月下の雫
静寂のフロアーに笑顔が溢れていた、楽しい事の予感が包んでいた。
全力を使い果たした女性達は、短い休日に入った。
控え室に戻る背中にも、充実感が溢れていた。
私はTVルームでミサを抱き、サクラさんをタクシーに送った。
マダムが松さんと、ハルカがマリアを抱いて出てきた。
私はタクシーを止めて笑顔で見送った。
TVルームに戻ると、ユリさんと蘭とマチルダにカスミとシオンが待っていた。
ユリさんが悪戯っ子を出して、唇の前に人差し指を出した。
私は喋るなと合図され、ユリさんからメモを受け取った。
【ユリカを驚かせます、マチルダとシオンと3人の振りをして】と書かれていた。
私はニヤで全員を見て、マチルダが右からシオンが左から腕を組んで通りに出た。
『マチルダ、今夜も素敵だったよ』と腕を組んで歩くマチルダに、笑顔で言った。
私とマチルダとシオンの後には、ユリさんと蘭とカスミがニヤで付いて来ていた。
「そうでしょ~、惚れ直したね」とマチルダが輝きニヤを出した。
『うん、惚れ直したよ・・マチルダとの海での誓いを忘れそうなほど』と微笑んだ。
蘭が後から私の耳を強く引っ張った、満開笑顔で睨んでいた。
「エース・・蘭姉さんに捨てられたら、私と2人で旅をしようね」とマチルダも蘭にニヤをしながら言った。
『本当に!・・マチルダ最高に嬉しいよ』と私も蘭に笑顔で言った。
「エース行きそうですね~」とシオンがニコちゃんで蘭を見た。
『シオン疲れたね、今週よく頑張りました』と笑顔で言った。
「うん、今からリアンが頑張ったご褒美に、美味しい物を食べさせてくれるのです」と少し威張った。
『それは良かったね、楽しんでね~』と笑顔で言って。
シオンとローズのビルのエレベーター前で、手を振って別れた。
ユリカの店を私が覗くと、奥のBOXとユリカが示した。
私とマチルダの後を、ユリさんと蘭とカスミが笑顔で入った。
「えっ!・・ユリ姉さん、いらっしゃいませ」とユリカが慌てて挨拶した。
「今晩はユリカ、頑張ってますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
2組のBOXの団体と、カウンターの4人の客が沈黙して見ていた。
マチルダだけでも静寂が訪れるのだから、無理からぬ事である。
ユリさんが奥に座り、マチルダが続きその横にカスミが座った。
向かいの席の奥に蘭が座って、私が隣に座った。
「やりすぎ~・・マチルダと旅をするなんて、冗談になってない」と蘭が頬を膨らませた。
『ユリカを騙すなら、あれ位やらないと悟られるよ』とウルで返した。
「そうですね~、いつもと同じ会話じゃないといけませんね」とユリさんが薔薇ニヤで言った。
「やっぱり、マチルダが自然だったもん」と蘭は頬が破裂しそうになっていた。
「本気だったよね~・・マチルダ」とユリカが爽やか笑顔で来た。
「はい・・エースの傷心旅行は、その位は必要ですから」と輝きニヤで言った。
ユリカとカスミで飲み物を作り、全員笑顔で乾杯をした。
「ユリカ・・今夜私は、正式に挨拶に来ました。
ユリカ、PGの仕事を受けてくれて、本当にありがとう。
私も心から楽しみにしています、そして女性達も全員そう思ってます。
彼女達には、どれ程の勉強になるのでしょう、それが想像すら出来ませんよ。
ユリカのクラブでの、接客の姿を見れるだけで幸せです。
思う存分やってね・・ありがとう・・ユリカ」
ユリさんがユリカに薔薇で微笑んだ、ユリカも爽やか笑顔で返した。
「私ですら、楽しみでしょうがないです・・リアン姉さんにもヒントを貰ったし」と蘭が満開で微笑んだ。
「ユリさん、蘭・・ありがとう。
私は今が一番の充実期にあると、自分で感じています。
最高の女性達が周りにいるから、私も伝えないといけないと思っています。
私が水商売で学んだ事を、魅宴で経験した全ての事を取り込んで。
次世代に繋ぐバトンを持ちたい、そして繋いで欲しい。
エースが千鶴に言った、世代の継承の話が響きました。
大ママとユリさんが今の第一世代、私とリアンが第二世代。
ミコトと千鶴が第三世代、そして蘭とナギサが第四世代。
その下が群雄割拠の戦国時代、最新型が産まれて来る場所。
私も大ママやユリ姉さんのように、確かなバトンを繋ぎたいと思います。
同じ水域に棲む、同じ海流に乗る魚ですから」
ユリカは最後にユリさんの言葉を引用して、笑顔で締めた。
ユリさんの最高の薔薇の笑顔と、蘭とカスミとマチルダの笑顔に囲まれていた。
「ユリカ・・最高に嬉しい言葉です、私にとっても大ママにとっても」と薔薇のまま微笑んだ。
「私達は本当に幸せな時代に生まれたと、感じています」と蘭も満開で微笑んだ。
「やばい、またゾクゾクしてきた」とカスミが輝きながら微笑んだ。
「私にも見せてね、エースが見て強く心に残れば見れるから」とマチルダが私に微笑んだ。
『了解・・強く心に残れば、マチルダが見れるんだね』と笑顔で返した。
「私がここを旅立った後の事はね、次回見せて貰うから」と微笑んだ。
「蘭姉さん・・危ないことすると、マチルダに見られますよ」とカスミが不敵を出した。
「その方が良いのよ、2人で旅立つの諦めるでしょ」と満開ニヤで返した。
「あなたがユリカに対して、追い求めてるのは何なのかしら?」と突然ユリさんが真顔で私に聞いた。
全員が私を見た、ユリカも私を笑顔で見ていた。
『ユリさんの質問なら、しょうがないですね。
俺はユリカの記事を心に書いています、感じたままを正直に。
永い時間をかけて、書き上げようと思っています。
リンダのタイム誌に掲載された記事のように、あの記事は賛否両論ありますが。
俺は好きなんです、リンダに対する愛情を感じるから。
それで私も書こうと思った、何かに残すのでなく心に書こうと。
ユリカもカスミもいつか俺に、寂しい思いをさせてくれるから。
俺もどこかでそれを望んでいるから、その時に混乱しないように。
自分の中でその存在を確立する為に、心に書いています・・シオンのように。
【Yurika Dream】という題名で、今執筆中です。
その時が来たら、書き上げられると思っています。
俺は知りたい・・Yurika Dreamが、その本質が見たい。
俺にとってユリカは完璧な人間だから、その完璧はユリさんとも異なるから。
俺はユリカを、一度も異質だと思った事はありません。
ユリカの力を感じていても、それに自体に興味すら湧かない。
俺にとってユリカは、常に生身の華奢な女性です。
だから俺は追い求める、ユリカの本質を・・その夢に描く事を。
それが俺のユリカに対する愛情ですから、ユリカの本質に迫りたい。
俺に出来る事を、全てを使って・・愛も時間も惜しげなく使って。
蘭に甘えながら・・最高峰の1人を見たい。
百合の名前を受け継いだ・・百合香の頂を目指したい。
永遠にその本質を、理解など出来ないかもしれない。
でも登ろうとした人間がいたと感じてくれる、ユリカは感じてくれるから。
俺は自分なりに書き上げます、蘭だけに読み聞かせる作品を。
Yurika Dreamを・・私の感じたままに』
私は想いのままを素直に言葉にした、蘭の満開を感じながら。
ユリさんが薔薇で微笑んでくれた、ユリカも目を潤ませて爽やか笑顔で見ていた。
「Kasumi Dreamも書いてくれるの?」とカスミが輝く笑顔で聞いた。
『もちろん、カスミも書いてるよ・・そしてマリアを書いている』と笑顔で返した。
「ありがとう・・最高だった。
言葉が完全に心を追い越していた、私は感じてるよ。
私の大切な分身が、あなたに寄り添っているから。
今夜のシオンの話し、凄く感動したね。
私もシオンの可能性に心が躍ったよ、その無限の可能性に。
リンダの持つその力と、マチルダの力に震えた。
私は本当に嬉しかった・・自分が普通に思えたから。
私も自分の全てを使って、妹も全てを使って。
あなたの再チャレンジを、影で支えるから。
ミコトと同じ台詞を言うね、言い訳は許さないよ。
私も・・詩音も」
ユリカが私を深海の瞳で見ながら、優しく伝えてくれた。
私もユリカの深海の瞳を見て、笑顔で頷いた。
「シオンの感動の話をお願い」と蘭が満開で微笑んだ。
「蘭ちょっと待って、私はユリカの分身・・妹?の話を知りません」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「エースお願いね」とユリカも爽やかに微笑んだ。
『ユリさんとカスミは知らないんだね、和尚がユリカに伝えたんだよ・・』私はユリカの羊水の中の出来事を話した。
ユリさんは美しい真顔で、カスミはその感受性で泣きながら聞いていた。
「本当に素敵な話しですね・・マリアも力になれたんですね、最高に嬉しいです」とユリさんが最高の薔薇の微笑でユリカを見た。
「最高に素敵な話しでした・・和尚様は素敵ですよね、私も凄く助けられました」とカスミが潤む瞳で言った。
ユリカも笑顔で頷いた、蘭が私を満開で促した。
『そして今夜シオンが伝えてくれた、リンダの言葉を・・・』私はシオンの話と、ミホの話しをした。
「シオンはどうしてそれを感じたの?そして全てを記憶してるの?」と蘭が驚いて聞いた。
『祭りの夜、祭り会場でシオンを充電抱っこをしていた。
その日にリンダに会っていて、レベルの上がった映像の制御が出来なかった。
シオンを抱いたまま、俺はリンダの映像を見たんだよ。
そしてシオンもその映像を見たらしい、そして録画したんだね。
シオンは好きな事は一度で全て覚える、そして嫌いな事は全て消去する。
俺の最高の教師であるシオンは、俺の事は全て覚えるんだ。
PGのサインも一度で覚えた、その方法に俺は震えたよ。
ハルカの教えた手を写真で写して、その言葉を添えて頭にファイルしたらしい。
シオンの容量は測れない、そして容量を無駄にしない。
俺はシオンの消去する強さに憧れている、そして伝えてくれる。
俺の問いかけに、その純白の心を直接伝えてくる。
そのシオンの歌の言葉は、直接心に響くから。
俺はミホに会いに行く決心が出来た、千鶴に相談する所まで来た。
そしてセリカで感じたよ、焦ったらいけないと。
寂しさや悲しみに、溺れたらいけないんだと。
今ここにいる全員に見ていてほしい、俺のミホに対する愛情を。
それが将来、俺が世界の子供に伝えたい事だから。
リンダに伝えた事、そして心の解答用紙に強く書いた事。
愛は伝わると・・どんな状況でも、どんなに閉ざしていても。
蘭が最初に教えてくれた、心に刻み込まれた言葉。
愛されたいと思うのでない、どれだけ愛したかなのだと。
俺は俺にもう1度挑戦するよ、原作者に負けない。
俺は原作者の出した、最も大切な試験には合格したから。
あの時のヒトミの瞳が常に見てるから、俺の成すべき事だと言ってるから。
それが俺の生き方だから、そう自分を信じれるようになれたから。
崇高なリンダが、アルバムを見せた人間として、それを誇りに感じてるから。
運命を拒み続ける人間として、原作者に挑戦するよ。
今までの経験と、素敵な女性達の教えと、策略を武器に。
不公平で悪質な原作者に、俺は挑戦し続ける。
それが俺の称号・・【最後の挑戦者】に込めた本当の意味だから。
ユリカ・・ありがとう、俺は気付いたよ』
最後にユリカの深海の瞳に笑顔で言った、蘭が満開で私に抱きついた。
蘭の温もりに包まれて、ユリカの優しい笑顔に見られていた。
「どうしましょう、今夜は気持ちが止まりませんね・・原作者を教えて」とユリさんが薔薇で微笑んだ、カスミが輝く笑顔で促した。
『俺は運命を受入れられない人間なんです、だから考えた・・・』原作者の話をした。
「そこまで行きましたか、素晴らしいですね・・そしてユリカ、最高の称号ですね」と薔薇で微笑んだ。
「それでなのか・・満足なんて金で買うものだと言ったのは」とカスミが微笑んだ。
『カスミ・・カスミには話しときたい、俺の最も大切な試験の話を』と真顔でカスミを見た。
「ありがとう・・嬉しいよ」とカスミも美しい真顔で私を見た。
『この話は、ユリさんにお願いできますか』と笑顔で言った、ユリさんが薔薇で微笑んで頷いた。
「エースが小児病棟に通ってた2年前の春・・」ユリさんがマリアの出生の話をした。
カスミは驚きながら、泣いていた。
私はカスミの強い感受性が好きだった、全ての事柄を自分に置き換えて感じる事が。
「お前・・よくやったな、確かに最も大切な試験だったよ」とカスミは泣きながら言った。
『ありがとう・・カスミ。
だから俺は運命を受入れない、幼くして亡くなった友を背負ってるから。
悪質で悪戯な原作者を創り出す、そしてそいつと戦う。
リンダの言葉を心に刻んで、マチルダの強い意志を感じている。
ユリさんが未熟な俺に教えてくれる、ユリカが俺を感じてくれる。
カスミが不敵で背中を押してくれる、シオンが白い心の歌で伝えてくれる。
そして・・蘭が愛してくれる、その青い炎で守ってくれる。
無駄だと思った時に敗北が決まる、そう言ったリンダの言葉を支えに。
最後まで挑戦する、いつか自分を愛せる時が来るまで』
私は幸せの中にいた、蘭に強く抱かれて、最高の女性達に囲まれて。
「リンダは私に何も教えませんでした、ただエースを尋ねろと言いました。
休暇のつもりで、エースと周りの人々に会ってみろと。
そして今、私は沢山の物を、リュックに詰め込みました。
リンダへのお土産が沢山出来ました、最高の旅でした。
私の父が私の10歳の誕生日に、贈ってくれた言葉があります。
【壁を越えろ、それだけが望みだ】と強い言葉で書いてあります。
私は祖国を知らない、心のどこかで追い求めてきました。
私がリンダと会ったのは、私が絶望していた2年前の冬です。
私は雪の降るニューヨークの、公園のベンチに座っていました。
危険な地区で、寒くて寂しかった。
その時一台の車が止まって、女性が駆け寄ってきた。
リンダでした、最高の笑顔で私に抱き付いて言いました。
【お願いだから、私を手伝って】と優しく微笑んでくれました。
見ず知らずの私を、家に連れて帰り。
暖かい食事と、部屋まで提供してくれた。
私はリンダに聞きました、どうして私を助けてくれたのかと。
蘭姉さん・・リンダはこう言いましたよ。
出会う為にそこにいると感じたと、だから私は心に従ったと。
リンダが教えてくれました、人には祖国は無いと。
地球という、故郷の星しかないのだと。
私は今回の旅で気付きました、私は必死で伝えようとし過ぎていたと。
自分が心から楽しまないかぎり、人にも響かないのだと。
エース・・沢山の話をありがとう、全て心に響いたよ。
でも一番は・・やっぱり原作者だよ、私は本当に嬉しかった。
そしてリンダの最高の笑顔が見えるよ、原作者の話を聞いた時の。
あの夜の海で見せてくれた奇跡・・最高だったよ。
明日・・聞いてもらえるから、私は今の想いを伝えるね。
そして見てるから、ミホに対するエースの愛を。
私は公園のベンチで、最高の出会いをした仲間として。
私とリンダに大切な物を贈ってくれた、最後の挑戦者を見てるから。
愛は伝わると信じてるから・・辛い時は月に囁いて。
私は月下の雫・・月のマチルダだから」
マチルダの輝く深緑の瞳を見ていた、瞳からの強い想いが伝わった。
蘭の微かな震えを感じて、私は蘭を引き寄せた。
カスミが泣いているマチルダを、抱きしめていた。
「ユリ姉さん・・私は来週の水曜日にPGに入ります、エースがお父さんと和解した日に」と強く言った。
全員がユリカを見た、蘭も起き上がり深海の強い瞳を見ていた。
「分りました、水曜日・・水のユリカの光臨ですね」と薔薇で微笑んだ。
『ユリカ・・親父と向き合って、和解してくるよ』と私は真顔でユリカに言った。
「お願いね・・最高のユリカが見たいのならば」と深海の奥から発光していた。
「ユリカ姉さん・・ありがとう、最高の言葉で背中を押してくれて」と蘭も青い炎を最大にして言った。
「蘭・・自分を抑えずに挑みなさい、リアンの言葉に嘘は無いから。
挑むのに最高の相手ですから、その頂に触れてみて。
誰も登頂できなかった頂に、私は今夜銀河の奇跡に伝えた言葉贈るね。
NO1のまま引退するのは、心残りになるのよ。
最高の女性に挑みなさい、私が心を込めて贈った称号を持つ者。
最高の副職・・そして最後の挑戦者が愛し続ける者。
あの時、あなたが即決で選んだ名前・・蘭。
私はあの時に感じていたよ、きっとその源氏名に意味があるって。
蘭・・その心のままに生きてね、そして見せてね。
その時の決断を・・私達の夢を背負わせてるね。
あなただから・・蘭だから・・私は夢を見るよ」
ユリカの強く優しい言葉が流れた、蘭の瞳は最高の炎に包まれていた。
ユリさんの最高の薔薇の笑顔と、カスミの真剣な眼差しが見ていた。
そしてカスミに抱かれた、マチルダが私に微笑んだ。
私もマチルダに笑顔で頷いた、蘭の体温が変化してきた。
その時が近いと感じた、水曜に光臨する透明の女神が、最後に背中を押すと思っていた。
日付が変わって、日曜の深夜になっていた。
しかし天空の要塞の熱は、冷める気配すら無かった。
その時映像が流れた、鮮明な映像に飛行機が映った。
ドアを確認する乗務員が見えた、そしてリンダが現れた。
私に両手を振って叫んでいた、その笑顔とブルーの瞳を見ていた。
【ミホを諦めるな】と響いてきた、リンダのブルーの瞳が叫んでいた。
そして驚異の世界をマチルダが見せた。
映像にマチルダが進入してきた、その存在が伝わってきた。
映像の中の私の真後ろに、マチルダが立っていた。
そしてマチルダが手を出した、映像の私はマチルダの手を握った。
その時、映像が私の視点に切り替わった、そして一瞬で月に飛んだ。
手を繋ぐマチルダが、最高の輝きで微笑んで地球を指差した。
その方向に飛んだ、マチルダと手を繋いで。
そして霧に霞む山の上に辿り着いた、私はマチルダを見た。
マチルダは微笑んで、目で方向を示した。
私がその方向を見ると、霧が晴れてきた。
マチュピチュが現れて、その中心の大きな石の上に人影が見えた。
少女が私に手を振っていた、私は嬉しくて笑顔で手を振った。
ヒトミだった、ヒトミが強い瞳で手を振っていた。
そこで映像が切れた。
私はマチルダを笑顔で見た、マチルダも笑顔で頷いた。
《月が基点・・まさに月下の雫、月のマチルダ》と感じて、感動していた。
ユリカの暖かい波動と、蘭の温もりに包まれていた。
マチルダが私の映像に進入してきた時に感じていた。
マチルダは私の側にいるのだと、ユリカとは違う方法で。
マチルダのリンダとの出会いの話は、蘭に響いていた。
私もその話に心が震えた、リンダと蘭の奇跡的偶然。
同じ日の同じ時間に生を受けた者、それは同じ心を持っていた。
私はこの夏物語が完結したら、後書きに記します。
蘭とリンダの最高の友情物語を、同じ青を背負った者の話を。
心に忠実に生きる、2人の女性の奇跡の物語。
青と青・・2つの青が重なる時に見せる・・希望の世界。
必要の無いものは無くなる・・蘭の精神の基軸。
無駄だと思った時に敗北が決まる・・リンダの強い意志。
あのベトナムの暑い夜、青の2人と緑の瞳がいた。
私は少年のまま話していた、想いを全て言葉に乗せて。
蒸し暑さと、絶望の大地に負けないように。
遠いユリカに届くように・・詩音に語りかけるように。
必ず届くと信じていた、子供達の光の無い瞳を感じながら・・・。