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空の青・海の青

心にパスポートを持たないと、通れない税関がある。

踏出すために必要なパスポート、覚悟というパスポートを提示しよう。

そこに写る顔写真には、きっと笑顔が写っているから。


蘭と腕を組んで一番街を出て、タクシーに乗った。

蘭が満開で肩に乗ってきた、蘭はその気持ちを笑顔で表現していた。

「想像以上・・違う、想像と全く違う・・そんな母さんだった」と満開で微笑んだ。

『確かに、普通の母親とは違うよ』とニヤで帰した。

「シズカで驚いた事の答えが、母さんにあったよ」と言って私を見た。

『そうだね~・・シズカのあの開放的な心は、お袋の影響だよな~』と笑顔で返した。


「私、ワクワクが止まらない、明日のお父さんに早く会いたい」と満開ニヤを出した。

『それこそ・・想像などは出来ない男だよ』と笑顔で返した。

「あの母さんが選んだ男・・凄く興味あるよ」と微笑んで瞳を閉じた。

アパートに着いて、蘭を抱き上げて部屋に入った。

蘭が化粧を落としてパジャマで来た、私はシャワーを浴びて着替えて戻った。

部屋は暗く、蘭はベッドに横になって瞳を閉じていた。

私は蘭を見て、ウルウルをしていた。


「寂しいんだろ・・そう言って」と蘭が瞳を閉じたま言った。

『蘭・・今夜は寂しいから、添い寝して』と優しく言った。

「仕方がないね~・・寂しん坊」と目を開けて満開で微笑んだ。

私は蘭の隣に寝転び、腕を通して少し引き寄せた。


「話では聞いていたけど・・あのマキの愛情表現、ユリさんでも憧れたって言ってたよ」と私の胸に言った。

『確かに・・マキにしか出来ないね』と静かに返した。

「ユリさん・・嬉しかったみたい、母さんが筋を通してくれた事が」と蘭が言った。

『蘭・・実はあれから魅宴に行って、お袋に抱かれて大ママ号泣したよ・・昔の知り合いみたい』と言った。

「そうなの!・・マダムもでしょう、不思議だね~・・原作者、必死で書いてるんじゃないの」と満開ニヤで言った。

『多分、徹夜続きで限界だよ・・悪質な奴は』と笑顔で帰した。

「そうだね・・休ませないよ、疲れ果てさせてやる」と蘭が言って私の胸に顔を付けて瞳を閉じた。

私は蘭の鼓動と温度を感じながら、幸せに眠りに落ちていた。


翌朝、自然に目が覚めて、ゆっくりと腕を抜いて洗面所に向かった。

歯を磨き顔を洗って、キッチンに行った。

トーストを焼きながら、ハムエッグを焼いて、その上に可愛いハート型のハムを乗せた。

レタスを乗せて完成品をニヤニヤで見ていた。


「おはよー、今日はいつも以上に幸せ~」と蘭が満開で起きて来て、洗面所に消えた。

私は窓を全開にして、朝食を用意した。

蘭が戻ってきて、朝食を見て最高の満開笑顔になった。

「写真撮っとこうかな・・喧嘩した時のために」と満開ニヤで座った。

『喧嘩?・・俺と蘭が、想像できない』とウルで返した。

「私もだけど・・もしその時は、強引に引っ張って、夜の海に連れてって」と微笑んだ。

『了解・・でもそれは無いよ、俺が間違わなければ』と真顔で言った、蘭は満開で微笑んで頷いた。


蘭を見送り、朝の仕事をして、日記を書いた。

9時少し過ぎのバスで出掛けて、若草通りでカスミに手を振って、靴屋で蘭に手を振った。

ユリカの店に入ると、ユリカが笑顔で待っていた。

私はユリカを抱き上げて、窓際に行った。


「私も本当に嬉しかった、母さんと呼べる人に出会えて」とユリカが爽やかに微笑んだ。

『そうだねユリカ・・少ししか時間無いから、充電して』と笑顔で返した。

ユリカが瞳を閉じて静かになった、ユリカの鼓動が安定していた。


「ね~・・大ママ、ユリカ姉さんだけ特別でしょ」とミサキの声がした。

「本当にね~・・特別の存在が多すぎるよ」と大ママが笑顔で言った。

ユリカを優しく降ろして、ユリカと2人で挨拶をした。

「大ママ、ヨーコちゃんの印象わ?」とユリカが爽やか笑顔で聞いた。

「遠くからでも感じたよ、ミサキが本気になるしかないとね」と嬉しそうに笑った。

「私もそう感じました・・ミコトねえさんも感じたみたいでした」とミサキが微笑んだ。

「それほどですか~」と言いながら、ユリさんとマキが入って来た。

「うん、ユリ・・ありがとう、律子さんに会って嬉しかった」と大ママが微笑んだ、ユリさんも薔薇で頷いた。


「おはようございま~す」と元気よくリアンが入って来た。

ユリさんがマキを紹介した、リアンが獄炎で何か言って二人で笑っていた。

それからジンが来て、千鶴がセリカと来て、ミチルがホノカと来た。

全員にユリさんがマキを紹介した、マキはその都度言葉で笑顔を作ってみせた。

全員が座り、私の横に大ママが座った。


「忙しいところありがとう、日曜のエースの共同体の話。

 私もあれから色々考えて、やろうと思った。

 最初に確認したい、この話降りても良いよ。

 それに対し何も言わない、降りて当然だから。

 どうだろう、皆の意志が聞きたい」


大ママが真剣に言った。

「私は異存ありません」と1番難しい立場の千鶴が笑顔で言った。

「スナック関係は、もちろん異存無いですよ」とミチルがリアンとユリカを見た。

リアンもユリカも笑顔で頷いた。

「もちろん私も異存ないですよ、エースの提案ですから」とユリさんも薔薇で微笑んだ。

「よし・・じゃあエース、概要を話してくれ」と大ママが笑顔で言った。


『はい・・まず初めにこの共同体の趣旨は、若手の育成にあります。

 俺は思っていました、この世界の女性達の選手生命の短さを。

 まぁ結婚という事がありますから、仕方ないかも知れないけど。

 でも短すぎる、18で挑戦しても、あっと言う間にその時が来る。

 仕事に対して、今からその本質が分るって時に、その時を迎える。

 結婚と両立させるのは、難しい仕事です。

 そして閉塞感がある、店毎の経営方針や客の奪い合いなど。

 本物になれる、女性たちは知りたいし、感じたいと思っている。

 私が今回こだわった、リアンとユリカの復活。 

 見せてやりたいんです、この世界に夢を描いてる彼女達に。

 1つの理想の形として、そして挑ませてやりたい。

 その自らの理想に、他店に行って経験する緊張感。

 その緊張感が作り出す集中、その集中で感じて欲しい。

 接客とは何かを、自分達が選び目指す世界の広さを。

 その先に有ると信じます、次の夜街の姿が』


私は全員の瞳を見ながら、強く言葉にした。

「良いですね、さすがエース・・具体的な話をして」とユリカが爽やかに微笑んだ。


『まず、リアンとユリカの復活・・魅宴とPGの月1のイベントにしたい。

 明日のユリカのPGは決定だから、来週リアンの魅宴の光臨。

 そして翌週、ユリカの魅宴、そしてその次の週リアンのPG復活。

 そのフォローに、魅宴とPGで若手を送り込む。

 最初はそれで、始めます。

 そして、ミチルのクラブ3店の光臨を決めて行きます。

 その時は最低、3人のエース級の若手をミチルの店に送り込む。

 そして、ゴールド・・ミチルに蘭にナギサまでは決定済みですが。

 NO1を見せます・・その若い店に、ミコトとそしてユリさんを出します。

 もりろん千鶴が指名して、若手を出してもらいます。

 セリカと誰でも良いですから、もちろんスナック3店の女性も。

 クラブを経験してみていのなら、大歓迎で調整します。

 まぁこんな感じで走り出して、調整はしましょう。

 この話の最も私がこだわるのは、ユリさんの光臨です。

 どうしても見せたい、圧倒的本物を・・PGは出し惜しみしません。

 最強で最良のユリを出す・・次の時代のために』


私は最後に強く笑顔で締めた、静寂が包んでいた。

「エース・・それは本気で言ってるの?」と千鶴が真顔で聞いた。

「本気ですよ千鶴・・私でよければ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「ミコトもどこでも行くと言ってるから、頼むね」と大ママが微笑んだ。

「すいません・・ユリさんとミチルママとミコトを聞いて、心が震えて止まりません」と千鶴が笑顔で言った。


「若手の方はどう競わせるの?」とセリカが笑顔で言った。


「まず・・絶対条件として銀河を1人は入れる、そして一緒に入ってもらうよ。

 そのサイクルで回して、次の段階に移行する。

 それだけでも感じる事は多いよね、ホノカ』


私は最後にホノカに振った、ホノカは華麗に微笑んだ。

「大丈夫、引っ張って見せる・・銀河の奇跡にかけて」と美しい笑顔でセリカを見た、セリカも流星で微笑んで頷いた。


『俺の言い出した事だから、窓口はPGでやります・・マキ窓口お願いします』とマキに笑顔で言った。

「分りました、ハルカ姉さんと2人で頑張ります」と笑顔で返した。

『とりあえず、やってみないと誰にも分らないから・・ご協力お願いします』と私は立って頭を下げた。

全員が拍手をしてくれた、私は笑顔で応えていた。


私はミサキを呼んで、ヨーコの迎えを頼んだ、ミサキは笑顔で頷いて出て行った。

『問題は・・報酬なんですが、その調整は皆さんでお願いします』と笑顔で言った。

「若手には、損をさせないように調整しましょう」と大ママが笑顔で言った。

経営者の5人が笑顔で頷いた。


『俺も、大きな事ばかり言ってると、思われたくないので。

 1つの答えをお見せします、昨夜大ママから依頼のあった。

 魅宴の16歳の挑戦者、探してきました・・今来ます。

 ミサキを本気にさせて、魅宴に新しい風を呼び込む可能性の有る者。

 その子が私の大ママに対する、1つの答えです』


その時にミサキが笑顔で、ヨーコを連れて来た。

少しお洒落したヨーコは、清楚な輝きを振り撒いていた。

『魅宴の面接を受ける・・ヨーコです』と私はヨーコを紹介した。

「ヨーコと申します、挑戦の覚悟をして来ました、よろしくお願い致します」と清楚な真顔で言って、深々と頭を下げた。

「どこで、どうやって見つけるの?・・信じられない」とホノカが華麗に微笑んだ。

「どんだけお尻に火を点けるの・・マキだけでも怖いのに」とセリカが流星ニヤで言った。

ヨーコも嬉しそうに微笑んで返していた。


ミサキがヨーコを若手の席に案内して、マキの隣に座らせた。

マキとヨーコは笑顔で話していた、大ママの笑顔があった。

「質問は無いかね?」と大ママが言った。

全員が笑顔で頷いた。

「それでは解散する、ジン少しは役にたったかい?」と大ママが笑顔で言った。

「もちろん、沢山収穫がありました、エースと契約書交わしとかないと」と笑顔で返した。


「大ママ、ここで面接されて良いですよ」とユリカが爽やかに微笑んだ。

私は大ママ以外が帰るのを見送っていた、千鶴が私の所に来て耳元に囁いた。

「3時に来て、話があるから」と笑顔で言った、私は笑顔で頷いた。

ユリさんとマキが最後にリアンと出てきた。


「素晴らしいですね、ヨーコ」と薔薇で微笑んだ。

「魅宴の雰囲気を今で持ってるよ、大ママ内心大感激だよ」とリアンが獄炎で微笑んだ。

私も笑顔で3人を見送って、店に戻った。

奥のBOXでヨーコが大ママと向き合って座り、ヨーコの隣にミサキが座っていた。

私はカウンターのユリカの隣に座った。

『ユリカの感想は?』とニヤで聞いた。

「想像を越えたわ・・まるで魅宴で産まれた子みたいだね」と爽やかに微笑んだ。


「それより、いよいよみたいだね千鶴の話」とユリカが深海の瞳の真顔で言った。

『うん、ユリカは分ってるだろうけど・・俺は今、自分に自信を持ってるよ』と笑顔で返した。

「一度で良いから、私もミホちゃんに会いたいな~」とユリカが爽やかに微笑んだ。

『それは俺からもお願いしたいよ・・頼むねユリカ』と笑顔で返した。


「ユリカ、エース」と大ママが笑顔で呼んだ。

私とユリカは奥のBOXに行った。

ユリカが大ママの隣に座り、私がその横に座った。

「採用を決めたよ、ありがとうエース」と大ママが言った。

『大ママありがとう、ヨーコの身元保証人は・・お袋、律子がなります』と笑顔で返した。

「えっ!母さんがなってくれるの?」とヨーコが驚いて聞いた。

『そうだよヨーコ・・中途半端に諦めさせないように、心の枷だよ』と笑顔で返した。

「ありがとう、嬉しいよ・・今度お礼を言うね」とヨーコが微笑んだ。

『ヨーコ、お袋は・・楽しそうに必死で生きる、ヨーコの笑顔がお礼だと思ってるよ』と真顔で言った。

「了解・・見ててねエース・・今日、今からエースって呼ぶから」と言ったヨーコは輝いていた。


「ミサキ・・ヨーコに店の案内して、お昼をご馳走して」と大ママが微笑んだ。

ミサキとヨーコが立って、笑顔で頭を下げて出て行った。

「エース・・本当にありがとう、最高だよ・・あのヨーコ、どこか真希姉さんの匂いがするよ」と笑顔で言った。

『良かった~・・俺もトップを狙う才能はあると思ってるよ』と笑顔で返した、ユリカも笑顔で頷いた。

「ミコトがね・・あのミコトが私に頭を下げたよ、ヨーコの入店に何か障害があったら、自分に言ってくれとね」と大ママが嬉しそうに笑顔で言った。

「ミコト変りましたね・・今回の共同体の話にしても」とユリカが爽やかに微笑んだ。


「変る時期に来てたんだろう、そして最後の背中をエースが押した。

 あのエースの言葉、自分が堂々と酒を飲める時に、存在しないミコト。

 あの言葉で、ミコトは確信したよ・・自分の時間を。

 愛情に満ちた言葉だったから、ミコトは感じたんだね。

 何かを自分も残したいとね、エースが全てをミコトに贈った。

 ミコトが待ち望んだ、全力で自分の位置を狙う・・リョウ。

 ミコトが妹のように可愛がった、ミサキの覚醒。

 そして唯一の心残り・・千鶴との和解。

 そして今回のヨーコに・・魅宴の将来を見てるんだろうね。

 エース、人材派遣・・最初の報酬や、ユリカにランチご馳走しなよ」


大ママは笑顔で立って、封筒を差し出した。

『ありがとう、大ママ・・今、仕事する喜びが、少し分ったよ』と笑顔で頭を下げて受け取った。

大ママをユリカと送り、中身を見て驚いた。

「驚くほどだろうね・・あの大ママの喜びなら」とユリカが爽やかに微笑んだ。

『3万も入ってる・・なんか悪いな~』と真顔で言った。

「それだけの価値があるのよ・・ヨーコちゃんにね」と笑顔で腕を組んだユリカと食事に向かった。

トンカツ屋に行って、ユリカとヒレカツ定食を食べた。

ユリカをビルの下で抱き上げて、上まで登り手を振って別れた。


TVルームには、マダムとユリさんがいて、駆けてきたマリアを抱き上げた。

「採用されましたか?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

『はい・・大ママに喜んでもらいました』と笑顔で返して、向かいに座った。

「あの子なら、大ママ感激ですよ・・魅宴の匂いがしますから」とユリさんが言った。

「ミサキはハルカより、受入れる力が強いから・・変化も早いぞ」とマダムが笑顔で言った。

「大丈夫ですよ、マダム・・ハルカに付いたのは、心に問いかける女ですから」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「そうじゃよな~・・昨日から変ってきたよ、シオンもな」とマダムが笑顔で言った。


「いよいよあなたも、再挑戦が始まりそうですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

『はい、千鶴に呼ばれました・・やってみます、今度は最後まで』と真顔で返した。

ユリさんもマダムも笑顔で頷いた。

その時TVルームのドアが開いて、マリアが駆け出した。

豊兄さんが笑顔でマリアを抱き上げた、マリアは天使全開で抱かれていた。

「あら、嬉しいですね、どうしました?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「午後から休みがとれて、日曜日マリアに伝える時間が無かったから・・それとマキの様子を見に」と笑顔で言って私の横に座った。


「本当に、あなた達は筋を通すんですね・・そして愛情が本物ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「筋を通すのは、母が常に教えてくれました」と笑顔で答えた。

「さすが・・律子やね」とマダムが笑顔で言って、豊が笑顔で頷いた。

「どんなに幼い相手でも、キチンとする・・一人の人間として、素晴らしい事です」とユリさんも嬉しそうに笑顔で言った。

「ありがとうございます・・じゃあ少しマリアを借ります」と笑顔で頭を下げて、TVルームを出て行った。


「マリアは本当に恵まれている・・豊とあなたが側にいてくれるから」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

『豊兄さんは伝えます、その全ての想いを・・マリアがまた変化しますよ』と笑顔で返した。

「楽しみですね~・・毎日が本当に楽しいですね、マダム」とユリさんが言った。

「ワシも、楽しいぞ・・長生きするよ」とニヤで言って笑っていた。

私はフロアーに向かった、指定席で予約の確認をしていた。


「板についてるな・・違和感無く存在してるよ」と豊兄さんが後から言った。

『うん、必死でやってるよ・・豊兄さん、今日親父と会うよ、お袋とは昨日和解した』と笑顔で返した。

「正直に伝えろ・・それだけで良いよ」と私にマリアを渡して、マキのいる10番に歩いて行った。

マリアは私の顔を見ていた、私はマリアを笑顔で見た。

《大丈夫だよマリア・・どこに行っても、必ずマリアの場所に帰るよ》と心で囁いた。

「あい・・えーしゅ」と天使全開で微笑んだ、熱い波動が包んでくれた。


「マキ・・頑張れよ、お前らしく・・たまに見に来るからな」と豊兄さんが笑顔で言った。

「ありがとう、兄さん・・全力でやってみるよ」とマキが立ち上がり、笑顔で頭を下げた。

「皆さん、マキをよろしくお願いします」と頭を下げた、シオンとレンとハルカが立って笑顔で頷いた。

久美子と笑顔で挨拶を交わした豊兄さんと、エレベーターに向かい歩いた。


「小僧・・マリアの了解は取ったから、その時は頼むな」とエレベーターに向かいながら豊兄さんが言った。

『了解・・その時はベストを尽くすよ』と笑顔で返して、笑顔の豊兄さんをマリアと見送った。


「エース・・助けて~」とマキが大声で呼んだ、見るとレンとハルカと久美子に囲まれていた。

『何悪さした・・マキ』と笑顔で言った、マリアも天使の笑顔で見ていた。

「嫉妬したって言われて・・囲まれてるの」とマキがウルで言った。

「まき・・だめ~」とマリアが天使不敵を出した、マキ以外の全員がニヤで見た。

「恭子に教えないと・・最強のライバルが出現したって」とマキがマリアに微笑んだ。

全員で笑っていた、夏の日の午後・・夢を描く女性たちに光が射していた。


私はマリアをシオンに預け、ゴールドに向かった。

ボーイ頭の中年男性に挨拶して、奥の小部屋に入った。

小部屋には千鶴とセリカとケイコがいて、笑顔で私を見た。

「来たね・・じゃあセリカよろしく」と言って、千鶴が近寄り腕を組んだ。

「ママ~・・駄目ですよ、私の玩具ですから」とセリカが流星ニヤを出した、私はウルで返した。

「駄目よ・・私のお気に入り」と千鶴がニヤで返して、私を引っ張った。

赤玉駐車場まで歩いて、千鶴のジープに乗り込んだ。


『どこに行くのでしょう?』と私は初めてのジープにワクワクしながら、笑顔で聞いた。


「私・・回りくどい事嫌いなの、馬鹿息子に脅しをかけたよ。

 馬鹿息子・・あんたが怖いみたいで、了承してくれた。

 転院させるよ、○病院・・夜町から歩いていけるし。

 医者も設備も環境も申し分ないらしい、祖父母の了解も今日取った。

 エースだけは自由に会えるって、今の○病院の担当・・関口先生だよ。

 知ってるでしょ・・前○○総合病院にいたから。

 私の今回のお礼・・マユとセリカとケイコのね。

 私自身のは考え中・・ユリさんの姿が見れるんだね、すぐ側で。

 私の店で・・本当に嬉しいよ」


千鶴は一気にそう言った、私は感動していた、千鶴の行動力と熱い想いに。

『ありがとう、千鶴・・本当に嬉しいよ』と真顔で頭を下げた。

「その感謝は、ミホちゃんを解放してから言って・・待ってるから、いつまでも」と美しく微笑んだ。

私も笑顔で強く頷いた、千鶴の意志の強く美しい瞳を見ながら。


ジープは病院の坂を上がり、奥の駐車場に止まった。

千鶴が受付に行き、何かを話して、別棟の3階に行き・・何か書類を出した。

「さぁ・・会って来て、私はここで待ってるから・・明日転院だと伝えて」と美しい笑顔で言った。

私は真顔で頷いて、中年の看護婦の後を歩いた。

病院独特の消毒液の匂いが鼻をつき、緊張していた。

ミホの病室は狭い個室だった、看護婦が鍵を開けて私を見た。

「10分だけです」と事務的に言った、私は真顔で頷いてドアを開けて入った。


奥のベットに腰掛けて、外を見ているミホの背中が見えた。

私はゆっくりと歩み寄り、ミホの横顔を見た。

その顔は健康的な肌の色に、若さを示す肌の張りを主張して。

短い髪から出る、顎の線が大人っぽくなっていた。

瞳の大きさは相変わらずで、色の無い瞳で外を見ていた。


『ミホ・・久しぶり、綺麗になったね・・ミホ、ごめんね待たせたね』と言うのが精一杯だった。

私はミホを見ながら、必死で自分と闘っていた、その無表情が予想を超えていた。

その時ユリカの強烈な波動が来た、私はそれに押されて、ミホの前に行き屈んでミホを見た。

ミホは私を見た、意志の無い瞳で・・表情を変えずに。

私はミホの両手を握り、ミホの温度を確認した。


『ミホ・・明日転院するからね、これからは毎日会いに来るから』と言葉と温度で伝えた。

何の反応も無い、ミホが私には辛かった・・無駄な時間を過ごしたと思っていた。

私は何も考えずに、ミホの両手を握り伝えていた・・絶対会いに行くと。

看護婦が呼びに来て、私はミホに別れを告げて、千鶴の所に行った。


「やっぱり最初は辛いのね・・大丈夫?」と千鶴が真顔で言った。

『大丈夫・・絶対に今度はやりきるよ』と必死で笑顔を返した。

帰りの車で、千鶴が楽しい話をしてくれ、私も笑顔で相槌をいれていた。

しかし心は深く沈んでいた、その圧倒的ミホに触れて・・自信の欠片も残っていなかった。

千鶴にPGの前まで送ってもらい、お礼を言って、必死の笑顔で手を振った。

トボトボと裏階段を登り、ドアを開けると・・ハルカに手を掴まれフロアーに連れて行かれた。


そして衝撃の光景を見る、限界トリオ3人がフロアーに正座をして、目を閉じていた。

私はその前に歩み寄り、正面に立った。

10番席には、マダムとユリさんと蘭とシオン・レン・ハルカ・久美子が真顔で座っていた。

そしてユリカがマリアを抱いていた、その横にミサと強い瞳で見ているエミがいた。

私はユリカがシズカに、連絡したのだと思っていた。


「小僧・・分りきっていた事だろう、ミホが閉ざしているのは」とシズカが言って目を開けた。

「悔しさを忘れたのか・・あの時の・・あの悔しさを」と恭子が言って目を開けて。

「今は後悔する時じゃない、後を見るな・・ミホを見ろ、ミホだけを見ろ」とマキが言って目を開けた。

3人が立ち上がり、私を囲んだ・・私は真顔で立っていた。


「あの時の私達の拳の言葉を、もう1度伝える・・マキ」とシズカが言った。

私は瞳を閉じて、その言葉を聞いた。


「あの日・・お前は諦めなかった。

 小僧が、あの医者が・・ミホを転院させた時言った言葉。

 今でも私達には響いている、絶対に忘れられない。

 紙切れに負けないと、資格などには負けないと。

 ミホを追い続け、必ず見せてやると・・そのカルテを白く塗り潰すと。

 私はそれを聞いて思い出してた、あのヒトミに伝えた言葉。

 遠足で郷土の歌人、若山牧水記念館に行って感じた、小3のお前の言葉を。

 ヒトミに話した、あの歌の解釈・・感動したよ。

 【白鳥(しらとり)は、哀しからずや、空の青、海のあをにも染まずただよふ】

 放浪の歌人・・牧水の心の歌、その本質は、学者では理解できないと思ったよ。

 私はヒトミの母親と、ベッドのカーテン越しに、奥の窓際で聞いていたよ。

 お前は言葉と温度で、少し興奮しながら伝えた。

 牧水は自分が染まっていた事を、後悔していたんだね。

 人は進むに連れ、何かに染まっていくんだね。

 だから白鳥の白に魅せられる、空を飛んでも、海の上を漂っても染まらない。

 でもそれは、外側なんだよ・・白鳥も染まっているんだね。

 だから、哀しからずやって言ったんだよ、俺・・分らないけど。

 こう思ったよ・・染まることを悲しまないで良いんだと、牧水は気付いたんだ。

 空の青・海の青・・それに外側は染まらないけど、内側は染まるんだね。

 白鳥は牧水自身の理想なんだね、海と空の境界線を飛びたいんだよ。

 何にも影響を受けずに、自分の心のままに生きてみたい。

 でもそれは難しい事なんだろうね、俺は子供だから分らないけど。

 でもね、ヒトミ・・俺はそこを飛んでみたいよ、その境界線を。

 ヒトミのように白いままで、牧水のように何かを伝えたい。

 ヒトミ・・海と空の境界線には、少しだけ白い部分があるんだよ。

 そこを飛んでみたいと思ってて、気付いたんだよ・・牧水は飛んでない事に。

 漂うんだ・・羽を広げて、風に任せて漂うんだよ。

 何かを成し遂げようとか、こんな生き方をしようとか・・思わないんだね。

 あるがままに、風の吹くままに・・漂う。

 そうすれば、空の青にも海の青にも・・染まらない。

 俺はね・・ヒトミに憧れてるんだよ、ヒトミは染まらないから。

 動けないからじゃないよ、話せないからでもないよ。

 ヒトミは境界線にいるから、生と死の境界線を漂うから。

 それでも染まらないから、生きる事にも死ぬ事にも・・心が染まらない。

 ヒトミのおかげで分ったよ、牧水の心の言葉。

 白鳥は悲しまない、生きる事にも、死ぬ事にも・・心は染まらずに漂う。

 そういう生き方をしてみたい・・牧水はそう詠んだんだよ。

 この歌の続きの部分は、今考えてるから、また聞いてね・・ヒトミ。

 お前はそう言った・・母親は震えながら泣いてたよ。

 私はそうなんだと思ったよ、牧水はそう詠ったんじゃないかと。

 定説も常識論も超えた、お前の解釈・・素敵だと感じた。

 それで良いんだと教えられた、各々の解釈で良いんだと。

 あの言葉を・・忘れないで欲しい、そしてミホに伝えて欲しい。

 私達3人の想いは1つだ・・ミホにこだわり続けろ。

 空の青・・海の青にも・・染まず漂え・・小僧。

 牧水の教えを、お前に思い出させる・・・構えて」

 

マキが流れるように言葉にした、無変換の流れが響いてきた。

私は目を開けて、腹筋に力を入れて腰を落とした。

真ん中にマキが立ち、右にシズカ、左に恭子が立った。

「小僧・・検討を祈る」とマキが言って、3人が同じ動作で私の腹筋に拳を入れた。

さすがに効いて、私は目だけ苦痛を出してしまった。

3人は暫く止まっていた、私には強い想いが伝わってきた。


3人が離れ笑顔になった、私も自然に笑顔で返した。

「まぁ、こんな感じで~す」とシズカが笑顔で振向いて言った。

「前回は・・ボコボコにしました、自分のストレスも込めて」と恭子も振向き笑顔で言った。

「かなりのストレス解消になりますよ、お試し下さい」とマキも笑顔で振向いた。

私はウルウルで見ていた、10番の全員が笑顔になった。


その時マリアが走ってきた、私の前で右手に拳を作って天使で微笑んだ。

私は真顔で膝をついて座り、マリアの高さに腹筋を合わせた。

「きゃまえて」とマリアが強く言った、私は構える振りをした。

マリアの渾身の可愛い拳がお腹に当たった、私はマリアを見て苦しい顔をした。

「えーしゅ」と強く言って、両手を両頬に当てて、天使全開で充電してくれた。

私はマリアを抱き上げて、マリアの頬にキスをした。


「マリア・・最強だよ」とシズカが笑って、全員が笑っていた。

「そうそう、豊君をマリアが狙ってるよ」とマキがニヤで恭子に言った。

「それは怖い・・勝てる気がしない」と恭子がウルで返した。

「きょうこ・・だめ~」とマリアが天使全開不敵で言った。

「マリア・・そんな笑顔はいけないわ、豊が泣くよ」と恭子が言うと、マリアが慌てて引っ込めた。

全員の爆笑の中、私はマリアを抱いて天使を見ていた。

《マリアのが1番響いたよ》と心で囁いた。

「あい」と言って天使で微笑んでいた、夏の昼下がり・・笑顔の中に立っていた。


私のこの夏物語で、最後に登場する・・ミホ。


その存在こそが私に教える、伝えていくべき事を。


マキが無変換の言葉で伝えてくれた、小3の私の言葉。


私は必死で生きているうちに、忘れていた・・大切な想い。


牧水記念館で・・立ち尽くし読んだ・・その歌。


ヒトミが見せてくれた、染まらずに生きる姿。


私は確信を持って言おう、ヒトミは死を受け入れていたと。


しかしそれに囚われる事無く、その時を生きていたと。


9歳で次のステージに登ったヒトミ、しかし強い意志で生きていた。


私はヒトミの影響で、白鳥の歌に心惹かれたのだろう。


その解釈は今でも変らない、境界線で漂いたいと願っている。


心のままに、ヒトミのように・・ミホの今の生き方のように。


夏物語は・・佳境に入っていく・・ごつい男が歩いて来る。


強い足取りで、夜街を目指していた・・廃墟の伝道師が現れる。


夜街に向かい、何かを背負って歩いていた・・その生き方を提示するために。

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