最後のピース
夜空に輝く無数の星の光が、海面に映り幻想的な世界を演出していた。
月光は一筋の道を描き、希望ある未来を提示しているようだった。
昼間の熱が冷める水温が、海の仲間の温度で上がっていた。
私が抱く蘭は、不安の欠片も見せずに満開の笑顔を出していた。
元々日南出身で、泳ぎの得意な蘭にとっては、深さの知れない事にも恐怖を感じなかった。
私は蘭の笑顔を見ながら、完全な解放を感じていた。
「どうしてあんなに優しい目をしてるんだろうね・・不思議な気分だった」と蘭が満開で言った。
『マチルダも見た時に、泣いてたよ』と笑顔で返した。
「何も考えずに、ただ泣けたよ・・幸せだった」と蘭が強く抱きついてきた。
海の中で密着する私達の体は、水着しか着けていなかった。
私はその事を全く意識していなかった、蘭との関係はそこまで進んでいた。
私と蘭は体の力を抜いて、海面に浮いていた。
海はその大きさと深さを想像できない程、広く穏やかだった。
「船で添い寝して、夜空を見よう」と蘭が満開で微笑んだ。
私も笑顔で頷き、蘭を先導して泳いだ。
私が先に船に上がり、蘭を引き上げてバスタオルを渡した。
蘭は体を拭いて、服を着た後に水着を脱いだ。
私も体を拭いて、腰にバスタオルを巻いて着替えた。
シートを広げると、欄が満開で寝転んだ、私は蘭の首に腕を通して添い寝した。
「成人の日だったら、寒かったね」と夜空を見ながら蘭が囁いた。
『うん、でも空気が澄んでて・・星が凄いんだよ』と私も夜空に囁いた。
「お別れするの?・・どうやるの?自分の中で」静かな優しい蘭の声が響いた。
『お別れはしないよ・・そんなに強くないから。
ただ忘れないって伝える、そして自分の心の別の場所に案内する。
そこには沢山の仲間がいるから、幼くして逝った仲間が笑顔で待ってるから。
物理的に会えなくなった寂しさを、嘆いたりしたら悲しませるから。
俺は和尚の弟子だから、ずっとそう言い聞かされていたから。
それが出来ないのなら、小児病棟に行ったらいけないと。
死が全てを別つのではないと、常に言われていた。
だから俺は自分なりに考えて、次の段階に進んだと思うようにしてる。
次のステップに進んだと、次のステージに上がったんだと。
俺に死別の本当の寂しさを教えてくれたのも。
生きるという事を考えさせてくれたのも。
楽しむ事の大切さを教えてくれたのも。
時間の大切さに気付かせてくれたのも、ヒトミだから。
ヒトミの想いが俺には残ってる、蘭を愛する時も。
ユリカやカスミとの関係も、リンダやマチルダに対する想いも。
俺の行動の全ての問いかけは、最後にヒトミにする。
俺は約束したんだよ、ヒトミが見てると言ったから。
だから全てを見せる・・ヒトミとチサに。
生きるという事の素晴らしさを、他人を愛する事の素晴らしさを。
そして原作者と戦う姿を・・・だから寂しくないんだ。
直接会えなくても・・見てるから。
感じてくれると、信じてるからね』
静寂だけの世界に呟いた、夜空の星を見ながら、蘭の温もりに包まれながら。
「私の弟に対する悲しみに・・いつ気付いたの?」蘭は静かに夜空に囁いた。
『合鍵を渡された時・・あの時の蘭の瞳で感じた、悲しみを背負っていると』と私も静かに答えた。
「そうなんだね・・ありがとう、大切にしてくれて」と蘭が私の方を向き、笑顔で言った。
『俺も嬉しかったよ・・ベンチの話を聞いて、出会った意味すら感じたよ』と笑顔で返した。
「うん・・原作者の粋なシナリオに感謝したよ」と満開に微笑んだ。
『そうだよね~・・俺は皆が言うように、人との出会いだけは運が良いんだよ』と微笑んで返した。
「そうじゃないよ・・あなたが出会いを大切にするからよ。
その心のままに言葉にするからよ、私の時もリンダの時も。
カスミやユリカ姉さんの解放も、ナギサの復活も。
3人娘の成長も・・でもね私が1番凄いと思ってるのは。
ユリさんの変化だよ、今のユリさんを見てると楽しくなるよ。
今夜のあのユリさんの言葉、あれは本気だったよ。
あなただけはユリさんを特別扱いしないって、本心で喜んでた。
私には分ったよ、多分・・大ママもミチルママもユリカ姉さんも。
大ママのあなたに対する想い、私は今夜それに感動したよ。
あなたのシナリオを後押しする、大ママの言葉を聞いていて。
大ママにとってユリさんは特別だから、だからこそ自分の決断を言ったの。
ユリさんを絶望させないと強く言った、あなたの言葉に撃たれたのよ。
あの言葉は・・五天女にも、ミコト姉さんと千鶴姉さんにも強く響いたよ。
そして私にも・・PGの女性全てに、強く響いたよ。
競うことの本質を、あなたが提示してくれるから。
ユリさんの生き方に挑めと教えてくれるから、その頂に挑戦しろと背中を押すから。
私達は常にそうあなたに言われて、最高の時代に生きてる喜びを感じるの。
あなたの今夜の話、それで全てを理解したよ。
あなたはステージを諦めさせない、中途半端に挫折させないんだね。
それがあなたの愛情表現なんだって、全員が分ったと思うよ。
見返りを求めるなと、言われ続けた人間の重い言葉だった。
理子さんが帰る時に私に言ってくれたよ、羨ましいって。
ミコト姉さんも含めて、あの会場にいた全ての人が羨ましいって。
主張を出来る場所があるから、それが羨ましいと言ったよ。
そしてミコト姉さんが言った、私はまたミコト姉さんの凄さを感じたよ。
主張できる状況を作り出してるのは、あなただと言ったから。
あなたはその状況が1番大切だと思ってるって、ミコト姉さんが言ってくれた。
私はその言葉で気付いたよ、PGの変化・・それを支えている物。
あなたのユリさんとの絡み、本気の部分と冗談の部分。
その両方で作り出してるんだね、そして強く言ってるんだね。
主張しろと・・自分の想いを言葉にしろって言ってるんだね。
あのユリさんの言葉のように、自分の言葉で伝えろって。
上手く言えなくていいから言葉にしろって、強くあなたが言ってるんだね。
そして開眼させた、カスミをその世界に連れ出した。
カスミの今の言葉・・本当に素敵だね・・優しさに溢れてるね。
誰かの真似じゃないね・・カスミの心の言葉だね。
そしてユリカ姉さんの変化・・その圧倒的な言葉の力。
私は聞いていて幸せになるよ、ユリカ姉さんの言葉は強く響くから。
だから私は本気になれる、満足を求めないから。
辿り着いた場所にあなたがいて、ニヤニヤしながら次を提示するから。
だからね・・1つだけお願い聞いて」
最後に蘭は私を見ながら、満開ニヤをした。
『何かな~・・怖い』とウルで返した。
「シズカに会わせて・・心が止まらないの、シズカに会いたいの」と蘭が真顔で言った。
『なんだそんな事か、良いよいつでも』と笑顔で返した。
「本当に・・良かった~・・じゃあ明日の夕方、場所はユリカ姉さんの店で」と蘭が夜空に言った。
強く暖かい波動が何度も来た、私はユリカの喜びを感じて嬉しかった。
『了解・・ユリカも喜んでるよ』と笑顔で返した。
「うん、なんとなく感じたよ・・嬉しいな~。
見返りを求めるなって弟に言える、その女性に会ってみたかった。
そしてユリカ姉さんにも、会って欲しかった。
あなたに最大の影響を与えた人を、直接感じて欲しかったの。
私は幼い頃から本当に欲しかったの・・妹、シズカだけが妹になる女性だから。
そしてユリカ姉さんも、妹だと感じられる唯一の存在だと思うから。
私もユリカ姉さんも、完全復活の最後の出会い・・それはシズカだと確信した。
豊君のあの言葉で・・強く優しいあの言葉で」
蘭は夜空の星に強く言った、ユリカに伝えるために。
最大の熱を帯びた喜びの波動に、私と蘭は包まれていた。
「どうやって連絡するの?」と蘭がニヤで聞いた。
『マキに電話するよ・・マキが1番強く伝えるから』と笑顔で返した。
「ねぇ・・マキちゃんも来ないかな~?」と蘭が満開で微笑んだ。
『招待すれば、絶対来るよ・・てかマキは近々PGに来ると思ってるよ』とニヤで返した。
「あの話・・マキちゃん本気だと感じたの?」と蘭が驚いて聞いた。
『本気だよ・・マキは本気じゃない事を、豊兄さんに言ったりしない』と真顔で返した。
「素敵~・・私、本気で嬉しいよ」と蘭が満開になって笑った。
『俺は感じていた・・PGで仕事を初めた時に。
マキがこの場所を見たら、絶対に挑戦するだろうって。
ずっと自立にこだわっているから、俺はそれを肌で感じてきたから。
マキとハルカのコンビ・・いつも想像してたよ。
どんなに素敵な仲間になるのかって、マキが求め続けた物を持ってるから。
ハルカはその強い意志を示すから・・マキは感動するよ。
そして最強のコンビが誕生する・・ハルカとマキ、強い意志で進む者。
俺は想像していた・・そしていつかマキをPGに連れて来ようと思っていた。
マキが豊兄さんに言ったって事は、自分の中で挑戦を決めている。
蘭に出会って感じたんだね、自分の求めてる物が存在するって。
全力を出せる場所と、認めて欲しいと思える人がいる場所を。
俺は本当に楽しみなんだよ、マキがPGを見た時の喜びが想像できるから。
蘭もそう思ってるんだろ・・マキの魅力は感じてるんだから』
私は正直に気持ちを話した、蘭は満開で私を見ていた。
「うん、出会った瞬間に感じたよ・・そして今思ったよ、ハルカの喜ぶ顔が浮かんで来たから」と満開のまま抱きついた。
『じゃあ蘭、俺の提案を聞いて・・俺が今から確認を取るから』とニヤで言った。
「何?何?・・早く~」と蘭が急かせた。
『今からにしないか・・迎えに行ってユリカの家に行こう・・シズカをマチルダに会わせたいから』とニヤで言った。
強烈な波動が来た、喜びに満ちていて了解したと感じた。
「うそ!いいの?・・ユリカ姉さんは?」と蘭が嬉しそうな満開笑顔で言った。
『OKだって・・蘭も良いね?』と笑顔で聞いた。
「もちろん・・最高に嬉しいよ」と蘭が満開で体を起こした。
満開蘭に急かされて、碇を上げて帰路についた。
「当然、私は何度もここに来れるのね?」と蘭が満開笑顔で聞いた、私も笑顔で頷いた。
小船を桟橋に泊めて、マス爺の店に足早に行った。
マス爺に支払って、電話を借りた。
駄菓子屋の婆さんが電話に出て、私は事情聴取を少し受けてマキが代わった。
「どうしたの・・寂しくて、私に会いたくなったね」とマキが言った。
『うん・・今から出れる、シズカを誘って』と返した。
「本当の・・本気で言ってるの?」とマキが嬉しそうな声で言った。
『うん、シズカにもマキにも会わせたい人がいるんだ』と答えた。
「了解・・私も蘭さんに話したい事があった、迎えに来るんだね」とマキが言った。
『うん・・今マス爺の店、タクシーで迎えに行くよ』と返した。
「15分で準備するから・・絶対に来いよ」と言って電話が切れた。
私はマス爺と談笑してる蘭に、【OK】とサインを出した。
蘭の最高の満開が咲いて、マス爺との話に蘭が点火して盛り上がっていた。
私は少し緊張しながら、久々にシズカに会える事が嬉しかった。
ユリカの波動が何度も来て、急かされていると感じていた。
タクシーが来て、マス爺に礼を言って蘭を後に乗せた。
私は前に乗って、駄菓子屋を目指した、蘭のご機嫌は頂点で満開が続いていた。
駄菓子屋が見えた時に、道路に2人の人影が見えた。
久々に見るシズカの笑顔があった、私も笑顔でシズカを見ていた。
タクシーが止まり、ドアが開いた瞬間にシズカが飛び乗り蘭に抱きついた。
蘭も最高の笑顔で、シズカを抱きしめていた、そしてマキが笑顔で乗って出発した。
「蘭さん、ありがとうございます・・小僧がお世話になります」とシズカが顔を上げて言った。
「シズカちゃん・・ありがとう、私は今最高に嬉しいよ」と蘭が青い炎を最大にして微笑んだ。
「もったいない・・この馬鹿にはもったいないです、蘭さんは」とシズカも笑顔になって言った。
「そんな事はないよ・・私には素敵な妹が3人も出来たし、本物の弟もできたから」と蘭が優しく言った。
蘭の瞳の深さに、シズカもマキも嬉しそうに笑っていた。
「小僧・・遅いぞ、なぜ恭子とマキが先に会うのかな~」とニヤで言った。
『身内は恥ずかしいだろ・・思春期だから』と笑顔で返した。
「蘭さん、いつもこうなんですよ・・都合の良い時ばかり、思春期とか反抗期とか使って」と蘭に微笑んだ。
「ね~・・私もそう思うわ・・最後に未熟だってウルウルしたり」と蘭が満開ニヤで言った。
「まだそんな作戦してるのかい、少し成長したと思ったのに」とマキがニヤで言った。
「でも成長したね・・嬉しかったよ、あの豊君の嬉しそうな笑顔の意味が分かったよ」とシズカが優しく言った、私は嬉しかった。
タクシーがユリカのマンションに着いて、蘭が支払い降りた。
「なんか緊張するような、素敵なマンションですね」と蘭の横を歩くシズカが微笑んだ。
「2人に会わせたい人がいるの、小僧を成長させている素敵な人に」と蘭が満開で微笑んだ。
2人とも嬉しそうに笑顔で頷いて、エレベーターに乗った。
「それに・・シズカちゃんにはマチルダに会って欲しかったの、明日ニューヨークに発つから」と蘭が微笑んだ。
「本当ですか、良かった~・・会いたかったんです」とシズカも嬉しそうに笑顔で言った。
エレベーターが着き、ユリカの部屋に歩いていると、ドアが開いてユリカが出てきた。
ユリカの嬉しそうな笑顔を見ていた、シズカもマキもユリカを見ていた。
「よく来てくれました、お待ちしてました」と爽やかに微笑んだ。
「はじめまして、小僧の姉のシズカです、こっちは幼馴染のマキです」と笑顔でシズカが言って、2人で頭を下げた。
「よろしくね、本当に会えて嬉しいわ」と爽やか笑顔で言いながら、部屋に案内した。
リビングに通されて、シズカもマキもその夜景に目を奪われていた。
マチルダは風呂のようで、私はユリカがマチルダに言ってないと思ってニヤしていた。
「紹介しますね・・ユリカさんです」と蘭が満開で言った。
「よろしくね」とユリカが爽やかに微笑んだ。
「よろしくお願いします・・でも驚きました、豊君に聞いてたけど。
実際に会ってみると、本当に凄い透明感ですね。
小僧は幸せな人間ですね、蘭さんに出会えて、ユリカさんに出会えて」
シズカがユリカを見ながら、嬉しそうに微笑んだ。
「本当に素敵な16歳だね、もう一人の恭子ちゃんも想像できますね」とユリカも嬉しそうに返した。
「ユリカさんも、夜のお仕事なんですか?」とマキが真顔で聞いた。
「そうですよ・・今スナックをしてます」と爽やか笑顔で返した。
「マキが凄く興味を持ってて・・挑戦してみたいらしいです」とシズカも真顔で言った。
「本気なら・・絶対に出来るよ、私も小僧と同じ物を感じたよ」と蘭が満開で微笑んだ。
「今度、蘭を尋ねると良いですよ・・私のお店にも3人で遊びに来てね」とユリカが微笑んだ。
「嬉しいです・・蘭さん、よろしくお願いします」とマキが頭を下げた。
「ねぇ提案・・私と蘭には姉さんを付けて呼んで、そうしてほしいな」とユリカが2人に微笑んだ。
シズカもマキも嬉しそうに笑顔で頷いた。
その時洗面所のドアが開き、マチルダが鼻歌混じりで出てきた。
「こら~・・マチルダ、その恰好は何~」と蘭が叫んだ。
マチルダは上半身にバスタオルを巻いて、下半身は下着姿だった。
「え!・・蘭姉さん」と言って、こっちを見て私の存在を確認した。
「旅立つ前に・・エースに最後のサービス」とニヤで言って、慌てて部屋に消えた。
「もう・・アメリカ人は解放的過ぎるよ」と満開で微笑んだ、全員が笑っていた。
「素敵ですね~・・でもエースは言い過ぎですよ」とシズカが言って、マキが笑った。
「女帝と呼ばれる人が命名したのよ」と蘭も嬉しそうに笑顔で返した。
「そういう事は得意ですから・・唯一の才能ですか」とシズカが笑顔で返した。
バタバタとマチルダが服を着て、慌てて出て来た。
シズカが立ち上がり、笑顔でマチルダを見た。
「待って、言わないで・・もしかしてシズカちゃん」とマチルダが輝く笑顔で言った。
「はい、シズカです・・マチルダさん、よろしくお願いします」とシズカが笑顔で頭を下げた。
マチルダはシズカに抱きついて、輝きを増してシズカを見ていた。
「ありがとう・・最後に最高の出会いがあったよ」とマチルダが微笑んで、体を離した。
シズカも笑顔でマチルダを見て、嬉しそうに頷いた。
「お姉さんでも、小僧って呼ぶんだね」と蘭が満開で微笑んだ。
「はい・・小僧も私をシズカって呼捨てにしますから」とニヤで返した。
「それは、線引き的な想いなの?」とユリカが笑顔で聞いた。
「そうですね・・私は人として小僧と接していたいから、ある時に線を引きました」とシズカが真顔で答えた。
「ある時を聞いていいの?」とマチルダが真顔で聞いた。
「はい・・それは、小僧が最初の友を見送った時です。
その時に豊君やマキや恭子の対応を見て、羨ましかったんです。
その直接伝え合う行動が、私は実の姉だから甘えが出るんです。
私にも小僧にも・・だから線引きをしました。
自分の中で・・小僧の事を、キチンと人として接したいと。
この子の最も優れている、伝達方法を自分でも感じたいと思いました。
それから私は小僧と呼んでいます、豊君やマキや恭子と同じ愛情を込めて。
ある意味で・・小僧は私達の、夢を背負っていますから」
シズカの言葉を、ユリカも蘭もマチルダも真剣に聞いていた。
私はシズカが言った、今日からあんたは弟じゃないと言う言葉を思い出していた。
「マキちゃん・・夢を教えて」とユリカが深海の瞳で言った。
「小僧はその才能に自信が持てなかった・・そう私達3人と豊君は感じてました。
小僧がもし真の意味で自分と向き合って、そして自分と和解して。
自分に自信を持てたら・・その姿が見たかったんです。
小僧にしか出来ない事を、常に見せられましたから。
小児病棟と施設の子供達との関係で、その豊を追い続ける強い意志で。
常に命と向き合う、その姿で見せてくれました。
小児病棟の子供の想いを、親のいない子供に伝え。
親のいない子供の想いを、小児病棟の子供に伝えた。
そして双方の子供の強い意志を引き出した、その小僧の姿を見ていました。
皆さんご存知の、ヒトミとの関係。
私達は通夜でヒトミの母親の話を聞いて、帰りに3人で泣きました。
素晴らしい弟を持てた喜びに・・だから成長を願ってました。
そしてミホに対する挫折を知った時に、強く感じました。
そんな事で諦めてほしくないと、小僧と本気で向き合った帰り。
3人とも感じていました、小僧がある意味で私達の夢なんだと。
いつか必ず・・小僧なら・・ミホの笑顔を引き出すと信じています。
この前豊君に、小僧がミホに再挑戦するとい言った時に感じました。
小僧は真の意味で、自分と向き合えたんだと。
蘭さんや、今の小僧を取り巻く人達が教えてくれたんだと。
それで良いんだと、言ってくれたのだと感じました。
私達の夢は・・最後まで諦めないでほしい。
小僧が自分で選んだ道を、諦めないでほしいんです。
常識の外側に存在する、小僧という存在。
その挑戦し続ける姿こそが、私達の見果てぬ夢なんです」
マキは最後に私を見た、その真剣な眼差しで感じていた。
シズカとマキと恭子の想いを、窓に映る夜の大淀川に映像が映った。
ベッドに座るミホが、夜空を見ていた・・寂しそうな瞳に胸が締め付けられた。
必ず会いに行くよと誓って、映像を切った。
「本当に素晴らしい・・どうしたら、どうやったら16歳でそこまで行けるの?」とユリカが言った。
「1つ年上に、圧倒的存在がいましたから・・嘘や言い訳を絶対に許さない本物が」とシズカが真顔で答えた。
「そうなんだね・・あの背中をずっと見て来たんだね」とマチルダが微笑んだ。
「はい・・全てを意志と行動で教えられました、冷めていたら駄目なんだと」とマキも笑顔で言った。
「マキちゃん・・もう1度聞くね、本気で挑戦してみたいの?」とユリカが深海の瞳で聞いた。
「はい・・そう強く思っています」とマキは即答した。
「蘭・・ユリ姉さんの喜ぶ顔が見えるね」とユリカが蘭に微笑んだ。
「はい、ユリさんとハルカの喜びが、今から楽しみですね」と蘭が満開で返した。
「ユリさんという人が、最高峰にいらっしゃるんですね」とマキが笑顔で聞いた。
「そうよ・・会えば分る、そして決断を迫られるよ」と蘭が真顔で言った。
「大丈夫です・・蘭姉さんに出会って、今夜ユリカ姉さんに出会ったから・・迷いはないです」とマキが真剣に返した。
「マキちゃん・・高校は?」とマチルダが聞いた。
「今は通信制で、お昼にアルバイトをしてます」と笑顔で答えた。
「それなら・・すぐにでも来れるの?」と蘭が驚いて言った。
「はい・・誰も反対はしませんから、小僧が親父さんの許可を取って、夜街に残れるのなら」と言って私を見た。
『了解マキ、許可を必ず取るよ・・俺はマキなら絶対に出来ると信じてるよ』と笑顔で返した。
「いつ面接に来れる?」と蘭が満開で微笑んだ。
「明日の夕方、お伺いしたいんですけど」とマキも微笑んで返した。
「それなら私のお店においで、私がユリさんに紹介して、あなたの身元保証人になるから」とユリカが爽やかに微笑んだ。
「いいんですか?」とマキが驚いて言った。
「もちろん、ただ覚えていてね・・あなたの保証人は私だという事を」とユリカが深海の瞳で言った。
「ありがとうございます・・絶対に汚さないように頑張ります」とマキが深々と頭を下げた。
蘭の満開の笑顔と、マチルダの優しい笑顔と、シズカの嬉しそうな笑顔が見ていた。
マキの瞳には迷いは無かった、私は嬉しさを感じていた。
蘭の満開の笑顔を見ていた、その背景の夜景にヒトミの笑顔を感じながら。
私はマチルダとの別れを感じて、寂しさと闘っていた。
エミのあの開宴の言葉が無かったら、辛い感情でいたと思う。
ユリカが保証人だという事の意味を、マキはPGに入って実感する。
そして最後まで、ユリカの名前を汚すことはなかった。
情熱の舞台に、最後のピースが揃う日が迫っていた。
シオンのデビュー後にマキがサインを繋ぐ、そしマキが大きな影響を与える。
久美子に・・限界トリオを憧れていた久美子が、マキと触合い感じていく。
情熱の表現の方法を、マキがその生き方で見せる。
魂の演奏に強い熱が加わり、久美子は燃え上がる。
その演奏が後押しする・・PGの夏は永遠に続くのだと。
灼熱の12月を連れて来る、魂の音が木霊する。
そして開花する時もすぐそこに来ていた・・ハルカがその存在を主張する。
その強い意志で・・大輪の蕾を見せる。
薔薇と満開の微笑みに包まれた・・大輪が開花を迎えようとしていた。