無言の伝言
夏の朝日を受けて、目的地を目指す寂しい影。
無理に笑顔を作ることも、無理に会話をする事もなかった。
繋いだ手から感じていた、そして伝えた・・好きだよと。
マチルダは強く手を繋いで、何も話さずにバスを待っていた。
私も繋いだ手の温度に集中して、伝わってくる言葉を聞いていた。
マチルダは美しい横顔で、日頃より強く少女の香りを漂わせていた。
バスに乗り、密着して座った・・手だけは強く繋いだままで。
その時には伝達しあっていた、意味を感じる事が出来ていた。
マチルダはそれだけに集中していた、英語も日本語も発する事は無かった。
空港が見えて来た時に、マチルダの温度が大きく揺れた。
私も必死で伝えた・・1つの言葉だけを出さないように。
一緒に行くと伝えないように・・1番伝えたい言葉を、ギリギリで止めていた。
空港に着き、マチルダが登搭乗手続きをして振向いた。
プラチナブロンドが乱反射して、輝きが溢れ出していた。
そして輝く笑顔になって、私に駆け寄った。
私はマチルダを抱きしめて、マチルダを見た・・笑顔で泣いてるマチルダを。
「エース」とマチルダが言って、深緑の瞳が目まぐるしく変化していた。
『I Love Matilda』と言葉で伝えて。
待ってるから、無理だけはするなよ・・大好きだよマチルダ。
瞳で強く伝えた、そしてマチルダを抱き上げて歩いた。
搭乗のアナウンスが流れていた、東京行きの客を急かすように何度も流れた。
私は人混みの中、マチルダを抱いて階段を登った。
夏休みを楽しんだ家族連れで混み合う、搭乗ゲートの前で強く抱きしめた。
離せなかった・・マチルダを離す事が出来なかった。
マチルダも強く抱かれていた、私はマチルダを見て笑顔を見せた。
マチルダも笑顔になって、瞳で伝えてきた・・《ありがとう》
私も笑顔で、《ありがとう》と瞳で伝えて、ゆっくりとマチルダを降ろした。
マチルダが強く私を抱きしめて、キスをしてくれた。
唇を離すと、マチルダが輝きながら微笑んで。
一瞬だけ寂しい色を瞳に出して背を向けた、そして動かなかった。
私は震える両手をマチルダの背中に付けて、そっと押した。
『I Love Matilda』と囁いて、マチルダの背中を見送った。
ヨレヨレのTシャツの背中が見えなくなって、俯いて泣いていた。
その時に発見した、私のベルトの穴にプラチナブロンドが結んであった。
私は慎重に外して、大切にポケットに入れた。
『うし』とカスミの真似をして、送迎デッキに向かった。
リンダの時と同じ場所に、飛行機が停まっていた。
窓にはプラチナブロンドは確認出来なかった、私はドアを見ていた。
乗務員が出てきて、ドアの確認をしていた。
そして現れた、マチルダが笑顔で両手を振った、私も大きく両手を振った。
マチルダが乗務員に促され、席に戻る時にサインを出した。
【指名】【エース】とPGのサインを出して、消えた。
私は嬉しくて立ったまま泣いていた、エンジン音を聞きながら。
反転した窓に、煌くプラチナブロンドが見えた。
マチルダが必死に手を振っていた、私は両手を大きく振った。
轟音が響き渡り、太平洋に向かい加速した。
機首を持ち上げた空に向かい叫んだ、大声でマチルダに届くように。
『I Love Matilda』と叫びながら、泣いていた。
青空に入道雲が流れていた、悠々と世界を見渡すように。
私はトボトボと空港を出て、バス停のベンチに座っていた。
目の前にフォルクスワーゲンが止まった、ユリカが爽やかに笑っていた。
私も笑顔になって、助手席に飛び乗った。
「寂しさを噛み締めてる暇はないでしょ、あなたには」とユリカが爽やかに微笑んだ。
『そうだね・・ユリカを復活させないといけないから』と笑顔で返した。
「よろしくね・・エース」と爽やかニヤで言って、車を走らせた。
ユリカの緊張して運転する姿を、笑顔で見ていた。
「ずっと無言だから、怖かったよ・・連れて行かれそうで」とユリカが前を見ながら微笑んだ。
『心配性だな~・・可愛い奴だ、ユリカ』とニヤで言った。
「マチルダのあなたに対する想いを感じると・・怖いよ」と爽やかニヤを出した。
『その話・・詳しく聞きたい』とウルで言った。
「駄目~・・本人に聞いて、瞳でも鼓動でも温度でもいいから」と爽やかニヤニヤで言った。
『そんな怖いこと・・自分じゃ出来ない』とウルウルで返した。
「和解のとき・・私カウンターにいて良いかしら?」と前を向いたユリカが微笑んだ。
『もちろん、一緒に座ってても良いよ・・ユリカなら』と笑顔で言った。
「言うわね~・・そうしようかな~」と爽やかニヤで言った。
『今さら何を・・ユリカは俺の全てを、聞かないといけないんだから』と笑顔で返した。
「ありがとう・・本当は嬉しいよ、シズカもマキも嬉しかったよ」と真顔で言った。
『ユリカ・・ありがとう、マキの身元保証人』と真顔で返した。
「シズカとマキの変換スピードの速さに驚いたよ、女性であのスピードは蘭しか知らなかったから」と嬉しそうに笑顔で言った。
『女性は遅いんだね・・色々考えるからね』とニヤで返した。
「そうよ、女は魔物だから~」と爽やかニヤで言った。
『ユリカ・・似合わないよ、その台詞』と笑顔で返した。
「自分でもそう思ったよ」と少し照れて笑っていた。
私はユリカの愛情で回復されていた、寂しさは無かった、エミの言葉が響いていたから。
温度の上がりだした国道を、夜街に向かっていた。
マチルダの笑顔だけが、映像で流れていた・・私はマチルダを見ていた。
ユリカが慎重に赤玉駐車場に止めて、車を降りた。
「いつからPG専用駐車場になったの?」とユリカが腕を組みながら微笑んだ。
赤玉にユリさんのZと美冬とシオンの軽自動車が止まっていた。
『片付けだね・・美冬とシオン』と笑顔で返した。
「PGに先に行こう・・ユリさんにマキの、事話したいから」と爽やかに微笑んだ。
『俺もお礼しないと・・ユリさんに頭下げさて、申し訳ないよ』と真顔で返した。
「誇りに思いなさい・・そして取組みなさい、絶対に絶望させないでね」とユリカが真顔で言った。
『うん・・ベストは尽くすよ』と真顔で返してPGの裏階段を登った。
TVルームに行くと、マダムとユリさんとマリアがいた。
ユリカと挨拶をして、マリアを抱き上げてユリカに渡した。
ユリさんの前に正座をして、薔薇の微笑を見ていた。
『ユリさん・・ありがとうございました。
昨夜シズカに会って聞きました、本当に嬉しかった。
明日、親父とキチンと和解します』
真剣に言って、頭を下げた。
「もういいんですよ・・驚きました、シズカちゃんに会ったのですね」と薔薇で微笑んだ。
『はい・・蘭とユリカとマチルダで、ユリカの家で会いました』と笑顔で返した。
「そうですか・・ユリカ、シズカをどう思いましたか?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「16歳であの世界に到達出来るのが、信じられませんでした。
昨夜蘭の悲しみに触れた瞬間の言葉を聞いて、泣きそうになりました。
そしてもう一人、マキちゃんという子も素晴らしかったです。
2人とも自分の分析が出来てますね、感動しました。
和尚と豊とエースに囲まれて、それでも自分らしさを持っている。
素晴らしいですね」
ユリカが爽やかに微笑んで、話を続けた。
「シズカは・・・・・・」ユリカがシズカがお詫びした話をした。
「そしてシズカとマキ、蘭の悲しみに触れた時・・・・・」ユリカの言葉が響いていた。
「蘭の後悔も悲しみも、一瞬で拭ってみせました」とユリカが笑顔で言った。
「ほ~・・それで16歳かね」とアダムが笑顔で言った。
「本心を言いますね・・2人とも欲しいと切望しますね~」とユリさんが薔薇で私に微笑んだ。
「マダム、ユリ姉さん・・そこで相談があります。
マキが蘭を見て、夜街に挑戦を決めています。
16歳ですが、私はもう大丈夫だと感じています。
身元保証人は、私がなります。
今日の17時に約束しています、面接をお願い致します」
ユリカは美しい真顔で、頭を下げた。
「ユリカ、もう頭を上げて・・本当に素敵な話です・・ユリカが身元保証人になる人材・・今から楽しみですね」とマダムに微笑んだ。
「ユリカ、ありがとうな・・その筋の通し方、夜の掟じゃね」とマダムも嬉しそうに微笑んだ。
ユリカも爽やか笑顔で返していた。
「エースから見たら、マキちゃんはどうなのかしら?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『俺の勝手なイメージで言うと、まず1番影響を受けるのは。
ハルカですね・・マキも自立を幼い時から目指してました。
そしてハルカに出会えば、感動すらすると思いますよ。
ハルカの芯の強さを感じるでしょうから、だからハルカも影響を受けます。
まだどこか抑えてるハルカにとって、マキのストレートな熱は響くでしょう。
それも下から来る、初めての女ですから。
俺はそこだと思ってました、ハルカとミサキの精神的弱点。
暫く一番下だと思っている、最近少しそれに甘えてますね。
ハルカらしさが出てこないのも、その傾向でしょうね。
マキは絶対にハルカに点火します、そして追い続けるでしょう。
ハルカがその本質である、真直ぐに物を見れるのならば。
そしてレンもユメもウミも・・カスミでも。
震えてもらいますよ、マキはその心を直接言葉に乗せるから。
女性では滅多に見られぬ存在ですね、ユリカも変換スピードが速いと言ったし。
そしてなにより、心が強い・・豊の背中を常に見てましたから。
私はいけると思っています、身内だからじゃなく・・実力を評価して。
必ずPGに風を呼び込みます、少し閉塞感の出てきたPGに』
私も真剣に伝えた、ユリさんの薔薇を感じながら。
「さすがですね・・気付いてましたか、ハルカの弱点。
確かにそうです、甘えています・・らしくない。
今は最下位で良いと思いがちですね、年齢的な状況で。
あなたが言っているのに、経験も人脈もカスミちゃんより上だと。
閉塞感すら打破する熱、ユリカと蘭が一目で認めた存在。
本当に楽しみです・・17時が待ち遠しいです。
ユリカ、本当にありがとう・・あなたと蘭を見たから挑戦を決めたのですから。
私が育てて見せますね、私は感じていますよ。
マキ・・女帝の匂いがするのでないかと」
ユリさんが嬉しそうに薔薇で微笑んだ、ユリカも微笑んで頷いた。
「面接はここで良いですか?」とユリカが微笑んだ。
「10番席でやりましょう、レンとハルカとシオンの前で」とユリさんが真顔で言った。
「ユリ姉さん・・どんなに大きな期待をされても結構ですよ、17時になれば分ります」とユリカも真顔で言った。
「ユリカ・・もう、ワクワクが止まらなくなりますよ」とユリさんが楽しそうに笑った。
その時、静寂が訪れる・・天使の声で。
「まき・・まき・・くる?」とマリアが私に天使全開で聞いた。
『うん、マリア・・マキがPGに来るよ』と笑顔で言った。
「まき・・くる・・しおん」と天使不敵を出した。
『マリア・・駄目だよ教えたら、内緒にしてたのに』と驚きながら笑顔で言った。
「私・・17時まで待てるかしら」とユリさんがマリアを見て薔薇で微笑んだ。
「マリアが認めた女が来るのか、楽しみじゃの~」とマダムも微笑んだ。
「やっぱりシオンね、マリアは誤魔化せないわね」とユリカが爽やかニヤで言った。
『シオンの最後のトラウマは、俺じゃ外せない。
シオンに最後に感じてもらいたいもの、責任感。
今のシオンは前向きになって、やる気も申し分ない。
あの純白の心なら、今でも面白い存在になるけど。
それだけなら、ただのシオンになりそうで。
最後にシオンが今まで拒絶していた物・・その責任感を植えつける。
マキならやれる、シオンの白い心と、マキの心の会話。
俺となら出来るその歌う会話、それが出来る女・・マキ。
シオンは必ず感じる、年上の女性としか出来なかった。
その心の会話を、年下の女性と出来たら。
マキに執着する・・そうすればマキは必ず点火する。
シオンの心に、年下が見てるという責任感が芽生える。
そうなったら・・シオンは絶対新しい何かを見せる。
熱のある白い心・・無敵のシオンが覚醒すると思ってます』
私はマリアを抱いて、笑顔で言った。
「どうしましょう・・PGはどうなっていくのかしら」とユリさんが楽しそうに微笑んだ。
「親父さんの許可絶対取れよ・・業務命令や」とマダムも笑顔で言った。
「その話で・・とても楽しい話があるんですが」とユリカが爽やかニヤで言った。
「もう、ユリカ早く教えて」とユリさんが薔薇で促した。
「蘭とお父さんの出会いを、和尚とシズカが演出して・・・・」ユリカが楽しそうに、蘭の接客で出会う話をした。
「それは楽しみですね~・・伝説に残りますよ、見学者が相当来ますね」とユリさんが悪戯っ子を出した。
「さすが和尚じゃな・・昔から人の心を読む男じゃわい」とマダムも笑った。
「あらマダム、聞いてませんよ和尚様と知り合いなんて」とユリさんがマダムに言った。
「そうじゃったかの~・・ワシらの歳であの和尚を知らん奴はおらんよ。
簡単に言えば、豊みたいなもんや・・顔は全然違ってたが。
あの和尚は戦争の時に捕まった、戦争反対を堂々と叫んで。
特攻隊の召集を受けた若者の、両腕の骨を折って救ったりしたんじゃよ。
終戦を迎えて、その死者数に絶望したんじゃろうな。
自ら生臭と名乗るようになった、その影響で梶谷は自分を悪徳と名乗る。
最近PGに来るのを見て、ワシは嬉しかったよ。
あの反戦を叫んだときの、生き生きとした生臭を見たから。
そして今分ったよ・・託せる人間に出会えたんじゃな。
豊や小僧・・その3人娘、嬉しかったじゃろう。
そしてその中に夜の女も入って来た、ユリもユリカも蘭も。
昨日集まった全員を見てたよ、そしてマチルダの後にリンダを見ていた。
生臭がワシに言ったよ、エミを見て感動したとな。
希望を益々持てたと、嬉しそうじゃった。
あの日曜の集まりのようなものが、世界中で起これば変るとな。
平和の本質を語り合う、そんな時代が来てほしいと言っちょった」
マダムの話を、静かに聞いていた。
「やっぱり、素敵な人ですね~・・あなたは知ってましたね」とユリさんが私に言った。
『マキが一緒に住んでる、駄菓子屋の婆さんに聞きました』と真顔で答えた。
「ちょっと待てエース・・駄菓子屋の名わ?」とマダムが真顔で私を見た。
『○○屋だよ』とマダムの迫力に押されながら、答えた。
「マキという娘・・ツネさんの孫なのか・・ユリ、お前の予感当りかもな・・女帝の匂い」とマダムがニヤで言った。
「マダムいけませんわ・・ニヤだけじゃ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ツネの一人娘・・その源氏名・・真の希望と書いて・・真希じゃよ」とユリさんに微笑んだ。
「あの宮崎で最初に女帝呼ばれた人・・千花の真希さんですか!」とユリさんが驚いて言った。
「大ママから、聞いた事あります・・歩くだけで輝きが溢れてたと」とユリカも驚いて言った。
「ツネとワシは闇市で知り合った、ツネはやり手での~。
しかし忽然と姿を消した、次に出会ったのが10年後。
その時15歳や言うて、娘を連れちょった。
不思議な娘での~・・強烈な雰囲気があったよ。
そしてクラブ千花を作る、16歳の真希がその店を引っ張るんじゃ。
ユリカの言った通り、歩くだけで何かが溢れるようじゃった。
入りきれない輝きが、歩く振動で溢れ出すような。
じゃが真希はどんなに人気が出ても、物腰の低い温かい女やった。
それで言われ始める・・女帝とな。
真希は突然引退発表をする、全盛期の26の時に。
理由は結婚やった、遊び人たちが泣いたもんだよ。
真希と同時に、ツネも夜から足を洗うんじゃよ。
ツネと真希が最後に出会い、1番可愛がった女がいた。
その源氏名・・飛鳥・・18歳でリアンレベルの炎を湛えていたよ。
真希を見て、飛鳥を見て・・ワシも必死で探したよ、託せる女を。
それから5年後や・・ユリと出合ったのは。
ユリが夜街に入って、今15年・・真希が引退して20年。
16の娘・・計算は合うよな~。
ユリカも蘭も一目で認める存在、そして今聞いた会話。
間違いないじゃろう・・自分の娘に託したんじゃ・・その誇り高い源氏名を。
エース・・マキの漢字はどう書くんじゃ?」
マダムはどこか懐かしそうにそう聞いた。
『真実の希望・・その頭を取って・・真希』と笑顔で答えた。
「本人は知らんやろう、この事実はここだけの話やな・・ユリ、大ママだけに話してくれ」とマダムが言った。
「はい、そうします・・エース、また大ママを泣かせるんですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「それでですね、マキちゃんが夜の仕事の許可を、お婆さんがくれたと言ったから、よく16歳の子にと思いました」ユリカが言った。
「16なら・・許可するよの~・・せざるえんよ」とマダムが笑顔で言った。
「マダム・・採用したら、ツネさんに挨拶はどうしましょう?」とユリさんが真顔で聞いた。
「ワシが行ってくる、エースと2人で・・久しぶりに会いたいからの~」とマダムが微笑んだ。
「よろしくね、エース」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ユリよ・・マキは育ててみような、そうしないと大ママに申し訳ないぞ」とマダムが真顔で言った。
「はい、必ずPGで花を咲かせましょう」とユリさんも真剣に言った。
「最強の爆弾を用意してるか~・・恐ろしい爆弾を用意したもんじゃ」とマダムが楽しそうに笑った。
「本当に・・私を絶望させるどころか、驚きで心臓麻痺にさせそうですよ」とユリさんが薔薇ニヤをした。
「大ママが、どうして魅宴じゃないのかと・・お腹空かしてくるよ~」とユリカが爽やかニヤで言った。
私はウルウルで返していた。
「PGに決まったら、今日、その足で魅宴に挨拶に行きましょう」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「大ママ・・4度目の嫉妬は確定に近いですね」とユリカも爽やかに微笑んだ。
「なんせハルカの1つ下なら、ミサキの1つ下という事やからな」とマダムも微笑んだ。
私はユリカと昼食を食べに、通りに出た・・靴屋を覗いてユリカと2人で笑顔になった。
マキが蘭と話しながら、ハイヒールを選んでいた。
美しいリーゼントのマキは、彫の深い素顔の笑顔だった。
私はその時に初めて客観的にマキを見て気づいた、輝きが溢れ出している事に。
長身で長い足を想像させるスタイルで、本当に宝塚の男役という感じだった。
「本当に素敵だね~・・私、宝塚大好きだから、本気で惚れそうだよ」とユリカが微笑んだ。
「次女の蘭姉さんに、おねだりだね~」とユリカが笑顔で近付いて行った。
「ユリカ姉さん、おはようございます」とマキも笑顔で頭を下げた。
「まだ必要ないけど、足のサイズだけ見ときたくて」と蘭が満開で微笑んだ。
「特別なの揃えそうだね、私のもよろしく・・PGと魅宴用に」と爽やかニヤで言った。
「マキちゃん、アルバイトは?」とユリカが聞いた。
「今日の午前中をもって、終了しました」と微笑んだ。
「ねぇ・・近くで微笑まれると、別の意味で好きになりそう」とユリカがニヤで言った。
「ユリカ姉さん、本当に好きなんですね・・宝塚」と蘭が満開ニヤで言った、ユリカもニヤで頷いた。
「マキちゃんどうでしょう・・今から面接受けない?」とユリカが微笑んだ。
「こんな恰好で良ければ、早い方が私も嬉しいです」とマキが笑顔で返した。
「全然大丈夫よ、外見を見る人じゃないから・・今、話して来た所なの」と爽やかに微笑んだ。
「そうしようよ・・私も昼の休憩になるから」と蘭が満開で微笑んだ。
「よろしくお願いします」とマキも笑顔で頷いた、それを聞いて蘭が店の裏に走った。
「エース、スペシャル幕の内3つね・・あなたはお好きなのどうぞ」とユリカが言った。
『了解・・ダッシュで行ってくるよ』と行って行こうとすると。
「小僧・・早く帰れよ・・見ててくれよな」とマキが微笑んだ、私も笑顔で頷いて走り出した。
弁当を買って、走ってPGに戻るとマキが小窓の所にいた。
少し緊張してる顔に、挑戦を決めた強い意志を示す瞳があった。
「全員いるから、ここでやるそうよ・・マキちゃんおいで」と蘭がマキを案内した。
マキはその少林寺で鍛えた、美しい姿勢で真直ぐ前を見て入っていった。
マキを見たマダムもユリさんも、最高の笑顔になった。
そしてレンと久美子が凍結していた、リーゼントだから気付いたと思っていた。
そしてハルカの視線が、あの裏方を必死でやっている時の光に戻った。
「マキと申します、突然の面接ありがとうございます」と美しい姿勢のまま深々と頭を下げた。
「よく来てくれました、どうぞそこに座って、楽にしてね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ユリさん、私達出てましょうか?」とハルカが言った。
「いえ、ここに居なさい・・そして見ておいて、16歳の覚悟を」ユリさんがハルカに微笑んだ。
「16歳!」とハルカが驚いてマキを見た。
「マキちゃんですね・・1つだけ質問します、なぜこの仕事に挑戦しようと思ったのかしら?」とユリさんが真顔で聞いた。
「私は家庭の事情で祖母に育てられました、母と離れたのが6歳です。
母は肺の病で、隔離されました・・最後の面会の時に私に言いました。
自分の足で歩いて、そして転んで、自分で立ち上がってと。
それから私は自立を目指しました、祖母の負担を考えた訳じゃありません。
母の言葉の意味を感じたかった、母の静かな叫びが心に残っているから。
義務教育が3月で終了して、今通信制の高校に席を置いています。
色々とアルバイトを探しました、でも納得出来る仕事が無かった。
そんな時出会いました、蘭姉さんに・・衝撃でした。
その輝きと温もりを見て、そして花の咲くような笑顔を見て。
その時に自分の中に芽生えました、夜の仕事に挑戦しようと。
実は私の母親も、この仕事をしていました。
私は幼い頃、寝物語で聞いていました。
そして常に想像していました、美しい母の仕事をする姿を。
母は私に自慢していました、沢山の仲間と競い・・笑えたと。
それでも私は今16歳だから、採用は無理だろうと思っていました。
蘭姉さんに1度は相談しようと思いながら・・心はまだ覚悟してなかった。
そして出会いました・・ユリカ姉さんに、その言葉に触れ覚悟が出来ました。
私は全てを賭けて挑んでみせます、いつか必ずこの店のお役に立って見せます。
今・・ユリさんを見て、どうしてもここでやりたいと思いました。
私の母が求め続けた、認められたいと思う人と。
本気で競いたい思う人が、存在すると感じたから。
お願いします、チャンスを下さい・・未成年の内は裏方を必死でやります。
そしてここに誓います、自分で歩み、転んだら自分で立ち上がると。
母が途中で諦めた・・夢の正体を感じたい。
それが他人に認められなくても、蔑まれてもいい。
私はこの世界に憧れて、職業として選択したと強く叫べます。
将来、子供の寝物語で自慢します・・私は最高の時を過ごしたと。
最も大切な時を賭けて生きたと、そう強く伝えたい。
母が私に譲ってくれた・・この真希という名にかけて誓います。
絶対に道半ばで諦めたり、挫折したりしない事を。
そして言い訳はしません・・自分が賭けた仕事に対して。
最後に必ず受入れて見せます・・自分自身の生き方を」
マキはその会話の力を全てだしていた、静寂が包んでいた。
「許可します・・今の誓いを忘れないで下さい、あなたの身元保証人のユリカに対しても」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ありがとうございます、絶対に失望させません」とマキは頭を下げた。
「お昼からの出勤で大丈夫かしら?」とユリさんが微笑んで聞いた。
「はい・・大丈夫です」とマキが笑顔で答えた。
「来る時はバスで来てね、18歳になるまでは、帰りは方向が同じですから、マダムとハルカと帰って下さいね」と言って。
「いつから来れますか?」と薔薇で微笑んだ。
「出来るなら・・今からでお願いします」とマキが美しく微笑んだ。
「分りました、お願いします・・先に食事にしましょう」とユリさんが言って、食事の準備をはじめた。
「まき・・まき」とマリアが呼んだ。
「マリアちゃん・・よろしくね」とマキが微笑んで抱き上げた。
「マキ・・・」マリア語で話していた、そして衝撃が走る。
「そうなの~・・色々教えてね」とマキがマリアに笑顔で言った。
「あい」とマリアが天使全開で笑った。
「凄いです~・・分るんですね」とシオンがニコちゃんで言った、マキも笑顔を返した。
「マキ・・マリアなんて言ったの?」と蘭が満開で聞いた。
「エースが寂しそうだから、元気付けてと言ってます」とマキが笑顔で答えた。
「正解です・・楽しくなりそうですね~」とシオンがニコニコちゃんでマキを見ていた。
全員がマリアを抱くマキを笑顔で見ていた、新しい挑戦者の登場を喜ぶように。
ハルカが、あの真直ぐな瞳の輝きで、ようやく訪れた年下の挑戦者を見ていた。
ユリさんの薔薇と、ユリカの爽やかと、蘭の満開ニヤがハルカを見ていた。
私はマキの登場で、マチルダを心のリンダの場所に置いた。
リンダとマチルダが豊兄さんを囲んで、笑顔で話していた。
8月の終わりが近付く、夏の陽射しを浴びて・・天使が輝きながら微笑んだ。
マキの登場は、大きな起爆剤になる。
六本木PGが開店した時、PGの責任者にナギサがなる。
28歳のナギサ・・圧倒的華やかさの中に、知性と余裕が存在していた。
そして最強のエース・・25歳のカスミがフロアーに君臨していた。
ツウィンズのユメとウミが、カスミと競っていた。
シオンが引退して、レンがユリカの店を引き継いで、PGに居なかった。
しかし22歳のハルカと21歳のマキが強く存在した。
その当時マキは湧き出てくる、最新式の女性たちをまとめた。
マキと同世代以降の挑戦者は、限界トリオのマキを追って来た。
柔らかいリーゼントで、ドレスを纏う・・輝くマキが若手を引っ張った。
挑戦を決めた時の気持ちを、忘れさせないように伝え続けた。
ハルカとミサキが女帝と言われた時・・マキは女王と言われた。
無変換の言葉・・許容を超える輝き・・両性に愛されし者。
魂の叫びを伝達する者・・その名は・・真希。