Matilda
静寂の中に大きな円が出来ていた、集いし人々は暖かな時間を楽しんでいた。
私は豊の事実を知り、その強さに再び触れて、嬉しかった。
病院でA子を託された時の、豊の静かな瞳を思い出していた。
静寂の中に涙と微笑が広がっていた、美しい女性達に囲まれていた。
「和尚様、ありがとうございます・・真実に触れて嬉しかったです」と久美子が可愛く微笑んだ。
「私も嬉しかった・・エースの脚色部分最高だね」とミサキが笑って。
「まったく、あんな脚色入れるとは・・面白すぎるぞ」とジンが笑った。
私は照れた笑顔で返していた、暖かい時間が流れていた。
小さな個々の円ができて、各々話し始めた。
私は豊か兄さんに、ケイコを紹介した。
『豊兄さん、昨日のからまれていた・・ケイコです』と耳元にささやいた、豊はそれで理解したようだった。
「ケイコです、よろしくね」とケイコが可愛く微笑んで、2人で話し始めた。
私が蘭の横に座ると、千鶴と銀河とシオンとセリカが来た。
蘭は酒もかなり入って千鶴と和解して、ご機嫌満開が咲いていた。
「蘭姉さん・・火曜日から、週2でお世話になります」とホノカが華麗に微笑んだ。
「嬉しいね~・・ホノカちゃん遠慮なくやってね」と蘭が満開で返した。
『ホノカ・・水曜日も出勤になったよ、ユリカ光臨だよ』とニヤで言った。
全員が私を見た、私はニコちゃんで返した。
「本当に!・・ユリカ」とサクラさんが、ユリカを見た。
「はい・・大ママにミサキの了解を取りましたから、ただしエースに条件付きですけど」と爽やかに微笑んだ。
「条件は何だい?」とアイさんが、ユリカに聞いた。
「エースがその日に、お父様と和解して・・蘭と暮す許可を得ることです」とユリカが爽やか二ヤで言った。
「和尚様・・今の条件どう思います?」とアイさんが聞いた。
「皆・・小僧が親父と喧嘩して、家出しちょるから誤解があるかもしれんが。
小僧と親父は別に確執がある訳じゃない、まぁ親父は頑固一徹じゃが。
お互い意地っ張りだから衝突するんじゃの~、小僧も引かんし。
小僧の親父は素晴らしい人間じゃよ、小僧が小児科に通うのも黙認していた。
今この状況でも、迎えに来ないしの~。
ようは小僧次第じゃよ、小僧が向き合えば分かり合える。
今の小僧なら大丈夫じゃろう、何が大切か分かっておるから」
和尚は笑顔でそう言った、蘭が私を満開で見た、私も蘭を見て頷いた。
「小児病棟は・・寂しがってるんじゃないの?」とセリカが言った。
『小学生までと決めていたから、院長と俺の約束で・・中学になると難しくなるんだよ』と真顔で返した。
「どうして?」と千鶴が美しい真顔で聞いた。
『俺が思春期に入るから、女の子もいるから・・嫌がる人もいるからね』と真顔で返した。
「そうか~・・残念な話ね、入院してる子供たちにとって」と千鶴も真顔で言った、私も千鶴に真顔で頷いた。
「エース・・月曜なんて言わないで、今日・・今教えて、私に依頼したい事」と千鶴が強く言った。
『千鶴・・良いのか?皆の前で』と真顔で返した。
「もちろん・・私にもその方が良いよ」と強い瞳で千鶴が言った。
『俺が小児病棟に行っていた、小3の時・・・・』私はヒトミとミホの話をした。
『俺は幼いという言い訳を自分に使った、今の自分じゃどうしようもないと。
俺はミホの件で、院長に呼ばれて話した・・院長はできた人だから。
その時小児病棟にカズオという男の子がいて、俺は仲良しだった。
寝たきりのカズオは、俺以外と交信出来なかったから。
カズオの両親と、他の入院患者の父母が院長にかけあっていた。
俺が来なくなるような事にしないでほしいと、院長のはそれで俺と話した。
院長の息子はミホの保護者である、祖父母を説得して転院させていた。
院長も保護者の祖父母と話したが、説得出来なかったんだよ。
俺はミホの事で絶望してて、小児病棟に行くのを考えていた。
でも・・カズオや他の友達がいたから、やめなかったんだ。
そして・・豊兄さんに言われる、自分に言い訳をするなと。
今出来ないなら、出来るように成長しろと言われて・・考えたんだよ。
そして考え出した答えの1つが、貸付なんだよ。
権力者に貸付ける・・どんな方法を使っても。
それは最終的にミホに会う為に、もう1度ミホに挑戦する為に。
俺の最初の貸付けは、その院長にした。
そして俺は通い続ける、小児病棟に・・それに対して院長の息子は逃げる。
取り巻きだけを残して、別の病院を経験すると言い訳して。
俺はミホの今いる病院までは調べた、でも最終段階が難しい。
保護者である祖父母を説得出来るのは、その息子だけだから。
千鶴・・誤解しないでね、それの為に千鶴に近付いたんじゃないよ。
俺はセリカが気になって、そしてゴールドを知ったんだよ。
その最新型が集まる場所に、興味を持ったんだよ。
そして知った・・千鶴の事を、その歴史も。
本心は千鶴に頼みたくない、辛い思いをするんじゃないかって思うから。
でも俺があの馬鹿息子と話し合いを持つには、千鶴しか頼む相手はいないんだよ。
千鶴・・絶対に嫌なら断ってね、俺の勝手なお願いだから』
千鶴の美しい顔を見ながら、真剣に伝えた。
「エース・・分ってるよ、そんな目的で近付いたんじゃないって。
たとえそうであっても、マユとセリカとケイコの事だけでも十分だよ。
OKエース・・私は嬉しいんだよ、あんたの力になれるのが。
最後の挑戦者が頼んでくれた事が、それが蘭の為にもなる事が。
私とあの男は、もう何も無いから・・エースの好きにやっていいよ。
強引にいきなよ、気の弱いお坊ちゃまだから。
そしてミホちゃんに挑戦して、私達に見せてね。
本当の愛情と奇跡を・・最後の挑戦者の称号の意味を。
夜街で経験した事を・・その経験で成長した姿を。
エミちゃんの開宴の挨拶、心に響いたよ・・素敵な言葉だった。
どんな状況で言ったのか分らなかったけど、最高だったよ。
私が必ず会わせてあげる・・どんな手を使ってでも向き合わす。
それが私の意志だからね、あの馬鹿は説得なんてしなくて良いよ。
何も響かないから・・大丈夫、自分の事しか考えてない奴だから。
エースにかかれば、蛇に睨まれた蛙だよ」
千鶴が最後に美しく微笑んだ、私も笑顔で頷いた。
「千鶴さんありがとう、お礼にケイコちゃんの足枷を外して来ます」と豊が笑顔で言って、ユリさんと電話をするのに受付に歩いた。
「エース・・ありがとう、後は前だけを見て頑張るね」とケイコが微笑んだ。
『よかったね、ケイコ・・頑張って』と笑顔で返した。
「よし・・ケイコ、来月にはデビューだよ」と千鶴が美しく微笑んだ。
「はい・・必ずご期待に応えます」とケイコが可愛い笑顔で返した。
「千鶴姉さん・・源氏名頼んだらどうですか、エースに」と蘭が満開で微笑んだ。
「うそ!・・エース頼めるかな~」と千鶴が笑顔で言った。
『了解・・考えておくよ』と笑顔で返した。
「良いな~ケイコ・・私面倒で車の名前にしたから」とセリカが微笑んだ、ケイコが笑顔で返した。
「車の名前だったのか!それにしては、良い源氏名だよ」とリョウが涼しく微笑んだ。
「私・・自分で選んだけど、カスミだよ」とカスミも不敵を出した。
「カスミ姉さん・・どうしてカスミを選んだんですか?」とセリカが笑顔で聞いた。
カスミは考えて、多分意味など無かったんだろう、ウルで私を見て。
「自分で言うのは恥ずかしいな~、エースお願い」と不敵で振ってきた。
『セリカ・・カスミは絶対に霞んだりしないから。
その輝きで主張するから、だから自分にカスミって名前を背負わせたんだよ。
常に上を目指して行くという、意志を示す為に。
霞んだり留まったりしないように、その挑戦を決めた気持ちを忘れないように。
自分に戒めとして、選んだ名前・・それがカスミなんだよ』
私は笑顔でセリカの流星の輝きを見ながら言った、セリカも笑顔で頷いた。
「まぁそんなとこだよ、自分じゃ言うの照れるんだよ」とカスミも微笑んだ。
「カスミ、今感動して必死に覚えてるでしょ」とホノカが華麗ニヤで言った。
「そんな事ないよ・・ホノカの命名由来はなんだよ」とカスミが不敵全開で言った。
「ミチルママが・・本当に素敵な香りは、ほのかに香るって言ったから・・ホノカにしたの」と華麗に微笑んだ。
「リョウは?」とカスミがリョウに不敵を出した。
「お婆ちゃんの名前、大好きだったから」とリョウとは思えぬ可愛い笑顔で言った。
「なんか意外だな・・その笑顔やめろ、気持ち悪い」とカスミが不敵で言った、リョウが可愛い笑顔を継続していた。
「源氏名って大切なんだよな~、第一印象のイメージがね~」とカスミが感慨深げに言った。
「カスミ・・それは源氏名に関係あるの、カスミの第一印象」と蘭が満開ニヤで言った。
「ありますよ、百合・桜・蘭・花の王道・・私はかすみ草、引き立て役」と不敵ウルで言った。
「引き立て役と言う言葉が、これほどマッチしない女もいないな~」リアンが突っ込んだ。
「リアン姉さん・・私、意外と引き立て役なんですよ」とカスミが輝きながら微笑んだ。
「その発言は、誰の技を盗んだの?」とユリカが爽やかニヤを出した。
「ハルカ」とカスミが小声で照れた。
「カスミ・・ハルカからも盗んでるのか、何かが大きく間違ってるけど」とリアンが獄炎ニカで言った。
「リアンを盗んだ時の、カスミが楽しみだね~」とユリカが爽やかニヤで言った。
「それは怖い・・大きく間違って盗むから」と蘭が満開で笑って、全員で笑った。
「大ママ・・ユリカは今、最高の状態だと思いますか?」とリアンが聞いた。
「間違いなくそうだろうね、私やミコトでも見た事ないユリカだろうね」と大ママが微笑んだ。
「自分とユリカ姉さんを比べたら駄目だよ、違う世界にいるから」とミコトが余裕で微笑んだ。
「ユリカ姉さんが座った瞬間に感じる、お客もそして自分も・・仕事中に幸せを感じるよ」とナギサが華やかに微笑んだ。
「あの時以上のユリカ姉さんか~、皆で見に来ようね」と千鶴が言った、マユもセリカもケイコも笑顔で頷いた。
私は3時が近くなり、TVルームに4人娘を迎えに行った。
4人は仲良く遊んでいた、私を見て全員で笑顔になった。
フロアーの子供用の丸テーブルに座らせて、エミと2人でケーキを取りに行った。
小さく4つ切って、エミがジュースを4人分用意して戻った。
4人の嬉しそうに食べる姿を見ていた、宴会の方は笑い声に溢れていた。
マダムと松さんとユリさんに、千鶴とマユが来た。
「ケイコちゃんがデビューするから・・これからはレイカちゃん、夜ここで大丈夫?」と千鶴がレイカに微笑んだ。
「うん、大丈夫だよ」とレイカが可愛く笑った。
「お願いできますか、本人も言ってますから」と千鶴が真顔で頭を下げた。
「大丈夫じゃよ、うちには松と久美子にエースもおるから」とマダムが微笑んだ。
「マリアも、エミちゃんとミサちゃんが来ない時に、寂しくなくて良かったね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
千鶴とマユが嬉しそうに頭を下げてお礼をしていた、私は楽しそうなレイカを見ていた。
「そろそろ、マチルダにお願いしようと思ってるんだけど」とカスミと美冬が来た。
『そうだね、円をもう1度1つにしようよ』と笑顔で返した。
「エミ・・ワシと松で3人見てるから、お前はマチルダの話を聞け」とマダムがエミに微笑んだ。
「私達には後でエミが教えてくれよ、頼むね」と松さんも笑顔で言った。
「うん、ありがとう」とエミも少女の笑顔で返した。
大きな円が出来はじめ、マダムと松さんと3人娘を見送った。
私はエミを抱いて、マチルダの横に座った。
「お集まりの皆さん、マチルダの話を聞いて下さい。
マチルダはリンダの話と、自分で見て感じた話を世界中で伝えています。
それは100人に話せば、一人には響くかもしれない。
その一人一人の輪が段々と大きくなって、いつか波になるという気持ちでいます。
世界の今を知りましょう、マチルダは感じたままを嘘偽りなく話してくれるから。
マチルダ・・お願いします」
美冬が笑顔でマチルダに言った、マチルダも笑顔で頷いた。
「ありがとう美冬・・そしてこの機会を与えられた事を、心から感謝します。
私はリンダという女性に、2年前の18歳の時に知り合いました。
その当時の私は、自分の祖国である東ドイツに想いを馳せていました。
私の父は戦時中に新聞記者をしていました、もちろんナチスの管理下の。
若い私の父は、そのあまりに強引なやり方に、嫌気をさしていたそうです。
そして目の当たりにするのです、ユダヤ人に対する迫害を。
父はドイツの将来に絶望して、そんな話を結婚前の母と話していました。
その時、父に同盟国の日本に、記者として行く話しがあり父は受けました。
父は東洋に興味があって、日本語を勉強していたからでしょう。
父は母と18歳同士で結婚して、船に乗るのです。
戦火の激しい中、私の父と母は日本に辿り着きました。
そして終戦を日本で迎えます、父と母はGHQに捕まり尋問されたそうです。
しかしその尋問が人権を重んじるもので、父は感動したといってました。
父はドイツに帰るかと言われ、日本に残りたいと言ったそうです。
父はドイツ語・英語・フランス語・スペイン語そして日本語が堪能だった。
父が尋問の時に、公然とナチスを批判したのが認められました。
日本語の通訳の数の少なさもあって、アメリカ本国より父に提案がありました。
日本語の通訳としてGHQが雇うのです、日本に対してはアメリカ人として。
その後、父の仕事が認められ、アメリカの市民権を得ます。
日本では何不自由ない生活をさせてもらえました、そして私が産まれます。
私は東京産まれです、エースの歳まで東京に住んでいました。
それからアメリカに両親と渡り、父はドイツとの仕事に入りました。
アメリカに渡る時に、家族3人で西ドイツに行きました。
父も母も、あのベルリンを分断する壁を、西ドイツ側から見て号泣しました。
父と母の親も親戚も東ドイツにいます、もちろん連絡もできません。
下手に連絡すると、相手に恐ろしい事があるからです。
私は心からその壁を怨みました、両親の本当の悲しみに触れたから。
私が10歳の誕生日に、一通のメッセージがカードが届きました。
出張先の西ドイツから、父が贈ってくれたメッセージ。
その英語の文字は涙で滲んでいます、そして震える字で書いてあります。
父はその時、終戦後初めてドイツの地を踏んでいました。
そのメッセージにはこう書いてあります、叫びのような文字で。
【壁を越えろマチルダ・・それだけが望みだ】と強く書いてあります。
2年前、私はニューヨークで、西洋の歴史を専行する女子大生でした。
その時に父と母を不慮の車の事故で、同時に失いました。
葬儀まで必死に出して、3日後にどうしようもない喪失感に襲われました。
私はアメリカで孤独を感じて、会った事のない祖父や祖母を想っていました
雪の降るニューヨークを彷徨い、疲れ果てて公園のベンチに座っていました。
写真さえ一枚も無い、祖父や祖母や親戚達の事を考えていました。
寒い夜でした、そこが治安の悪い地域だと知っていました。
私はそんな事はどうでもよくて、空虚な気持ちで座っていました。
その時一台の車が止まって、ブロンドの女性が駆け寄って抱きしめてくれました。
リンダでした、リンダは私を強く抱きしめて言いました。
私を手伝ってと言って、家に連れて帰り暖かい食事を出してくれました。
そして翌日私はリンダに話をします、父と母の事を。
そしてリンダに一言だけ言われます、私の目を見て強い言葉で言われました。
【人には祖国など無い・・有るのは地球という故郷の星だけだ】
そう言って抱きしめてくれました、私は本当に嬉しかった。
心で壁を越える方法を、リンダが教えてくれました。
それから私は両親と暮らしたマンションを引き払い、リンダの家に住んでいます。
リンダの手助けがしたくて、その感性に触れていたくて。
リンダの話は次回にでもします、今日は泣かずに話したいから。
今日何の話にしようかと、色々考えました。
世界中には一日に何千・何万という子供達が、生命の危機に晒されています。
雑誌や新聞、そしてTVも事実を伝えるとは限りません。
どうしても強い力が働くから、愛の無い脚色をされています。
和尚様が言われた、アメリカは常に戦争を求めている。
その言葉は事実です、そしてエースが言ったアメリカに憧れると。
だから今日はリンダと私が感じる、今のアメリカについて話します、
夢と自由の国と言われるアメリカ本当の姿、その暗い裏側。
アメリカの闇を表現する事件、それはJ・F・ケネディ暗殺事件です。
あの犯人をオズワルド一人に擦り付け、その不可能な犯行を堂々と報告した国。
そして関わったとされる人々の死、闇から闇に葬り続ける意志。
その虚実に何も言わない、マスコミ・有識者等々、皆自分が葬られるのを恐れます。
アメリカの意志は、大統領でも国民でもないと言っています。
独裁国家とある意味では同じです、その国を動かす一握りの妖怪達。
そして大きく強く成り過ぎた組織、その意志が大統領暗殺も作り出す。
幼稚な話しで終わらせる、それで納得しろと国民に言う。
ケネディ暗殺事件は国民に違和感を与えました、その違和感は抜けないでしょう。
アメリカは確かに自由かもしれません、でも差別意識は強い。
肌の色に敏感に反応したり、産まれた場所にこだわったり。
移民の国なのに、少数派を受入れない空気もあります。
どこか閉鎖的なのに、夢に輝く部分しか発信しないマスコミ。
事実と真実・・凄く響きました、だからお話しします。
リンダと私の感じた、アメリカという国を」
マチルダは強い瞳で話していた、静寂のフロアーに響いていた。
マチルダの話は続く、私は勉強の足りなさを痛感していた。
ケネディ暗殺自体は知っていたが、犯人のオズワルドの犯行だと思っていた。
私はその後調べて驚く、その稚拙なシナリオに驚愕した。
それを堂々と国民に報告した、国家機関の陰謀を主張した報告書。
マチルダの大切にしていた、父親からのメッセージ。
私は19歳でベルリンの壁を、蘭と見に行った。
その壁を見て圧倒的違和感を感じ失望した。
人間の心に失望しそうだった、同じ言語で話す国民を分断する壁を見て。
もちろん歴史的建造物も、あのユダヤ人の悪夢の場所も訪れた。
その時の私は、リンダとマチルダとユリカの幻影を追いかけていた。
私が18歳で経験した喪失感に対して、ユリさんが上京を勧めた。
私は上京し六本木PGを起動に乗せた、だが喪失感は拭えて無かった。
そして選んだ旅先、どうしても見たかったベルリンの壁。
私の暗い瞑想を切り裂いてくれる、明るい声が響いてきた。
観光ガイドを必死に見て私を手招きする、蘭の満開の笑顔だけが支えだった。
私は笑顔で返して駆け寄った、壁を見る蘭の瞳はあの主張をしていた。
【必要無い物は・・無くなる】と最強の青い炎で主張していた。
私と蘭はベルリンの壁の向こう、東ドイツの夜空に浮かぶ月を見ていた。
「マチルダ~」と蘭が大声で叫んだ、その深い瞳で月に叫んだ。
私も月に叫んでいた、その愛しい名前を。
私は満開の蘭と腕を組んで、レンガ通りを歩いた。
暖かい波動と・・青い炎に包まれて・・。