起源の一滴
灼熱のフロアーに、透明の女神が光臨した。
同じ道を進む者達が、その透明に触れて幸せを感じていた。
存在自体が強く主張する、色無き世界・・無の原色。
生命の源・・水・・その大海を作る、最初の一滴に選ばれし者。
透明度100%、不純物は無い・・羊水の箱舟・・水の百合香。
私は指定席に座り、熱の高いフロアーを見ていた。
ユリカと蘭で、医師会の重鎮2人が座る3番席に入っていた。
静かなる会話で笑顔が出ていた、私は蘭とカスミが挟む初老の医師を見ていた。
あの総合病院の院長だった、穏やかな顔は相変わらずで、目だけに力があった。
その時に蘭からサインが飛んだ、【3番】【エース】【指名】と出して満開で微笑んだ。
私は少し焦って、静かに裏を回って3番席の蘭の側から顔を出した。
『院長・・ご無沙汰しています』と笑顔で頭を下げた。
「久しぶりですね、元気そうだね」と笑顔で返してくれた。
蘭が立って院長の隣に座るように促した、私は一礼して隣に座った。
「ほう・・その子ですか」と同席してる恰幅の良い初老の男が微笑んだ。
「はい・・小僧と呼ばれています・・小僧、○病院の院長・・佐伯先生」と紹介してくれた。
『よろしくお願いします・・ミホがお世話になります』と笑顔で言って頭を下げた。
「よろしく・・噂は聞いてるよ、楽しみにしてますよ」と佐伯院長が笑顔で言った。
その笑顔の穏やかさに安心感があった、医療に携わった期間の長さを感じさせた。
『楽しみと言われても・・自分では挑戦ですから』と笑顔で返した。
「楽しみだよ・・学問の外にいる人は、不思議な事をするからね」と真顔で言った。
『教養は絶対に必要ですね、でも縛られる人が多いと思ってます』と真顔で返した。
私は素直になれてる自分を感じていた、経験からくるであろう強い存在を感じて。
「そうだね・・その弊害はあるかもしれんね」と佐伯院長が笑顔に戻り言った。
『先生と呼ばれる職業は、重圧が大きいんでしょうね・・でも若い時は、公務員やサラリーマンと同じ感覚になりがちですね』と笑顔で返した、佐伯院長は笑顔のまま私を見ていた。
「組織に属せば強さを試される、覚悟が無い者は・・誰かの道を歩もうとするんだよ」と佐伯院長が真顔に戻し言った。
『職業だから仕方ない事なんでしょうね・・俺は子供だから理解できないし、認められないけど』と真顔で返した。
「認めてはいかんよ・・医師は職業だが、相手にするのは命なのだから」と佐伯院長が笑った、私も笑顔で頷いた。
「明日・・ミホちゃんに会ったら、私の部屋に来てくれんかね?」と佐伯院長が笑顔で言った。
『もちろん・・素敵なご招待ですから』と笑顔で返した。
「関口君から君の事を聞いてね、関口君の提案に驚いたんだよ・・しかし今、会って欲しいと感じたよ」と佐伯院長が言った。
『関口先生の提案なら・・かなり難解な事ですね』と笑顔で返した。
「会って欲しいんじゃよ・・ヒトミと同じ病を背負う少女に」と佐伯院長が真剣な目で言った。
『そうですか・・関口先生は強い星を背負ってるんですね』と真顔で返した。
「そうだろうね・・その子の両親が、関口君が経験者だと調べて尋ねて来たからね」と佐伯院長が言った。
『何も出来ないけど・・会いたいですね』と笑顔で返した。
「1つだけ教えてくれないかね・・ヒトミちゃんの意思を感じた事に、確信が有るのは何故なのかを?」と佐伯院長が真顔で聞いた。
『ミホを預かってもらうので、お答えしますけど。
良し悪しの判断はしないで下さい・・表現し難い事ですから。
ヒトミの温度の変化を感じた時に、私は嬉しくて集中しました。
ヒトミの小さな手の平の中の、温度の流れを感じました。
確かに血液が巡っているのだから、微かな変化はあるのでしょう。
でも違いました・・そんな有機質な感覚じゃ無かったんです。
もっと無機質というか・・気体のような感じです。
俺はヒトミの母親に教えて、母親もそう感じたと言いました。
最初の頃は、手の平の中心点から、右に回ったり左に回ったりだけでした。
俺は色々話をして、それを解読しました。
右回りがYESで、左回りがNOだと思って、それをヒトミに確認しました。
そうすると、大きく強く右回りで示したんです。
それから・・乳児が言葉を覚えていくように、多様な流れが出てきました。
私も英語を覚えるような感覚でしたね、たまに大きく間違ったりして。
その都度ヒトミに怒られました、そして俺が完璧に解読すると笑ってました。
その時点でも・・俺は自信が無かったんです。
そしてヒトミの体調が少し悪くなって、高熱が続きました。
私もヒトミに触れる事が出来ないで、遠目に見ていました。
その時に関口先生に言われたんです、ヒトミに聞いてくれと。
どかが痛くて、どんな感じで辛いのかを聞いて欲しいと。
俺はヒトミに聞きました、ヒトミは伝えて来ました。
腰が痛いと・・私はそう言ったと思って、ヒトミの背中に触れた。
そして段々と降ろしていくと、お尻の少し前で右に大きく流れたんです。
それで検査したら、寝たきりで骨が少し神経に触れていたそうです。
驚く医師を見て、幼い私は不思議でした・・私には当然の事だったから。
ヒトミには意思もあるし、痛みも感じると知っていましたから。
ヒトミは体調が安定した時に、私に強く伝えて来ました。
触り方がいやらしかったって、激しく怒られました。
その時はヒトミのご機嫌取るのが大変でしたよ、ずっと怒ってて。
その少女らしい怒りが、俺に自信を与えてくれました。
背中の痛みを探り当てた事よりも、その不機嫌なヒトミが教えてくれました。
ヒトミには意思があると、そして俺は交信していると。
ヒトミの温度の変化・・あれは体温じゃないと思っています。
あれは多分・・心の温度・・俺はそうだと思っています。
初めてお医者さんに話しました、関口先生にも話していません。
医学を専攻した人に話すのは・・失礼な気がしてました。
でも確信を持って言えます・・俺はヒトミと会話していたと。
一緒に笑ったし・・よく怒られましたから。
俺にとってヒトミの思い出は、他の友達の思い出と全く変りません。
ただ違うのは・・ヒトミを異性として好きだったという事だけです』
穏やかな初老の2人に挟まれて、感情的になっていた。
蘭の青い炎とユリカの暖かい波動が包んでくれて、私を守ってくれているのを感じていた。
「ありがとう・・私は人として嬉しいよ、そして心から期待する・・君にしか出来ない事を見せて欲しい」と佐伯院長が笑顔で言った。
『会ってみます・・私もヒトミに対して、後悔と反省があるから』と笑顔で返した。
私は2人の院長に挨拶をして、指定席に歩いた。
女性達の暖かい視線が私を見守っていた、ユリさんと目が合い薔薇で微笑んで頷いた。
私も笑顔で頷いて、指定席に戻った。
シオンがコーラを持って来て、ニコちゃんで私を見た。
「先生・・シオンもそう思うよ・・絶対に心の温度だよ」と笑顔で言った。
『うん、シオンありがとう・・そのシオンの言葉が1番嬉しいよ』と笑顔で返した。
ニコちゃんシオンの背中を見送って、フロアーを見ていた。
映像が流れていた・・不機嫌なヒトミのご機嫌を必死でとる、幼い私が映っていた。
「覚悟したのか・・何か1段上がったな」とカスミの声で我に返った。
『必死で上がらないと・・全員の背中が見えなくなりそうで』と笑顔で返した。
「そうだよな~・・ユリカ姉さん、まさに別世界だよ」と輝く笑顔で言った。
『ユリカの水の意味・・もう1つ感じたよ、水源なんだって・・大海を作り出す、最初の一滴みたいな』と笑顔で返した。
「うん・・良く分かるよ、あの静寂を感じると」と美しい笑顔を残し、銀の扉に消えた。
私は感じていた、私に何かあると、最初に側に来るのはカスミだと。
その下手くそな表現で常に元気付けられる、温かい言葉が直接響いて来ると思っていた。
終演前のフロアーは、完全燃焼の熱が包んでいた。
私は蘭の満開笑顔を見ながら、ヒトミを感じていた。
《もう一度やってみるよ・・ヒトミ・・伝えたかった事が、まだ沢山あるから》と心で呟いた。
強く温かい波動が来て、ユリカを見た・・爽やかに微笑んでいた。
私も笑顔で見ていた、ユリカの静寂と蘭の青い炎を。
最後の5番席の3人が帰り、終演を迎えた、ユリカも含むメンバーが10番に揃った。
私は笑顔で10番席に歩いた、蘭が満開ニヤで迎えた。
「自信たっぷりな歩きだね~」と満開ニヤで言った。
『報告します・・ユリカ抱っこだけです』とニヤで言った。
「恒例抱っこ、明日からはどうするんだい?」と満開ニヤ継続で聞いた。
『出勤前にします』と笑顔で返した、ユリカがニヤで見ていた。
「よし・・カスミリーダー」と蘭がカスミを観た。
「はい・・全員でお礼を言おうと思います」とカスミが立って言うと、全員が立ってユリカを見た。
「ユリカ姉さん、本当に勉強になりました・・ありがとうございます」とカスミが頭を下げて。
「ありがとうございます」と女性全員が頭を下げた。
「喜んでもらったんなら、私も嬉しいです・・私も楽しかったですよ」とユリカが爽やか笑顔で返した。
女性達の笑顔があった、充実感が伝わってきていた。
「明日から学校の人も多いと思います、無理せずマイペースで行きましょう」と蘭が満開で微笑んで、解散になった。
私はマキとシオンとTVルームに行き、ユリカと蘭を待っていた。
「荷物運んだの?」と久美子が笑顔で私に聞いた。
『うん、シオンの車で、当面必要な物だけね』と笑顔で返した。
「中学は始業式、半日だよね・・良いな~」と久美子がニヤで言った。
『高校もでしょ・・久美子宿題してないから、居残りだね~』とニヤで返した。
「エースじゃないんだから・・午後からレッスンがあるのよ」と笑顔で睨んだ。
『明日・・J・塚本を7時に誘うよ、頑張れよ』と笑顔で言って、ご機嫌をとった。
「任せて・・必ず合格してみせるよ」と久美子が可愛く微笑んだ。
『かなり乗り気だね~』とニヤで聞いた。
「リッチハートのステージは、音楽やってれば憧れるよ」と久美子が笑顔で返してきた。
『俺も楽しみだ~・・ライブハウス初体験』と笑顔で言った。
「入れるのかな・・13歳」とマキがニヤで言った。
『マキ・・俺が夜街で入れないのは、ソープだけだよ』とニヤニヤで返した。
「ソープに入れないのを、なぜ知ってる?」と後からカスミが不敵で言った。
『多分ね・・多分の話』とニヤで返した。
「入れるよ、エースなら・・挑戦してみれば」とユリカが爽やかニヤで言った。
『ユリカが楽しむだけだから、絶対に行かない』とウルで返した。
「そんな理由で行かないんだね・・実は行きたいんだね」と蘭が満開で睨んだ。
『行きたくないよ・・女性をお金で買うなんて、絶対に出来ないよ』とウルで返した。
「ヨチヨチ・・良い子だね~」と満開笑顔でヨチヨチしてくれた。
「ヨーコちゃん接客してたの?」とユリカが爽やかニヤで聞いた。
『うん・・BOXが満席で、カウンターのサラリーマン3人組の前に立ってたよ・・大ママが1番偉そうな人の横に座って』と私もニヤで返した。
「ユリカ姉さんも、煽るの好きですね~」とマキがニヤでユリカに言った。
「はい・・大好きで~す」とユリカが爽やかニヤで返した。
「マキ、今から行くよ・・ハルカも行くだろ」と蘭が満開で言った、ハルカがマダムを見た。
「マキをちゃんと送って帰るんじゃよ」とマダムがハルカに微笑んだ。
「はい、必ず送り届けます・・マキ、行くよ」とハルカがニヤで言った。
「えーしゅは明日から学校だから、お休み~」と蘭が満開ニヤで言った、全員がニヤで見た。
『行くもん・・学校も行くもん』とウルウルで言った。
「仕方ないね~・・居眠りするなよ」と満開笑顔の蘭とユリカの後に続いて、TVルームを出た。
「シオンも行きま~す」とシオンがニコちゃんで私の腕を組んで来た、私は笑顔を返した。
「きゃしゅみも~」とカスミが意を決したように、大声で言って蘭に並んだ。
「きゃしゅみ・・サクラさんの店、遅刻するなよ」と蘭が満開ニヤで言った。
「大丈夫・・ここは行かないと、ヨーコが気になる」と不敵で返した。
「気になる子が多くて、カスミも大変ね~」とユリカがニヤで言った、カスミがウルで頷いた。
ユリカの店に入って、衝撃の光景を目にする。
カウンターは親父の連れの若い大工が2人で座り、ヨーコが一人で接客していた。
親父は奥のBOXで大ママと話していた。
他の2組のBOXにミサキとユリカの店の女性が付いていた。
私達は大ママに手招きされて、奥のBOXに入った。
笑顔の親父を蘭とシオンで挟み、カスミが大ママの奥に、私が大ママの隣に座りハルカが座った。
『マキ・・何座ろうとしてるの?・・ヨーコの応援だろ』とマキにニヤで言った。
マキがハッとしてユリカを見た、ユリカは爽やかニヤで返した。
ユリカとマキがカウンターに行って、ユリカはBOXに挨拶に行った。
「厳しいな~・・夜街のエースは」と親父が笑顔で言った。
『まぁあの位はこなすでしょう』とニヤで返した。
「父さん・・もっと厳しく言って下さい、生意気で」と蘭が満開ニヤで言った。
「生意気じゃないと、PGのNO2と同棲はできんだろ~」と親父がニヤで返した。
「次は私の部屋を、小僧に準備してますから」とカスミが親父に微笑んだ。
「小僧は近い内に刺されるな、親より先に死ぬなよ」と親父が笑顔で言った、全員が笑っていた。
「勝也お父さん、シオンと申します、よろしくお願いします」とシオンがニコちゃんで頭を下げた。
「よろしくシオンちゃん・・なるほど~律子が一目で気に入るわけだね」と親父が微笑んだ。
「どうしてなのか、聞いても良いですか?」とシオンが可愛いニコちゃんで言った。
「律子がねシオンちゃん見て、案外小僧も普通の男かなって思ったと言ったよ。
シオンちゃんが蘭だったらね、俺も今会ってその意味が分かったよ。
シオンは律子の10代の時にそっくりだから、そう思ったんだと気付いたよ。
律子は今はあんな感じだけど、10代の頃はその言動が自由過ぎて浮いていた。
なんせ戦後の復興が一段落した頃だったから、今より女性にとって不自由な時代だった。
律子はそれでも曲げなかった、自分らしくにこだわったんだ。
アスカは知ってるけど、怖いと思うほどの強い意志だったよ。
そして経験を重ねても、基本は変らない・・今でもこだわってる。
だから、今回の小僧の事も許すし、シズカの奔放な生き方にも何も言わない。
シオンは本当に似てると思うよ、俺は律子と一緒にいたから分かる。
律子はシオンが蘭だったなら、小僧は母親と同じタイプを選んだと思ったのさ。
だから・・案外普通の男かなって思ったと言ったんだよ。
一目で好きになるさ・・自分を好きかと聞かれるのと同じだから」
親父はシオンのニコちゃんを見て、笑顔で言った。
「確かに、似てますね・・最近のシオンは」と大ママが微笑んだ。
「シオン嬉しいです、将来像として、律子母さんに憧れてるから」と最高ニコちゃんで言った。
『ハルカ・・そんなに睨んでカウンター見ないの、フロアーレディーが』とハルカにニヤで言った。
「睨んでないよ・・明日のイメージトレーニング」とハルカがニヤで返してきた。
「ほう・・明日は何処に、修行に行くのかな?」とカスミが不敵で言った。
「ミチルママのお店です・・エースがホノカ姉さんの穴埋めしてみろって、煽るから」と笑顔で返した。
「それは又、重圧かけたね~」と大ママが笑顔で言った、ハルカもウルで頷いた。
「ハルカちゃんは素敵だよ・・目配りが良いよ、でも前に出るタイミングを計ってるよな」と親父が笑顔で言った。
「さすが、小僧の親父ですね~」とカスミが笑顔で言った。
「建設現場でも同じ、目配りが出来ん奴は・・仕事覚えが遅いよ」と親父が言った。
「前に出るタイミングを計ってると、どこで思ったんですか?」と蘭が満開で聞いた、ハルカは真剣に聞いていた。
「小僧に怒られそうだけど・・そこまでは話すか」と親父が私を見た、私は笑顔で返した。
「お願いします」とハルカが微笑んだ。
「人は出るんだよ・・どんなに隠しても、行動の細部に出る。
俺は現場を預かってるから、事故が最も怖いんだよ。
だからそこは徹底的に見る、その些細な動きまで。
事故ってね、最初の頃は遭わないんだ、緊張してるし集中してるから。
余計な事を考える余裕がないから、少し慣れた頃が最も危ない。
技術が無いくせに、余計な雑念が入る余裕ができる。
悩み事を考えたり、彼女の事を想ったりして・・集中が切れる。
そんな時、人は行動に出る・・どこか散漫な動きになってしまう。
ハルカのはそれと違うけど、雑念があるんだよな。
ようするに考えてる、確かに経験不足は仕方ないだろう。
しかし考え過ぎてると思った、相手の会話の途中で返しを考えてる。
だからそれ以降の話を聞く時に、少し集中が切れる感じがした。
それは結局、前に出るタイミングを計ってる、歳上の女性達に囲まれてるから。
だがそんな遠慮は失礼だよ、蘭もカスミもそう思ってるぞ。
客に対してだけなら良いんだ、でも同じ舞台に立つ仲間に対しては失礼だよ。
ハルカ・・お前の将来性を感じて言うぞ、慣れるな・・そして計るな。
経験不足を補う方法は1つしかない、初心で取組むんだよ。
初めて舞台に立った気持ちを持ち続けろ、それが今のハルカの最大の武器なんだから。
前に出るタイミングを計るな、自分を信じて流れに任せろ。
ハルカは絶対に素敵な女性になるよ・・その目配りは常人を遥かに超えている。
今は何も作らなくて良いぞ・・ハルカらしくやってみるんだ」
親父は娘に話すように、強く優しく言った、ハルカは真剣に聞いていた。
「ありがとうございます・・悩んでた突破口が見えました」とハルカが美しく微笑んだ。
「頑張れよ・・期待してるぞ」と親父も笑顔で返した、ハルカは嬉しそうに笑顔で頷いた。
「父さん、小僧が内心怒ってるよ~」と蘭が満開ニヤで言った。
「小僧はその次の次の次まで考えてるから、1個くらい良いだろ~」と親父が蘭にニヤで返した。
「勝也兄さん、魅宴にも来て下さいね・・お願いします」と大ママが笑顔で言った。
「もちろん行くけど、楽しむだけだぞ」とニヤで返した。
「大丈夫ですよ、引き出し上手が揃ってますから」と大ママが笑顔で返した。
「小僧・・魅宴なら誰が楽しめるんだ」と親父が笑顔で言った。
『ミコト・・その本質を言い当てたら、お父様って呼ぶよ』とニヤで返した。
「皆・・今の台詞聞いたな?」と親父が笑顔で聞いた。
女性全員がニヤで頷いた。
「楽しみが増えたよ・・楽しい夜だ」と親父が笑って、全員が笑顔で私を見た。
その時リアンが笑顔で入って来た。
「もう、パパ~こんな所で浮気して」と獄炎で微笑んで、シオンを押しのけ隣に座った。
「パパって呼ぶなって、怪しい関係みたいだろ・・それにシオンに意地悪するなよ」と親父が笑顔で言った。
「いいの、シオンは私の実の妹だから」とリアンがニカで返した。
「リアン、残念でした~・・勝也父さんのタイプは、シオンなのです」とシオンが威張った。
「えっ!・・そうなのパパ?」とリアンが笑顔で睨んだ。
「そうだよ・・そう言わないと、俺は殺される」とニヤで返した、全員が笑って、リアンがシオンを見ていた。
「シオン・・律子母さんの若い頃に、そっくりなのです」とシオンがニコちゃんで言った。
「て事は、シオンとエースが子供を作ると、エースのような子供が産まれるの?」とリアンが獄炎ニカで私を見た。
「それはそうかもです・・エース、実験しましょうか」とシオンがニコちゃんニヤで言った。
「シオン・シオンだよね、シオンに化けたカスミじゃないよね」とリアンが嬉しそうにシオンに言った。
「下ネタを、全部私に振るのは、やめてくだちゃい」とカスミが不敵ウルを出した。
全員の笑顔があった、日付は9月1日になっていた。
長い夏休みが終わった、私にとって忘れられぬ夏休みだった。
この夜、私にとって、大切な出会いがあった。
佐伯院長である、穏やかな初老の紳士だった。
精神科医だったからだろうか、その底知れる懐に驚いていた。
私は沢山の事を学ばされた、佐伯という大きな男から。
その考えは学問を超えて、悟りに近い感覚だった。
私は元来の好奇心を全面に出して、佐伯という男に挑戦した。
古狸の佐伯翁はその都度、新たな問題を出してきた。
お互いに楽しんでいた、私は必死でもあったが、余裕の演技を続けた。
私が院長室を訪ねると、いつも心理学の話をしてくれた。
私は疑問に感じた事を逐一問うた、佐伯翁はその度に自分の考えを語った。
それは和尚との問答のようで、私には大切な時間だった。
そして佐伯翁が沢山の本を私にくれた、哲学から専門書・・純文学に至るまで。
知識は財産じゃよ、そして経験が力じゃよ・・お前は学問を選ばんだろう。
しかし知りたいんだろ・・ならば学べ、学ぶ事はどんな状況でも出来るよ。
そして自分の正解を導き出せ、自分だけの正解を・・学ぶとはそういう事だよ。
優しい言葉だった・・私のミホに挑戦する姿を、ずっと影で見守ってくれた。
私が上京する時に佐伯翁が贈ってくれた・・私の原点、若山牧水歌集と。
1+1は、2だけじゃないぞ・・と言う言葉。
最近やっと分かったよ、佐伯の爺さんの深さが。
常に選択肢を2つ以上持てと言ったんだね、絶望した時にそれを選ばないように。
あの問答が教えてくれた・・人の心に悪意は存在しないと。
悪意とは・・心に存在するものでないと、欲に存在するものだと。
ありがとう古狸・・あの声が今でも聞こえるよ・・今を生きろと言う声が・・。