手銃の言葉
戦場が静かに待っている、夕暮れにいまだ遠い時。
戦士たちは食事をしながら、集中の時間に気持ちをシフトする。
瞳の輝きが変り、女優になっていく・・笑顔を作り出すために。
女性達が食事をして、私はエミとミサと人生ゲームをしていた。
私は破産して、ウルウルを出していた。
「未来を暗示してるようで、怖い」と蘭がウルで言った。
「しそうだね~・・てか金にあまり執着しないよな~」とカスミが不敵を出した。
『執着あるよ必要な分は、生活にも夢を追うにも必要だから』と笑顔で返した。
「マチルダに言った夢・・最高だよな~」とカスミがニヤで言った。
「あら何かしら・・カスミちゃん、述べなさい」とユリさんが薔薇ニヤを出した。
「はい・・エースが将来、蘭姉さんと子供が出来て。
その子供が独立したら、南の島で暮らしたいと。
車もTVもいらないと、蘭姉さんと海と波の音だけで良いと。
そうマチルダに言ったそうです・・以上」
カスミはまるで上官に報告するように、ハキハキと言った。
「素敵です~」とシオンがニコちゃんで言った。
「憧れるな~」とハルカも笑顔で言った。
「だから、頑張るのよ・・全力疾走でそこまで行くんでしょう、最後の挑戦者」と蘭が満開で微笑んだ。
私は蘭の満開を見ながら、笑顔で頷いた。
その時にドアが開いて、ホノカが入って来た。
私はホノカに見惚れていた、そのクラブに挑戦する集中した顔に。
「今日からお世話になります、よろしくお願いします」と華麗に微笑み、深々と頭を下げた。
「よろしくホノカちゃん・・さすがに集中すると、違いますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ、ホノカも笑顔で返した。
「さて・・じゃあ早目に準備して、挨拶しとこうか」とカスミが立ち上がった。
「カスミちゃん、今日だけホノカちゃんを頼みます・・次からはもう大丈夫でしょうから」とユリさんがホノカに言った。
「はい・・それで大丈夫です」とホノカが華麗に微笑んだ。
『ホノカ・・期待してるよ、ほんわか世界を見せてね』と私がホノカに笑顔で言った。
「了解・・ここなら全部出し切っても安心だから、エースがいるからね」と華麗ニヤを出して、カスミと出て行った。
「銀河の奇跡か~・・面白いね、もうPGの1つの本質を言い当てた」と蘭が満開で微笑んだ。
「そうですね、他の店に無いもの・・最後に抱き上げてくれる男ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「そっか~・・他の店は帰る余力を残さないといけないのか~」とレンが笑顔で言った。
「そうですよ・・大ママがエースを欲しがるのは、その部分が大きいですね。
その時が来た時に、何のためらいも無く全てを出し切れる。
それは本当に信頼できる、後ろ盾があるからです。
ボーイさんとの関係では、やはり難しいですね。
エースは蘭に遠慮することなく、その事を全員に伝えています。
疲れ果てたら、側にいると言っていますね。
その言葉の本当の重さが分るのは、その時が来た時です。
PGの女性である事の幸せを感じるでしょう、その時はエースが抱き上げてくれる。
だから出来ると思いますよ、私でもそうですから」
ユリさんが薔薇で微笑んだ、私は照れた笑顔で返した。
「エース・・早く伝えて下さいね、分ってるでしょ」とユリさんが言った。
『そうですね、案外照れ屋ですから・・蘭、どうしてユリさんに姉さんを付けない、本気で挑戦するんじゃないのか』と蘭に真顔で言った。
「ごめんなさい、照れがあって・・ユリ姉さん」と蘭が満開で言った。
「本当に嬉しいですよ・・蘭、ありがとう」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
笑顔の女性達が準備に向かい、私はマリアも起きて、4人で食事をしていた。
「蘭は凄いね~・・もう精神的には乗り越えて、楽しんでるね」と松さんが笑顔で言った。
『本当にそう思います、相当に緊張するイベントなのに』と笑顔で返した、松さんも笑顔で頷いた。
私は食事が終わり、指定席に付いた。
カスミとホノカが出ていた、ホノカのピンクのドレス姿の華麗さにニヤニヤしていた。
「さすがに2人揃うと、破壊力があるね~」とナギサが華やかニヤを出した。
『ナギサ・・さっき蘭を説教して、蘭はユリ姉さんと呼ぶようになったから』とニヤで返した。
「そうだよね・・それじゃないと失礼だよね」とナギサが真顔で言った。
『練習しとけよ、自然に言えるようになるまで』と笑顔で返した、ナギサが笑顔で頷いてフロアーに歩いた。
シオンとマキの準備が終わり、席についてマキがサインをシオンに出していた。
シオンはニコちゃんで、サインで答えていた。
四季とユメ・ウミが入り、レンとハルカが入った。
そして私の横で神聖な場所に深々と頭を下げた、純白のドレスを着た蘭が立っていた。
私はその表情に息を飲んだ、今までにない集中の中にいた。
瞳に湛えた青い炎が強く、背中に静寂さえ連れて歩いていた。
「怖くなってきたね・・まだまだだよ」と後からリアンが獄炎ニカで言った。
『野次馬で来たね、リアンも好きだね~』とニヤで返した。
「これを見ずして、何を見る」と椅子を持ってきて、私の横に密着して座った。
マキがシオンと来て、リアンに挨拶をした、リアンも笑顔で返した。
「シオンに新しい魔法をかけたね」とリアンが笑顔で言った。
『俺じゃなくて・・マキがね』とニヤで返すと、リアンに獄炎ニカニカで返された。
「本当に野次馬根性が旺盛なんだから」とミチルが後から言った。
「ミチルママも野次馬でしょ・・同じです~」とリアンがニカで返した。
シオンが椅子を持って来て、ミチルが座った。
「私はホノカのPGデビューを見に来たの」とミチルが妖艶ニヤで言った。
「なんかミチルママ・・色気が凄いんですけど」とリアンが獄炎ニヤで返していた。
ミチルとリアンの登場で、只ならぬ雰囲気を女性達が感じていた。
久美子が激しいリズムの曲に移行してきた。
「なるほど~、生演奏は良いね~・・気分が高まっていくんだね」とミチルが久美子見ながら言った。
「贅沢だよな~・・あれを従業員だけで楽しむんだから」とリアンが笑顔で言った。
私はその言葉で、ある事を思いつき、一人でニヤニヤしていた。
「お揃いですね、皆さんもお好きですね~」と千鶴が微笑んだ。
「人の事言わないの、大体クラブのママが、こんな時間に来てて良いのかね~」とミチルが妖艶ニヤで言った。
「たまにはいいんです、逆に勉強になるでしょうから」と笑顔で言って、シオンの出した椅子に座った。
その時に久美子が、止まった・・そして鍵盤を睨んだ。
弾いたのは、あのマチルダの最初の夜に弾いた、激しい曲だった。
腰を浮かし、時に笑い、時に怒り、時に泣いて・・それを音色でも表現した。
魂の響きが木霊して、全員を集中の中に入れた。
演奏が終わり、久美子はニヤ顔で右手の拳を女性の方に突き出した。
五天女も全員立って、女性達と一緒に拍手をした。
久美子は16歳の輝く笑顔で、深々と頭を下げた。
「か~・・PGはレベルが違いすぎる、この精神状態で開店するんだ~」と千鶴が微笑んだ。
その時受付に和尚が笑顔で来た、私は走って近付き、徳野さんに指示され3番に案内した。
『和尚・・俺、さっき親父と和解したよ』と笑顔で囁いた。
「よし・・あとは任せんしゃい」と和尚は笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。
指定席に戻るとユリカが来た、私はご機嫌ユリカに腕を組まれて、リアンの後に立った。
その時にユリさんが入場した、神聖な場所に美しい姿勢で深々と頭を下げた。
そして五天女を見て、薔薇ニヤを投げかけて、フロアーの女性の円に歩いた。
「違いすぎる・・存在してる世界が違う、感動してしまった」と千鶴が呟いた。
「千鶴・・蘭とナギサは、あの世界に挑戦するんだよ」とユリカが囁いた、千鶴はユリカを真顔で見て頷いた。
「今日から、ホノカちゃんが来てくれます。
エースからの伝言を伝えます、ホノカを感じて欲しい。
その輝きに隠された、心の芯の強さを。
何があっても絶対に揺れない強さを・・感じて欲しい。
私もそう思います・・あなた達の本気が真実ならば。
これから進む上で最も大切な事です、信じた心に揺れは無いですね?」
ユリさんの強い言葉が響いた、全員が心を1つにした。
「はい」と返事をして、その想いを伝えた。
「それではホノカちゃん、挨拶を」と薔薇で微笑んだ。
「ホノカです・・何も言う事はありません、行動でお見せします。
よろしくお願い致します」
ホノカが最高の言葉で、その強い意志を伝え、輝きを連れながら頭を下げた。
女性が全員返礼して、ホノカの輝きを見ていた。
「それでは今夜も開演しましょう」の言葉に、「はい」のブザーを鳴らした。
「やるね~、ホノカ・・あの挨拶には覚悟がいるよ」と後から大ママが笑顔で言った。
五天女が全員笑顔で頷いた。
『全員揃って・・バレバレだな~』とニヤで言って、大ママを私の席に座らせた。
その時に受付に親父が来た、徳野さんが駆け寄った。
「徳じゃないか!・・元気そうだな、ここにいるのか」と親父が言って徳野さんの肩を叩いた。
「勝也兄さん、ご無沙汰してます・・あれから2年で足を洗いました」と徳野さんが笑顔で返した。
「そうか・・嬉しいよ徳、律子が何も言わなかったから・・徳、マキを頼むな」と親父が笑顔で言った。
「任せて下さい、厳しくやります」と徳野さんが笑顔で返した。
「今度ゆっくり飯でも食おうな・・今夜は和尚に誘われて、マキの場所を見に来たよ」と親父が笑顔で言った。
「楽しみにしてます・・ご案内します」と徳野さんがカズ君に指示した。
「全然頑固親父じゃないぞ・・素敵な人じゃないか」とリアンが振向いて、私にニヤで言った。
「静かに・・来るよ」と大ママが囁いた。
ユリさんが和尚側から、蘭が親父側から歩いて近付いた。
蘭は親父に満開笑顔で挨拶をした、親父も嬉しそうに笑って何かを言った。
その時に衝撃が走る、蘭が全ての想像を越えて見せた。
蘭は親父の言葉を受けて、最強満開不敵を出して、ゆっくりと両手を合わせた。
そして両手で銃を作って、親父に向けて最強の満開ニヤで見た。
親父は楽しそうに、両手を上げて笑った。
蘭は両手で反動を表現しながら、バンという感じで親父を撃った。
親父は撃たれた真似をして、がっくりと肩を落とした。
蘭はその親父にすがりつき、泣き真似をした。
そこで親父が笑顔を戻した、蘭も体を起こし満開で微笑んだ。
「やりやがった・・蘭はやりやがった、全ての期待を超えた」とリアンが言った。
「戻ったね・・いや、もう越えてるね、NO1の頃より」と大ママが言った。
笑顔で話す親父と、蘭の満開を見ながら幸せを感じていた。
隣に座るユリさんと、和尚も笑顔でその光景を見ていた。
ホノカの熱い視線があった、この件でホノカも蘭を追いはじめる。
その圧倒的な存在を感じて、憧れとして追いかけるのだ。
ユリさんが次にカスミを付けた、カスミはさすがに気付いて、親父にも突っ込みを入れていた。
「あ~楽しかった」と言ってリアンが立ち上がり、大ママとミチルと千鶴と笑顔で帰って行った。
『ユリカ・・何時から出ようか?』と私は通りに出えながら、ユリカに微笑んだ。
「10時からにしよう、凄~く楽しみなのよ~」と爽やかに微笑んだ。
『了解・・迎えに行くよと』と通りまで送って、ユリカを見送った。
蘭と親父は笑顔で会話をしていて、私は一安心して仕事のチェックをした。
ホノカはナギサに付いて回っていた、その会話のレベルは高く笑顔を作っていた。
ピンクのドレスを着たホノカは、可愛さを振り撒いて、その華麗な輝きを発散していた。
それで9人衆にも火が点いたようで、熱が上がってきた。
和尚にはハルカが付いていた、和尚のご機嫌が指定席からも分っていた。
蘭は2度ほど指名で離れ、そのヘルプになんとサクラさんとアイさんが付いた。
豪華なリレーに親父もご機嫌だった、サクラさんはすぐに分ったようで頭を下げていた。
和尚と親父が席を立ったのが、9時30分だった。
見送りにユリさんと蘭が出て、徳野さんと笑顔の2人を見送っていた。
「マキ・・帰るね~」とTVルームにいたのだろう、シズカが手を振っていた。
蘭が見送りから帰って来て、私の所に満開笑顔で歩いて来た。
「なぜ喧嘩した・・素敵な父さんじゃないの~」と満開で微笑んだ。
『反抗期だから』とウルで返した。
「ぶっ飛んでたかな?・・野次馬5人衆」と満開ニヤで言った。
『うん・・楽しんで帰ったよ』と笑顔で返した。
「気をつけて行ってきてね・・激しいことするなよ」と最強満開ニヤで言って、銀の扉に消えた。
私は暖かい波動を感じながら、笑顔で頷いた。
シオンとマキの所に行き、シオンにユリカと海に出ると言って出掛けた。
ユリカの店に行って固まった、店内改装のため本日休業になっていた。
私は合鍵で入った、少し薄暗い店を奥に進んだ。
店内の壁紙が少し明るい色になり、カウンターのボトルを照らす間接照明が幻想的だった。
『ユリカ・・お金かけたね、素敵になった』と笑顔で言った。
「うん・・気分転換、明日かお店も変化したいから」と爽やかに微笑んで腕を組んで来た。
『何かな?・・その荷物』とニヤで聞いた。
「浮き輪ちゃん・・深い場所は怖いから」と爽やかウルで言った。
『俺が抱いて離さないから、大丈夫なのに~』とニヤニヤで返した。
「理性を失うでしょ、私のナイスな体を見たら」と嬉しそうに微笑んだ、ユリカとタクシーに乗り込んだ。
ユリカはタクシーの中でも、ご機嫌継続だった。
マス爺の店に着き、奥でTVを見てるマス爺に声をかけた。
『マス爺・・第三段』と笑顔で言った。
「おう、小僧・・お前いい加減にしろよ、綺麗な人ばかり」とマス爺がユリカを見て笑顔で言った。
ユリカは楽しそうな笑顔で返していた。
『マス爺・・これから20人以上あるかも』とニヤで言って鍵を受け取った。
「楽しみじゃよ・・今夜も最高、波も穏やかじゃよ」と言ったマス爺の笑顔に見送られ、桟橋に向かった。
「イルカちゃんに、会えますように」とユリカが瞳を閉じて囁いて、小船の前方に乗った。
私はモーターのチェックをして、準備が終わってユリカを見た。
『ユリカ・・大丈夫、怖くない?』と笑顔で聞いた。
「全然怖くないよ・・連れてって、大切な場所に」と爽やかに微笑んだ、私も笑顔で頷いて出発した。
大淀川の中央をゆっくり下り、橋を潜り・・人工的な明かりに別れを告げた。
静寂の中モーター音が響き、海の稜線が見えてきた。
ユリカは海を見ていた、髪を靡かす後姿が月光に輝いていた。
波をゆっくりと越えながら、海に入って行った・・波の無い場所まで来て速度を上げた。
沖に向かっていると、ユリカが振向いた。
「ゆっくり!」とユリカが大きな声で言った。
私は慌てて速度を落とした、ユリカは右前方を見ていた。
私もその方向を見ると輝く表皮が近付いて来ていた、私はモーターを止めて待った。
静寂の中、海の微かなウネリの音だけが響いていた、ユリカは動けないようだった。
ただその方向を見ながら、瞳を潤ませていた・・月光に照らされる体は6頭確認できた。
真直ぐにこっちに向かって泳いでいた、私は明かりを下向きにして海を照らした。
そして碇をゆっくりと降ろした・・6頭は方向を変えずに近くまで迫った。
「素敵過ぎるんだね・・想像なんて、無駄な事だった」とユリカが深海の瞳から大粒の涙を流した。
私はユリカに近付いて、座ってユリカを抱きしめた。
「分かったよ・・マチルダと蘭の感動が」と私を見て言った。
『この群れは慣れて来たのかも、向こうから近付いてきたから』と笑顔で返した。
ユリカも笑顔で頷いて、バッグから浮き輪を出して私に差し出した。
私は花柄の浮き輪の空気を入れながら、ユリカを見ていた。
イルカは大きく回遊しながら、船から離れる事はなかった。
ユリカは涙を流しながら、その泳ぐ姿を見ていた。
その時にユリカがビクっと体を震わせた、ユリカの見る目の前でイルカが顔を上げた。
「あなたね、ありごとう・・右の目、大丈夫だね」とユリカが優しく言った。
右の目の上に傷のあるイルカは、ユリカを見ているようだった。
ユリカの微かな背中の震えが、その喜びを伝えていた。
『よし、入ろうか・・彼らの場所に』と笑顔で言って、浮き輪を渡した。
ユリカは爽やか笑顔で振向いて、大きく頷いた。
私は服を脱いで水着になり、先に海に入って水温をチェックした。
ユリカが服を脱ぎ、ビキニ姿を見せてくれた・・私はニヤニヤでそれを見ていた。
ユリカの体は、全く無駄の無い女性らしい体で、想像以上に大きな胸に驚いていた。
「その位にして、いやらしい感想は・・怒るよ」と浮き輪を体に通しながら、笑顔で睨んだ。
私はウルウルでユリカを見ていた、ユリカが恐る恐る海に入って来た。
私はユリカの体を支えて、プカプカとユリカを浮かせた。
「体を触る時には、いやらしくなくなるんだよね~・・悟りの境地かな?」と爽やかニヤで言った。
『うん・・ユリカ大丈夫、冷たくないね?』と笑顔で聞いた。
「大丈夫、それより・・嬉しい、感じるね・・近くにいる」とユリカが最高の笑顔で言った。
私も笑顔で頷き、ユリカの後ろに回り・・浮き輪を持って、泳ぎながら押していた。
「おいで・・おいで」とユリカが静かに言った。
私も感じていた、上がってくる温もりを感じていた。
ユリカの声に誘われるように浮かび上がった、肌が触れそうなほど近くに浮いた。
そしてそのまま止まった、ユリカのその時の顔を忘れられない。
本当に少女のような顔だった、深海の瞳から涙が止め処なく溢れていた。
ユリカはその感性で、何かを伝えていた・・そしてゆっくりと背ビレを触った。
その時イルカの方がユリカに体を寄せた、ユリカはその体を嬉しそうに触っていた。
「ありがとう・・優しくしてくれて」とユリカが優しく囁いた、その声を聞いてイルカは潜った。
『ユリカ・・月の方向だよ、月に向かって飛ぶんだ』とユリカに囁いた、ユリカは月を見た。
大きく体を反らしながら、月光に輝く水滴を引き連れて大きくジャンプした。
そしてその直後、3頭がジャンプを見せてくれた、ユリカは固まって見ていた。
そして爽やか最強の笑顔で、拍手をした・・少女のような輝きで。
『素敵だろ~・・ユリカが1番受け入れられたね』と囁いた。
「違うよ・・マチルダと蘭が見せたんだよ、その心の温もりを・・だから受入れたんだね」と振向いて笑顔で言った。
『そうだね・・上がろうか』と笑顔で返した、ユリカも爽やか笑顔で頷いた。
私が先に船に上がり、ユリカを引き上げた。
ユリカの持って来たバスタオルで体を拭いて、着替えた。
「前を見て、月を見てなさい・・振向くなよ、修行させるよ」と爽やかニヤを出した、私がウルで月を見た。
「はい、OK・・シートを広げて~」とユリカが言った、私は弾力の有るシートを広げた。
ユリカが私を引っ張って、私はユリカの首に腕を回して添い寝した。
ユリカは星空を見ていた、その横顔が美しく・・陰影の強さが幻想的だった。
「本当にありがとう最高だよ、・・私、明日の夜見せてあげるね・・私の接客を」と星空に囁いた。
『楽しみだよ・・ユリカのその姿が見たかった』と私も星空に囁いた。
「マリアの変化感じた?」とユリカが言った。
『うん・・強くなった、伝えたい気持ちが強まったね』と笑顔で返した。
「マリアは絶対に感じた・・自分も父親がいないけど、それでも幸せだと感じたよ」とユリカが私に微笑んだ。
『その寂しさは味わうかもしれないけど・・辛さは絶対に感じさせない』と真顔で言った。
「あなたと豊がついてるんだから、それは無いでしょ」とユリカも真顔で言った。
『ベストを尽くすよ』とユリカの深海の瞳に誓った。
「誓いの儀式をします・・目を閉じて」とユリカがニヤで言った、私は嬉しくて目を閉じた。
ユリカの優しい想いが唇から伝わった、私も唇で伝えた。
夏の熱を大海原の海水が冷やしていた、しかし私の夏はその陰りすらなかった。
9月が目前に迫っていた、しかし寂しさも不安も無かった。
時ばかり考えていた頃を思いだしていた、月光に照らされる、ユリカの寝顔を見ながら。
あの時に私の背中を強く押した、ユリカが贈ってくれた・・【最後の挑戦者】
その言葉を噛み締めて・・星空を見ていた、ミホの無表情な顔が映像で流れた。
だが私は向き合おうと強く思えた、失敗しても何度でもやり直すのだからと誓っていた。
ユリカの穏やかな鼓動と温度に包まれていた。
遥かなる太平洋の大きさと、限りない深さに包まれて・・月を見ていた。
追いかけ続ける・・月光の照らす、未来への道を・・・。
私はこのイルカ達の変化を驚いていた、ユリカの言った通りかもしれない。
マチルダ・蘭・ユリカと温もりのある、女性が伝えたのだろう。
仲間なのだと、全ては命を宿す仲間だと・・人は海から産まれたのだと。
この後、シオン・カスミ・ナギサ・ハルカ・・・と続いていく、夜の海。
その度にイルカ達は現れて、各々に違う対応を見せてくれた。
しかし受入れない女性はいなかった、私はそれが嬉しかった。
笑顔のミホに、蘭が浮き輪を通し、3人で入った海・・4頭のイルカが囲んだ。
そしてあの右目上に傷のあるイルカが、ミホに体を寄せた。
その体を触ったミホの瞳から涙が溢れ、イルカは顔を上げてミホを見た。
「あ・り・が・と・う」とミホの唇が動き、可愛い声で言葉が出た。
その言葉を聞いて、4頭が同時に潜った・・そして月に向かって飛んだ。
ミホを現実の世界に戻した、その強く伝える優しさで・・優しい瞳で。
何かを伝える強い周波数で、奇跡ではない・・触れてみると分かる。
誰にでも感じる・・海で生きる彼らなら、それは当然の事なのだろう。
そのジャンプする姿に感じていた・・あの遥か高みにある人の言葉を。
空の青・海の青にも染まず漂う・・あの大切な言葉を・・。