心の温度
情熱のフロアーを見渡す位置に、指定席がある、入場口に続く通路の真横に。
人は居場所を求める、必要とされたいと願う。
些細な存在でも良い、必要とされたいと。
その夜も満席記録を9時20分に達成していた、私は雑用をこなしていた。
フロアーのサインは、シオンがニコちゃんで、完璧に処理してくれていた。
私はカズ君に呼ばれて、エレベーターホールの、モップ掛けをしていた。
「しかし、ブロンドは綺麗やね~」とカズ君が微笑んだ。
『美冬に言ってやろ、明日お昼に運転手になってくれるから』とニヤで返した。
「それだけは、ご勘弁を~」とウルウルで返して来た。
『怖そうだよね~、美冬』とニヤニヤで返した、カズ君もウルで頷いた。
掃除が終わり、カズ君がフロアーに戻った、私も暇になりTVルームを覗いた。
久美子が勉強、松さんがTVドラマを見ていた。
「マチルダ、相当疲れてたね、でも本当にお人形みたいだよ」と松さんが笑顔で言った。
『出来すぎだよね~、あれは反則だよ』と笑顔で返した、久美子も笑顔で頷いた。
私は3人娘の寝顔を見て、裏階段を降りて、魅宴に向かった。
魅宴の裏口から入って、事務所を覗いた、誰も居なかったのでフロアーに行った。
裏からリョウを探した、真赤なドレスを着た魔性の女が笑っていた。
その輝きが、落ち着いた雰囲気を漂わせていたので、一安心していた。
「マメだよね~、エース」とミサキが後から言った。
『明日からハルカを送り込むから、偵察です』と振向いて微笑んだ。
「噂になってるよ、ブロンド美人」とミサキが可愛いニヤで来た。
『目立つのは仕方ないよ、最終兵器だから』とニヤニヤで返した。
「見とかないと、いけないようね~」と微笑んで返してきた。
『お勧めしますよ、気持ちを強く持ってね・・ミサキは淡いだよ』とニヤニヤ継続で返した。
「そんなに凄いんだ~、楽しみ~」とニヤで返された。
『リョウにも言っといて、20歳だから・・カスミがライバル心剥き出しで、頑張ってるよ』と微笑んだ。
「了解、必ず見に行くね」と微笑んで仕事に戻った。
私はリョウと目が合って、ニヤを送った、リョウも微笑んで頷いた。
魅宴を出て、PGに戻った、この頃はもうユリカを見上げなくなっていた。
常に語りかけ、伝わってるのを感じていたので、見上げなくなった。
フロアーは終演前で、6割程度の客だった。
ニコちゃんシオンに、マチルダを送ってレンを迎えに行くと言って、TVルームに行った。
マチルダは起きていて、松さんをマッサージしていた、松さんの笑顔が溢れていた。
『元気になったね、マチルダ』と笑顔で言った。
「サンキュー・エース・・・・・」と英語の長文で、輝きニヤを返してきた。
『オ~・マイ・ガット』とニヤで返して、3人娘の寝顔を見ていた。
マチルダがマッサージが終わったので、ユリカの店に出かけた。
通りに出て、マチルダが強く腕を組んできて、輝く笑顔を私に向けた。
「もっと、有名人にしてやるね」と輝きニヤで言って、頬にキスをした、私もキスを返した。
『素敵だ~、サンキュー・マチルダ』と笑顔で返した。
マチルダは腕を強く組み、首を私の方に傾けて、輝きを放っていた。
全ての人の視線を楽しんで、通りを歩いていた、輝くマチルダを視線が追いかけていた。
ユリカの店を覗くと、ユリカが奥のBOXと微笑んだ、私はマチルダを案内した。
静寂が訪れた、視線がマチルダに集中していた。
「東京じゃ、ここまでないんだけどね」とBOXに座ったマチルダが私に微笑んだ。
『ここは、陸の孤島・・MIYAZAKIだからね~』と向かいに座り、微笑んで返した。
「お帰りマチルダ、良かったね~、疲れ少しとれたね」とユリカが爽やかに微笑んで、私の隣に座った。
「抱っこ充電、良いですね~、リンダが欲しがるはずです」と輝きニヤで返した。
「まだ輸出しませんよ、私に必要だから」とユリカが爽やかニヤで返した、マチルダも楽しそうに笑顔で返していた。
「映像どうなったの?」とユリカが爽やか笑顔で、私に聞いた。
『鮮明になったよ、声もはっきり聞こえる・・リンダのアルバムの話、自分で訳してみるよ』と微笑んで返した。
「ちょっと待って!・・・リンダのアルバムって?」とマチルダが美しい真顔で聞いた。
『リュックに入れてる、小さいアルバム』と笑顔で返した。
「見せて・・話したの?」と美しい笑顔のマチルダが真剣に聞いた。
『うん、蕎麦屋であの写真を撮る前に』と微笑んで返した。
「エース・・私、あんたに抱かれたくなったよ」とマチルダが輝いて笑った。
『優しく、日本語で教えてね・・マチルダ』とウルで返した。
「無理・・その時は英語じゃないと、私が楽しめない」と輝きニヤニヤで言った、私はウルウルで返した。
「私が知る限り、あのアルバムを見せて話した相手は、あなたを含めて4人しかいない。
一人が男性の老人、インドの人で宗教的自由を唱えてる、哲学者。
素敵な人だよ、人間とは思えぬほどの静けさがあるの、圧倒的な優しさ。
もう一人が南アフリカの黒人女性、奴隷制度撤廃の影の戦士。
もちろん素敵な人、温もりが全く違う、無血運動を地道にやっている。
命を賭けて、奴隷を解放する道を探している。
そして、私とエースだよ・・頑張ろうね」
最後は輝きながら微笑んだ、私も嬉しくて、笑顔で返した。
『でも、マチルダの話を聞くだけで、心は飛ぶよ・・世界を巡る』と正直に笑顔で返した。
「明日、少しイメージを入れてあげる、よりリアルに飛べるように」とマチルダが微笑んだ。
『俺は本当に間に合いたいと思ってる、後何年か時間はかかるけど、会いたいんだ。
何にも出来ないけど、色々な国の子供達に会ってみたい。
どんな生活して、何が楽しくて、どんな夢を持っているのか。
楽しい事が出来ないのは、どうしてなのか?
夢を持て無いのは、なぜなのか?
辛い事を解決するのは、簡単じゃないと思う。
でも楽しい事を贈るのは、小さくても夢を持たせてあげるのは。
出来るんじゃないかと思う、俺でも・・一人だけにでも。
俺は唯一自信があるんだ、子供との関係は。
俺はその経験だけは、今でもそうだけど、子供のうちに沢山したよ。
凄く狭い範囲での事だけど、でもその経験がリンダの時に役立った。
俺、リンダが日本語を最初に真似した時に、でかいマリアをイメージしたんだよ。
そうしたら、少し分ってきた、リンダのブルーの瞳の色で感情の変化が。
リンダが伝えようと、話してくれたから、それが嬉しかった。
言葉が伝わらないなんて、些細な事だとリンダが言ってるようで。
俺もそう思ったから、瞳で必死に伝えた、言葉なんて必要無いと。
リンダを大切に想ってると、今考えたら、瞳の訓練は相当していた。
まだ話せないマリア位の子供や、障害を持つ子供との関係で、それをしていたから。
そしてリンダは、凄く感情表現が、瞳に強く出るから。
蕎麦屋でかなりの、感情の度合いに対する、瞳のブルーの深さが分ってきた。
そしてバスの中で、会話の内容がどんな内容かは、イメージ出来てきていた。
空港の受付で通訳してもらった後、リンダに抱きしめられて、エースだけ言われた。
間近でブルーを見た時に、流れ込んできたよ、リンダの想いが。
それは英語でも日本語でもなかった、原始の伝達方法のようなものだと感じた。
本当に嬉しかった、俺は考えずに返したよ・・I Love Rindaって。
その言葉しか出なかった、でも瞳で伝えたのは違うよ。
リンダにもう一度必ず会いに来て、迎えに来て、来なければ会いに行くと伝えたよ。
もしどこに居るか分らなくても、絶対に探し出すって伝えた。
マチルダを最初にここで見たとき、嬉しかった、グリーンの変化が凄くて。
その変化に驚いた、伝えたい想いに溢れていたから。
瞳の伝達なら、マチルダ・・リンダ以上だよ。
本当に素敵な女性だね・・笑顔の伝達者・・マチルダ』
マチルダの潤むグリーンを見ながら、そっと優しく伝えた、自然に笑顔が出ていた。
「伝わってたよ、エースの想いは・・ありがとう、最高に嬉しいよ」と深い緑から、美しい涙を流した。
ユリカが潤む瞳で、席を立って、私を促した。
私は立ってマチルダの隣に座って、マチルダを引き寄せて、抱きしめた。
私は感謝していた、原作者に、リンダとマチルダに会わせてくれた事を。
「どの位の子供と関わればそこまで届くの、それだけ今聞かせて」と潤むグリーンで私を見た。
『俺の兄のような存在である人が、俺達の面倒をみてくれた。
その人が不遇な子供や、障害を持った子供に、圧倒的に優しかった。
俺はその人の一番弟子だったし、今も家出中だけど、家に居ない子供だった。
俺の家のすぐ近所に大きな病院があって、俺は看護婦さんとかと仲良くなっていた。
そこに小児病棟があって、毎晩行くんだよ、晩飯食べてから家を抜け出す。
面会時間を過ぎても、俺には誰も何も言わなかった、消灯まで遊んでた。
俺用の白衣やマスク、消毒液まで用意してくれていたんだ。
夏は涼しく冬は暖かいし、入院してる子供が沢山いて、遊び相手には困らないし。
だから病気の子や、障害を持つ子とずっと遊んでた、学校に上がった頃から。
言葉の話せない子や、盲目の子・車椅子・寝たきり、様々な子供がいたよ。
俺は生まれながらのお喋りだから、考えたんだよ、伝える方法を。
自分が楽しくないから、必死で考えた、伝えようと。
そして出会うんだよ、忘れられない少女。
体を動かせない寝たきりで、盲目で耳が聞こえない・・ヒトミ。
全てを遮られた、少女と出会った・・小3の冬。
ヒトミも同じ歳で、転院してきた、本当に可愛い少女だった。
瞳を開けないヒトミを、俺は好きになっていたんだよ。
毎日、最後はヒトミに話をして帰っていた。
体中管が刺してあって、なんか機械がピコーン・ピコーンて鳴るだけの部屋で。
母親も俺に優しくて、おやつやジュースをもらっていた。
母親が帰った後の、消灯前に毎日寄って、真白い顔を見ながら語りかけた。
どうしても、伝えたくて・・必死に色々考えて試した。
俺にとっては辛い経験だったけど、でも伝えられたよ最後には。
そしてヒトミの感情も伝わってきた、その方法は・・体温だった。
唯一自由に触れられる、左手の温度、その変化を感じたんだ。
俺が面白いことを話すと、変化した、嬉しくてずっと話してた。
本当に分ったんだよ、微かな温度の揺れが。
ヒトミは年が明けて体調が悪くなり、成人の日に亡くなった。
でも俺は信じている、伝わってたと、ヒトミと互いに交信できたと。
だってヒトミの体温が・・笑っていたから、楽しそうに』
私はヒトミを思い出して、感情的になって、俯いて泣いていた。
マチルダが強く抱いてくれた、マチルダの香りと温もりに包まれていた。
「完敗だよ、私の負けだよエース、ありがとう・・もう1つ大切な物を貰ったよ」とマチルダが優しく囁いた。
「だからあなたは、カスミちゃんのお熱の時に、あんなに自分を責めたのね。
そして私の基礎体温の変化も気付いたのね、ごめんね・・私も分からなかった。
あなたの添い寝の意味を、あなたは温度で伝えてるのね、だからあんなに安心できるのね。
伝わっていたわ、絶対に・・ヒトミちゃんに」
ユリカが優しく深い深海の瞳で言った、その笑顔が温かかった。
「私もそう思う、絶対に伝わってたよ・・エースを好きだったよ・・ヒトミは経験できたよ、最も大切な、人を愛する事を」そう言ってマチルダが強く抱きついた。
私は2人を見て、回復していた、笑顔でマチルダを抱いていた。
窓の外に半月の月が浮かんでいた、その夜空に映像が流れた。
ヒトミが笑っていた、一度も見れなかった、瞳を開いて楽しそうに笑ったいた。
《俺は間違ってなかったね、瞳》そう月に話しかけた、月光に照らされて、ヒトミが微笑んだ。
13歳の夏、私はもう一段上がろうとしていた。
沢山の友の死を乗り越えて、自分の成すべき事を感じていた、それが意味だと感じていた。
ユリカとマチルダに包まれて、心は青い炎に守られていた。
そして夜空に現れた、私の交友関係の原点、チサが松葉杖で立って笑っていた。
【がんばれ~、見てるからね】と笑っていた、5歳のチサが私を見ていた。
流星が流れた、トナカイのように・・真夏の夜空に、サンタとチサを運んできた。
団体客が帰り、レンが笑顔で来た、楽しそうな顔を見て、嬉しかった。
「レンちゃん、可愛いな~」とマチルダがレンに微笑んだ。
「日本では浮くんですよ~、珍しい者みたいに見られます」と照れた微笑で返した。
「日本は、それがあるよね、私なんか歩くだけで見られるから、疲れてたよ。
幼い頃は、自分のブロンドや高い鼻が、嫌で嫌でしょうがなかったよ。
15年も前の東京だから、今の宮崎みたいだったから。
怖かったよ、自分で自分を受入れるまではね」
輝きながらレンに微笑んだ、レンはマチルダの輝きを見ていた。
「そうなんですよね、自分で自分を受入れないと・・駄目ですね」とレンは笑顔で強く言った。
「好きな物は、好きなのよ・・人と違っていいじゃない、それで誰かを傷つけるわけじゃないから」とマチルダが輝きながら微笑んだ。
「ありがとうございます、マチルダさん」とレンが最高の笑顔で返した、マチルダも笑顔で頷いた。
『じゃあ、マチルダ、また明日』と立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。
「お休みの、キスは」と輝きニヤで、瞳を閉じた。
私はチュッって感じで、唇を一瞬付けた、マチルダは目を開けて微笑んだ。
レンとユリカと女性に礼を言って、レンと店を出た。
レンと通りに出て、腕を組んで歩いていた。
「すっごい勉強になったよ、ありがとな、エース」とレンが微笑んだ。
『それもあるけど、2店の女性達とも仲良くなれて、良かったでしょ』と微笑んで返した。
「うん、最高」と嬉しそうに笑った、可愛い魔女を見ていた。
フロアーに入ると閉店直後で、10番に集まっているところだった。
レンも座り、ユリさんも来て、薔薇で座った。
「昨日からの報告を述べよ」と蘭が満開で言った。
『ハルカを真昼間、西橘で抱き寄せて、浅いキスをして』と笑顔で言うと。
「ちょっとまった!・・本気か」とカスミが不敵を出した。
「はい、次の段階に上ります」とハルカがカスミにニヤを出した、皆唖然としてハルカを見ていた。
「よし、続けて」と蘭が満開の笑顔で促した。
『ミニスカートのリョウを抱っこして』と言うと。
「見えたのかな~?」とナギサが華やかニヤで言った。
『はい、お礼と言って・・紫のキラキラパンツを見せてくれました』とニヤで返した。
「蘭、紫のキラキラ持ってるかい」とナギサの最強華やかニヤで蘭に言った。
「もっ、持ってるわ・・キラキラ・・よし続き」と蘭が照れた満開で言った。
『そして、ユリカと一晩添い寝して、一度キスしてくれました』とニヤニヤで言った。
「待っておくれよ、本当の話かい?」とナギサがウルで聞いた、私は頷いた。
「ユリカ姉さんは、パジャマなのかい?」と蘭が満開ニヤで言った、私は真顔で頷いた。
「よし、いよいよマチルダ」と蘭が満開で促した。
『マチルダは抱っこと、お休みのキス2回です』と笑顔で答えた。
「特殊事項は?」と蘭がニヤで聞いた。
『蘭の笑顔が見れなくて、ウルウルしました』とウルで言った。
「よし、マチルダの話をユリさんお願いします」と」ユリさんに満開で微笑んだ。
「明日、マチルダの歓迎会を、閉店時から我家でしたいと思います、雑魚寝で良ければ皆さん参加して下さい」と立って薔薇で微笑んだ。
「ありがとうございます、参加出来る人」と蘭が手を上げた。
「は~い」と全員が手を上げた、蘭が私を見た。
「もしかして、ユリカ姉さん所が良いのかい」と満開最強ニヤで言った、私はウルで手を上げた。
「じゃあ、リーダー」と蘭がカスミに満開で微笑んだ。
「マチルダは伝えようとしてる、世界の状況を必死に伝えようとしてる。
私達も伝える事は出来るよね、会話のプロだと言うのなら。
響いたら伝えよう、少し時間を貰って、エースに話をしてもらうね。
エースお願い、豊があなたを認めた話を皆にして」
カスミが輝く真顔で私を見た、私は頷いて話始めた。
『・・・・・今もお母さんお母さんって、泣いているから』
私は感情的な自分を感じていた、女性達の涙を見て、自分にも出来る事があると感じて。
そしてユリさんの薔薇の涙が、背中を押した、積み重ねようと誓った。
今の土台に積み重ねれば、何かに辿りつくと信じようと思っていた。
蘭が腕を組み、頬にキスしてくれた、最も大切な満開を見ていた。
絶対に散らせないと誓った・・永遠の満開、そう思っていた。
私はヒトミの話をして、思い出していた、亡くなった沢山の友を。
家出して日記が手元に無かったが、全ての亡くなった友を思い出した。
ヒトミの部屋にある、グラフを示す装置。
常にピコーン・ピコーンと鳴っていた。
陽の光を浴びたことが無いであろう、純白の少女。
眠っていない、起きている・・そして生きていた。
体温の揺れは、40年近く経った今でも、リアルに覚えている。
笑っていた、その笑顔で揺れていた。
体の温度じゃなかった・・あれは多分・・心の温度。
ありがとう・・ヒトミ・・教えてくれて。