水の百合香
9月が近づき僅かに弱まった直射日光が、大樹の幹と枝で遮られている。
草原に一本だけ立つ大樹が、孤独に絶える強さを示していた。
私と妖精は地上に寝そべっていた、大地の鼓動と大陸の息吹を感じて。
「先生はね~、兎だよね・・白くない灰色のウサギ」と突然シオンが、私を見上げ笑った。
『何がかな~、干支?それとも好きな食べ物?』と笑顔で返した。
「それは、リョウちゃんでしょ、動物に例えるとだよ~」と頬を膨らました。
『それなら、白兎がいいな~可愛いし、バニーちゃんみたいだし』とニヤで言って、シオンの頬を親指で優しく押してみた。
「プシュー」と空気が抜ける音を真似て、可愛く笑った。
『なぜウサギなの?俺が可愛いから?』とニヤニヤで聞いた。
「ブー、フットワークの軽さだよ、どこに出現するか分らないから」と言って、ケラケラと笑った。
『シオン、褒めてない・・折角シオンだけ、意地悪ポイント付いて無かったのに~』ウルウルで返した。
「よかった~、私、初めて人に意地悪した~」と嬉しそうに微笑んだ。
私とシオンの距離は、息がかかるほど近い、それでもシオンが笑顔であるのが嬉しかった。
『シオンは、白鳥だね・・大空を羽ばたいて、国境も何も関係ない、白い鳥だな~』と湖を見ながら言った。
シオンを見ると涙が出ていた、私は焦って笑顔を意識して。
『シオン・・嫌だった、白鳥?』と優しく聞いた。
「嫌なわけないでしょ・・女心が分らない・・お子ちゃまね~」と泣顔で微笑んだ。
『意地悪・・2点目』とウルウルで返した。
「先生はどうして求めないの、出来ないの?」と急に話題を大転換させて、突っ込んできた。
『出来るよ、絶対・・多分・・きっと』と段々声を小さくしながら言ってみた。
「きっと・・もしかしたら・・奇跡がおこれば」とシオンがニコちゃんニヤをした。
『意地悪、プラス3点で、合計5点・・シオン記録伸びすぎだよ』とウル全開で言った。
「素敵・・頑張るね先生」と言って強く抱きついた。
風が吹いてきた、遥かモンゴルの草原から、そんな香りの風だった。
シオンと2人で片付けて、私はシートたたみ袋に入れた。
シオンは関係ない所の、ゴミを拾ってきた。
「来た時よりも、美しく・・そうすれば地球は綺麗になるのです」と可愛く笑った。
真っ白い心に触れて、私も笑顔で慌ててゴミを拾った。
腕を組んで、ブルーの湖に別れを告げた。
ニコちゃんシオンを見ながら、歩いていた。
そしてシオンが真っ青になり固まった、私は焦って前を見た。
黒い大きな蛇が、3m前をニョロニョロと横切っていた。
『黒い奴、毒無いから大丈夫だよ』と意識して笑顔で言った。
「じぇ~~~ったい、無理!」と叫んで私に飛びついた。
『仕方ないな~、怖がりシオン』と言って屈んで背中を示した、シオンが私の背中に飛び乗った。
私が立って、シオンにシートが入った袋を持たせた。
『シオン、お尻に手が当たるからね』と優しく後のシオンに言った。
「どこ触ってもいいから、絶対に落とさないでね」と叫んで、震えていた。
私は後ろに両手を回し、シオンのお尻を支えた、その柔らかさに少し焦った。
蛇はゆっくりと横切っている、私は蛇を跨いで車に向かった。
私はシオンのお尻の感触と、背中で潰れる胸の感触にニヤニヤしながら歩いていた。
車に着いて屈むと、シオンが素早く降りて、素早く車に乗った。
私も助手席に乗り、笑顔でホッとしているシオンを見た。
『シオン、そんなに蛇が怖いの?』とニヤで言った。
「足が無いのは絶対無理、足がいっぱいも無理だけど」とウルで言った。
「先生は何が怖いの?」とシオンが慎重に運転しながら聞いた。
『オ・ン・ナ』とニヤニヤで言った。
「それは、怖そうだね~」と前を見たまま、顔を色んな表情に変えていた。
『何してるのかな~、可愛いシオン』と突っ込んでみた。
「カスミちゃんのあの顔が、出来ないんだもん」とまだ顔を動かしていた。
『不敵がしたいのか~、頑張れシオン』と楽しくて笑っていた。
「先生の特別な場所はどこ?」と国道に出て、余裕が出来たシオンが言った。
『若草公園のベンチ』と微笑んだ。
「どのへんの、ベンチ?」とシオンが前を見ながら真顔で言った。
『教会の前のやつ』とシオンを見ながら言った。
「蘭ちゃんと一緒なんだね」と前を見て微笑んだ。
『えっ!・・・そうなの?』と驚いて聞き返した。
「うん、理由は知らないけど、前言ってたよ・・先生も知らないんだ~」と微笑んだ。
《やっぱり出会いの日の事知りたいな~》と思っていた。
シオンがトイレに行きたかったのか、ドライブインに寄った。
お土産を何気に見ていたら、地球儀があった、日本から回してニューヨークを探した。
《近いね、リンダ・・近いよね》と心で囁いた。
「先生、アイス食べようよ~」とシオンが呼んだ。
2人でソフトクリームを食べながら、遥か霧島山脈を見ていた。
「雲は乗れないよね~、シオン・・飛行機怖いな~」とシオンが空を見て呟いた。
『鉄が飛ぶかって、感じ?』とニヤで言ったみた。
「違うよ、羽がパタパタしないのに、飛ぶかって感じ」と私を真顔で見た。
『そうだよね~、でもねシオン、あれはパタパタしてるんだよ、人の目には早すぎて見えないだけだよ』と安心させる嘘をついた。
「えっ、そうなの~、良かった~これでどこでも行ける」と空を見上げていた、可愛い横顔を見ていた。
4年後この嘘の事で、かなり怒られるのも知らずに。
橘通りに着いたのが、4時を少し過ぎていた、屈んで運転席のシオンに手を振って別れた。
蘭に終わる時間を聞こうと靴屋に行こうと思って立ち止まった。
ユリカのビルを見上げてからしよう、そう思い向きを変えた。
ユリカのビルの下で、上を見上げていると声をかけられた。
「蘭が駄目な時は、シオンちゃんなんだね~」とユリカの声がした。
私が声のした方を見ると、ユリカが立っていた。
爽やかニヤを出していた。
『だって、ユリカは意地悪するもん』とニヤで返した。
「唇奪ったくせに」と爽やかニヤにヤで来た。
『ユリカ帰るの?』とバッグを持ってる、ユリカにウルで聞いた。
「そうよ、今からすぐ帰る」とプイをした。
『プイしないでね、ユリカ・・プイは駄目だよ』とウルウルで返した。
「仕方ないね、お茶でも飲もうかな・・ス・イ・ソ・ウで」と言って腕を組んできた。
『ユリカ、もう俺、大丈夫って知ってるくせに~』と水槽を目指した。
店に入って、ユリカが先を歩いて、リンダの座ってた所に座った。
私はウルウルで向かいに座った。
「私は、カフィーね・・アイスのカフィーよ」と爽やかニヤ二ヤ攻撃で来た。
『ユリカは本当に負けず嫌いだね~、そんなに意地悪ポイント欲しいの?』とニヤで返した。
「うん、きゃしゅみには負けたくないのよ」と可愛く笑った。
「ミサキね~、それは分らないよね~、いるか岬の話じゃ」と爽やかニヤで言った。
『こじつけだったでしょ、でも満足したよ』と笑顔で返した。
「うん、良い名前だよ、ユリ・ナギサ・ミサキで、マミは喜び3倍だったよ」
「でも第一候補は何だったの、有ったんでしょ?」と鋭く来た。
『大ママに頼まれた時はね、でも使えなくなったんだよ』と真顔で返した。
「何なの~?」と興味津々の顔で見た。
『もう、消去したから理由は言わないよ、ホノカ』と笑顔で言った。
「あ~そうなんだ、でもミサキで正解よ」と爽やかに笑った。
『ユリカ凄いと思ったよ、詩音』と笑顔で言った。
「うん、ありがとう・・昨夜も聞いたけどね」と楽しそうに笑った。
『ユリカは運命って信じてるの?』と聞いてみた、興味があったユリカの答えに。
「探りを入れるのね、良い事は運命と思って、駄目な事は思わない」と笑顔で答えた。
『ユリカ嘘つくなよ~、眉毛』とニヤで言った。
「自分で気付かない、レベルなんだけど」と爽やかテレを出した。
「最近までは信じなかったよ、今は確かにあると思ってるよ」と真顔で答えた。
『そうだよね、考え方は変るんだよね』と笑顔で返した。
「1つ教えてあげようか、あなたが運命を受入れない訳」と真顔の深海の瞳で言った、私は緊張して頷いた。
「あなたの交友関係が、その年齢で恐ろしいほど広いからよ。
もちろん良い事だと思ってるよ。
でもそれだけ広いと、運命を受入れていたらもたないのよ、あなた自身が。
だから拒否していたのよ、知らぬまにね」
美しい真顔のまま言って、最後に微笑んだ。
私は痛い所を突かれた、まさにそうだと思っていた。
「聞きなさい蘭の話しを、そうして自分で感じるしかないでしょ」と微笑んだ。
『そうだね、そうするよ』と笑顔で返した。
「そこから始めないと、永遠に迷宮入りよ」と意味深に微笑んだ。
『繋がるんだね、何かが?』と聞いてみた。
「それはあなたが感じる事だから、私はまだまだ、あなたの側にいるからね」と爽やかに微笑んだ。
『うん、ユリカお願いね、ユリカが必要なんだよ』と真剣に言った。
「それだけ完璧に同調で言われると、仕方ないのよね~」と爽やかに微笑んだ。
私は嬉しくて、笑顔で返していた。
ユリカのその後を記しておこう。
迷いに迷ったが、書かなければ成立しない。
ユリカの街を出た真実、あの当時、皆が知りたがった真実を。
そうしないとこの物語は、本当の意味での完結に進まない、それは失礼な事だから。
稚拙な私の文章をここまで読んでくれた、皆様に失礼な事であると思うので記します。
これ以降ユリカは私に執着します、厳しい試験をしたり、会話もかなり徹底的に鍛えられる。
その背景を聞くのはユリカが街を出る、約1ヶ月前だった。
寒い11月の下旬、ユリカの手料理の夕食に誘われた。
久しぶりの手料理で、高3の私はニコニコ顔で出かけた、ユリカのマンションに。
『ユリカ、どうしたの?良い事あったんだね?』と暢気に微笑んでビールを飲んでいた。
「あったよ~、大事な話しがあるから、食事が済んでからね」と爽やかに微笑んだ。
33歳のユリカ、その若さは全く衰えずに、20代前半で充分通用する容姿だった。
私は違和感のあるユリカの笑顔に、少し緊張して食事をした。
食事が終わり、リビングでワインを飲みながら、照明を暗くして大淀川の流れを見ていた。
「大事な話しがあるから、横に座って」その声のトーンは、今までに聞いた事が無かった。
『ユリカ、俺は覚悟が必要な話なんだね』と静かにユリカの深い目を見て言った。
「そうだよ、覚悟をして・・聞いて欲しい」と深い深海の瞳で静かに言った。
私はソファーに座るユリカの横に座った、5年以上も座り続けたユリカの横に。
私はユリカの手を握って、ユリカを見て真顔で頷いた。
「あの、5年前の夏・・あなたがリンダに出合ったあの日。
その日に決めていたの、ごめんね今まで隠していて。
あのリンダ試験の前夜、四季が来た時に、美冬ちゃんに条件を出したの。
私が先にリンダと1対1で話させて欲しいと、そして会ったのよ8時に店でリンダと。
衝撃だった、本当に衝撃だったの、そして感じた運命をね。
リンダと話した第一声で、私は意識して出さないようにしてたのに、出てしまったの。
強い揺り篭が、英会話だから制御が利かなくて、リンダを乗せたの強い揺り篭に。
あなたに説明は必要ないよね。
そして私は見たの、常人を遥かに越えたリンダの悲しみを。
リンダが落ち着いた時に私に言ったのよ。
「私を助けて、お願いだから側にいて助けて欲しいと」懇願されたのよ。
「時期はいつでもいいから、いつか必ず来てくれると約束が欲しい」
そうリンダに泣かれたの、私は嬉しかった、私も生きる意味を見つけたから。
私の個性の意味を見つけたから、リンダをサポートする事で。
そしてこう言ったの、リンダに。
あなたが今から試験をする相手をキチンと見て、そして判断して。
彼が私の今考える事を、背負っているから、最大の愛情で接しているから。
私の気持ちを解放した彼を、心に何も持たずに見て。
リンダの気持ちも私には分るから、それで判断させて。
そう言って、試験に臨ませたのよ、そして結果は100点だった。
あなたもそして、リンダも。
私はリンダに7年以内と約束をしたの、アメリカ国籍までリンダは用意している。
今5年だけど、リンダの状況が変ってる、理由無き中傷に晒されているの。
アメリカの国を動かしている、妖怪達の逆鱗に触れたのよ・・リンダ。
リンダは一時地下に潜らないといけない、もう私も行かなければいけないの。
それが私の産まれた意味だと思うから、リンダを影で助ける。
私の個性はリンダの目指す【平和】の為に使いたい。
そしてリンダだけは守らないといけない、【希望】だから。
私は7年・・あなたが花火大会の翌日・・蘭にプロポーズするまで見たかったの。
私の【夢】だから、そこまでは全力で、あなたを愛そうと思ってたの。
ごめんね、でも感じるから・・2年後必ず感じるからね。
もうあなたは私がいなくても大丈夫よ、愛する蘭がいるでしょ。
見てやらないといけない、女性達もいるでしょ。
だから・・・ごめんね・・・国を出るね」
私は何も言えなかった、ユリカの気持ちが入って来たから。
その後リンダは表に出てこない、当然ユリカも姿を見せない。
リンダは莫大な財産と共に消えた、ユリカを連れて。
活動はその後も続けただろう、表には出ない形で。
リンダの強い意志と、ユリカのサポートがあれば、成果は出ただろう。
リンダのニューヨークの家は、今でも管理されている。
リンダとユリカが戻る為の準備は、常にしてあるのだ。
ユリカとこの時に交わした30年の約束、誰にも言わなかったよ、ユリカ。
そしてごめんね・・・マリア。
これが私の日記と記憶に残る真実です。
言えなかったんだよ、マリア・・君が7歳で別れた、ユリカを追い求めるから。
透明の女神、ユリカの幻影を追ってしまうから。
それだけは、ユリカが絶対にさせるなと言ったから。
マリアこそ・・希望だと言ったから。
今どこにいるの、マリア・・・読んでるのは分ってるよ。
戦い続けてるのは分ってるよ、それがユリカがマリアに残したものだからね。
一度帰って、顔を見せてね・・・逢いたいよ、マリア。
ユリカの【希望】、リンダの【夢】・・マリア。
ユリカは今も生きている、それだけは確信している。
断崖が取囲む絶海に清く咲く花・・百合香
完全で完璧な唯一の者・・透明な女神
羊水の揺り篭・・そこに響いた子守唄・・もう一度。
もう一度・・聞かせて・・お願いだから。
もう一度、もう一度でいいから聞かせて・・・永遠に愛する人・・水のユリカ。