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偽りの銃弾

夏の日の午後遠い国から来た、緑の瞳が伝えていた。

その経験に裏打ちされる、時の代償で得た言葉を。


「アメリカは世界中に、その価値観を押し付けています。

 その奥底に眠る闇を抱えたまま、正義だと主張する。

 アメリカの最も大きな間違い、それは力に頼りすぎる事です。

 強いものが正しいという考え、正しければ何をやっても良いという考え。

 私は幼少期、日本で育ちましたから、違和感をずっと背負ってきました。

 アメリカは価値を作り出しています、無機質な物に価値を付ける。

 石油も宝石も価値が有ると煽り続ける、そして価値を下げる行為に対し力を見せる。

 自国は銃社会を脱却しようともしない、国民は危険を常に感じて生きている。

 平和とは程遠い国なのです、そしてそれを望まない国なのです。

 理想を掲げ平和を望む者は、闇から闇に消えていく。

 アメリカの軍事産業は、その使用場所を探し続けるでしょう。

 不良少年が喧嘩相手を探すように、理由を作り出すでしょう。

 アメリカは素晴らしい国です、確かに夢もあります。

 しかし影の部分も感じて欲しい、見る聞くに惑わされずに感じて欲しい。

 冷戦が終わった後のアメリカの歩み、それがアメリカの未来を提示するでしょう。

 どんなに言い訳しても、核兵器を唯一使用した国として、責任を負わねばなりません。

 あの使用は大量殺戮だったと、アメリカが認めなければならない。

 アメリカが精神的にも成長して、本当の民主主義を培う国になって欲しい。

 私もリンダもアメリカが好きだから、世界平和を実現出来るのもアメリカだけだから。

 リンダの祖父も父も、経済的な成功者です。

 そして平和を唱えた・・リンダの両親は強盗に殺されました。

 その犯人は捕まっていません、リンダが2歳の時だったそうです。

 リンダは莫大な財産を相続して、祖母と2人で生活していました。

 祖母が亡くなる時に、リンダは聞いたそうです。

 両親が亡くなった時に、忘れろと電話があったそうです。

 そうすれば娘のリンダは生きていけると、祖母に脅迫があった。

 リンダの根底に流れてる物は、敗北を認めない心です。

 そして世界中の子供達に、少しでも人間らしい生活を提供したいという心です。

 リンダは自らの幸せを、そこに見つけました。

 天才と言われ莫大な財産を所有してなお、満たされない心。

 満足などを絶対にしない、そして絶対に諦めない・・それがリンダです。

 私はこの2年間、沢山の国に行きました。

 そして感じました、人間の幸せとは何だろうかと。

 劣悪な環境にいる子供達の瞳にも、輝きは存在します。

 それを現実の生活が奪っていきます、産まれながらの兵士はいません。

 全ては大人達が作り上げた、その光無き瞳。

 アメリカの見せる豊かさに、踊らされる人々。

 西欧諸国は貴族社会が今でも強く存在する、それが文化だと主張する。

 人種と宗教と国に過剰に反応する、守る事だけに全てを費やす。

 世界はこれから狭く感じるでしょう、移動手段も通信手段も発達して。

 その時に感じて欲しいんです、惑わされずに心で感じて欲しい。

 自分が求めるのは何なのか、生きる目的は何なのかを。

 エミちゃんの言葉が、私にはずっと響いています。

 どうして人は石油に依存するのかと、問いかけられた言葉。

 探してみようね、そして理由が無いならば・・それは必要の無い物です。

 人間の故郷、地球という星が生命の源であって欲しい。

 進歩とは幸せに続くものであると信じたい。

 いつの日か、言語も肌の色も宗教も・・主義主張さえ超越して。

 本当の平和が訪れると信じています、人間なら出来ると信じています。

 リンダの心の闘いに、いつか終止符が打たれると思って。

 私も伝え続けます、真実を語れる人間でいたいと思っています。

 エミちゃんありがとう、私は必ずこの場所に帰ります。

 ここが私の帰る場所だから、素敵な仲間が待っているから。

 沢山のお話しをお土産に、必ず帰ります。

 皆さんの笑顔を感じながら、ピンクのリュックを抱えて。

 本日はありがとうございました」


マチルダの強い意志を乗せた言葉が、大きな空間に響いていた。

マチルダはあえて、世界の悲惨な現実を避けた。

それはこの旅の経験からだと、後に私は聞いた。

焦ってはいけないと感じていたと、本当に心に問いかけるなら。

その信頼関係を構築しないといけないと、感じていたと言った。


全員が拍手をして、マチルダが笑顔で頭を下げた。

「マチルダ・・アメリカの妖怪達は、何が望みだと思うの?」とユリカが真顔で聞いた。


「彼等は地位も名誉も金も手に入れてますね、今更物欲も無いのでしょう。

 だからゲームがしたい、人間が生死を賭ける時の表情が見たい。

 それを安全な場所から見ることが、最高の贅沢だと思ってるような。

 最近はそうじゃないかと、感じています」


マチルダも真顔で返した、静寂の中緑の瞳が発光していた。


「ケネディ暗殺は、ウォーレン委員会の報告で終止符を強引に打ちましたね。

 暗殺の最大の理由は何だと感じますか、アメリカの国民はどう感じたのかしら?」


ユリさんが美しい真顔でマチルダを見て、マチルダも深い瞳で頷いた。


「リンダの友人に、無名のジャーナリストがいます。

 その人が暗殺事件を追っていました、無名でも圧力は凄かったらしいです。

 ケネディ兄弟は、アメリカを取り巻く全ての利権に対して強行でした。

 その腐敗を許さない心と、平和を求める心に、妖怪達は恐怖を感じたのでしょう。

 キューバ危機の対応も、鉄鋼・石油諸々の業界に対する対応も。

 そしてマフィアに対する強固な意志も、全てが相手の心を震わせましたね。

 CIAとFBIも、味方だとは言えませんでした。

 大統領選挙も始まる時期で、全てが複合的に絡んだと思います。

 アメリカ国民は、違和感を感じながら、陰謀だと思っていますね。

 ウォーレン委員会の報告書は、多分時が経てば国民は忘れると思って出しています。

 そしてその証拠資料等全ての公開を、2039年まで出さないとされました。

 関与した全員が、確実に死んだ後ですね。

 1つだけ言える事実は、オズワルドの単独犯行じゃないと言う事です。

 オズワルド自身が関わったかも、疑問の大きく残る所ですが。

 絶対に単独犯行じゃないですね、しかし報告書は偽りの銃弾を容認した。。

 たとえオズワルドが魔法の銃弾を撃っていても、一人での犯行は不可能です。

 なにしろ捜査機関も信用できないですから、謎のままに終わりそうですね。

 そのジャーナリストが言っていました、キーワードはニクソンだと」


マチルダの真剣な緑の瞳が、何かを発していた。

そしてエミがその真髄を見せる、その強い瞳で問いかける。


「マチルダ・・世界は狭くなるの?

 そうだよね・・移動手段は進歩するだろうし、通信手段もそうなる。

 そうなれば情報を隔離されてるような国の人も、世界を知るようになるの?

 その時にどうするんだろう、その国の人達は。

 エースが言った不公平な世の中だから、人は進歩してきたんだろうけど。

 原作者がいるのなら、そのシナリオに私達は抵抗できるのかな~」


エミはマチルダを強い瞳で見ながら言った、マチルダは輝く笑顔をエミに向けた。


「エミ・・今、マンガや小説に出てるような物が、絶対に出てくるよ。

 リンダは投資してるの、その未来に必要な研究に。

 リンダの家には、科学を志す若い人が沢山来るのよ。

 そして夢を語り合う、その未来図を語り合うのよ。

 エミが大人になった頃には、電話は一人一台持って歩くでしょう。

 そして何処からでも、世界に繋がるようになるはず。

 そして根本的に変える、コンピューターが世界を繋ぐわ。

 一人一台所有して、世界中の今が映像で見れるようになる。

 その頃には車は石油で走らないでしょう、その未来はすぐそこに来てる。

 情報統制が出来ない新時代が、だからこそ肌で感じて欲しいの。

 その場所に立って、空気も匂いも全て感じて欲しいの。

 そうすれば、原作者のシナリオに対抗できるかもしれない。

 だから1つ提案します、ここに居る全ての人が旅をする時に。

 ニューヨークに来たい時は、リンダの家を宿泊先に提供します。

 遠慮は全くいりません、部屋も30近く有りますから。

 連絡先を書いておきます、管理人のご夫婦が常にいますから。

 リンダも大歓迎しますよ、旅人が大好きですから。

 エミ・・世界を感じてね、エミが大学に合格したら。

 私がエミをニューヨークに招待するわ。

 必ず迎えに来るよ、それまで今の調子で頑張って」


マチルダの招待に、エミはブルっと震えてマチルダを見た。

「ありがとう、マチルダ・・最高」と少女の笑顔で言った。

「マチルダ・・一人ニヤニヤが止まらない奴がいるんだけど」と蘭が満開で私を見た。

私は慌てて真顔を作ったが、ニヤニヤが止まらなかった。

「蘭姉さん、そ奴はどんなに縛っても無理でしょう・・リンダはエースの部屋を作ってますよ」と輝きニヤで言った。

『ありがとう、マチルダ・・最高』と可愛く微笑んでみた。

「可愛くない、気持ち悪い・・今度リンダに会ったら、私の部屋も作ってもらうから」と蘭が満開不敵で言った。

『別々の部屋なの?』と蘭にウルウルで言った。

「当然です・・アメリカのナイスガイと、お知り合いになるんだから~」と最強満開ニヤで言った。


「今の方が良い見たいね・・エース」とエミが可愛い不敵を出した。

『エミ・・今・・不敵した、不敵をしたの?』と私はウルでエミを見た、エミは不敵継続で見ていた。

「あ~・・カスミ、どうしてくれるんだい・・だからカスミを雇うの躊躇したのよ」とサクラさんがニヤで言った、全員が笑顔になった。

「えっ・・いや・・多分エースの浮気性が原因だと」とカスミが慌てて返した。

「エース浮気性なの?蘭ちゃんに捨てられたら、私が拾ってあげようと思ってたのに」とエミが不敵全開で言った。

『浮気性じゃないよ・・その時はエミが拾ってね』とウルウルで言った。


「サクラさん・・あんな戯言、言ってますよ」とカスミが最強不敵を出した。

「一生抱っこしてもらえるから、良いかも~」とサクラさんが蘭にニヤで言った。

「ごめんねエミ・・そんな事にはならないから」と蘭がエミに満開で微笑んだ。

「うん、良かった~・・良かったねエース」と輝く少女の笑顔で言った。

『うん、ありがとう・・エミ』と笑顔で返した、少女の輝きを見ながら。

「レイカちゃんも、不敵出すようになるのね・・楽しみ~」とセリカが笑顔で言った。

「セリカ、やめて・・千鶴さんとマユ姉さん怖いから」とカスミがウルで返した。

「カスミ・・今差別したでしょ、マユだけ姉さん付けて、26は姉さんじゃないのね~」とミコトが余裕ニヤで言った。


「いえ・・ミコトさんと千鶴さんは、高い位置にいるからです」とカスミが美しい微笑で返した。

「カスミ、私とユリカを呼んでごらん」とリアンが最強獄炎ニカで言った。

「えっ!・・・リアン姉さん・ユリカ姉さん」とカスミが小さな声で言った、全員がニヤニヤしていた。

「仕方がないわ、リアン・・私達は低い位置にいるんだから」とユリカが爽やかニヤを出した。

「やっぱり・・1番怖いのは、ユリカ姉さんだ」とカスミが俯いて呟いた。

全員が笑っていた、カスミも照れ笑いをしていた。


『銀河はミコトと千鶴は姉さんと呼ばないと、2人は張り合いがないんだよ』と私が助け舟を出した。

「そう言う事よ、本気でこの世界で生きるんでしょ」とミコトが微笑んだ、銀河の3人が真顔で頷いた。

「誰かさんは大ママとユリさん以外、全員呼捨てだけどね~」蘭が満開で微笑んだ。

「なんせ自分で獲得してるからね~」とリアンが獄炎で私を見た。

『親近感の表れですよ』とニヤで返した。


「ねえエース、1つ聞きたいんだけど・・リンダとの瞳での会話、英語じゃなかったの?」と千秋が言った。

「それは私も思った・・どうなんだろうって?」とユメが微笑んだ。

全員の視線を感じて、私は話した。


『表現が難しいけど・・言語的区別は無いよ。

 例えばマリアが本気で伝えたい事は理解できるし。

 俺は表現出来ないから、自分の中では原始の伝達方法って言ってる。

 言語が確立したのは、いつの時代かなんて知らないけど。

 その前も伝達方法は有ったはず、イルカを見ると凄く感じるよ。

 もちろん犬や猫だって、お互いに伝達してるよね。

 その多くの感情を表現するのに、言語が生まれ発達したんだろうね。

 でも産まれたばかりの乳児は、言語を持たないけど伝達してるよ。

 とても強く伝えてくる、それが人間の本来の姿だからかな。

 誰でも出来るし難しくないよ、乳児と真剣に向き合えばね。

 瞳でも鼓動でも温度でも、強く伝えてくるよ。

 羊水の中で伝わっていたから、母の鼓動と温度の揺れが伝わっていたからね。

 自分を空にして向き合うんだよ、そうすると響いてくるから。

 それが自分の子供なら絶対に理解できる、子供は発しているからね。

 それは言語じゃないよ、人間の記憶の奥にある物だろうね。

 リンダの瞳もそれだったよ、強い表現だった』


私は思ったままを言葉にした、笑顔に囲まれながら。

「エース的には、言葉の早い子と遅い子の差は何だと思うの?」とマチルダが聞いた。


『必要に迫られるかどうかじゃないのかな~、だから語りかけ方が大事と思うね。

 絶対に言葉をかけるのは大切だけど、その時に自分で納得したらいけないよね。

 伝えたいという気持ちにさせるのが、大切だと思うから。

 語りかけるけ時に、子供の瞳を見て伝えてと心で言うんだよ。

 それだけで良いんだよ、自分で勝手に相手の心を作らない。

 どうなに小さい命でも、伝えたいんだから。

 この母親は何を伝えても駄目だと思えば、言葉は遅れるよね。

 大人だってそうでしょ、伝わらない相手と会話したくないでしょ。

 同じだよ、私はこんなに語りかけてるのに、言葉が遅いと悩むなら。

 まずは自分の事を考えてみないと、子供は常に伝えたいんだから』


私はある乳児を思い出しながら、静かに話した。


「なるほどね~、説得力があるね・・エースお願い、今度会ってほしい子供がいるんだけど」とミコトが真顔で言った。

『もちろん良いけど、過度の期待をしないでね・・何も出来ないよ』と笑顔で返した。

「ありがとう、お願いね」とミコトも美しく微笑んだ。

「小僧はある乳児の言葉を理解した、医師と母親はそれを奇跡だと言ったよの~」と和尚が笑顔で言った。

「俺、あれは怖かったよ、小僧が自信たっぷりに言うから」と豊も笑顔で言った。

「いけない人達ね~、そんな話を2人だけで持ってて」と蘭が豊に満開で微笑んだ。

「小僧は自分に照れやだから、豊君にお願いしたいな~」とカスミがニヤで言った。


「あれは小僧がミホに挑戦してる時、ある乳児が産婦人科から来た。

 原因不明で常に微熱があり、泣いてばかりの生後3週目の女の子。

 検査をするのに小児科に来た、その子の母親が疲れ果てていて。

 産後だし旦那さんは仕事が忙しくて、病院にあまり来れないみたいで。

 それで泣いているその子を、小僧が抱いていたんです。

 ミホの病室や遊戯室で、不思議に小僧が抱くと泣き止んで。

 母親も小僧に頼っていました、春休みでしたね桜が満開で。

 検査をすると医師が来た時に、小僧が聞くんです。

 何を検査するの?って笑顔で、医師が微熱の原因を探すんだよと言った。

 小僧はその子を静かに見ていた、その子が少し泣いて笑顔になった。

 お尻が痛いんだって中のほうみたい、小僧がそう言ったんですよ。

 医師も母親も固まって、婦長がそんな小さい子も分るのと笑顔で言った。

 半信半疑で調べたら、お尻の中に出来物が有ったらしいです。

 まさか乳児にそんな物が有るとは、思って無かったんですね。

 すぐに薬で処置して、微熱は下がりました。

 母親が感動して、どうして分ったのと小僧に聞いたら。

 教えてくれたよ、お尻が痛いって泣いてたよ、ウンチ出る時痛いって。

 小僧は笑顔でそう言ったんです、いとも簡単に言ってのけたんですよ。

 言葉を知る由も無い乳児の伝えてきた、何かを理解したんですね。

 それからこっそり産婦人科の看護婦が、小僧を呼びに来るようになった。

 アイスやお菓子で小僧を釣って、連れ出して行きました。

 小僧は相当の乳児の通訳をしたんでしょう、小僧が学校を卒業した時には。

 産婦人科の沢山の看護婦さんも、お別れに来ました。

 小僧にとっては普通の事で、特別視されるのを嫌いました。

 婦長が言っていたのを、俺は覚えています。

 小僧は特別じゃない、覚えているのだろうと、人間が言葉を持つ前の事を。

 ヒトミが気付かせた、その伝達方法を理解出来たのだからと。

 俺はその言葉で納得しました、奇跡などじゃないと思ってたから」


豊は笑顔で伝えた、ミコトの視線の強さを感じていた。

「なら・・どうしてミホちゃんは分らないの?」とミコトが聞いた。


『ミホはある事情で、完全に閉ざしている。

 自分を守るために、全ての表現を遮断してるんだよ。

 俺も初めて会った、そこまで人は遮断出来るのかと思ったんだよ。

 それは病気でも障害でもなくて、自分の強い意思で遮断している。

 医学では多分どうしようもない、その恐怖を取り除かない限り遮断し続ける。

 俺は夜街を経験して、強く想うようになったよ。

 人は何度でもやり直せると、時間が最も大切だと教えられた。

 だからミホにどうしても会いたい、今なら言ってやれるから。

 怖くないよと、手を繋いでやれるから。

 もう言い訳はしない、やれるまでやる・・諦めない。

 俺にはそれしか出来ないから』


私は自分に言い聞かせていた、強く自分に言って少し落ち着いた。

夏の日が時を刻んでいた、その一瞬一瞬を大切に生きれない自分を感じていた。

覚悟の足りなさを実感していた、ミホと向き合えるのかと自問自答しながら。

あの何も寄せ付けない、ミホにもう1度最初からやれるのかと。

蘭が強く腕を組み、満開で微笑んで私を見た。

その時に感じた、全てを壊す強い気持ちが必要だと。


黄昏の遠い夏の日の午後、大勢の女性の笑顔で充電されていた。

情熱のフロアーに座っていた、青い炎で守られながら。


マチルダの招待に皆感激していた、私もワクワクが止まらなかった。


マチルダのエミに言った約束、マチルダはお迎えは果たせなかった。


エミが東京の医大に合格した時に、航空券が送られてきた。


差出人不明だったが、ニューヨーク往復の航空券だった。


エミは久美子を頼りに、一人でニューヨークのリンダの家を訪ねる。


そして強い瞳で帰って来た、それからも努力を惜しむ事は無かった。


リンダとマチルダとユリカに恥じぬように、必死で医学に取組んでいた。


その後、研ぎ澄まされた感性で、世界を巡る医師にまでなるのだ。


私がリンダの家を訪ねたのは、20歳の時だった。


管理人の年配のご夫婦と、久美子が出迎えてくれた。


私は大きなリビングの、暖炉の上に飾られているメッセージを見た。


涙に滲み強く書き殴った、その文字が強い言葉を示していた。


その横にユリカを挟んでリンダとマチルダの、3人の笑顔の写真が有った。


久美子がサマータイムを弾いてくれた、私にはリンダと踊った時が映像で流れた。


マチルダと見たイルカも、そしてユリカに出会った時も美しい映像で。


私は寂しくなかった・・出会えたのだから。


それだけで、充分幸せだと感じていた。


美しく成長した、23歳の久美子の・・魂の演奏を聴きながら・・。




 

 


 



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