返した。
「そんなに凄いの~・・だいたい自傷の女神って、あんたが付けたの?」と蘭が私に満開ニヤで言った。
『俺が復活した時に言ったら・・本人が気に入って、自分で名乗ってる』と笑顔で返した。
「多分・・背負う意味でしょうね」とシズカが真顔で言った。
「もう完全に復活してるよ、あの事故の後も、全く衝動が出ないって言ってました」とマキが微笑んだ。
「自傷を夜街に引っ張る気は、無いのかな~?」と蘭が満開で微笑んだ。
『それは無いよ・・医者の娘だよ、ジンがホストしてるのが信じられないよ』と笑顔で返した。
「それは本人に聞いて・・教えない」と蘭が満開ニヤで言った、私はウルで返した。
「でもシズカが気にいるなんて・・よっぽど良い男なのね~」と母ニヤで来た。
「良い男ですよ・・イメージ的には、豊の対極ですか」と蘭が満開笑顔で返した。
「あっ!・・それ分かる~、さすが蘭姉さん」とシズカが笑顔で言った。
「それは会ってみたいわね~・・ユリを誘って行ってみよう」と母が笑顔で言った。
「ほほ~・・勝也がいるのに、ホストクラブですか~」とシズカがニヤで突っ込んだ。
「誰かさん、昨夜も豪遊して帰って来たから・・負けられません」と母がニヤで返した。
「私は寂しく、家で一人だ」とシズカがウルで言った。
「PGのTVルームで勉強しなさい、帰りに連れて帰るから・・エミちゃんに必殺技教えたら、小僧じゃ絶対教えられない事を」と母が微笑んだ。
「そうだった・・それがあった」とシズカが笑顔で返した。
『エミ・・まだ1年生だよ』と私がニヤで言った。
「出来るよ、あの子なら」とシズカが強く返してきた。
「シズカ・・必殺技を述べよ」と蘭が満開で微笑んだ。
「無駄な時間を削る方法・・ようするに受験の時とかの、無意味な暗記術です」とシズカが笑顔で返した。
「無意味な暗記術?」と蘭が不思議そうに聞いた。
「受験には・・無意味な暗記を必要とする部分が多いですよね。
それに時間を取られるんです、だからその・・ただ暗記すれば良い部分の方法。
私が考え出したんだけど、誰も理解してくれないんです。
それが出来るようになれば、自分の本当に学びたい事に時間がさけます。
受験勉強って・・意味が無いですよね・・学ぶ事からすれば。
日本は飛び級も無いから、でも受験は総合力だから。
無駄に時間を使ってしまいます、そのジレンマに対抗する方法です。
ただの暗記・・内容は無し・・転写するだけです」
シズカが蘭に笑顔で言った、蘭は驚いていた。
『シズカ・・俺最近少し分かってきたよ・・シズカの方法の意味。
PGのシオンが、手で出す店のサイン、約200種類を1度で覚えた。
その方法は習った手の形を写真に撮って、声を添付して。
頭の中にアイウエオ順にファイルしたって言ったから。
それを聞いて、シズカの方法を思い出したよ。
確かに訓練で出来るようになるかもね、実は俺も自分なりに挑戦中』
嬉しそうなシズカに、笑顔で言った。
「シオンさん・・素敵すぎる、まさに天才・・そしてそれを表現できるんだ~」とシズカが笑顔で言った。
「私、今シオン姉さんに付いているけど・・天才だよ、そして許容量が無限な感じ」とマキが微笑んだ。
「エミは沢山の影響を受けて、どんな大人になるんだろう・・私も一役力を貸したい」とシズカが母に微笑んだ。
「まぁ、暇があれば・・連れて行くわ」と母が笑顔で返した。
「楽しくなって来ましたね~・・松さん喜ぶね」と蘭が私に笑顔で言った。
「松さん、今が楽しいでしょうね~・・真希の娘までいるから」と母が微笑んだ。
「母さん・・意味深にそこまで言ったら・・述べよ」と蘭が満開で微笑んだ。
「知らないのね・・真希の母親が千花でデビューした時の、フロアーリーダーが松さんだよ」と母が笑顔で言った。
『想像が出来ない』と私がニヤで言った。
「あら・・松さんは有名人よ、マダムが離さない事を考えても分かるでしょ」と母ニヤで返された。
「たまに言われる事が・・凄く響きます、座り方とか立ち方とか」とマキが笑顔で言った。
「私も最初の頃・・色々教えてもらいました」と蘭が満開で微笑んだ。
「多分・・ユリに最初の頃、教え込んだのも松さんでしょう、だからユリは真希に似てます」と母が真顔で返した。
『エミは確かに、どんな大人になるんだろう・・松さんエミには違うんだよな~』と私が呟いた。
「何言ってる・・あんたが1番走らせてるくせに、伝達全部使ってるでしょ」とシズカがニヤで言った。
「使ってる・・大切な事の時は、絶対にどっか触ってるよ」とマキがニヤで言った。
「怖いのは・・マリアよ、2歳の頃から全てを注ぎ込むのよ」と蘭が満開ニヤで言った。
「なぜマリアの言葉を引き出さないの・・何にこだわってるの?」と母が聞いた。
『自然体でいてほしい・・マリアの力は想像の外側にある。
会話を伸ばそうと思えば、すぐに伸びると思う。
でも言葉に頼り過ぎて、失う物が怖い・・かな?
マリアの伝達能力って・・実は圧倒的に強い力なんだよ。
それを一生持っていて欲しい、天使の羽を携えていて欲しいんだ。
だから、自然体で行きたい・・俺も普段はマリアを読まない。
シオンとマキが自然に読めるから、マリアの自主性に任せたい。
もう少しだと思う・・ユリさんがその場所に到達したら。
マリアも自分で変化してくる・・その姿が見たいんだよ』
真剣に母に言った、母も真顔で聞いていた。
「なるほど~・・エミとマリアが両極の集大成なんだね」と母が微笑んだ。
『うん・・ある意味、理想の形』と笑顔で返した。
「ユリカ・・それで良いと思う?」と母が私に強く言った。
強い波動が何度も返って来た。
「今度聞きましょう、反対はしてないようだから」と母が微笑んだ。
「怖い事しないでよ・・一人だけ、ずるい」とシズカがウルで言った。
「私も・・本気で怖かった」と蘭が満開で微笑んだ。
「和尚かと思った~」とマキがニヤで言って、全員で笑っていた。
ユリカの穏やかで楽しそうな波動が包んでいた、4人の笑顔を。
私が着替えて、蘭とマキがケンメリで帰った。
私は自分のママチャリで、夜街を目指した、気分は爽快だった。
通り道で和尚の寺を覗くと、赤いZと美冬の車と数台の車が止まっていた。
本堂を覗くと、ユリさんミコト・美冬・千夏・ユメ・ウミ・リョウが瞑想していた。
マリアが静かに賭けてきた、私はマリアを抱き上げて・・ユリさんの美しい背中を見ていた。
ちゃぶ台で和尚と檀家らしい4人の爺さんが、楽しそうに女性達を見ていた。
私はマリアを抱いて、ちゃぶ台に歩いた。
『荘厳な光景だね』と和尚に笑顔で言った。
「檀家の衆が、楽しみに見にきよるよ」とシワシワ笑顔で返された。
『リョウが来てるのに、驚いたよ』と笑顔で返して、座った。
「素晴らしいの~・・ユリは別格だが、ミコトとリョウ・・楽しみやな~」と和尚は笑顔で言った。
『確かに・・リョウ、揺れないね』とニヤで返した。
「うむ・・見たいの~・・ユリカの座る姿が」と和尚が私に言った。
強く暖かい波動が返って来た。
「うむ・・楽しみにしてるよ」と和尚が笑顔で言った、強い波動が返って来た。
「しかし・・皆、美しいな~」と檀家の老人が言った。
「見てるだけで、若返るよ」ともう一人の老人が言って、本堂を見ていた。
「そろそろいいの」と和尚が立ち上がり、女性達の前に進み・・大きくドラを鳴らした。
全員がハッとして、瞳を開けた。
「どうじゃ?・・かなり精神の休養になるじゃろ」と和尚が座って笑顔で言った。
「落ち着きます、確かに家では難しいですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「やるとやらないでは・・絶対に違いますね」とミコトが微笑んだ。
「自分の雑念の多さが・・嫌になります」とリョウがウルで微笑んだ。
「それを突きつけられますね~・・感じた事は無かったけど」と美冬が微笑んだ。
「焦らずにな・・少しづつで良いんじゃ」と和尚が言って、全員が深々と頭を下げた。
「あら残念・・制服姿が見たかったのに」とユリさんが薔薇ニヤで言った。
「出し惜しみしたね~・・恥ずかしいんだね」とミコトが微笑んだ。
「夜街を制服で歩けよ・・呼び込みさん達が、楽しむぞ」とリョウが涼しげニヤで言った。
『折角魅宴の良い情報、教えようと思ったのに』とニヤで返した。
「エース・・今日も素敵よ」とミコトが背中に抱きついた。
『うむ・・しかたあるまい、来週の火曜日・・魅宴、リアン光臨じゃ~』と和尚を真似て言った。
「やった~!・・とうとう見れる、炎の女」とリョウが嬉しそうに微笑んだ。
「待ちに待った日が、来るんだね~・・良い子だ」とミコトが背中に胸を押し当てた。
『ミコト・・以外に大きいな』とニヤニヤで返した。
「カスミやリョウや美冬のばかり見てるから・・弾力が違うだろ」と耳元に囁いた。
『うん・・熟れた女は違うな~』とニヤで返した。
「和尚様・・お寺で小僧が、良からぬ事を言ってますよ」と魅冬が笑顔で言った。
「さすが・・生臭の1番弟子、羨ましいの~」と檀家の爺さんが笑顔で言った。
「小僧に問う」と和尚が大きな声で言った。
全員が和尚を見た。
「どうすれば・・そんなサービスが得られるんじゃ?」とシワシワニヤで言った。
全員が爆笑していた、ユリカの強い波動が笑っていた。
「なんじゃ~・・小僧問答が始まるかと思ったのに」と檀家の老人が笑った。
「集中せんとできんわ・・疲れるからの~」と和尚が笑顔で返した。
「小僧問答か~・・楽しそうですね」とミコトが檀家に微笑んだ。
「美しいの~・・魅宴じゃったね」と檀家の老人がシワニヤで言った。
「はい・・魅宴のミコトです」と美しく微笑んだ。
『さすが~・・ミコト、そつがない』とニヤで言った、老人達が笑っていた。
女性達と檀家さんが楽しげに話しだして、私はユリさんにマリアを預けた。
『ミホに会ってきます』とユリさんの耳元に囁いた、ユリさんが薔薇で頷いた。
「えーしゅ」とマリアが天使全開で言って、元気を満タンにしてくれた。
私はマリアに笑顔で頷いて、チャリで病院を目指した。
夏の陽を浴びて輝く、病院入り口の緑地帯を抜けて、駐輪場にチャリを止めた。
1階受付で聞いて、4階のナーステーションで記名して、病室に向かった。
南向きの2人部屋の窓際に、ミホが座って外を見ていた。
私は手前の6歳位の少女の母親に、頭を下げて奥に歩いた。
『ミホ・・良い部屋だね』と笑顔で言って、無表情のミホの前に座った。
『うん、元気そうだ・・ここは夜景も綺麗だね、良かったね』と手を握って笑顔で言った。
ミホは外を見ている、しかし最初に再会した時よりも、拒絶は弱い気がした。
『ミホ・・夏なんだよ、外は暑くて・・汗が出るよ。
もう9月になって、学校始まってね。
俺・・また宿題何もしないで、追加の宿題がいっぱい出たよ』
ウルで言ってミホを見た、その時ミホが私を見た。
『宿題ってね・・面倒なんだよ、だから一つもしないんだ。
でもね学校は楽しいよ、友達がいるからね。
ミホもいつか行こうね、俺が連れてってやるよ。
制服着て自転車に乗って行こう・・その前に自転車教えてあげるね。
楽しいよ・・風を切って走るんだよ』
笑顔で言って立ち上がり、ミホも額に手を当てた。
ミホは瞳を静かに閉じた、私は動かないでミホの温度だけを感じていた。
ミホの体重が私の腕にかかった、私は嬉しくてミホを優しく寝かせた。
薄い布団を肩までかけて、ミホ寝顔を見ていた、可愛い寝顔だった。
『ミホ・・また明日来るね』と笑顔で囁いた。
私は隣の母親に近寄り、挨拶をした。
『ミホがお世話になります・・何も気にしないで大丈夫ですから』と笑顔で頭を下げた。
「後天性の自閉症なんですね」と笑顔で返された、私も笑顔で頷いてベッドの少女を見ていた。
「先天性の自閉症なんです・・沙紀と言います」と母親が笑顔で言った。
『体は健康なのに・・甘えん坊だね、沙紀』と笑顔で言った。
沙紀は確かに視点が合わず、障害児特有の雰囲気は有ったが、体に力があった。
私は沙紀の横に行き、右手を握った。
私は驚いていた、沙紀の温度の揺れの激しさに。
『沙紀・・分からないよ~、もっとゆっくり』と笑顔で言った。
沙紀は私を見ていた、そして揺れが一度止まった。
『そうなんだよ・・宿題嫌いなんだよ』とウルで言った、沙紀の揺れが笑っていると感じていた。
『沙紀は何が好きなの・・沙紀と同じ病気の人沢山知ってるけど、好きな事があるでしょ』と隣に座り優しく言った、母親は私を見ていた。
『そうなんだ~・・じゃあ書いてみれば良いのに~、手は動くだろ』と二ヤで言った。
私はこの解読には自信があった、沙紀が何かを描くのを、強く感じていたから。
『何か紙と筆記具ありますか?』と母親に言った、母親が慌ててメモ用紙とボールペンをくれた。
私は優しく沙紀を起こして、母親の雑誌を下敷きにして、紙を置きボールペンを握らせた。
沙紀が私を見た、私は笑顔で頷いた。
『分かったよ・・恥ずかしがりやさんだな~』と笑顔で言って、沙紀の瞳を見て立ち上がった。
『じゃあね~・・ん~・・お父さんの顔』と微笑んで、母親を連れて窓際に行った。
「何なの・・どうなってるの?・・分かるの?」と母親が私に囁いた。
『なんとなく・・子供同士ですから』と囁いて返した。
「あの子に・・絵が描けるの?」と母親が真剣に聞いた。
『あの個性は、一芸に秀でる事が多いです、沙紀はイメージで描いてると感じたんです』と笑顔で返した。
「個性・・その言葉だけで嬉しい」と母親が静かに言った。
『個性ですよ・・障害じゃないですよ、本人には』と優しく返した。
「何人くらい出会ったの?・・同じ個性に」と母親が笑顔になって私を見た。
『6人知ってます・・全員何かしら秀でてましたよ』と笑顔で言った。
「あ~~」と沙紀が言った、慌てて行こうとする母親の腕を掴んだ。
『お母さん・・絵を見ても、絶対に泣かないで下さい・・褒めてやってね』と囁いた、母親は真剣に頷いた。
私は母親の後を続いた、母親はメモ用紙を受け取り、大きく震えていた。
私は母親の肩に手を乗せて、力を入れた。
「沙紀・・上手じゃない・・これからも何でもいいから書いてね・・ママは沙紀の絵が見たいな~」と必死の笑顔で言って、私にメモを渡した。
私は感動していた、メモ用紙にボールペンで書いた絵に、躍動感すらあった。
父親の輪郭はもとより、髪の生え際から目尻の皺まで描いてあった。
私は沙紀を笑顔で見て、横に座って手を握った。
『沙紀・・ママを喜ばせたいんだろ、明日スケッチブックと色鉛筆をプレゼントするよ。
今度は色を付けてみようね、沙紀の思った色を塗れば良いんだよ。
でもね、最初は一日一枚にしようね、沙紀は他にも覚える事があるからね。
沙紀は絵で・・ママやパパとお話が出来るんだよ、良かったね』
沙紀の定まらない視線の瞳を見ながら、優しく伝えた、沙紀は激しい温度で返してくれた。
私が立とうとすると、沙紀が強く手を握った、私は嬉しかった。
沙紀が私を戻してくれた、小児病棟に通っていた頃の私に。
『明日、また来るよ・・ミホお姉ちゃんと仲良くしてね』と笑顔で言った、沙紀は私を見て手を離した。
私は母親に笑顔で頭を下げて病室を出た、廊下に出た所に、母親が駆け寄った。
「ありがとう・・どうして泣いたら駄目なのか、それだけ教えて?」と涙を流し母親が言った。
『沙紀は純粋だから・・涙は悲しいものだと思ってます。
お母さん・・笑って下さい・・そして、怒って下さい。
俺は確信してます、あの個性は怒られたいんだと。
普通に接して欲しいんだと、そう思います』
母親の涙を見ながら、笑顔で伝えた。
「ありがとう・・本当にありがとう、やってみます」と笑顔になった母親に、笑顔で頷いて別れた。
私はナースステーションまで歩き、看護婦さんに院長室に連絡してもらった。
「来て欲しいそうですよ・・5階の左奥です」と笑顔で言われた、私は笑顔で頷いて階段で上がった。
重厚な院長室の扉をノックした。
「どうぞ、入りなさい」と院長の声がした。
私は扉を開けて奥に進んだ、恰幅の良い院長が笑顔で迎えてくれた。
『お言葉に甘えて、来ちゃいました』と笑顔で言った。
「嬉しいね~・・まぁ掛けなさい」と高そうなソファーを示した。
『さすが、○病院の院長室は違いますね~』と笑顔で言って座った。
「そういう会話、どこで会得したのかな?」と二ヤで返された。
『経験で学びました・・院長の専門は、精神科ですね』と二ヤで返した。
「ほう・・なぜかね?」と興味津々光線できた。
『相手の表情を見る前に、全体的動きを見るでしょ・・特に指先の動き』と二ヤで返した。
「嬉しいね~・・それから」と笑顔で促した。
『目を見て話すけど・・瞳の奥の動きを見ます・・職業病ですよ』と笑顔で言った。
「それは仕方ないよ・・もう習性だから」と楽しそうに笑った。
「今日は関口君、大学病院に出てるから・・明日会ってもらうよ」と真顔になって言った。
『分かりました・・少し楽しみになってきました、沙紀ちゃんが戻してくれたから』と笑顔で返した。
「沙紀ちゃんが、戻した?」とまた興味津々光線がきた。
『歳に似合わず、好奇心旺盛ですね・・小児病棟に通っていた頃のレベルにです』と二ヤで言った。
「そうか・・で、沙紀ちゃんと交信できたのかね」と笑顔で返された。
『後で絵を見て下さい・・沙紀の秀でてる才能、素晴らしいですよ』と二ヤ二ヤで言った。
「ワシは医師だが・・待つのが苦手での~」と電話の受話器を取って内線にかけた。
沙紀の絵を借りてきてくれと頼んで、受話器を下ろした。
「何分で引き出しただね?」と院長が笑顔で聞いた。
『引き出したんじゃないですよ・・出し惜しみしてたから、怒ってやりました』と笑顔で返した。
「なるほど・・時間は?」と笑顔で促した。
『描かせるまで・・5分』と二ヤで返した、その時にノックが響いた。
年配の看護婦がメモ用紙を持ってきて、私を見て笑顔になった。
『素敵でしょ・・沙紀画伯』と看護婦に二ヤで言った。
「泣きそうでしたよ・・あなたが関口先生の言ってた、小僧ね」と笑顔で言って、院長にメモ用紙を渡した。
院長は黙ってその絵を見ていた、私はその院長の優しい瞳を好きになっていた。
「一回戦は・・君の大勝利だよ」と院長が笑顔で言った。
『負けませんよ・・トータルでも』と笑顔で返した、院長も看護婦も笑っていた。
その時、院長室の電話が鳴って、院長が真顔で応対していた。
私は雰囲気を察して、立ち上がった。
『また楽しいお話を聞きにきます、ありがとうございました』と笑顔で頭を下げた。
「明日・・楽しみにしてるよ」と笑顔で言った院長と別れた。
年配の看護婦と階段を下りながら、笑顔で聞かれた。
「4階の婦長です、よろしくね・・母親に聞いたんだけど、どうして一日一枚なの?」とナースステーションの前で聞かれた。
若い看護婦が、笑顔で婦長に手を出してメモ用紙を見た。
「凄い・・ね~見て~凄いよ~」と言って奥に消えた。
『執着するから・・それだけに執着して、他の事が出来るのに拒絶するから。
何でも出来ますよ、俺はそう思っています。
だから一日一枚です・・そうすると渇望します、描きたい欲求が出てきます。
あのメモの絵なんて、落書きですよ・・恐ろしい世界を見せてくれます。
楽しみにして下さい・・また明日来ます』
笑顔で言って、頭を下げた。
「楽しみが増えたわ・・あなたがトータルで勝つ方に、私は賭けるわ」と笑顔で言った婦長に、笑顔を返して別れた。
私は駐輪場に歩き、光降り注ぐ場所で感じていた。
忘れていた感覚が完全に戻ったと、ミホの寝顔を思い出していた。
ユリカの波動がずっと響いていた、そのまま来いと言っていると思っていた。
《了解、ユリカ・・ユリカも好奇心旺盛だね》と心に囁いた。
強い波動に押されて、ペダルを漕いだ・・光射す、夜街に向けて。
私はミホが2人部屋なのに驚いていた、関口医師の挑戦に。
だから沙紀に関わった、私では何も出来ないと思いながら、描かせた絵が凄かったのだ。
その個性は障害と見られる、確かに不便な部分は多いだろう。
しかしある才能に特化する、多分突き詰めるのだろう。
常人では絶対に辿り着けない世界に、簡単に踏み込んで行く。
その純粋は壁も山も谷も越える、その精神世界は、真の意味での自由なのだろう。
この後に沙紀が見せてくれる絵は、主張に溢れていた。
その色使いが見せる、心の世界・・温かみに溢れ、美しかった。
沙紀が退院する時に、私に贈ってくれた、沙紀の初めての水彩画。
私は今でも書斎に飾っている、その絵が有るだけで、部屋の温度が上がる気がする。
淡い彩りに包まれた、ミホの笑顔が美しく表現されている。
沙紀は一度も、ミホの笑顔を見ていない、しかし描いて見せた。
私はこの絵を受け取った時、震えていた・・必死で涙を我慢した。
本当に嬉しかった、沙紀の優しいエールが込められていて・・頑張れと応援されて。
その後、ミホの笑顔が出た時に、ミホの関係者全員で泣いた、沙紀の素晴らしさを感じて。
全く同じであった、ミホの笑顔は・・この水彩画と、寸分の狂いも無かった。
沙紀は見ていたんだと感じた、その感性は超越したのだと。
ミホの真実を見ていたのだと・・そう感じていた。
障害ではない・・個性だと、私は確信している。
私は今でも思っている・・沙紀に比べると・・私は凡人だと。