恩師の言葉
ネオンを見下ろす箱舟、雑居ビルの密林には冒険者が闊歩していた。
誰かが定めた暦の8月は終了して、9月がスタートしていた。
だが外気の熱は下がる事なく、夏の主張は強いままだった。
「こんな所で、ごめんねリアン」と私の後ろからユリカが爽やかニヤで言った。
「ユリカ・・怖いよ、PGを引きずってるね」と獄炎ニカで返した。
「PG楽しいよ~・・でもリアンの熱の上がりが怖いよ」とユリカが微笑んだ。
「その前に、来週の魅宴が重圧だよ」とリアンがウルで返した。
「リアン、魅宴に立つのか」と親父が笑顔で言った。
「パパが開店で入って指名して」とリアンがウルで言った。
「来週・・火曜なら行けるぞ」と親父が笑顔で返した。
「大ママ、エースそれで調整お願いします」とリアンが笑顔で言った。
「了解・・いよいよ来るんだね、リアンの魅宴」と大ママが嬉しそうに微笑んだ。
『ハルカ・・調整よろしく、レンとハルカとマキ』と私がハルカにニヤで言った。
「了解・・私もローズに立つわ、やってやる」とハルカがリアンに微笑んだ。
「動き出したね・・私もゴールド早めにしてね」と蘭が満開で微笑んだ。
『来週の平日、安みの前の日にしよう』と笑顔で返した。
「私も~・・どこからかな?」とカスミが不敵ニヤで言った。
『カスミは当然、魅宴から』とニヤで返した。
「く~・・やっぱり、厳しい所からだな~」とカスミが笑顔で返した。
「カスミ・・厳しくないよ、激しい下ネタは禁止だけど」と大ママが笑顔で返した。
「カスミ・・いざとなった時が、封印だね」と蘭が満開ニヤで言った。
「カスミの魅宴・・これも楽しみだね~」とユリカが爽やかニヤで言った。
「がんばります」とカスミも笑顔で返した。
『早目に出とかないと・・ユリさんノリノリだから、急かすかも』と全員を見てニヤで言った。
「小僧・・そこまでやるのか、楽しそうだな」と親父が笑顔で言った。
『最高の演目だよ・・魅宴のユリ』と笑顔で返した。
「絶対見たい・・遅刻してでも見に行く」とカスミが言って。
「見逃せないよね~・・そこだけは」と蘭が満開で微笑んだ。
「大ママ、また泣かないといけませんね」とユリカが微笑んだ。
「そらは間違えないね・・ずっと想像してきたから」と大ママが真顔で言った。
「タミさん・・マダムはずっと探してたよな。
マキの母親真希に会って、そしてアスカに会って。
自分も託せる人材を、ずっと探していた。
そして巡り合えた、それがユリなんだよな。
強い意志は伝わるんだよ、呼び寄せる・・そしてチームができる。
魅宴はアスカ、PGはユリが呼び寄せた。
何かを作り出すために・・何かを表現するために。
楽しみだよ・・数十年かけて作り上げる作品は・・強い意志を持つだろうから」
親父が大ママに笑顔で言って、立ち上がった。
全員で立って見送った、親父がマキとヨーコに笑顔で話しかけて支払った。
ユリカとマキとヨーコが見送りに出て行った。
「素敵なお父様です~・・喧嘩はいけません」とシオンがニコちゃんで私に言った、私はウルで頷いた。
ミサキがハルカの隣に座り、マキとヨーコも帰ってきて座った。
「はい・・ヨーコちゃん・・それと少しだけどマキちゃん」とユリカが笑顔で封筒を差し出した。
「えっ!」と2人が同じ反応を示した。
『仕事の報酬なんだから・・ありがたく受け取らないと失礼だよ』と私が笑顔で言った。
「ありがとうございます」と2人が笑顔で受け取った。
「私も嬉しいわ・・あなた達の最初の報酬を渡せて」とユリカが爽やか笑顔で微笑んだ。
「大ママ・・1つ最後にお話しして欲しいんですけど」とユリカが笑顔で言った。
「今夜は気分が良いから・・どんな話だい?」と大ママが笑顔で返した。
「律子母さんの、若い時の生き方・・それが聞きたいんです」とユリカが微笑んだ。
全員が期待の笑顔で大ママを見た、大ママは笑顔で頷いた。
「私はね・・皆の想像通り、不良少女だったんだよ。
中学卒業して、出来始めの繁華街でたむろして遊んでた。
その時に街でマキの母親、真希姉さんに拾われた。
私は2日ばかりまともな食事もしてなくて、マダムの小料理屋に連れていかれた。
私が16歳・・真希姉さんが19歳だった。
真希姉さんは19歳と言っても、夜街デビューして3年経っていた。
それは美しい人だったよ、歩くだけで輝きが溢れていた。
そして小料理屋に居たんだよ、律子姉さんが・・21歳の素敵な女性だった。
真希姉さんが、律子姉さんの横に私を座らせて、隣に座った。
その当時の私は、全てに対して反抗的だったけど、反抗すら出来なかった。
2人は圧倒的に本物だった、だから逆らえなかった。
私がだまっていたら、律子さんがマダムに言った。
この子にご飯だけ出してって、マダムは笑顔でご飯を出してくれた。
それだけを食べてみて、そして忘れないで・・将来どんなにお金持ちになっても。
律子姉さんが笑顔でそう言った、私はご飯だけを食べてみたんだ。
その美味しさに驚いて、夢中で食べたよ。
食べ終わった時に、律子姉さんが私の顎を掴んだ。
ねぇ・・どうして無駄にするの?その素質と才能をと真剣に言った。
私は震えてたよ、それまでに子供としての修羅場は潜ってた。
でも顎を掴まれ目を見られて言われた、その言葉で震えていたんだ。
初めてだった、初めて正面から他人が向き合ってくれた。
私に何の才能があるって言うんですかって、私は叫んだんだよ。
押される何かを押し返したくて、必死で叫んだ。
そうしたら、律子姉さんが笑顔になって立ち上がった。
教えない・・感じるんだよ、私が今からあんたにチャンスをやるから。
そう言って、真希姉さんの前に立った、そして頭を下げて言ったんだ。
この子を真希の店で使ってやって、私が身元保証人になるからって。
私は固まってたよ、見ず知らずの会ったばかりの相手の、身元保証人になる人を見て。
律子姉さんがそう言うんなら仕方ないですね、頑張るかい?
真希姉さんが真剣な顔で聞いた、私は何も言えなかった。
最後のチャンスだと思ってね、今を逃がしたら、何も残らないよって律子姉さんが言った。
強い言葉だったよ・・その迫力が圧倒的で、私は泣いたんだよ。
嬉しくて、そして今まで無駄な時間を過ごした事が悔しくて。
頑張ります・・その言葉を言うのがやっとだった。
よし・・今、あなたは生まれ変わるから・・名前を変えよう。
夜の女の名前を付けようね、そう律子姉さんが微笑んで。
生まれ変わるなら、スタートの意味を命名しようねって、真希姉さんも微笑んでくれた。
律子姉さんお願い、真希姉さんが言った。
あなたは時代を作れる、それだけの力を持ってる・・私はそう信じてる。
だから時代の始まりを贈るよ・・あなたは今から・・飛鳥だよ。
私がどんなに嬉しかったか、言葉に出来ない。
私は忘れる事が出来ない、あのご飯の味と・・飛鳥の由来は。
それから、必死で真希姉さんに付いて、死ぬ気で仕事をしたよ。
律子姉さんと、勝也兄さんが・・いつも遠くから見ていたから。
私もマダムもエースが2人の子供だと分って、本当に感動したよ。
今の夜街の常識・・18歳以下の者に身元保証人を付ける事は、あの2人が作った。
律子という人は、本当に強い人だよ・・全てを受入れる覚悟があるんだ。
だから他人に何も強いない、私はあの顎を掴まれた時の顔を忘れられない。
本気で向き合ってくれた・・不良少女の私と・・正面から。
私は追い求めてる・・真希姉さんの生き方と、律子姉さんの生き方を。
そして感じた・・エースの言った原作者・・絶対にいると。
今回のマキの挑戦の筋も、ヨーコの身元保証人にも律子姉さんがなった。
私とユリは幸せだよ、今でもその生き方に憧れられる人がいるんだ。
21歳の律子姉さん・・確かにシオンはそっくりだよ。
もう少し、シオンが自分の主張ができれば・・そして伝えたいと強く想えばね。
律子姉さんの生き方・・それは心に従う事なんだ。
エースは案外普通の男かも知れん、母親と同じタイプを愛したんだから。
皆にも覚えていて欲しい、今があるのは周りの全てが居たからなんだと。
そして私達は最高の時代に生まれたんだと。
追い求める者と託せる者がいる・・これ以上の幸せはないんだから」
大ママの涙の言葉が全員に響いていた、私は母が自分のイメージ通りで嬉しかった。
「やっぱり・・ユリ姉さんを戻したのは、律子母さんですね」とユリカが微笑んだ。
「そうだと思うよ・・ユリは絶対にあの生き方に憧れるよ」と大ママも笑顔で返した。
「最強の爆弾・・勝也と律子、まさかそれまで考えてたんじゃないよね」と蘭が満開で微笑んだ。
『蘭に対してだけは考えてた、律子爆弾』とニヤで返した、蘭が満開で頷いた。
「素敵な親子関係だよな~・・なんか嫉妬しそう」とカスミが不敵ニヤで言った。
「カスミ・・シズカともっと話してみると、絶対に嫉妬するよ」と蘭が満開ニヤで言った。
「あの子の奔放な生き方・・心が自由なんだよね~」とユリカが微笑んだ、カスミも笑顔で頷いた。
「意志の強いシオン・・確かに最強だね」とカスミが不敵で言った、シオンがニコちゃんで返した。
「2人は母さんに怒られた事あるの?」と蘭が満開ニヤで言った。
「ヨーコも恭子も無いと思います・・私はあるけど」とマキが反省顔で言った。
「あ~・・あれがあったね」とヨーコがニヤで言った。
「マキ・・述べよ」とカスミが不敵ニヤで言った。
「私・・産まれつき髪が少し赤くて、小学校までは伸ばしてました。
ご存知の通り、中学は校則が厳しくて・・入学式の日に生徒指導の先生に呼ばれました。
私はちゃんと2つ結びにしてたけど注意されて、産まれつきだと言った言葉も無視されて。
その指導の女の先生から、黒く染めて切って来いと言われて。
仕方なくお小遣いはたいて、黒く染めて切りました・・祖母に言えなくて。
その夜、部屋で落ち込んでたら・・母さんが来ました。
マキ・・どうして、なぜそこで止めるのって、真剣に怒られた。
私は言われた意味が分らなくて、先生に逆らえないと言った。
逆らわなくて良いんだよ・・でもねマキ、悔しくないの?と聞かれた。
悔しい・・悔しいけど、どうして良いか分らないと言って泣いてしまった。
マキ、泣いたら駄目・・今、ここで泣いたら負けを認めるのよ。
マキ・・母さんはマキに主張して欲しい、自分の個性を表現して欲しい。
親から受け継いだ身体を否定する、そんな教師に、無抵抗で敗北をして欲しくない。
強い言葉で言われて、私はそれで前を向けた。
母さん、どうすれば良いの?私は長く綺麗な髪が好きなのって言ったんです。
そうしたら教えてくれました、その言葉が今の私を作りました。
髪なんて卒業すれば好きなだけ伸ばせるでしょ、違う好きなパターンも有るでしょ。
母さんはそう言って、笑顔で聞いたんです・・芸能人では誰が好きかって。
私はアグネス・チャンが好きって答えた、そしたら男の芸能人は誰?って聞き返された。
私は矢沢永吉が好きで・・エーちゃんって答えた。
そうしたら母さんが笑って、ほらあるじゃない違う好きがって言うんです。
私は言ってる意味がまだ分らなくて、戸惑ってたら。
鏡の前に私を座らせて、母さんが後からポマードを私の髪に付けた。
そしてリーゼントを作ってくれたんです、私は嬉しかったんです。
母さんの熱い想いが伝わってきて、私も期待されてると思えたから。
そして母さんが笑顔で、思った通り素敵じゃない・・女子は肩までだからOKよ。
女子からラブレター貰うわよ、母さんがそう言って笑いながら帰って行きました。
私は嬉しくて、それから必死で、リーゼントを綺麗に作る研究をしました。
私は唯一、一度だけ本気で怒られました・・自分を曲げてスネていた時だけ。
私にとって、このリーゼントスタイルは、大切な物なんです。
いまではどんな髪型よりも好きです、私を1番表している気がするから。
ドレスを着る時がきても、出来るだけこのスタイルでやりたいと思っています。
無抵抗で敗北を認めるなと・・大切な教えが詰まっているから。
否定されても、主張しろと・・憧れの母が教えてくれたから。
毎朝・・髪を作る時に・・あの母の言葉が聞こえてくるから」
マキは笑顔でそう言った、全員が優しい笑顔でマキを見ていた。
「マキ・・私もマキに1つプレゼントをするよ。
律子姉さんのその話の、もう1つの深い意味を。
マキのお父さんは、4分の1西洋の血が入っていたんだよ。
お父さんも、それで苦しんだ、彫りの深い顔と赤い髪で。
その事を律子姉さんは、もちろん知っている・・だからマキに伝えた。
親から受け継いだ身体を否定する、そんな教師に負けるなとね。
マキは見せてるんだね、その想いを・・私も素敵な髪型だと思うよ。
エース・・マチルダに会わせるべきは誰か・・分ったかい。
身体的差別意識に最も敏感な人・・次はその人に会わせてあげなよ」
大ママの言葉でマキは涙を見せて、私はハッとして気付いた。
「なぜそこで止めるの・・本当に素敵な言葉だよ」とカスミが呟いて泣いていた。
「本当ね~・・言えないよ、その言葉は・・愛情がないと」とリアンが微笑んで。
「マチルダの喜ぶ顔が見えるね、母さんって呼ぶマチルダが」とユリカが微笑み。
「私も目指そう・・その言葉で語れる、憧れの母を」と蘭が満開で微笑んだ、全員が笑顔で頷いて終宴を迎えた。
大ママが全員分を支払って、お礼を言って店を出た。
ハルカとマキをタクシーに乗せて見送り、リアンとシオンを乗せて見送った。
カスミがタクシーに乗り、手を振って別れた。
私は蘭とヨーコとタクシーに乗り、家路についた。
『ヨーコ、ご機嫌だね』と隣に座るヨーコに微笑んだ。
「接客の難しさが少し分って・・挑戦する楽しみが出てきたよ」とヨーコが可愛く微笑んだ。
「良いね~・・難しい事が楽しめるって」と蘭が満開で微笑んだ。
「はい・・マキと競えますから」とヨーコが蘭に微笑んだ。
「なるほど・・可愛いな~ヨーコ」と蘭が満開笑顔で言った。
「嬉しいです~・・蘭姉さんに言われると」とヨーコも清楚な笑顔で返した。
ヨーコのアパートに着き、手を振って別れた。
「最新型だね・・ヨーコも、ホノカに近いよ」とニヤで言いながら肩に乗ってきた。
『蘭はL2800の、城嶋スペシャルだろ』とニヤで囁いた。
「そうなの~・・私はユリ姉さんと同じL型なのだ」と満開ニヤで返してきた。
『なら大丈夫だね、国産にも外車にも負けないさ』と囁いた。
「マチルダポルシェ・・今どこを走ってるのかな~」と囁いて瞳を閉じた。
『ドイツが産んだ、最高のエンジンだから・・大丈夫だよ』と囁いて夜空を見ていた。
夜空に月が浮いていた、その光で入道雲が照らされていた。
《マチルダ・・次回を楽しみに・・面白い女に会わせてあげるよ》と心に囁いた、暖かい波動が包んでくれた。
それからが大変だった、アパートに着いても蘭は爆睡していた。
部屋に入り、蘭を起こして化粧を落とすのを支えて。
照明を消してパジャマに着替えさせ、部屋を片付けて窓を開けてベッドに戻った。
『りゃん、寂しかった』と優しく言ったが反応が無かった、熟睡蘭のニヤの寝顔があった。
私は蘭を腕枕して、額にキスして眠りに落ちた。
翌朝、多分緊張で目覚めた。
シャワーを浴びて、歯を磨いた。
朝食にトーストとハムエッグにレタスとキュウリスティックを添えた。
蘭が眠っていたので、キッチンのテーブルで一人で食べて着替えた。
久々に制服を着て、少し気合が入って、蘭の部屋に行った。
蘭の寝顔の額にキスをして、歩いて出掛けた。
チャリをまだ取って来ていなかったので、早目に出たのだ。
鼻歌混じりで宮崎駅まで歩いて、駅の売店でジュースを買って飲みながら歩いた。
「か~・・誰かと思った!」と通り過ぎたチャリの女子高生が振向いた。
『久美子・・制服が可愛いね』とニヤで言った。
「もでしょ・・も!」と笑顔で睨んだ。
『も・・・可愛いね』と笑顔で返した。
「今朝は歩きなの・・頑張るね~」とニヤで返してきた。
『後に乗せて』とウルで言った。
「駄目~・・胸触るでしょ」とニヤ継続できた。
「久美子・・彼氏出来たの~」と女子校生2人組が笑顔で言った。
『お姉さん・・素敵だ~、やっぱり成熟度が久美子と違う』と笑顔で言った。
「あら~・・良い子じゃない」とニヤで返された。
「やめた方が良いよ・・じゃあねチャッピー」と久美子がニヤで言って、自転車を漕いで行った。
「あなたがチャッピー・・キャ~~」と2人が面白がって、逃げるように漕いで行った。
私はウルで見送って、学校を目指して歩いていた。
「ちょっと待ちな!・・なぜこんな方向を歩いてる」と後から声がした。
『道・・間違えた』とウルして振向いた、同級生の詩織が笑顔で立っていた。
「ぼく・・いくちゅになりましたか~」と隣に並び笑顔で言った。
『じゅーしゃんしゃい』とニヤで返した。
「で・・事実は?」とニヤで聞き返された。
『引っ越した・・俺だけ』とウルで答えた。
「事実だったな・・夏休み中、家出してたの」とニヤ継続で言われた。
『なぜそんな根も葉も無い噂が』と笑顔で返した。
「夏休みには、登校日ってあるの知ってる?」と笑顔で返された。
『何それ・・美味しいの?』とニヤでとぼけた、私はすっかり忘れていた。
「やっぱり・・何も知らないんだね、ノリ先輩の事とか」と真顔で言った。
『番長・・逮捕されたの?』と笑顔で返した。
「それなら良いけど・・○○高校ともめてるらしいよ」と詩織がニヤで言った。
『暇な人達だ・・高校生相手に』と笑顔で返して、正門から学校に入った。
『詩織のせいで、早く来過ぎた』とウルで言いながら、教室に入った。
「私のおかげで・・囲まれずに早く来れたんでしょ」と私の前の席に座り笑顔で言った。
『スターは辛いよ』とニヤで返した、級友がどんどん登校してきて。
私は囲まれて、事情聴取されていた・・私は笑顔でとぼけていた。
「小僧・・カモ~ン」と大きな声で呼んだ、3年の女番長バルタンだった。
『バルタン・・また綺麗になったね、一夏の経験したな』とニヤで言って近付いた。
「してない・・綺麗になったけど」と笑顔で返された。
『して・・何でしょう?』と聞いた。
「屋上に・・よ・び・だ・し」とニヤで言った。
『俺まだ未経験だから、優しく教えてね』とウルで言うと、ニヤで腕を掴まれ連れて行かれた。
屋上には3年の悪女6人と、悪男3人がいた。
『怖い・・袋にされるんだ』とウルウルで近付いた。
「小僧・・生きてたか~」と口々に言われた、私はウルで頷いた。
「小僧・・○○高校の情報教えろよ」とバルタンが言った。
『偏差値低くて・・名前漢字で書ければ合格するよ』と笑顔で返した、全員が笑っていた。
「その情報じゃない・・生徒の情報」と笑いながらバルタンが言った。
『3年の普通科に、良子ってすっっっごい可愛い子がいる』とニヤで言った。
「それでもない・・素行の悪い男子」とバルタンがニヤで返した。
『マコちゃんがトップだよ、誰ともめたのノリ番長』と笑顔で聞いた。
「1年の・・ミチオって奴らしい」とバルタンが真顔で言った。
『○中出身のミッちゃんか~・・好きだな~ノリ番長も』と真顔で返した。
「やばい奴なの?」と後の女子が聞いた。
『やばいよ・・馬鹿だから、集団で来るタイプ・・それにしつこい』とウルで言った。
「ノリちゃん・・骨折受けたんだよ、それでも来る?」とバルタンが心配そうに言った。
『内容によるよ・・何したの?』と真顔で聞いた。
「女でもめた、相手が強引に手を出そうとしたらしい」とバルタンが真顔で言った。
『ミッちゃんも馬鹿やね~・・子供に手を出して』と真顔で返した。
「とにかく、注意しとこう」とバルタンが振向いて言った、全員が頷いた。
『キングを絡ませるなよ、大会前で殺気だってるから』と笑顔で言って、階段を降りた。
キングは柔道部に入り、県大会で優勝して九州大会を控えていたのだ。
教室が見えた時に始業のチャイムが鳴った、私は笑顔で教室の前から入った。
「おや小僧君、元気そうだね~」と担任の林の爺さんが笑った。
『林先生も・・灼熱の夏を乗り切れましたね、また会えて嬉しいです』とウルで返した。
「おかげさまで、なんとか乗り切ったよ」とシワシワ笑顔で言った。
『気を抜いたら駄目ですよ、夏は続くから』と笑顔で返して席に着いた。
「いよいよ2学期が・・・」林の爺さんの始業の挨拶を聞きながら、中庭を見ていた。
《ユリカ・・やっぱり退屈だよ、迎えに来て~》と心に囁いた、強い波動で怒られた。
「ほれ・・行くよ」と前の席のカナが笑顔で言った、少し大人びた笑顔だった。
『カナ・・彼氏出来たな、笑顔が怪しい』とニヤで返して立ち上がった。
「出来ないの・・男は馬鹿やね~、将来性を見れないから」と笑顔で言って横に並んだ。
『将来性ね~・・確かにあるかもね』と言って手を出した、カナはニヤで繋いできた。
私はカナと手を繋いで、体育館に入った・・全校集会で制服が密集していた。
あの当時は子供が多く、私の中学も生徒が1200人を超えていた。
「カナ!・・駄目よ妊娠するよ、手を繋ぐと」と女子達にニヤで言われた。
「小僧・・一人じゃ全校集会怖いって言うから~」と私にニヤを出して、女子の列に入った。
私は男子の列の定位置に立った、後の信が背中を突いた。
「やりやがったな・・結局帰らなかったな」と囁いた。
『信・・Tシャツ新品返すよ』と囁いて返した。
「PUMAでよろしく」と返された、私はウルで振向いて頷いた。
長い校長の訓示があって、夏の大会の部活の結果報告等があった。
解散になり、教室に信にその後の事情聴取を受けながら戻った。
「小僧以外の者は、宿題を提出するように」と林の爺さんが笑顔で言って、皆が提出していた。
それでその日は終了になって、私は小さな林の爺さんと並んで職員室を目指した。
「確認したのか?・・心は答えたか?」と林の爺さんが静かに言った。
『うん・・何度も確認した、キチンと答えたよ』と真顔で返した。
「よかろう・・ワシが認める」とシワシワ笑顔で言った、私は本当に嬉しかった。
その小さな体を見て、《長生きしろよ》と心で呟いた。
暖かい波動が包んでくれた、偉大な教師と未熟な私を。
職員室に入ると、教師達のニヤ視線が降り注いだ、私は照れた笑顔で返した。
「反省してます」とバルタンの声が聞こえた、私はバルタンの横に座らされた。
「小僧・・来たね~」と副担任のミセス祥子が、向かいに座り笑顔で言った。
『反省してます』とバルタンを真似て、反省顔を作った。
「じゃあ・・自主学習を教えて?」とミセスが笑顔で聞いた。
『23歳の好きな人が出来て、その人と暮らして・・夜街で働きました』と反省顔で言った。
「律子さんも、了承済みなんだね?」とミセスが言った、私は真顔で頷いた。
「どんな女性だ・・綺麗なんだろうな~?」とバルタンの前に座る、鬼の体育教師、極マサが言った。
『たいした事ないですよ・・普通です』と真顔で返した。
「一夏の経験したのか?」とバルタンが微笑んだ。
『子供には意味が分からない』とウルで返した、バルタンがニヤで見ていた。
「とにかく・・学校内で話が広がらないように、美智子も分かったね」とミセスが釘を刺した。
「は~い・・広まったら、私のせいになりそう」とバルタンがウルで頷いた。
「小僧・・ノリの話聞いたか?」と極マサが真顔で言った。
『チラッと聞きました』と真顔で返した。
「じゃあ良いな・・分かってるな」とニヤで言った、私は真顔で頷いた。
それからミセスが沢山の問題用紙のプリントくれ、一週間で提出するようにと微笑んだ。
私はウルで頷いて受け取った、職員室の入口でバルタンと一緒に頭を下げて出た。
「サンキュー小僧、助かったよ」とバルタンが微笑んだ。
『3年生は、真面目に勉強しなさい』とニヤで返した、バルタンはウルで頷いた。
「美智子~・・来てるよ、5人の軍団」と3年悪女の一人が駆け寄った。
『頑張ってね・・さようなら』と笑顔で行こうとすると、腕を掴まれた。
「屋上行こうね」とバルタンがニヤで言った。
私はウルで拉致されて、屋上に上った。
その連中は原付2台とチャリで、正門前の空き地にたむろしていた。
下校する中学生を睨んで、物色中だった。
『やるね~・・正門前で堂々と待ち伏せか~』と私は暢気に言った。
「ノリ来てないのに・・小僧、そう言って来てくれよ」と3年のコオロギが言った。
『一緒にいたね・・狙われてるな』とコオロギをニヤで見た、コオロギが笑顔で頭をかいた。
『俺は無理~・・極マサに言われてるから』とニヤで言った時に衝撃が走った。
懐かしいケンメリの音が近づいて来た、黒いケンメリの姿が現れた。
そのまま走ってきて、空き地の5人の前ギリギリで止まった。
そして助手席から、マキが降りてきた・・その美しい姿に見惚れていた。
「マキ先輩!」とバルタンが笑顔で言って、階段に走った。
私も慌てて、バルタンに続いて走った。
正門から出ると、マキが女子生徒に囲まれていた、その中心でマキが笑っていた。
「マキ先輩~」とバルタンがマキに飛びついた。
私は蘭を笑顔で覗いた、満開笑顔で私を見ていた。
「美智子・・ノリは?」と完全に萎縮してる、ミチオが言った。
『骨折してるから、今日は休み』とバルタンがニヤで言った。
「ミチオ・・ノリがなぜ骨折したのか、今ここで聞いて良いんだね?」とマキが真顔で言った。
5人が沈黙していた、そこに極マサが歩いて来た。
「マキ・・綺麗になったな」と極マサが嬉しそうに微笑んだ、マキも笑顔で返していた。
教師の登場を感じて、蘭が運転席を降りて、極マサに満開で微笑んで頭を下げた。
「ちょっと待ってね」と極マサが蘭に笑顔で返して、私に近付いた。
「小僧・・ふざけるなよ、どこが普通なんだ・・綺麗過ぎるぞ」と静かに言われた、私はウルで返した。
「うっそ~!」と蘭を見てバルタンが声を上げた、囲んでいた女子全員が蘭を見た。
蘭は余裕で満開に微笑んで返していた。
「先生ですね・・小僧がお世話になります」と蘭が満開継続で頭を下げた。
「いえ・・お世話してますけど」と極マサとは思えぬ笑顔で返した。
世間話をする2人を離れて、ミチオに近付いた。
『ミッちゃん・・骨折でチャラにできんの?』と笑顔で言った。
「小僧には関係ないだろ」と少し睨みながら返された。
『他の4人も同意見なんだね・・俺は関係ないよ、明日マコちゃんに喧嘩売りに行くよ』と笑顔で言って車に乗った。
「じゃあ、そう言う事で・・頑張りな」とマキがミチオに言って、助手席に乗ってきた。
蘭が極マサに笑顔で挨拶して、運転席に乗り・・マキが女子達に手を振って走りだした。
「制服姿・・可愛いじゃない」と蘭が満開ニヤで言った。
『でしょ~・・しかしナイスタイミングで来るよな~、それもマキ連れで』とニヤで返した。
「マキちゃん・・素敵だな~、女子達が駆け寄って来るんだから~」と蘭が微笑んだ。
「女子だけです」とマキがウルで返した、蘭と私は笑っていた。
夏の昼下がり、ケンメリの優しいエンジン音に包まれていた。
実家を目指す黒いボディーの中で、少年のまま笑っていた。
私は教師達に、隠してはいけないと思っていた。
親父もお袋もそれを許さないと感じていた、自分で選んだ事なのだから。
学校内では暗黙の了解になった、多分・・全生徒が知っていただろう。
私の参観日と三者面談は、蘭が全て出席した。
担任の林の爺さんが認めたので、他の教師達は何も言わなかった。
林 清次郎・・素晴らしい教師だった。
温厚で熱い人だった、深い戦争体験が作り出した・・その言葉が強かった。
私が19の秋に、恩師の死去の知らせを聞いた。
蘭と羽田に向かいながら、私も蘭も涙が止まらなかった。
「確認したのか?・・心は答えたか?」空の上で、恩師の言葉が何度も響いてきた。
私は棺の前で土下座して、礼を言った・・黙って認めてくれた、恩師に。
誰よりも早く逝った・・師と呼べる人に届くように。
遺影の笑顔は・・あの9月1日のまま、優しく穏やかだった。
ありがとう・・清次郎・・本当に嬉しかった。
後十数年で、私もあの時のあなたの歳になります。
追いつける自信がないよ・・あの優しさには・・そして強さには。
次のステージで再会した時に報告します・・あの宿題の解答を。
それまでは安らかに眠れ・・人間として憧れ続ける者・・清次郎。