幻想の満足
晩夏の夕暮れが近付いて、西向きの窓に映る空が紅に染まっていた。
大きな天使の声が響いていた、天使の最高の祝福を受けて。
どんなに幼くても意志はあるのだと、そう主張していた。
私は帰ると言う理子を誘って、カレーを振舞っていた。
ミクをミコトが抱いて円の中に座った、全員の笑顔にミクが囲まれていた。
「ミクの何と最初に会話したの?」と理子が笑顔で聞いた。
『瞳・・かな』と照れて答えた。
「かなって言う感じの事なのね」と理子に微笑んで返された。
『うん、意識したら難しくなるんだよ・・引き出そうとしたら駄目なんだろうね』と笑顔で返した。
「凄い勉強になるんだけど、ミコトに聞いて半信半疑で来たの」と嬉しそうに笑った。
『半信半疑で良いですよ、俺も自信有る事じゃないから』と返した。
「自信持って良いんじゃないの・・少なくとも私は信じるよ」と優しく微笑んだ。
『ありがとう・・しかし美人姉妹ですね、てか双子みたい』と笑顔で言った。
「双子よ・・ミク産む前はもっと似てたよ」と理子がニヤで言った。
『やっぱり・・お互いの事、離れてても分ったりします?』と笑顔で聞いた。
「大きな事があると、なんとなく感じる程度よ」と少し考えて言った。
『そっか~・・何かを分け合った感じはないのかな~?』と興味津々光線を発射した。
「そんなんじゃないね~、表裏一体って感じかな・・ミコトが私のもう1つの人生みたいな」と理子が真顔で答えた。
『表裏一体・・なんとなく分る気がします』と笑顔で返した。
私はユリカの妹を想って聞いていた、多分私の側に居るであろう妹の存在を意識しながら。
理子が食べ終わり、円になって話している場所に誘った。
理子をユリカの隣に座らせて、全員に紹介した。
『ミコトのお姉さんの、理子さんです・・双子ちゃんらしいです』と笑顔で言った。
「双子なんですか!」とユリカが少し驚いて、理子に微笑んだ。
「はい・・性格はかなり違いますけど」と理子が笑顔で返した。
2人が笑顔で話し出したので、私は蘭とカスミの間に入った。
「豊君・・奥さんとは幼馴染なの?」とカスミが輝きニヤで聞いた。
「はい・・物心付いた時からの」と豊が照れた笑顔で返した。
「素敵な子よ~・・もう一人のマキちゃんも素敵だったし」と蘭がカスミに満開ニヤで言った。
「恭子・マキ・シズカで限界トリオですよね・・憧れましたよ」と久美子が豊に微笑んだ。
「限界トリオ・・その称号は誰の命名なのかな~」と蘭が私に満開ニヤを出した。
「蘭さん正解です、もちろん小僧が命名しました」と豊が笑った。
「理由を述べよ」とカスミが不敵で聞いた。
『小学生から見れば・・どう見ても限界を超えてたから』とニヤで返した。
「マキが蘭さん見て、この仕事に凄く興味持ってましたよ」と豊が笑顔で言った。
「やる時は、絶対にPGに来てもらいます」と蘭も満開で微笑んだ。
「凄いんだ~・・いよいよ下の世代の話が出たね」とミサキがハルカに笑顔で言った。
「うん・・でも蘭姉さんのあの顔は、怖い気がする」とハルカがニヤで言った。
「怖いですよ~、マキは女子にも圧倒的人気がありますから」と豊が微笑んだ。
「だよね~・・私でも年上にいたら憧れるな~」と蘭が満開で微笑んだ。
「マキちゃん愛情表現が最高なの、私感動したよ」とマチルダが笑顔で言って、私に対するマキの挨拶の話をした。
「蘭・・夜を選んだら、必ずPGに引っ張ってね」ユリさんが薔薇で微笑んだ。
「任せて下さい・・問題はシズカちゃんだね~」と蘭が私に最強満開ニヤで言った。
「シズカがお姉さんなんだ~」とカスミも最大不敵で私を見た。
『普通です・・ごく普通』と私も笑顔で返した。
「豊君から見たら・・限界トリオはどんな感じなの?」と蘭が豊に聞いた。
「不思議ですね~・・確かにあの3人が幼馴染なのは奇跡でしょうね。
まぁ普通に見れば、不良少女っぽいですから。
なんせ納得出来ない校則は守りませんから、それによる罰を受けていました。
三者三様で個性も違いますね、別にベタベタと一緒にいるわけじゃないです。
恭子が1番家庭的には恵まれていたでしょう、父親は刑事で後妻さんも素敵な人だから。
でも俺を選んで・・その覚悟の証として、高校にも行きませんでした。
マキは家庭の事情で祖母と暮らしています、多分1番自立を目指していますね。
自分に厳しい子です、カスミさんに凄く近い感じですね。
自分の決めた事に対して、真摯に向き合える人間です。
その自分への厳しさが、優しさを作りだしたような。
小僧に対する時が1番出ますね、マキにとって小僧は特別ですから。
マチルダさんが感動したと言った、あの挨拶にしてもそうです。
溢れ出す感情を直接伝える、その方法を小僧が教えました。
マキはどこかで自分を抑えていました、その感情を小僧が引きずり出した。
1対1の真剣勝負で、マキの感情を強引に出しました。
今のマキは自分に従順です、だから蘭さんを見た時に本当に喜びました。
小僧が巡り合い探しだしたと、シズカに泣きながら言っていました。
そして噂のシズカ・・常に矛盾と戦う子です。
私にとっては3人の中で、唯一妹と思える存在です。
その姿勢は常に全体を見ている、面で見て点で捕らえる。
今の小僧に1番影響を与えているのは、私より圧倒的にシズカでしょう。
成績優秀でスポーツ万能でありながら、それを全く大事な事としない。
小僧の頑固親父ですら、シズカが○○高校に合格した時に言いました。
後は好きにやってみろと、退学しようが何しようが構わんと言ったそうです。
限界トリオの中心はシズカですね、その生きる姿勢が方向を間違えさせなかった。
さっきのリヤカーの話で、私に相談してきた子が出頭する時に、3人が同行しました。
そしてシズカが恭子の親父に言った、この子をこれ以上傷つけるなと。
話したくない事を強引に聞きだすなと、それにより俺が少年院に行く事になってもと。
そう堂々と言ったそうです、恭子の目の前で。
どれだけの信頼関係があれば言えるのかと、恭子の親父は嬉しそうに言っていました。
小僧がミホと引き離された時に、寺の本堂で限界トリオ3人で小僧を袋叩きにしました。
小僧に悲しむ事も、後悔する事も、まして諦める事も、させないために。
本当に愛情に溢れた暴挙でした、小僧は肉体的にボロボロに打ちのめされた。
だから心はミホから離れなかった、あの限界トリオの愛情が止めた。
立てなくなった小僧に姉のシズカが言った、悔しかったら立ち上がり挑戦しろと。
ミホにいつか挑戦しろと、それが自分達とヒトミの願いだと言いました。
多分帰り道で3人は泣いたでしょう、悔しくて泣いたでしょう。
小僧の悔しさを直接感じたから、それを感じ自分達の想いを伝える為の行為でした。
その方法が小僧に1番響くと知っていたから、本気で向き合いました。
3人が無償の愛で接し続ける限り、小僧も愛に対して見返りを求めないでしょう。
見返りを求めるな、シズカの心を表した言葉です。
シズカは小僧に対して、常にこれだけを言っていました。
多分シズカがこの世の中で、小僧を1番理解してるでしょう。
俺も和尚も今本当に楽しみにしています、蘭さんを見た時のシズカの喜びを。
そして今の小僧を見た時の、シズカの喜びを感じているから」
豊は私を見ていた、私には豊からのエールだと思っていた。
ミホに再挑戦する私に、その想いを伝えてくれたのだと感じていた。
「見返りを求めるな・・素敵ですね」と蘭が満開で微笑んだ。
「この仕事をしてると、常に向き合わされる事だね・・見返りを求められるから」とミコトが真顔で静かに言った。
「聞きましょうか・・そろそろ、あの言葉の本質を」とユリさんが私に薔薇で微笑んだ。
「そうですね~・・私からもお願い、ずっと気になってた」とマチルダも微笑んだ。
「話さないといけなくなったね、今のマチルダの頼みなら」と蘭も満開で微笑んだ。
円が大きく1つになった、私の隣にエミが笑顔で座った。
「何の話でしょう?」と大ママが笑顔で聞いた。
「エースがカスミちゃんに、満足とは金で買う物の事だと言った言葉・・その真意です」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ほほう、小僧そこまで行ったか・・カスミ良かったの~」と和尚が笑顔で言った、カスミも笑顔で頷いた。
「エースお願い、その真意を教えて」とカスミが輝きながら笑顔で言った。
『そんなに深い意味はないよ・・でも俺はPGに来て思った事がある。
さっきのミコトの言葉、この夜の仕事は見返りを求められるって。
確かにそれは大きく有るよね、お客は常に見返りを求める。
費やした金と時間に対する見返り、女性達はそれに苦しむ。
それが需要と供給だと誤解する、俺は見返りは需要じゃないと思ってるから。
俺はさっき言ったみたいに、権力者に貸付を目論んで見ていたから気付いた。
金持ちになった人の充足感の無さに、それに驚いていたんだよ。
豪邸に住んで、高級車に乗って、美味いもの食べても充足感が無い。
それで色々考えた、もちろん弱味を探すためだったけど。
なぜ充足感が無いんだろうって、そしたら気付いたんだ。
それが目標じゃなかったから、志した時に目標にしてなかったからじゃないかと。
そしてPGに来て、その考えが半分正解で半分間違っていると思った。
外で酒を飲む一部の男達の目的が理解出来なかった、まぁ俺がガキなんだろうけど。
供給側は楽しい時間を提供しようと必死で、確かにギリギリの夢は見せるけど。
客はそれ以上を要求してしまう、そんな行為が目的ならそんな店に行けばいいのに。
多分・・純粋に愛情を持っている人もいるんでしょう、一握りだろうけど。
ほとんどはハンティング感覚、だから拒絶される事を極度に恐れる。
でも店側はそれが商売だから、簡単に拒絶は出来ない。
ハンターはそれに甘えてる、拒絶出来ない事を逆手に取って。
自分は金と時間を使っていると、だからその分の見返りをくれと言う。
でもそれは供給出来ない、その線は越えてはいけない。
見返りを求める心に愛情は無い、ただ欲の充足を得たいだけ。
それが俺には許容範囲の外だった、今でもそうだけど理解出来ない。
確かに夜の女性に向けられる、偏見は有ると感じる。
だから俺も考えた、夜の女性達に1つの提案を。
見返りを求める心に対抗する、俺の考え出した作戦。
それをあの言葉でカスミに言ったんだよ、カスミは響くと感じてるから。
自分自身が費やした金や時間の、見返りを求めない心だと言いたかった。
金で買った物でしか満足出来ないんじゃない、満足は求める事じゃないと思ってる。
満足したと思ってる人は誤解している、ただ単に不満じゃないという事なのに。
カスミがあの時に言った言葉、俺が全員満足しない世界を作ってるって言ったね。
俺は嬉しかった、カスミの変化を感じたから。
カスミと最初にドライブした時、俺は正直に答えたけど驚いていた。
カスミの外見を見て、それにより内面を見てくれないと言った事が。
そしてカスミの恐怖を気付かなかった、それを聞いて又驚いたんだよ。
福岡に向かいながら色々考えてたんだ、そして初めてカスミの内側を見たのは。
あの飛行機で手を繋いだ時だった、その温度の揺れで恐怖が伝わった。
俺は今からの事が怖いのか、飛行機が怖いのか分らなかった。
そして相手に会った時に感じた、カスミはこの男を本気で愛したのかと思ったんだ。
俺は分らなくてずっと考えていた、そして帰りの飛行機で分った。
カスミが飛行機が怖かったんだと分って、カスミがなぜあの相手に決めたのか。
カスミはその時、疲れ果ててたんだよね、だから安定を求めた。
東京でのアイドルデビューの話まで蹴って、安定に賭けたんだって思ったんだよ。
鉄が飛ぶかって言った、カスミの瞳で感じた。
カスミは永い時間をかけて、完璧に準備しても最後に飛べないんだって。
カスミは常に努力を怠らない、その継続する強さを持っている。
でも最終目的地が自分でも分らないから、継続に疑問を持つんだって。
これでいい・・これで充分だと思う世界を探しているから。
だから疲れ果て行き詰まり、逃げ出したくなるんじゃないかって思ったんだよ。
最後の一歩が踏出せない、それはその場所に怖さを感じるから。
努力して辿り着いた世界が、満足できない世界である事に恐怖を感じてるから。
揺れる温度でそう感じたよ、そしてカスミを俺の1つの理想にしようと決めた。
俺は全て同じだと思ったんだ、裕福になっても充足感の無い人々。
費やした金と時間の見返りを求める人、そして継続する事に疑問を持つのも。
それは満足したいって思う気持ちが、作らせるんじゃないかって。
人は幸せになれても満足は出来ない、満足ってのは遥か高い場所にあるから。
理想を掲げた先にしかないから、どんなに経済的に成功しても届かない。
俺はリンダに会って感じた、生きる目的は理想の果てにあるんだって。
俺は世界に一人でも餓えてる子供がいるのなら、心は絶対に満足はしない。
継続する事に疑問を持たない、求めるのは理想であって満足じゃないから。
成功者になりたいとか、権力者になりたいとか・・そんな事は目的じゃない。
なってどうするのか、そこから何をするのかが目的だと思う。
美しくなって、輝いて・・その後に何を残すのか。
どう生きるのか・・それが見たいんだよ、カスミのその時が。
満足を求めないで欲しい、そうする事はあの馬鹿な客と同じ行為だから。
俺は常に問われている・・今でもヒトミに、それからどう生きるのかと。
満足は出来ないけど、納得できる終焉を迎えたいと思っている。
俺は今そう思ってるんだよ・・エミ』
最後は私の隣に座る強い瞳のエミに言った、エミは笑顔になって頷いた。
「うん・・良く分ったよ、チャッピー先生」とエミは強い瞳で言った、私は嬉しくて笑顔で返した。
「繋がるんだ・・全部繋がるんだな」とカスミが真顔で言った。
「カスミ・・楽しめば良いんじゃよ、まだまだこれからじゃよ小僧の戦略は」と和尚が笑った。
「和尚、小僧の戦略って?」とキングが笑顔で聞いた。
「知りたければ、ワシを水曜の夜に誘ってくれ・・満足などから最も遠い者を見に来よう」と和尚がシワシワニヤで言った。
「そう言う事だから、ユリ予約よろしく」とキングが笑顔で言った、ユリさんが薔薇で頷いた。
全員がユリカを見ていた、ユリカは深海の瞳で微笑んでいた。
「しかし小僧・・幸せじゃの、蘭に出会えてエミちゃんに出会えたんじゃから」と和尚が言った。
「全てはエミに伝えたいんだね・・それが最終目標なんだね~」と大ママが微笑んだ。
「私達を見てるって言った、もう1つの意味はエミが見てるって、言いたかったんだね」とハルカが笑顔で言った。
「俺も和尚と同じ感想です、小僧にとって捜し求めていた下の世代・・エミちゃんはその代表でしょうね」と豊がエミに微笑んだ、エミも嬉しそうに笑顔で返した。
「どうやって考えるの?・・その発想の方法が知りたい」とマチルダが私に微笑んだ。
「それは私も知りたいね~・・お願い」と蘭が満開で微笑んだ。
『別に特別じゃないよ・・ただ常に思った事を言葉にする。
誰も居ない所で、言葉にして自分で聞いて確認する。
瞑想もそうだけど、言葉にして確認しないと自信が持てないから。
俺は思ってるんだ、言葉に出来ない想いが大切なんだって。
ユリカの存在が教えてくれた、自分を誤魔化していたら忘れてしまうんだって。
当然、言葉に出来ない事も沢山あるよね。
特に夜の仕事をしてると、その部分が大きく成りがちなんだよ。
言葉にしないと、人は忘れてしまう。
だからこそ自分自身に確認させる、自分の想いを言葉にして自分に伝える。
蘭のように・・蘭は本当に心に従順なんだよ、心に常に問いかけるから。
だから一瞬で、相手の寂しさや悲しみを溶かせるんだね。
俺はシナリオを書いている、自分自身で確認しながら。
それは原作者に悟られないように、ユリカに隠したい部分を悟られないように。
理想の形を大まかに決めて、必要な事を考える。
それに自分の出来る事と、望む事を組み込む。
そしてゴールを目指さない、過程を楽しむんだよ。
走り出したら、状況は変るから・・理想とするゴールも修正する。
配役を勝手に決めて、全員が主役の物語を観る感覚。
俺がやるのは、舞台を諦めさせない・・途中で降ろさせない。
納得して舞台を降りて、次のステージに上がって欲しいから。
一人一人の忘れがちな理想を、思い出して欲しいから。
言葉にしなくて忘れてしまった、その本質を感じて欲しいから。
瞳の奥に残ってる理想、自分が求める世界を諦めてほしくない。
自分を否定したり、悲しみや寂しさに溺れないように。
俺は四季を見て常に感動してる、四季は夜街でトップクラスに存在してる。
でもその目標がブレない、金を稼ぐ事が最終目標じゃない。
夢と理想を追い求める、その姿に感動するんだ。
四季が卒業する時に、俺は絶対に泣くよ。
そして感謝する・・大切な事を見せてくれたと感じるから。
4人が各々追い求める世界に、踏出す背中を見送る時に。
あの空港でリンダの背中を見送った、あの気持ちが蘇ると思う。
前に進むとは何かを、その背中が教えてくれるから。
海に向かい機首を持ち上げた、あの青空に叫んだ言葉を。
四季の送別会でも叫ぶよ、感謝を込めて・・心から。
俺は関わった以上、途中棄権は許さない。
ここにいるメンバーには・・もちろんリアンでもユリカでも。
それが俺の4人娘に見せたい事だから、夜の女の背中を見て成長する。
エミ・ミサ・レイカ・マリア・・その可能性が俺の夢だから。
だから・・絶対にユリさんを絶望させない、ユリさんの存在を守り抜く。
俺の夜街に対する考え方の基軸・・ユリの生き方に挑めと誘い続ける。
美しさを身につけた・・その後の生き方を見せて欲しい。
俺はそれだけが望みだから、その楽しみの為に戦略を練っている。
見送る時に・・心から泣けるように、感謝できるように。
笑顔で・・背中を押せるようになりたいから』
静寂の中、蘭が満開の笑顔で私を見ていた。
私は想いのままを言葉にした、自分で感じていた、言葉が心を追い越したと。
「悪い事ばかりする中学生じゃない・・私はずっと見てるよ、エースの生き方を」とエミが少女の輝きで笑った。
私には最高の言葉だった、エミの強い瞳の言葉が響いていた。
晩夏の空は紅を飲込み、夜が支配を強めていた。
ユリカの深海の静寂を感じて、私は次のステップを意識していた。
自分のレベルを上げないと、絶対に到達出来ないと確信しながら。
頭の中で考えた、あるシステムを作り上げる為に。
ジンの提案を楽しむ為に、自分は完全に踏出して外に出ようと思っていた。
理解されなくて良い・・蘭だけが信じてくれるならと強く思った。
夏物語の終演を感じながら、大きな夢を追いかけていた・・少年のままで。
マチルダの送別会であるこの宴会で、私は感情の制御が出来ていなかった。
マチルダに魅せられていた、その強い意志に惹かれていた。
そしてジンに蘭が提案した事が、私の心を躍らせていた。
取組むべき物を与えられて、次なる目標設定が出来ていた。
私の未熟な想いは、全て4人娘に対する想いだったのだろう。
4人が各々違う道を進んだ、エミの強い意志に影響を受けながら。
そして誰も夜の仕事を選ばなかった、しかし私は17年後に巡り会う。
30歳の私の前に現れる、純白の少女・・【未来】を背負う者・・ミク。
その決断は憧れから始まっていた、ミコトのDNAを強く受け継ぎ成長した。
最新型の白い少女が見せる・・【未来】
私は源氏名を本名の【未来】のままにして、読み方だけミライにした。
ミクは時代の葛藤の中に凛として立った、不況も夜街離れも鼻で笑った。
バブル崩壊後の夜街の方向性を示した、ハルカ・ミサキコンビに正面から挑んだ。
【激情の女王 ミク】・・時代の転換期に登場する女神。
その白い心が指し示した未来・・それは今に繋がったね。
ミクとの出会いを書きながら、原作者に感謝してたよ。
あの白い心を、私に三度提示してくれた事を。
ミク・・決断は必要無いよ・・心のままに進みなさい。
東京で成功することが、ミクの目的じゃないだろう。
東京NO1と認められた、今を目指したんじゃないだろう。
俺の想いは今日書いたよ、ミクの質問の答えはこの中にある。
包み込む白い温もり、崩壊が産んだ新しい感性・・常識を壊す微笑み。
認められる事を拒否し続ける者・・【未来】と表記される名前。
ミライと書いて・・ミク。