認めあう輝き
空が青く澄んでいた、夏を主張する入道雲が流れていた。
南風が心地よく吹いてきた、秋はまだ欠片すら存在しなかった。
ユリカがゆりっくりと、目を開けて微笑んだ。
「どうするの、店に入る?」とユリカが爽やかに微笑んだ。
『やめとくよ、お邪魔したくないから・・ユリカにお任せで』と微笑んで返した。
「了解、マチルダをよろしく」と笑顔で言った。
私はユリカを優しく降ろして、エレベーターに乗った。
笑顔のユリカに、笑顔で手を振って別れた。
通りに出てPGに向かって歩いていると、腕を組まれた。
「ラッキー、1人で行くの緊張してたの」とホノカが華麗に微笑んだ。
『ホノカ・・また綺麗になったね』と笑顔で返した。
「PGに勤めるなら、頑張らないとね」と笑顔で返してきた、内面が輝いて美しかった。
ホノカとTVルームに入った、マダムとユリさん・マチルダ・シオン・レン・ハルカがいた。
私はホノカを、マダムとユリさんの前に促した。
「ホノカと申します、この度の仕事の件大変光栄に感じています・・まだまだ若輩者ですが、何卒よろしくお願い致します」と美しい姿勢で、深々と頭を下げた。
「素晴らしいですね、さすがにミチルが認めるだけはありますね」とユリさんが、薔薇で微笑んだ。
「ありがとうございます、本当に嬉しいです」と華麗に微笑んで返した。
「曜日はどうしましょう?」とユリさんが笑顔で聞いた。
「火曜と木曜でお願いします・・それとリアンさんとユリカさんの、復活の日もお願いしたいのですが」と美しい真顔で答えた。
「分りました、存分にその力を見せて下さいね」と薔薇で微笑んだ。
「ありがとうございます、全力で頑張ります」と華麗に微笑んで返した。
レンとハルカは、完全に圧倒されていた。
シオンはニコちゃんで見ていた、そしてマチルダがホノカを見て輝きを増していた。
私が全員を紹介して、最後にマチルダを紹介した。
『そしてアメリカからのお客さん・・マチルダ、20歳だよ』とホノカにニヤで言った。
「ホノカちゃん、素敵だね~・・強さを隠すのも上手いし」とマチルダが輝きニヤを出した。
「マチルダも本当に綺麗ね~・・でも弱さを必死に隠してるの」と華麗ニヤを出した。
「ホノカ、どうしてそこまで来れたの?素敵すぎるよ」とマチルダが嬉しそうに微笑んだ。
「マチルダほどの経験はないよ・・凄いね、辛さを中に入れるんだね」とホノカも真顔で返した。
この会話は鮮明に覚えている、ホノカの凄さを改めて感じていた。
マチルダの輝きが変った、その嬉しそうな笑顔を見ていた。
一瞬にして理解しあえた2人は、その精神性により発光していた。
人が他人を認めるのに、時間は必要無いと笑顔が言っていた。
「ホノカ・・お友達になってね」とマチルダの笑顔が輝いた。
「もちろん・・マチルダも銀河の奇跡でしょ」とホノカも輝きを増して、微笑んだ。
2人は美しい笑顔で、瞳で会話するかのように、見つめ合っていた。
「楽しくなりそうです」とレンが微笑んだ。
「ホノカ姉さん、勉強させてもらいます」とハルカも微笑んだ。
「お祭りの時より、数段綺麗になりましたね~凄いです」とシオンもニコちゃんで言った。
「こちらこそ、よろしく・・分らない事は教えてね」と華麗に微笑んだ。
ホノカを案内するのに、5人でTVルームを出て行った。
「なるほど、素晴らしいですね・・あなたの考えが怖くなりましたよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『素敵でしょ、ホノカ・・あの芯の安定感を、感じて欲しいですね』と笑顔で返した。
「しかし、この世界は飽きんの~、最新型が湧いてくるかい」とマダムが笑顔で言った。
『マダム、実は相談があるんですが』と真顔で言った。
「怖いの~、言うてみい」とマダムが返してきた。
私はゴールド・ラッシュの話をした、千鶴とミコトの話も。
『そのレイカって女の子、ここに遊びに連れて来て良いかな?』と真顔で言った。
「もちろん良いよ・・じゃがその時は、お前が責任持って見とけよ」とマダムも笑顔で返した。
『了解、ありがとうマダム』と笑顔で頭を下げた。
「千鶴も復活するんですね、益々楽しくなりそうですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「あん時、エースがいれば・・千鶴をPGに引っ張れたの~」とマダムがユリさんに言った。
「そうですね、本当に欲しい人材でしたね」とユリさんも真顔で返した。
『さすがですね、千鶴も』と私は笑顔で言った。
「ミコトが魅宴に入ったとき、リアンの後輩を探したんです。
その時見ました、出来たばかりのピーチに出勤する千鶴を。
私の方から声をかけたんですよ、22歳の千鶴に。
本当に素晴らしかった、歩く姿も・・その後姿も。
でも武藤さんがネックで、千鶴も踏出せなかったの。
私は千鶴が踏出すなら、なんとかしようと思ってましたよ」
私を見ながら美しい笑顔で、最後は薔薇で微笑んだ。
『そうだったんですね・・千鶴、素敵ですよね』と笑顔で返した。
「知らないようだから教えときますね、千鶴は蘭と故郷が同じで、仲良しですよ」とユリさんが真顔で言った。
『そうなんですか、知らなかった・・蘭も言わなかったし』と私は驚いて言った。
「千鶴は自分を責めたから、ミコトに対しても蘭に対しても」とユリさんが優しく言った。
『それなら大丈夫ですね、ミコトと和解したから・・蘭とも』と笑顔で返した。
「そうですね・・そして蘭は、あの最高の副職に戻るのでしょう」と薔薇で微笑んだ。
私も笑顔で頷いて、マダムとユリさんの笑顔を見ていた。
マリアが起きたので、抱き上げてフロアーに向かった。
10番席で、ホノカも含めて楽しそうに話していた。
ユリさんが準備に帰ったので、私はマリアと散歩に出た。
一番街で靴屋を遠目に覗いていた、土曜日で忙しそうだった。
「あいしゅ」とマリアが天使全開で微笑んだ。
『アイスが癖になったね、マリア』と笑顔で言って、アイスを買いに行った。
ソーダアイスを2つに割って、ベンチで食べていた。
マリアはご機嫌で、通る人全てに天使を振り撒いていた。
「マリアのご機嫌取りなの?」と後から声がした。
『うん、アイスで心を引きとめてるの』と笑顔で振向いた、美冬が笑顔で立っていた。
「そっか~、いよいよ物で釣るんだね」と美しく笑った。
『美冬、デートだね?・・なんかおねだりしたな』とデパートの袋を持ってる美冬に、ニヤで言った。
「残念・・友達の娘が誕生日なの、だからプレゼント」と微笑んだ。
『そうなの、レイカ誕生日なんだ』と笑顔で返した。
「なぜ、レイカを知っているのかな~?」と美冬がニヤで聞いた。
『夜街の美しい人は全てチェックしてるよ、マユ綺麗だよね~』とニヤで返した。
美冬がニヤニヤで近づいた、香水の香りが微かにしてきた。
『男ができるとすぐ色気づいて、香水なんか』とニヤで言った。
「その不必要な鋭さ、どっかに捨てなさい」と美冬が笑顔で返してきた。
『最近出勤早いね~、四季は』と話題を変えた。
「夏休みだからね、まぁ普段でも中学生より帰るの早いよ」と笑顔で言った。
『大学か~、楽しそうだね』と笑顔で言った。
「楽しいよ、でもあなたは行かないよ・・エースには退屈だから」と微笑んだ。
『そうかも・・レイカの所に今から行くの?』と微笑んで聞いた。
「うん、3丁目で待ち合わせ」と笑顔で返してきた。
アイスの食べ終わった、マリアを抱いて美冬と並んで歩いた。
土曜日で人が多かった、マリアはご機嫌継続中だった。
3丁目の銀行の前に、マユとレイカが見えた。
美冬が笑顔で手を振った、マユも笑顔で手を振っていた。
『マリア、レイカちゃんだよ・・レイカ、マリアちゃんだよ』と屈んでマリアを降ろして言った。
「れいか」とマリアが天使で微笑んだ。
「マリア、可愛い~」とレイカもマリアの手を握って、笑顔を見せた。
私は優しくレイカの額に手を当てた、レイカも笑顔でじっとしていた。
『もう大丈夫だねレイカ、良かったね~』と笑顔で言った、レイカも笑っていた。
「美冬、誰の子供?」とマユが聞いた。
「へへ~・・ユリさん」と美冬がニヤで答えた。
「うそっ!・・緊張するんだけど」とマユが驚いて言った。
「チャッピ~」と後から、エミの元気な声がした。
私が振向くと、ミサの手を繋いでエミが笑っていた。
私はエミとミサにレイカを紹介した、4人とも笑顔になった。
『美冬、マユとゆっくり水槽でも行って来いよ、レイカはTVルームに連れて行くから』と笑顔で言った。
「いいの!ありがとう」と美冬が微笑んだ。
「エース、本当にありがとう」とマユも美しく微笑んだ。
『マユ忘れないでね、俺はレイカの為にしたんだよ・・後で迎えに来てね』と笑顔で返した。
マユが美しく微笑んだ、美冬が不思議そうにニヤで見ていた。
『エミ、荷物持つから、2人と手を繋いで』とエミに笑顔で言った。
「は~い」と言って、ミサとレイカと手を繋いだ。
私はマリアを抱き上げて、美冬とマユと別れてPGに戻った。
TVルームは誰もいなかった、エミとミサとレイカは遊びはじめた。
マリアが眠っていたので、ベッドに寝かせた。
エミがレイカの側に付いて、ミサとレイカを遊ばせていた。
レイカの本当に楽しそうな笑顔が出ていた。
《エミがいるから、本当に助かるな~》と思っていた、優しい波動が来た。
5人が笑顔で返ってきた、ホノカが輝いていた。
『みなさ~ん、ゴールドのマユさんのお子さんの・・レイカです、よろしく』とレイカを紹介した。
5人がそれぞれレイカに笑顔を向けた、ホノカはエミとミサにも笑顔で自己紹介をした。
「チャッピー、また綺麗な人連れてきたね・・本当に浮気者だね」とエミが可愛いニヤで言った。
『エミ、浮気者なんて・・エミ意地悪1点』とウルで返した。
「やった~!・・やっと意地悪ポイント貰った」と少女の笑顔で言った。
5人が楽しそうに笑っていた。
『ホノカ、頼みがあるんだけど』と笑顔で言った。
「教えて以外なら、良いよ」と華麗ニヤで返された。
『それもだけど・・ジンを日曜日招待したいんだけど、ホストクラブは敷居が高くて』と笑顔で返した。
「了解、聞いてみるね・・多分来るよ、エースの招待だし五天女揃うしね」と笑顔で言った。
『ありがとう、助かります』と笑顔で返した。
シオンが3人と遊びだし、ハルカとレンが最終チェックに行った。
「エース、カスミお昼仕事してるの?」とホノカが聞いた。
『うん、若草通りのブティックだよ』と笑顔で答えた。
「どこなの・・今から冷やかしに行ってくる」と華麗ニヤで言った。
「ホノカ、私が案内するよ、2人で冷やかしに行こう」とマチルダが輝きニヤで言った。
「最高だね・・リョウもいると良いんだけど」とホノカが笑顔で言った。
『仕方ないな~、待ってて』と言って。
壁の電話番号表を見て、魅宴に電話をした、ミサキが出てリョウに繋いでもらった。
リョウが出たので、ホノカに替わった。
ホノカがリョウと話して、待ち合わせをしたようだった。
「ありがとう、行ってくるね」とホノカが華麗に微笑んだ。
『うん、カスミも仕事あと1時間だから、晩飯食べて来てもいいよ』と笑顔で返した。
「本当に良いの、話してみるね」とホノカが美しく笑った。
『マチルダ、今夜仕事だからカスミと一緒に入ってね』とマチルダに微笑んだ。
「了解、エース・・私こんなに気分が高揚してるの、初めてだよ」と輝きながら微笑んだ。
私は2人を笑顔で見送った。
マダムと松さんが来て、私がレイカを紹介した。
マダムも松さんもレイカに笑顔を向けた、レイカも可愛い笑顔で見ていた。
シオンがフロアーに戻り、ユリさんが来た。
ユリさんにレイカを紹介すると、薔薇でレイカに微笑んだ。
その時魅冬が覗いた、私は2人を招き入れた。
「私の友人でゴールド・ラッシュのマユです、レイカの母親です」と魅冬が笑顔で紹介した。
「マユと申します、レイカがお世話かけました・・ありがとうございます」と緊張気味に、深々と頭を下げた。
「良いんですよ、千鶴も素晴らしい女性に巡りあえてますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「ありごとうございます、最高に嬉しいです」と美しく微笑んだ。
美冬がユリさんの向かいにマユを招き、マユが座ると笑顔で話していた。
マダムも松さんも笑顔で見ていた。
私はエミに借りた、【世界の遺産】を見ていた。
私の地球に場所と画像が取り込まれ、感動しながら見ていた。
マユが帰るので挨拶をしていたら、久美子が入って来た。
『マユ、レイカにピアノ習わせないかな?ここで』と笑顔でマユに言った。
「えっ、そんな事ができるの、習わせたいと思ってたの」と振向いて言った。
『久美子先生、もう1人大丈夫?』と久美子に笑顔で聞いた。
「もちろん、大丈夫ですよ」と久美子がマユに微笑んだ。
「ありがとう、よろしくね」とマユも嬉しそうに、笑顔で返した。
マユと久美子が話して、内容が決まったみたいだった。
マユがレイカを抱き上げて、お礼を言って美冬と出て行った。
久美子とエミ・ミサが、ピアノのレッスンに行った。
「来る時凄いものを見ました」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『ユリさんが凄いいって言うのが、怖いですね』と笑顔で返した。
「土曜の一番街の人混みが、静寂に変わっていきましたよ・・マチルダとリョウとホノカが歩いて」と楽しそうに微笑んだ。
「その3人なら、さぞ迫力があったじゃろ」とマダムも笑顔で言った。
『帰りはそれにカスミが加わるから、怖いですね』とニヤで言った。
「まさに、銀河の奇跡ですね」と薔薇で微笑んだ、私も微笑んで返した。
私はTVルームを出て、指定席で準備状況をチェックした。
完璧に土曜の準備が出来ていた、静寂のフロアーを見ていた。
ミサの奏でる、ドレミの音が少し力強くなったと思っていた。
「晩御飯はどうするの~?」と通路からハルカが聞いた。
『俺はいいや、少し出かけるから』と笑顔で返した、ハルカが微笑んで消えた。
私は通りに出て、ドリームキャッチャーの2個分の部品を買った。
銀行の電子時計は、16時35分を示していた。
気温は32度を示していて、夏だと表示しているようだった。
月末の週末を待ち兼ねていたように、過ぎ行く人々は笑顔だった。
しかし子供達は、夏休みの終わりが近いのを感じているのだろう。
どこか寂しげで、【宿題】が脳裏から消えないようだった。
私はアーケードの上の、【一番街】の大看板を見ていた。
家出初日に税関だと思った看板を、パスポートを取得出来たのかと?
自分に問いかけた、【出来たよ】と少し自信のある答えが返ってきた。
一番街の人混みを歩いていると、靴屋から可愛い顔が出てきた。
私は足早に靴屋の前まで行って、蘭とセリカに笑顔を見せた。
「セリカちゃん気を付けて、尾行されてるよ」と私を見て、蘭が満開ニヤで言った。
「えっ、お知り合いですか」とセリカが蘭を見て言った。
『セリカ、その人がPGの蘭だよ』と私が笑顔でセリカに言った。
「失礼しました、知らなかったから」と可愛く微笑んで、頭を下げた。
「良いのよ~、いつも靴を買ってもらってるんだから」と満開で微笑んだ、セリカも嬉しそうに笑っていた。
「それではセリカ姫を、送ってさしあげて」と蘭が私に満開ニヤをした。
『行きましょうか、姫』と笑顔でセリカに言って、腕をくの字に曲げた。
「良いのかしら・・蘭さん、ありがとうございます」と微笑んで、腕を組んで来た。
蘭の満開笑顔に見送られ、ゴールドを目指した。
『セリカ、少し元気になったね』と真横のセリカに微笑んだ。
「うん、昨夜衝動が来たけど・・自分に勝ったよ」と微笑んだ、流星の輝きが流れた。
『そっか~、嬉しいな・・セリカ少しづつ進もうね、衝動はいつか消えるよ』と笑顔で返した。
「うん、焦らないよ・・今回は本気だから」と真顔で言った、輝きの流れが止まらない感じだった。
『セリカ、俺・・千鶴にフリーパスの権利貰ったよ』とニヤで言った。
「うそ!凄いじゃない、嬉しいね~」と可愛く微笑んだ。
『うん、セリカとレイカを見に行く為にね』と笑顔で返した。
「レイカ、良かったね」と言って、腕を強く組んできた。
『セリカ、胸大きいよね~』とニヤニヤで言った。
「そうだ!聞きたかったのよ、エースは映像で見えるんでしょ?私の全裸を見たのね~」とニヤで返された。
『気付いたのか~、でも緊張感で楽しめなかったよ、今度ゆっくり見せてね』とニヤニヤで返した。
「ダメ~、私に夢中になって尾行されると怖いから」とニヤニヤで返された。
私はウルウルでセリカを見ていた、セリカはニヤニヤ継続中だった。
ゴールドのビルの前に、暴走族風のバイクが10台以上止まっていた。
私はそれが気になったので、セリカとエレベーターに乗って店の前まで送って別れた。
そのまま1階に下りて、入口を見たら特攻服を着た若者の集団がいた。
私はその集団を避けて、反対側の出口から裏通りに出た。
《夜町じゃ珍しい集団がいるから、ユリカ気を付けてね》と心に囁いた、強い波動が返ってきた。
歩いていると、呼び込みのショウ君に声をかけられた。
「エースが退散させるかと思ってたのに」と笑顔で言った。
『怖いよ~・・俺、平和主義者だから』と笑顔ウルで返した。
「でも、ゴールドの女待ってるらしいぞ、最近絡んでるだろ?」とショウが真顔で言った。
『うそっ!誰なの?』と真顔で聞いた。
「名前は分らんけど、店にはまだ出てない子らしいよ」と答えた。
《ケイコ・・そんなイメージじゃなかったけどな~》と思っていた。
『そっか~、まぁあの通りで無茶は出来んでしょ』と笑顔で言って、ショウと別れた。
私は公衆電話で、豊兄さんに電話をした。
「おう、小僧・・どうした珍しい」と豊兄さんの声がした。
『豊兄さん、黒蜘蛛って暴走族知ってる?』とバイクに張ってあった、ステッカーの名前を言った。
「確か、ナンパ系の奴らだろ・・最近派手にやってるらしいよ、頭が変ったらしい」と答えた。
『そっか~、今、通りに集団で来てるから、気になって』と返した。
「今の頭、お前も知ってる・・源氏君の後輩だよ」と豊兄さんが言った。
『そうなんだ~、ありがとう』と礼を言った。
「無茶するなよ、危ない時は俺の名前出せよ」と私を心配して言った。
『うん、大丈夫・・無茶はしないよ』と返して、礼を言って受話器を置いた。
私は少し考えて、裏通りを回りユリカの店に行った。
店には誰もいなかったので、ユリカに心で囁いた。
《ユリカ、状況見たいから、お店借りるね》と囁いた、暖かい波動が来た。
私は窓辺で下の集団を見ていた、数えると13人だった。
下はどう見ても、私と同じ中学生の男だった。
《俺も状況が違えば、あの中に居たのかも。
豊兄さんに出会ってなければ、その無意味な反抗の気持ちを何処にぶつけたのか。
社会とか世の中とか運命とか、理由を他に求めていたのかも。
ユリカ・・俺は運が良いんだね、蘭にもユリカにも出会えたよ》
その集団を見ながら、心に囁いた。
暖かく優しい波動が来た、私はそれに包まれていた。
ケイコは闇の中にいた、そこから抜け出したばかりだった。
厳格な家庭に育ったケイコ、しかし高校で変る。
悪い男と絡むようになり、素行が乱れ、結局高校を中退した。
この頃まだ不安定だったケイコ、だから千鶴もデビューをさせていなかった。
私はケイコに出会った時、何も感じなかった。
このケイコと暴走族との出来事で感じる、自分を許すのは難しい事なのだと。
私はどちらかと言えば、不良と呼ばれる人間寄りの性格だった。
そして改めて感じる、自分の内面を考え直す。
私はこの事件の後、ケイコのデビューを必死に後押しする。
ケイコはその才能を開花させ、夜街の華になっていく。
ケイコが成人を迎えた年の正月、ケイコは実家に帰る。
父も母も暖かくケイコを迎えた、和解するまでに3年の月日が必要だった。
「後悔ってするんだよね、でも受入れろって教えて貰ったよ・・沢山の女性達に」
そう言って笑ったケイコ、美しく輝いていたよ。
27歳で子宮癌で逝ってしまったケイコ、その時の寂しさを私は今も連れている。
ケイコが生きていれば・・そう考えなくなったよ、それは叶わぬ夢だから。
でも今でも語りかける、ケイコのあの笑顔に。
ありがとうケイコ・・直接ぶつけてくれて。
響いたよ、心の奥深くまで・・ケイコの叫びが。
あれ以来、俺は使わなくなったよ・・【未熟】という逃げの言葉を。
ケイコ、俺は絶対に忘れないよ・・凛と立つその姿と。
ケイコのあの・・優しい瞳だけは・・安らかに眠れ・・ケイコ・・。