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Yurika Dream

8月も終わりが近づく夏の深夜、人混みを見下ろす天空の要塞。

女神達の夜会は続く、想いを伝えるために。

見送らねばならぬ、友に伝えるために。


私はマチルダが映像に侵入してきた事に、喜びを感じていた。

マチルダを近くに感じたから、どんなに離れていても想いは届くと感じたから。

「ユリ姉さん、魅宴が変化を始めました・・ミコトがそれを望みました」とユリカが真顔で言った。

「そうですか・・時代は常に要求しますね、需要に対する供給ですから」と薔薇で微笑んだ。

「はい、ミコトの出した答えは・・2面性らしいですよ」と爽やかに微笑んだ。


「それが確立されれば、魅宴は安定しますね。

 ミコトが持つ素質は類まれなものです、大ママがその源氏名に込めた想い。

 ミコトは夜街で美しく生きて、美しく去るのでしょうね。

 今26歳・・女性として心も体も、最も華やかな時代を謳歌して。

 ミコトの託すバトンは、夜街の全てに対する提示でしょう。

 あのミコトが夜の仕事を選んだのが、私は奇跡に感じます。

 私は今まで2人だけに、その奇跡を感じました、ユリカとミコトの2人に。

 夜の仕事を純粋に仕事として選んだ女性は、この2人だけですね。

 ミコトは有名大学で経済を学んでいます、就職先は幾らでも有ったでしょう。

 初めて紹介された時、私はミコトに聞きました。

 なぜ夜の仕事を選んだのかと、ミコトは即答しましたよ。

 人と関わる仕事が最高の仕事だと感じたから、接客業がしたかったと。

 女性の地位向上という言葉が、世間で言われているが違和感を感じると。

 本当の自由とは、違う場所にあるような気がすると。

 この夜の世界は実力が全てだから、そして女の世界だから。

 夜街で自分は誰かに認められたいと、その誰かを探してみたいと言いました。

 私は感動して聞いていました、その熱い心が輝いて見えました。

 そしてミコトは出会ってしまう、ユリカという絶対的存在に。

 ミコトが自ら選択して、挑んだ世界に存在したのですね。

 ミコトの経験も知識の中にも無い、範囲外の存在・・圧倒的ユリカ。

 蘭・カスミ・・1つだけ教えておきます。

 ユリカの魅宴の時の裏称号・・【夜の掟 ユリカ】と呼ばれていました。

 それほどまでに別世界に存在しました、ユリカの接客は想像の外にあります。

 ユリカはダイヤです、最高硬度のダイヤはダイヤじゃないと傷つかない。

 その心が求め続ける物は、自分を壊すほどの存在です。

 エースの言った、ユリカを生身の華奢な女性としか見れない。

 素晴らしい表現でした、本質に近づいていますね。

 ユリカに好意を持つ男性では、誰もそこまで行けなかった。

 感じて欲しいユリカの本当の力、傷つくことを恐れない強さ。 

 生きていれば人は傷つきます、その時が最も大切な時だから。

 恐れないで欲しい、最後まで自分を信じて欲しいのです。

 そして謳歌してほしい、女性として最も大切な時期を。

 過去に囚われるのでなく、忘れ去るのでもなく。

 全てを背負って歩いてほしい、その傷がいつか優しさに変るから。

 自分を探す旅は諦めないで、リンダやマチルダのように。

 私は蘭にもカスミにも、出会えて本当に良かったと感じています。

 そして今・・感じています、最高の時代に生きていると。

 ユリカを感じなさい、ミコトが追い求めた世界。

 必ずヒントが隠されています、自分らしく生きるヒントが」


静寂の中、ユリさんが流れるように伝えた。

蘭もカスミもマチルダも、強い瞳で聞いていた。

そしてユリカが圧倒的静けさの中にいた、静寂を連れていた。

私はその深海の瞳に、ユリカの集中を感じていた。

常人では到底辿り着けない、その心の集中を見ていた。


「お願い・・Yurika Dreamを、話せる範囲で教えて」と蘭が真顔で言った、青い炎が溢れていた。

「それは私からも、お願いしたい」とカスミも輝く真剣な瞳で言って、マチルダも真顔で頷いた。

私は何よりも、ユリさんの厳しい瞳に押された。

その瞳が伝えなさいと言っていた、私のユリカに対する想いを。


『Yurika Dream・・。

 ユリカの夢は何なのだろう?

 ユリカは体の小さな女性である。

 華奢な体に可愛い顔が印象的な、少女の香りを強く残す容姿である。

 しかし外見に惑わされてはいけない、ユリカの内面に拡がるのは・・海。

 その深さは計り知れない、その本質は輝く深海にある。

 ユリカの心の花は、断崖に囲まれた絶海の孤島に凛と咲く。

 ユリカの出生の秘密を知ると、常人では届かないと感じる。

 人生最大の覚悟を細胞の時にした、そしてそれに耐えたのだ。

 それによりユリカは力を得たのかもしれない、しかしその力が自らを苦しめる。

 常人なら壊れていたであろう、その力が自分をも壊しただろう。

 しかしユリカは壊れない、産まれた意味を知っているから。

 ユリカの産まれた意味、それは・・【生きる】なのだと感じる。

 最も純粋で、最も大切なその事自体が・・ユリカの存在だと感じている。

 人は何かを成し遂げる為に、産まれたのだろうか?

 この星の先住民の動物達は、産まれた意味に純粋である。

 【生きる】という産まれた意味に・・生きて生命を繋いぐという事に。

 人はどこかで忘れてしまう、その本来の目的を見失う。

 ユリカは忘れない・・だからこそ、その行為に対し真摯である。

 ユリカが感じている、その行為の拒絶・・当然の事である。

 ユリカの産まれた意味からすれば、簡単には出来ないであろう。

 生命を繋ぐ行為に対し、ユリカは敏感である。

 人としての本来の姿を持つ、透明な色彩に彩られる女神。

 強く色として主張する透明、他を映し出す色。

 あなたの色はこれよと、微笑んで見せてくれる。

 私は誇りに感じている、ユリカに隠し事が出来ない人間に選ばれた事を。

 隠す物など何もないと、強く主張できる事を。

 ユリカが見せる羊水の揺り篭、そこに響いてくる母の子守唄。

 なぜ人はそれに乗ると救われるのか、簡単な事なのだ。

 生きる本来の意味を、思い出させてくれるから。

 自らの真の純粋の時を、感じさせてくれるから。

 生きる過程での悩みや後悔など、他愛もない事だと教えてくれる。

 人がいつか尋ねたい場所、記憶には無いが忘れえぬ場所。

 羊水の世界・・その圧倒的安心感。

 そして歌ってくれる・・唯一の望みは産まれて生きる事だと。

 誰にでも存在する・・母が教える、生きてほしいと。 

 ユリカの求めるもの・・その本質に迫りたい。

 だから俺は潜ろう、その深海の奥深くにある輝きを目指して。

 ユリカが私に贈ってくれた、最高の称号・・最後の挑戦者として。

 いつかユリカの背中を、輝く深海で感じたい。

 羊水の揺り篭、そこに響いた母の子守唄。

 最高にして完璧な者・・透明の女神・・ユリカ。

 俺にとって、ユリかとは・・・永遠に忘れえぬ者である。

 俺のユリカに対する唯一の望みは・・これだけである。

 俺の愛を永遠に読んでね・・ユリカ』


感情的な自分を感じながら、心に書き綴った物を言葉にした。

蘭が強く抱いてくれた、ユリさんの薔薇の微笑が見ていた。

カスミとマチルダの輝く涙が、私を包んでくれた。

そして蘭が体を離し、満開笑顔で私をユリカの方に押した。


私は俯いて泣いている、ユリカを抱きしめた。

ユリカも強く抱きしめてくれた、ユリカの次なる変化を感じていた。

そのユリカの温もりに、ユリカに限界は無いと感じていた。


「私が夜の世界から引退する最後の日に、Kasumi Dreamを聞かせてね」とカスミが涙を流して言った。

『了解・・カスミ・・頑張れよ』と静かに言った、感情を制御するのに必死だった。

「Maria Dreamは、どこまでも続くんですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

私は制御が効かない事を感じながら、ユリさんの潤む薔薇の瞳を見ていた。


『Maria Dream・・。

 私はマリアが2歳の時に出会った、その笑顔に驚愕した。

 まさに天使の笑顔だった、それはマリアの内面から溢れ出る物だった。

 幼いマリアは言葉での伝達が出来ない、しかし強い意志を持っていた。

 そして圧倒的伝達方法を知っていたのだ、マリアの両手に隠される熱。

 マリアは悲しみに対して敏感だ、その心は全てを凌駕する。

 マリアは悲しみに対して叫ぶ、その者の名を強く呼んで。

 その小さな両手の平に熱を集めて、相手の頬に伝えてくる。

 絶対的な癒しが溢れ出す、その熱が心の傷を溶かしていく。

 私が初めてマリアを抱いた日、ケイとタクシーに乗った。

 私は一安心して、疲労を感じて俯いた。

 その時マリアの両手が私の頬に触れた、マリアが天使の笑顔で私を見ていた。

 真実を話そう・・その時私は、マリアと会話をした。

 その強い温度の揺れでマリアが言った・・諦めたら駄目だよと。

 私は温度でマリアに聞いた、何を?と・・マリアは天使レベルを全開にして言った。

 いつか挑むよね、いつか届くよね、ミホちゃんに・・そう伝えてくれた。

 私はただ驚いてマリアを見ていた、その天使の笑顔を。

 私はマリアの出生の秘密を聞いて、そのマリアの言葉が繋がった。

 ユリさん・・マリアの出生の秘密で、私は1つだけ隠していました。

 私はあの採血の時に、ヒトミの存在を感じていました。

 それは・・手術室に感じていました、ヒトミが誕生を待ちわびていました。

 それを感じて私は土下座をして、冷たい床から伝わってきた。

 ヒトミの温度が、最後の時のあの温度の言葉が。

 【あなたには、成すべき事があるのよ】と完璧に伝わってきた。

 床に置いた私の両手から、私はだから採血にこだわった。

 そして感じていました、沢山の亡くなった子供達の存在を。

 手術室から・・全員がその誕生を待ちわびていた。

 あの子達にとって、ミホが絶対的な存在であることは気付いていた。

 ミホは病気も障害も無い、健康な少女だったから。

 あの子達にとっては、そのミホの姿が忘れられない事は分っていた。

 俺はマリアが産まれる頃は、ミホで挫折していたから。

 そしてあの子達は感じていた、マリアの誕生を。

 悪戯な原作者のシナリオを、だからヒトミは伝えに来た。

 私の今成すべき事、マリアをこの世に産まれさせる事。

 それが最も大切な事だと、ヒトミが伝えに来たんだと思っている。

 悪質で不公平な原作者の存在を、あの子達は知っていたから。

 幼くして亡くなった者達は、そのシナリオに闘いを挑もうとしていた。

 だからこそ、健康なミホに執着してるのだと。

 そして感じたんだと、原作者すら凌駕する者の誕生を。

 その完璧な純白が誕生する事を、その誕生を拒もうとするシナリオを。

 そして私は最も大切な試験に合格した、亡くなった仲間が全員で叫んでくれたから。

 そしてこの世に生を受けた・・その完璧な純白が、原作者の届かない者が。

 常識などの観念より最も遠い存在、マリアは地球の申し子。

 生命に対して最も敏感な者、リンダと同じ生命という枠組みしか持たない者。

 そしてシオンが教えてくれた、その白い心の感じ方。

 好きの中の何かというくくり、嫌いなものは存在しない。

 シオンは蛇が怖い、しかし蛇が嫌いではない。

 好きな中の怖いだよと教えてくれた、その白い心。

 そしてシオンをも凌駕するマリア、圧倒的純白。

 生命は全て同じ価値があると叫ぶ、食物は連鎖する物だと微笑む。

 連鎖に頂点は存在しないと、永遠に回り続ける輪廻だと。

 人間が食物連鎖の頂点に存在すると考えた時に。

 人間の絶滅への進行が始まる・・生命とはそういう物だと。

 マリアの温度で聞いた、マリアの内包する何者かが言った。

 私はその温度の言葉を感じて、原作者を創り出した。

 神などではなく、悪質で悪戯な原作者を。

 そして悪質でない、真の意味での原作者も存在すると。

 マリアは滅多に話さない、でも私は抱くたびに感じている。

 マリアの存在の意味・・それは唯一の希望なのだと。

 マリアの天使の笑顔は、常に伝えてくれる。

 原作者は・・人の心に棲んでいるのだと』

 

私は心の奥に大切にしていた、マリアとの会話を話した。

ユリさんの強い視線に促されて、感情の制御が出来ない自分を感じて。


「ありがとう、心に響きました。

 私があなたをPGに置こうと決意したのは、マリアの変化に驚いたからです。

 嬉しかった・・母親の私にとって、マリアは普通の子供です。

 マリアは物分りが良いように見えますが、私と2人の時はかなりの我侭娘です。

 マリアはあなたに会って変った、その理由を今理解しました。

 マリアは温度で話せる相手が、出現したんですね。

 それまでは、シオンだけがマリアの会話相手でした。

 マリアは確かに不思議な子です、私はマリアの心のままに育てようと思っています。

 あなたがずっと兄でいると誓ってくれたから、マリアには最高の兄だから。

 あなたは豊を取り込んで、そして自分の経験も内側に潜ませてるから。

 Maria Dreamは完結しませんね、あなたが側にいる限り。

 満足など金で買うものだと、強く主張するあなたがいる限り。

 私達は本当に永い楽しみを持てるのですね、完成しないマリアで」


ユリさんが最後は薔薇で微笑んだ、私も笑顔で頷いた。


「エースなのね・・やっぱりマリアの覚醒をするのは。

 蘭姉さんが若草公園で拾って、マリアに出会った。

 あなたは若草公園で、何かに囚われたでしょ。

 私はあなたの映像で見た、それは蘭姉さんの視点だった。

 まだ私がここに来る前、東京にいた時の夜。

 私は何も分からなかったけど、どうしても気になってる。

 あなたのベンチに座ってる背中を見た、蘭姉さんの瞳は潤んでいた。

 あなたはあの時に、何に囚われていたの。

 振向く前に何を見ていたの?・・それだけ教えてほしい」


マチルダは真剣な輝く新緑の瞳で、私に聞いた。


『あのベンチの後は、教会なんだよ。

 そこの掲示板に、聖母マリアが描かれたポスターがあった。

 俺はなぜかそのマリアから、目が離せなくなったんだ』


笑顔でマチルダに答えた、マチルダが最高の輝きで微笑んだ。


「蘭姉さん・・辛いなら答えなくていいです、なぜ瞳が潤んだのですか?」とマチルダは静かに聞いた。


「大丈夫よ・・もう乗り越えたから。

 私の16歳で亡くなった弟と、最後に会った場所があのベンチなの。

 その時・・私の弟も教会を見ていたの。

 思春期の弟は、話したい事があったんでしょう。

 でもほとんど何も話さなかった、私は色々聞いたんだけど。

 返事をするだけで・・そのまま別れたの。

 それが弟と会った、最後だったの。

 私はそれからPGで働いて、会話を必死に勉強したの。

 後悔してたから、弟の話を引き出せなかった事に。

 そして・・あの夜出会った、あのベンチで教会を見ている家出少年と。

 私は必死に話そうと思っていた、でも一瞬でその必死さを消してくれた。

 私が手で作った銃を向けた時に、笑顔で両手を上げる少年を見たから。

 そして沢山の話をしてくれたから、その言葉は流れるように心に響いた。

 その時期の苦悩も、自分の未熟さも・・全て言葉にしてくれた。

 私はあのタクシーで手を振って別れる時には、あなたが好きだったよ。

 あなたがタクシーに向かって、ずっと頭を下げていたのを。

 泣きながら見ていたよ・・嬉しくて。

 その時に私は弟の事を、自分の心の違う場所に置けた。

 そしてお墓参りに行こうと決めた、あなたが一緒なら。

 ユリさんに背中を押されて、あなたと行ったね。

 そして私の心の問いかけに、あなたは強く即答してくれた。

 弟にも楽しい事はあったと、好きな人もいたと。

 あの言葉で・・私は戻ったよ、本当の自分に。

 そして・・あなたを愛してると感じたよ。

 そしてあなたが、和尚様と豊君に会わせてくれた。

 和尚様の墓標には意味が無い、常に語りかければ良いんだと。

 あの言葉で心が救われた、本当に嬉しかった。

 豊君の生き方を、あなたの寝物語で沢山聞いていて。

 出会ったときに感じた、その心の強さを。

 自分に従うという事の本質を、私は確かに感じたよ。

 そしてあなたが心を捕まえた、最高峰の女性・・リンダの心を。

 私はユリカ姉さんに聞いて、すぐに納得したよ。

 リンダがあなたに心を開いたのは、出会って3秒後だったと。

 英会話をNOと言って、あなたが微笑んで手を差し出した時に、リンダの心が開いたと。

 私も同じだったから、リアルに感じたよ。

 あなたの言葉と行動は・・すべて心を直接伝えるんだね。

 私は最後まであなたの側にいるよ、ミホにチャレンジしなさい。

 もう1度言うね・・私は今後何に対しても、こだわらない。

 いつでも国を出る覚悟はあるよ、あなたは自分の成すべき事をしなさい。

 私を愛してると言うのなら・・その生き方を見せなさい。

 ユリカ姉さんと、カスミにも見せなさい・・2人を愛してると言うのなら。

 私の望みは1つだけ・・あなたの生き方を永遠に愛していたい。

 そういう生き方をしてほしい・・私は必ず愛してみせるから」


蘭の青い炎に焼かれていた、私は最高の喜びの中にいた。

蘭の熱い想いに触れて、ユリカとカスミに対する蘭の気持ちを感じて。

強く優しい蘭の深い瞳を見ていた、青い炎が燃え上がっていた。


『蘭・・俺が先に蘭に溶かされていたんだよ。

 蘭が両手で作った銃で、俺の全てを撃ち抜いてくれた。

 俺の未熟な反抗心も・・寂しい心も・・一瞬にして。

 【自分を馬鹿だと思ったなら、もう馬鹿じゃないよ】

 そう言ってくれた蘭の言葉、最高に嬉しかった。

 蘭のタクシーを見送りながら、ありがとうって言ったんだ。

 その時に感じた、産まれて初めて・・心から言えたと。

 蘭・・俺は必ず見せるよ、俺の生き方を・・その愛し方を。

 そしてここにいる全ての女性に紹介するよ、復活した可愛い少女を。

 可愛い笑顔で笑う・・・ミホの事を』


私はそう言葉にして、蘭の満開の笑顔を見ていた。

その時に私は次のステップに、片足を踏出した。

後悔も背負って進めと言った、薔薇の言葉を背中に感じて。

生き方を見せろと言った、青い炎の愛に包まれて。

険しくていい・・どんなに深くてもいい・・それが選んだ道だと思っていた。


ユリカの静かな温もりが、私の根幹に迫ってきた。

ユリカがその最高の愛情表現で、贈ってくれた称号。

【最後の挑戦者】・・その重みを再確認して、ジンを想っていた。

そして翌日、私は再び道を標される。

【最後の道標】が示した・・その方向を見て。

悲しみの貴公子の本質を感じて・・道無き道に立つ道標。

それが指し示す世界は・・諦めを拒絶する場所に続いていた。


この夜の会話は、記憶の深い部分に残っている。


マチルダが去る日が近付いたのを、全員が感じていた。


ユリさんはそれに対して、この夜会を計画したのだろう。


この夜のユリさんは、私に対して強引だった。


その美しい姿と厳しい瞳で、私の心に迫って来た。


ユリさんは気付いていたのではないだろうか、今書きながら思っていた。


ユリカの覚悟を、感じていたのではないかと。


私のユリカへの想いを話させようと、その方向で進めていた気がする。


私はそのユリさんに迫られて、感情の制御を失っていた。


未熟な私などが狙われたら、逃げることは出来ない。


最高地点に立つ女神なのだから、私は操り人形のように話していた。


【Yurika Dream】も【Maria Dream】も、蘭以外に話す気は無かった。


ユリさんはユリカの為に、私に強引に話させたのだと思う。


私が心に執筆した、3篇のDreamシリーズ。


【Kasumi Dream】しか納得できる完結をしていない。


必ずいつの日か、完結させたい・・【Yurika Dream】


だからもう1度潜ろう・・ユリカの棲む・・光輝く深海を目指して。


その為に探し出そう・・波動を頼りに・・爽やかな笑顔を感じながら。


透明でも見えるよ・・その心は温もりに包まれているから。


最高で完璧な唯一の存在・・掟を提示する女神・・水のユリカ。







 


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