真実の価値
ガラス越しの光を浴びるその姿、逆光のシルエットでも美しさが隠せない。
常に何かを求め探し続ける、強い表現力を有する緑の瞳。
ユリカとマチルダの化粧直しも終わり、昼食に出かけた、マリアは終始ご機嫌だった。
夏の日差しを直接浴びた、マチルダのプラチナブロンドの輝きに、暫し見惚れて歩いていた。
ホテルのバイキングランチに行き、ユリカとマチルダが驚くほど食べた。
『どこに入ったか不明で、全部出てる感じで、なんかもったいないね』とニヤニヤで言った。
「旅人は、食べれる時に食べとく癖がつくのよ・・特にバイキングはね」とマチルダが微笑んだ。
「そうなのよ、分った」とユリカが追い討ちをかけた。
『ユリカ旅人じゃない、嘘ついた』とウルウルで返した。
「私は嘘つくのも、隠し事も出来ますから・・一人の自分で」と爽やかニヤを出した。
「確かに世の中は不公平だね~」とマチルダも輝きニヤを出した、私は全開ウルをしていた。
食事が終わり、ユリカがご馳走してくれた、マチルダとお礼を言って通りに出た。
ユリカのビルの下でユリカと別れて、マチルダが強く腕を組んで来た。
『マチルダご機嫌だね、可愛くなってるね』と光を浴びて輝く、マチルダに言った。
「羊水の揺り篭と、エースの魔法でね・・でも不思議な男だね~」と私を見て輝きニヤを出した。
『不思議ちゃんに、不思議と言われても・・複雑だよ』とニヤで返した、マチルダが笑顔で睨んでいた。
「りょう!」とマリアが呼んだ、超ミニの赤いスカートを穿いたリョウが、最高の笑顔で笑った。
リョウが歩み寄り、マリアに手を出して、マリアを抱いた。
『マチルダ、リョウさん・・同じ20歳だよ』とマチルダにニヤニヤで言った。
「マチルダです、よろしくね・・露出狂のリョウさん」と輝きながら微笑んで、頭を下げた。
「よろしく、厚化粧のマチルダちゃん」とリョウも涼しげに微笑んで頭を下げた。
「リョウさん、そんなに胸締め上げてUPしたら、体に毒ですよ」と輝きニヤで言った。
「いや~ん、マチルダも気を付けないと、来年には垂れるわよ」とリョウも涼しげ最強ニヤで来た。
「素敵・・お友達になって下さいね」とマチルダがリョウの頬にキスをした。
「私の方から、お願いします」とリョウがキスを返した。
《面白いな~、負けず嫌い同士は》と思っていた。
『リョウ、日曜日の午後空いてる、マチルダの送別会、午後PGで』と笑顔で言った。
「もちろん、行くわよ・・銀河揃うの?」とニヤニヤで返した。
『ホノカ、今から誘うけど、何も無ければ来るよ』と微笑んだ。
「了解・・そん時にお礼するね、凄いやつ」とマリアを渡しながら笑った。
『怖いな~・・でも楽しみだ~』とニヤしながらマリアを受け取った。
「私もカスミに、ミニスカート借りよう」とマチルダも輝きニヤで言った。
「ウエストが入るかしら・・パンツばかり穿いてると、緩むのよね~」と涼しげニヤで言って、背中を向けた。
マチルダはハッとして、お腹を摘んでいた、その姿が可愛かった。
「しかし、凄いメンバーが揃ってるね~、カスミだけでも驚いたのに」とマチルダが輝きニヤで私を見た。
『銀河の奇跡でしょ、もう一人に会うと納得するよ』と笑顔で返した。
「それは、ここに同じ歳で3人が揃ったからなの?」とマチルダが輝く微笑で聞いた。
『マチルダがレンに言った、日本人には特にある・・そういう視線。
ほとんどの子供が、どっかで自分の個性を諦めて、周りに合わせようとするんだよね。
でもカスミ・リョウ・ホノカは、強い意志で貫いたんだと思えるんだよ。
一人ならこの子は凄い子だな~って、単純に思うんだろうけど。
3人揃えば奇跡でしょ、3人が同じ道を選び出会った事が。
そして3人共一瞬で理解しあい、認め合ったのを俺は見たからね』
真横の輝くプラチナブロンドを見ながら、笑顔で言った。
「なるほどね、日本では奇跡だよね」と笑った、日光を跳ね返して輝いていた。
『マチルダやリンダはNYでも目立つんでしょ?』と素朴な疑問を聞いてみた。
「全然、普通だよ・・私達レベルは、その辺にゴロゴロいるから」と輝きニヤで返された。
『必ず行くよ・・NY』とニヤニヤで返した。
「あんたなら、ノイローゼになるかもよ・・関わりが多くなり過ぎて」と楽しそうに笑った。
TVルームのには、マダムとシオン・ハルカ・レン・久美子とエミ・ミサが来ていた。
エミがプレゼントを貰っていて、ご機嫌だった。
『マダム、日曜の事聞きました?』と笑顔で聞いた。
「あぁ聞いたよ、もちろん良いよ・・ワシは暫くお前の言う事は全て聞くよ」とマダムが笑った。
私はユリさんが話したと思い、笑顔で返した。
「はい・・エミちゃん、はい・・ミサちゃん」とマチルダが封筒を手渡した。
「ありがとう」とエミが最高の笑顔で言った、「いいの?」とミサも笑顔になった。
「さすがに、ミサちゃんの時に帰って来るのは、無理だからね」とマチルダが微笑んだ。
2人が楽しそうに封筒を開けると、コロンと緑の石が出てきた。
「綺麗~」とエミもミサも嬉しそうだった、私はその石の緑に引き込まれていた。
「エメラルドの原石よ、パワーがあるの体調を整えたりね」とマチルダも嬉しそうに笑った。
「マチルダ・・高価なんじゃないの?」とエミらしく、子供の発想を超えてきた。
「エミ・・ただの石よ、エメラルドもダイヤもルビーも全部。
その辺の川に転がってる石と何も変らない、価値は誰かが付けただけなのよ。
綺麗な色をして、硬いとか・・それだけの事なの。
美しいと思う事は良い事だけど、それに価値を考えたらいけないよ。
着飾って、キラキラに付けても、ただの石よ、そう考えると可笑しいでしょ。
石を身に付けて、輝くと思う事は・・もう少し大きくなったら、シオンちゃんに聞いて。
私はシオンちゃんに伝えたから、値段に踊らされたら駄目よ。
本当に自分が美しいと思えるのか、それを考えてね、価値ってそういう物よ。
高い値段だから、価値があるなんて、思わないでね・・忘れないでね」
マチルダは真剣にエミとミサの顔を見た、エミも強い視線でマチルダに頷いた。
「マチルダ・・どうして、石油は高いの?
ただ穴を掘って出てきただけなのにね、枯渇するのかな~。
鉱物資源が、どうして高いのかな~・・石油の頼るのをやめればいいのにね。
石油なんて、駄目な事の方が多いのに、空気を汚すだけなのに。
飛行機はしょうがないだろうけど、どうして車も石油で走らせるんだろうね。
私、すぐ喉が痛くなるから、嫌いなの。
たかだか、運動効率を上げれば良いだけなのにね。
ピストンじゃないといけないって事、ないのにね。
やっぱり・・変だよね~」
少女の輝きで笑った、マチルダはエミを見て、ポロポロと涙を流した。
エミ・ミサ以外の全員が固まった、その感性が心を掴んだ。
70年代の話である、エミのこの発想は驚異だった、手塚アニメの世界の発想だった。
【たかだか、運動効率を上げれば良い】【ピストンじゃないといけない事はない】
考えもしなかった、私は車もバイクも大好きだったが、考えた事はなかった。
燃焼・・爆発でピストンを動かす事は知っていたが、それを疑問に思ったことなど無かった。
この時のマチルダの喜びは、凄いものだった、探していた何かを見つけたという感じだった。
マチルダはエミを抱きしめ、微かに震えて泣いていた、エミは驚いて抱かれていた。
「エミ・・絶対に忘れないでね・・今を、その感性を」とエミを見て輝きながら微笑んだ。
「私、また変な事を言ったのかと思ったよ・・すぐ変な事言うから」と照れて笑った。
マチルダが泣いていたので、私がエミに伝えた。
『エミ・・ちっとも変な事じゃないよ。
エジソンもライト兄弟も、最初は変人と言われてたんだよ。
誰にも理解されない事が、間違ってるって事じゃないよ。
多数の言う事が、絶対に正しい訳じゃないよ、戦争も起こったんだし。
戦争を止める事が、誰にも出来なかったんだよ、それは多数だと主張したから。
普通とか常識とか・・それが正しい訳じゃない。
もっと言えば、正しいか、間違いかなんて、判断基準がおかしいんだよ。
正しいと主張し続けた人達が、戦争をしたんだよ、正しいからしようって言って。
人を傷つける事が正しいなら、正しいという考えが間違ってるんだ。
人と違う発想や考えを持つのは、絶対に悪い事じゃないよ。
何か言われても、気にしないで良いんだよ。
その人達はまだ、到達してないだけなんだから。
エミは絶対に変じゃないよ・・人より早いだけなんだよ進むのが。
エミ、思ったように生きて・・それがPGの女性達の願いなんだよ』
エミに微笑んで言った、エミの輝く少女の笑顔が見ていた、強い視線で。
私はロッカーに行って、ドリーム・キャッチャーを取り出した。
『エミ、これがドリーム・キャッチャー・・プレゼント』と笑顔でエミに言った。
「ほんとに!・・手作りの、嬉しい~」とエミが嬉しそうに笑った。
『真ん中の石は、マチルダがくれた・・マチュピチュの石だよ』と微笑んだ。
「素敵~、天空の城か~・・素敵だね」とエミが私に微笑んだ。
「完敗だね・・エース、勉強しなさい」とマチルダが最強輝きニヤで言った、私はウルで頷いた。
これ以降、マチルダはエミに執着する、そしてエミはその都度マチルダを、泣かせるのだ。
その圧倒的発想で、マチルダが凍結する・・そして天才と呼ばれたリンダですら、驚愕する。
エミはシオンに習っていた、心に描くという技を、エミはよく見上げていた。
天井であったり、空であったり・・妄想していた、ニヤニヤの可愛い顔で。
図書館が棲家のように、エミは徘徊していた、解らない事が解りたくて。
エミは天才ではない、勉強が好きなのだ、理解できた時の気持ち良さが好きなだけだった。
美冬が笑顔で来て、四季からとエミにプレゼントを渡した。
部厚い世界の遺産とうい本だった、それを見て、マチルダは本当に嬉しそうだった。
美冬とマチルダと、私がマリアを抱いて出かけた、光射す場所に。
「世界の遺産か~、やるね~未来の教師は」とマチルダが美冬に輝きニヤを出した。
「エミは成長が早いから、常に一歩先を考えないといけないから」と微笑んで返した。
「あの子の発想の根源は、何なんだろう?」とマチルダが真顔で聞いた。
「多分・・理不尽かな、人生って不公平だから。
マチルダはアメリカ人だから、あまり言いたくないけど。
エミは最近、医者を進路に決めるまで、どうしても開発したい物があったの。
エミの母親のサクラさんは、凄く聡明で素敵な人だから。
エミを5歳の時に長崎に連れて行ったの、原爆資料館に。
エミは衝撃を受けて、色々勉強したのよ、歴史も今の現状も。
そしてこう言ったのよ、あんな爆弾で威張ってるのは、絶対おかしいって。
自分が作るって、核兵器を無意味なものにするものをって。
あの真直ぐな瞳で強く言われて、私は震えたよ。
そして、この子なら出来るかもしれないって・・思ったよ」
美冬も美しい真顔でマチルダに言った、マチルダは嬉しそうに笑顔で頷いた。
美冬とマチルダが前に乗り、私がマリアを抱いて後部座席に乗った。
真夏の国道を、慎重に美冬が運転していた、マリアは猫に会えるのが嬉しいのか、ご機嫌だった。
玉砂利を進み、本道側の駐車場に停めて、美冬が降りた。
「みふゆちゃんじゃないか~、嬉しいね~」と和尚が笑顔で声をかけた、美冬も笑顔で頭を下げた。
私がマリアを抱いて降りて、マチルダが降りた、和尚の最高の笑顔が溢れた。
「この寺300年の歴史で、初めて金髪の女神のおいでじゃ~」と笑顔で言った。
「突然来てすいません、マチルダと言います」と輝く笑顔で頭を下げた。
「なんか、対応全然違いますけど・・和尚様~」と美冬がニヤで和尚に言った。
「そんなことないよ~・・まぁ上がって美味しい草もちでも」と和尚が慌てて、笑顔で促した。
私はマリアと広大な庭を歩いて、子猫を探した、本堂の縁側で丸くなって眠っていた。
マリアの靴を脱がせて、縁側に上げた、マリアは嬉しそうに子猫を見ていた。
私は本堂の奥に猫ジャラシがあったので、マリアに渡した、マリアは天使全開で受け取った。
その時、子猫が起きて、私は少し奥までマリアを連れて行き遊ばせた。
和尚は豊満美女2人に囲まれて、この世の春を楽しんでいた。
私はマリアが一人でも大丈夫そうなので、ちゃぶ台に行き、美冬の隣に座った。
「和尚様は、宗教家らしくないですね」とマチルダが笑顔で言った。
「ワシは職業としてここにおるんだよ、悩みを聞く事はするが、道を説くことはないんじゃ」とシワシワ笑顔で返した。
「仏教は世界的に見ても、争いは少ないですよね」とマチルダが真顔で問いかけた。
「宗教自体、それで争いが発生する事は、おかしな事よの。
ワシは無宗教という選択も、大いに結構だと思っちょる。
困った時だけの神頼みたいな、そんな関係でも良いんじゃと。
但し先祖は敬えと檀家の衆には言っておる、繋がってきて今の自分がおるんじゃから。
もちろん、宗教を信じ真面目に取組むのも、素晴らしい事じゃよな。
そういう人達は純粋なんじゃよ、だから騙されもする。
宗教家とは、その人間が聖人とは限らんから、しかし信じてしまうんじゃな。
最近は金を集める宗教も増えたし、西洋の歴史は宗教の争いの歴史でもあるしの。
聖書1つを取っても、解釈が多数存在して当然じゃろうな。
じゃがそれで争いが無くならんのも、悲しい事じゃよな」
和尚も真顔で言った、マチルダも美冬も真顔で頷いた。
「争いが絶える事はないと、思われますか?」マチルダがいつに無く真剣だった。
「国の格差がこれだけ広がると、難しいじゃろうな。
やはり人は豊な生活に憧れるから、その日の食事にも事欠く人々もおるから。
日本は敗戦国なのに運が良かった、立地条件がアメリカの目に止まったから。
そして奇跡の経済成長の起爆剤は、やはり他国の戦争だったしの。
その勤勉な性質が花開いて、今も経済的成長を続けておる。
日本は元々豊な国なんじゃよ、水と環境に恵まれておるから。
厳しい環境の中で闘っている国の人々は、宗教に心の拠り所を求めても仕方が無いよの。
マチルダちゃんは、国はどこかな?」
和尚は話を、途中で切った感じで、マチルダを見た。
「国籍はアメリカです、父母は東ドイツです」と真顔で返した、和尚と美冬は優しい目で見ていた。
「ドイツ人は優秀過ぎるんじゃよな、発想も勤勉さも持っちょるし。
奴・・ヒトラーが出現しなかったら、今どんなに素晴らしい国だったのかと思うよ。
日本人も勤勉では負けんだろうが、発想を主張出来る環境が無い。
東ドイツの国民が、我慢できる限界もそう長くはないだろう。
今の西ドイツを感じれば、ドイツ人魂を抑える事など、ロシア人には無理やかい。
結局、独裁政治や強権的なやり方は、長続きしないんじゃよ。
世界は日々近くなっているよの~、そうなったら先にソ連という国が変化を迫られる。
冷戦なんていう時代も終わるじゃろう、そして最後に問われる。
アメリカはどうするのかと、アメリカの軍事産業は需要を求め続ける。
また作り出すのか、需要が無ければ、需要をまたどこかに作り出すのかと」
強い言葉で和尚は締めた、マチルダも美冬も真剣だった。
私はまた勉強不足を反省していた、アメリカに憧れだけを巡らせていた事を。
戦争の原因の裏に、金儲けがある事など、考えた事もなかった。
マリアの楽しそうな声だけが響いていた、その純真さに救われていた。
爽やかな風が流れ込み、涼しさを増していた。
美冬の凄さを改めて感じていた、リンダに声をかけた事。
そして何にでも興味を持ち、行動できる事。
そしてその豊富な知識に、関心させられていた。
裏付けがないと駄目だと感じた、何をするにも、何を主張するにも。
知識という裏付けが自分に無いと、意味を成さないと感じていた。
美冬は将来結婚をしても、教師を続ける。
素敵な教師だった、芯の強い、愛情の深い教師だった。
マリアが小学4年の時に、美冬が人事異動で、奇跡的にマリアの担任になる。
マリアがいつも話してくれた、美冬の事を、楽しそうに。
美冬と夫になったカズ君が、蘭を尋ねて来た事があった。
長女の名前に源氏名を使わせて頂きますと、2人で笑顔で頭を下げた。
蘭は本当に嬉しそうに、満開の笑顔で頷いて返していた。
長女が・・蘭、そして次女が・・詩音と命名された。
机上で勉強だけした人間には、決して辿り着けない教育者になる美冬。
そして常に伝えていた、世界の現状を、自らが調べて。
「突然、教室の窓から、リンダやマチルダが笑顔で覗きそうでね」と笑った美冬。
教壇にこだわり続けて、今もそこに立つ。
凛とした立姿で、美しく優しい瞳のままで・・。