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修了の時

灼熱の土曜の夜、フロアーの熱は上昇を続けた。

フロアーを見る純な瞳は、その世界に入っていた。

ただ心に固定観念を持たずに見る、見たままに伝えてくる唯一の存在。


「シオンちゃん、さっきは挨拶もできなくて、ごめんね」と発光しているカスミが笑顔で言った。

「こちらこそ、すいません・・先生ばかり見てて、おめでとうございます」とシオンが頭を下げた。

「ありがとう、エースに連れて来られたって事は、興味あるんだ?」と嬉しそうにカスミが言った。

「はい、先生のOKが出たら、面接受けます」と可愛く微笑んだ。

「楽しみだね~、待ってるからね」と微笑んで、フロアーに戻った。

シオンは待ってるって言われたのが嬉しかったのか、ニコニコしていた。


「今晩は、シオン姉さん、なんか凄く綺麗になりましたね~」とハルカが笑顔で来た。

「先生が抱っこで、綺麗にしてくれたよ・・ハルカちゃんも綺麗になったね」と可愛く微笑んだ。

「ありがとうございます、興味あるんですねフロアー」とハルカが微笑んだ。

「うん、凄く興味でてきた、先生のOK早く貰って、面接受けるね」と嬉しそうに笑顔で言った。

「楽しみに待ってますね」と笑顔で返して、フロアーに戻った。

シオンのニコニコが全開になった。

《シオン、人に期待されると嬉しいんだな~、本当に可愛いな~》と思ってシオンを見ていた。


時間が迫り、シオンと手を繋いで、TVルームでジャケットを取りだし。

シオンをローズに送った、ニコニコ継続中のシオンを見ていた。

『シオン、明日の日曜日、昼間何するの?』と笑顔で聞いた。

「別に・・何も予定なし」とウルで答えた。

『先生とデートしようよ・・駄目?』とウルで聞いた。

「駄目なわけないよ~、うれし~」と飛びついた。

『面倒臭いから、リアンには内緒ね、待ち合わせどこがいい?』とニヤで聞いた。

「蘭ちゃんの家知ってるよ、お迎え行こうか?」とニコニコ笑顔で返された。

『それは助かります、何時?』と微笑んだ。

「5時でも6時でも大丈夫だよ」と笑顔で返された。

『そんなに早くなくていいよ、蘭が靴屋に出かけて、朝のお仕事するから・・9時でいい?』と微笑んだ。

「は~い、先生ありがとう・・私を選んでくれて、嬉しい」とウルウルで言った。

『今はシオンと1番お話ししたいんだよ、シオンの事いっぱい、知りたいんだよ』と笑顔で返した。

ローズの前で、シオンと手を振って別れて、ユリカのビルを見上げた。

《ユリカ、俺まだまだだね、だからユリカが側にいてね、ユリカとシオンが挑戦の支えだよ》そう囁いて魅宴を目指した。


魅宴に裏口から入り、事務所は覗いたが誰も居なかった。

大ママもフロアーに出たらしく、私の裏に出てフロアーを見ていた。

大声で怒鳴る男の声がした、静かな魅宴だから目立っていた。

PGなら、そんなに目立たないし、ボーイがすぐ行くのに、魅宴は対応遅いんだ~と思っていた。

男が怒鳴り散らし、女の髪を引っ張ってフロアーに出てきた。

女はミコトだった、男は50代のスーツを着たごつい男だった。

私は襟のPGのバッチを外し、ポケットに入れて様子を見ていた。

ボーイが止めに入っていたが、魅宴のボーイは大人しく、客を止めきれていなかった。


「お前が愛想が悪いんじゃ~、こげな店のどこが高級なんじゃ」とミコトの腕を思い切り引っ張った。

ミコトは静かな強い目で、黙って男を見ていた。

《ミコト、心も強いけど・・それは逆効果だよ~》と思っていた。

「俺は市会議員やって知ってるな、潰してやるぞこんな店」と言って、ミコトに向かって唾を吐いた。

私は情報収集が済んで、ニヤニヤしながら一度入口方向に周り、そこから静かに近づいていた。

ミコトは黙って、男の目を見ている、その目が静かだった。

男はその目に耐え切れず、右腕を上げた時に私が男の腕を掴んだ。


『せっかく楽しく遊んでるのに、おじさんうるさいよ、帰れば』と腕を掴んだまま言った。

「ガキのくせに、何意見しよるんか」と怒鳴って腕を振り払った。

『ほら、殴らせてやるから、市会議員のおじさん、偉いんでしょあんた?』と微笑んだ。

「ガキ、帰らんと大変な事になるぞ」と凄んだ。


『呼べば、誰でも・・誰呼ぶの?こんなみっともない事して、女性は商品じゃないよ。

 金払えば、何でもできるわけじゃない、あんたに唾なんか、かける権利は無い。

 あんたなんぞに、手を出させる訳にはいかん。

 大切な女性達だから、必死で生きてる女を見捨てる事なんて出来んよ、ガキだから。

 女の我慢がわからん奴に、指一本触れさせんよ、汚らわしい。

 謝れよ、悪徳議員・・詫びろよ無礼を・・でなきゃ議員を降りてもらうよ。

 俺、中学生だから、何でもできるよ、そしてあんたなんぞに手は出せんよ。

 あんたに手が出せるのは、何かを持ってる人間だけなんだよ。

 何かを守ってる人間の、弱みに付け込む事しか出来んのよ。

 1対1じゃ何も出来んくせに、議員が偉いんじゃないよ、職業に優劣なんか無い。

 人間として、あんたは本気で、ミコトより上と思ってるの?

 分らないの、馬鹿でもなれるんやね議員って、どうするん?

 詫び入れんなら、明日からあんたを執拗に追い掛け回すよ。

 何処までも執拗に追う、あんたが入るビルの前で叫んでやるよ、詫びろって。

 家の前でも叫び続けるよ、詫びろって。

 逮捕できるんか?補導できるんか?・・そんなもの怖くないよ。

 嘘だと思うんなら、このまま帰れば、でも動き出したら止まらんよ俺は。

 交渉の余地は無いよ、俺は別に中学辞めてもいいんだから。

 どうするん・・無礼を詫びろよ・・プロの女性に』


完全に考えずに言えた、私は楽しくてしょうがなかった、そして男の様子を見ていた。

市会議員はワナワナと震えていた、悔しいんだろうと思って、そろそろかなと思い。

近づいて、とどめを刺した。

『な~んも出来んくせに、威張るなよ悪徳議員』と目の前で笑った。

我慢の限界が来たのだろう、私に殴りかかった。

私は弱いパンチを浴びていた、ニコニコ顔で。

『終了やな、警察行こうよ、ここには呼べんから』と疲れて肩で息をしている、バカな議員に言った。

『無抵抗の少年殴ったんや、揉み消せんよ』と笑顔で言った。

その時やっと酔いが覚めたんだろう、顔色が真っ青になった。

『行こうよ、行かんなら呼ぶまでや』と静かに言った。

「ちょっと待ってくれ」と冷静になったのか、静かに言った。

『何待つの?顔殴っといて、議員ってのはそんな権限まであるの?』と静かに聞き返した。

沈黙があり、《もういいかな~》と思って。

『おじさん、ここをチャラにしてやるよ、その代わりミコトに土下座しろ、そして俺に貸しだよ』と耳元に微笑んだ。

『30秒で気が変わるからね』と急かした。


「すまんかった、悪酔いしちょった」とミコトに土下座した。

『じゃあ営業妨害になるから、行こうか』と出口に誘った。

入口のボーイに紙とペンを借りて、議員に渡した。

『今日の日付、西暦から、名前と住所、そして殴った事、恩を一度借りますって書いて』と微笑んだ。

渋々議員が書いていた、最後までいけ好かない奴だった。

書いた紙を確認し、笑顔を向けた。

『なんか出来たら連絡するよ、選挙前までに・・次は落ちるだろうから』と微笑んで背を向けた、笑いが止まらずニヤニヤしてながら裏に戻った。


「ほら大ママ嬉しそうでしょ、貸付のエース」と真っ白なドレスを着たマミが笑った。

その美しいドレス姿に見惚れた、美しく変化する兆しが垣間見えた。

「エース、頼むからうちにおいでよ~」と大ママも笑顔で言った。

『追い出されたら、真っ先に来ますよ』と大ママに笑顔で返し。

マミの美しい姿を見て、ニヤニヤしていた。

『馬子にも衣装ですね~』とニヤニヤをマミに向けた、マミが笑顔で睨んだ。


「あの位じゃ泣かないよ、でもお礼」と言ってミコトが頬にキスしてくれた。

『あんなんで泣かれたら、張り合い無くなるよ・・次は唇にお礼を頂きます』と余裕を意識して返した。

「最後の挑戦者って、何人の女からキス貰うかの挑戦者ね」余裕で返された。

『誰にも内緒ですよ・・・正解』とニヤで囁いた。

「なるほど、PGが熱いわけだね~」と少し不敵を出して、フロアーに戻った。

この市議会議員と聞いて、策略で貰った紙切れが、この後に大きな役に立つとは考えてもいなかった。

私は、魅宴の女性に印象を付けをしたかった、ハルカと来週から来る時に楽しいように。

そして、市議会議員の貸しが欲しかった、コレクションの一部として。


「貸付のエースは、どの位貸付してるの?」とマミがオレンジジュースを飲みながら言った。

『その貸付のエースはやめてよ、人聞き悪いでしょ』とウルで返した。

『そんなに無いよ、だって権力者のじゃないと意味無いでしょ、子供が権力者には会えんよ』と微笑んで返した。

「今までで、一番の権力者は?」と興味津々でマミが聞いた。

『そりゃー、ミスター望月かな』と笑顔で返して。

『面白いのでは、○○TVの社長と○○銀行の頭取』とニヤで言った。

「お前・・何者だい」と大ママが突っ込んだ。

『つぶさに観察すると、大人は楽しいよ』と笑顔で返した。

「最後の挑戦者ね~」とマミがニヤで返してきた。


時間になって、マミと大ママと通りに出た、最高のステージが用意されていた。

人通りが恐ろしく多かった、深夜なのに熱が高かった。

『大ママ先を歩いて、人を散らせてね』とニヤで言った。

『行こうかマミ、絶対に顔を背けるなよ、泥酔者と思われるぞ』とニヤニヤで言った。

「伝説作るよ、可愛いマミちゃまの、笑顔を振り撒いて見せるよ」と笑顔で返してきた。

私は静かに抱き上げて、マミは私の首に腕を回し、前を見て微笑んだ。

大ママが前を歩き出した、それを少し空けて歩いた。


「おっマミちゃんいいね~、もうデビューかな?」と呼び込み達が笑顔で声をかけた。

「マミ~、いいね~変ってよ~」と客引きのホステス達も笑顔で声をかけた。

《さすがマミ、顔が広いし、好かれてるな~》と思いながら歩いていた。

ユリカのビルに近づくと、ユリカとリアンが待っていた。

2人で楽しそうに紙吹雪を撒いてくれた。

「マミ、綺麗だよ、良かったね」とユリカが爽やかに微笑み。

「研修に来たときより、数倍綺麗だよ」とリアンが獄炎で微笑んだ。

マミは目を潤ませて、笑顔で答えていた、その美しく変化していくマミを見ていた。

自分の選んだ道を、誇らしく歩くであろうマミを。

そして後悔ともいつか和解するであろう、芯の強い少女を見ていた沢山の笑顔に囲まれて。


『マミ、泣くなよ今だけは・・頑張れマミ』と囁いた、マミは必死で笑顔を作っていた。

PGのエレベーターに乗り、ドアが開くとボーイが整列していた。

全員でマミに頭を下げた、マミは必死だった笑顔を作るプロになったんだと、笑顔が言っていた。

フロアーに向かうと、女性が全員で拍手で迎えた。

マミは笑顔で答えていた、嬉しそうに涙をこらえて。

そしてフロアーセンターにゆっくりとマミを降ろした。

大ママとマミが深々と頭を下げた、全員で返礼した。


「マミ・・2週間本当によく頑張りました」ユリさんが薔薇の微笑で話はじめた。


「マミとケイは、私と大ママの1つの答えです。

 そして希望です・・高校も行かずに水商売を選んだ2人。

 世間に認められ辛い仕事です、理由無き中傷もあります。

 受入れて欲しい、いつの日か受入れて欲しいのです。

 そして拒否しなさい、認められる事を拒絶しなさい。

 そして人生の答えを探して欲しい、全ての人にある別々の答えを。

 恥ず事は何もありません、将来子供が出来たら自慢して教えなさい。

 素晴らしい仲間と、一緒に作ったと、素晴らしい作品を残せたと言って欲しい。

 マミ、PGはあなたを仲間として、いつでも歓迎します。

 遠慮せず遊びに来てください、同じ海流に棲む同じ流れに乗る魚なのだから。

 マミ頑張って・・PGの全員が見ています、検討を祈ります」


薔薇で微笑んで、マミを抱きしめた、マミは号泣していた。

強い言葉だった、マミとケイと本名で呼んだ、強く優しい言葉だった。


「PGの皆さん、本当にありがとうございました」大ママが挨拶をはじめた。


「私はエースと初めて話した日に、ユリに研修を頼みました。

 ケイの変化に驚いたからです、マミは魅宴では変化に時間がかかると思いました。

 そして今のPGなら、マミを受入れてくれるだろうと、大正解でした。

 マミは2週間で急激に成長しました、皆さんの姿を見たからです。

 必死に競い合う姿を、私は毎日マミが帰って来るのが待ち遠しかった。

 笑顔で沢山の話をしてくれることが、そして成長が手に取るように見えることが。

 そして最後に、エースありがとう、マミの心残りを外してくれて。

 あの日帰ってきたマミを見て、私は心が震えました。

 マミは本当に幸せ者です、最も熱いPGの姿を感じる事ができて。

 必ずそれを生かしてくれると期待しています。

 本当にありがとうございました」


大ママは頭を下げた、涙を隠さずに泣いていた。

私は大ママの心の大きさと、優しさが本当に好きだった、尊敬していたその生き方を。


「ユリさん、研修を受けて下さって、本当にありがとうございました」マミが挨拶を始めた。


「私はこの研修で沢山の事を学びました、競うとはどういう事か。

 笑顔はなぜ出るのか、そして仲間とは何なのか。

 とても考えさせられました、そして思いました、お互いを見てる者同士だと。

 些細な変化にも気付く者の事だと、べったり仲が良いのではない事に気付きました。

 私はこの仕事が今は本当に、やりたいと思っています。

 全力で取組む価値があると思っています、本当にありがとうございました」


最後は笑顔で頭を下げた、全員で頭を下げて拍手を贈った。

マミは輝いていた、肉体の強さを示す綺麗な姿勢で立って輝いていた。

「それでは、エース・・マミの源氏名を命名しておくれ」と大ママが私に微笑んだ。


『マミに初めて会った時、マミは言ったね・・私なんか目立たないと。

 俺は正直に答えたよ、マミの存在感・・・【淡い】

 それは最初のイメージから変らなかった、マミを知っていっても。

 泡い想い、男には後悔の香りがするんだよ、未熟な時期の後悔が。

 その時に踏出せなかった後悔、話かけられなかった後悔。

 リアンの店で接客してるのを見て確信した、男は絶対に忘れないと。

 ねぇマミ、自分を信じてね・・あの夜2人で見上げた夜空は忘れないから。

 マミいつの時も忘れないで、マミの存在感・・淡い。

 それは圧倒的な存在感だと。

 

 淡い色彩の代表、桜・・桜は散る儚さが命と言われる。

 散り際の美学に心を奪われる、しかし散らない・・強い意志ある花は散らない。

 淡く永遠に咲く、唯一散らない心に咲く淡き桜。

 過去を想わせ、未来に咲き続けて欲しい・・マミは未来に咲く。

 未来の未に咲くで・・ミサキだね」 


笑顔でマミを見た、マミが私に歩み寄り抱きしめてくれた。

「私が囁いたの聞こえてたの、いるか岬の話の時に。

 岬の命名が素敵だって言ったの・・岬を好きになったって言ったの聞いてたでしょ」とマミが言った。

『好きになってくれて、ありがとうマミ・・岬の命名の箇所も俺が作ったんだよ』と囁いた。

「やっぱり、そうだと思った・・それを私にくれるのね・・ミサキ、本当に素敵、ありがとう」と言って強く抱きしめた。


『ミサキもう1つ意味があるんだよ、ユリカのユリが咲く峠を走るとね、ナギサがあるの、その先にミサキがあるんだよ』と言って。

『がんばれミサキ、続いてるんだ魅宴の世界も』と言って抱き上げた。

マミは美しく泣いていた、降ろしたくなかった。

マミとの離れるのがやはり、寂しかった。

しかし一人去り、また現れる・・最新型の外国製・・緑の瞳の挑戦者。

最強のパワー・・マチルダ。


ハルカとミサキは昨年から高校に通っている。


後悔したからではない、経験したいからだと言う。


同級生の若者達に絶大な人気がある、当然だろう潜り抜けた修羅場が違う。


同級生の若者は幸せである、その偉大な2人に相談できるのだから。


ミサキの名前はマミのi言う、いるか岬の呟きで、繋がっていた。


あのとき3人娘に伝えたくて、アドリブで入れた岬の命名。


それに反応した、マミの淡い光が忘れられなくて贈った。


マミが去りそして訪れる、変化の波、グリーンの瞳。


マチルダが近づいている、微笑みながら目指している。


PGとだけ呟きながら・・・。

 

 





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