表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/454

白い弾丸

土曜の夜の10時過ぎ、人通りは最高潮を迎えていた。

祭りの影響もあり人であふれていた、私は小さく華奢な女に上から唇を重ねていた。

人々の視線に晒されて、心のどこかで自慢していた聡明な女神を。

ユリカも瞳を閉じて、伝えてくれた・・私が必要だと。


唇を離し、ユリカを見ていた、きつく抱きしめたままで。

ユリカが目を開けて微笑んだ、爽やかに深い瞳が見ていた。

「戻ったでしょ~、やっと・・世話がやけるね~、嘘まで言わせて」と爽やかテレを出した。

『ユリカ本気だったもん、嘘じゃなかったもん』とウルですねてみた。

「何故なのか、200字以内で述べよ」と余裕の表情を作って、可愛く使った。

『左の眉が下がらなかった』とニヤニヤで囁いた。

「それ、本当の話だね、本当だね?」とユリカが珍しく2度聞き返した。

『ユリカ、今のこの嬉しい気持ちを取っときたくて、気持ちを読まないんだね』とニヤして。

『可愛い奴だな、ユリカ・・本当だよ』と耳元に囁いた。

「帰って、早急に研究する」と爽やかニヤを出した、私はユリカを抱き上げた。

エレベーター前でユリカが降りた、私に微笑んだ。


「リョウは強敵だね、でも凄く良い子だね・・ミコトが泣くの見たことないから、よろしく」と爽やか笑顔で手を振った、手を振ってユリカと別れた。

《まだ、早いな~、どっか遊びに行こうかな~》と思って歩いていた。

完全に未熟な自分に戻っていて、映像はもう出ないかもな~と思っていた。

それが嬉しくて、帰りたくなかったのだ、そして現れる回復の妖精が走ってきた。

手を大きく振りながら、最大級の喜びの笑顔で走ってきた。

「せんせ~い、何処行くの?遊んでるんだ~」と腕を組みながらシオンが言った。

『シオンは帰るの?』と笑顔で返した。

「ローズ多くて・・疲れたから脱走てきた」と可愛く笑った、私は笑顔で返していた。


『シオンは短大でたら何するの?目標は?』と優しく聞いてみた。

「通訳になりたくて、英語が好きなの、心が安心できるの英語で話すと」と笑顔で言った。

私は驚いてシオンを見ていた、話の内容でなく言葉の流れに。

《自分の自信のある話をする時は、こんなに流れるように話すのか!》と思っていた。

『素敵だねシオン、俺も今日アメリカ人と会って、英語が話せたらな~って思ったよ』と微笑んだ。

「そっか~、リンダちゃんアメリカ人なんだ~、素敵な人だね」と笑顔で返してきた。

『どっかで見たの、リンダと俺を?』とニヤで聞いてみた。

「先生またからかって~、お話しした後見せてくれたでしょ、リンダちゃんとの事」と笑って。

「だから、先生が遠くに行きたいって言ったから、シオン行かないでって言ったよ」と可愛く微笑んだ。

私は完璧に何かに包まれていた、真っ白い暖かい何かに。

《俺は大きく間違ってるのか、シオンの事を》と思って子供のように、嬉しそうに笑うシオンを見ていた。

【素敵な魅力です】と言ったユリさんは、どこまでシオンを深く見ていたんだろう。

そう思い、私はその計り知れない純な妖精を見て、嬉しくなって笑顔になった。


「先生に会うまでは、日本語が嫌いだった・・嫌な事が多かったから。

 私の家の近所に、教会の牧師さんがいてね、その人外人さんでね。

 来たばかりの時、日本語が全然駄目で、私が中2の時で牧師さんに日本語教えて。

 牧師さんが英語を教えてくれたの、だから牧師さん今でも日本語変だけど。

 私、英語だけは出来るんだよ、でも使わないと忘れるから。

 忘れたくないの、心を救ってくれた言葉だから」


シオンが可愛く微笑んだ、流れる言葉だった、まるで歌うようだった。

そしてその時私は気付く、シオンの名前を。

『シオン、シオンって源氏名、漢字で書くの?』と笑顔で聞いた。

「うん、詩に音でシオン・・ユリカちゃんがつけてくれたのだ~」と可愛く威張った。

『最高の名前だね、詩音・・ユリカ凄いな~素敵な響きだ』と正直な感想を、ユリカにも届くように言った。

ユリカの凄さをまた見せ付けられた、そして感動していた、奥深い愛情ある名前に。


『シオンは外国に行きたいの?』と笑顔で聞いてみた。

「自分の貯めたお金で、自分の時間で行きたいの、ゆっくりと見てみたい自分の流れで」と微笑んだ。

何度目だろう、私の驚きは・・完璧な歌だった。

そしてその言葉は【詩】だった、心の表現方法が詩なのを感じて、また感動していた。

そして調子に乗っていた自分に気付いた、ユリカに褒められ、私は有頂天だったと。

【シオンには勝てない】そう言ったリョウの言葉を思い出して、ハッとした。

《あの言葉は、猟の言葉だった、得体の知れない猟が勝てないと言ったんだ、シオンを》と思いながら、シオンを連れてPGに方向を変えた。

《必要になる、近い将来PGにシオンが絶対に必要になる》何故かそう確信的に思っていた。


『ねえシオン、今から沢山時間をかけて、先生と色々話しをしようね。

 それでシオンがシオンの好きなように、誰とでも話せるようになったら。

 蘭ちゃんと一緒に働いて、お金を貯めないかな?

 シオンは絶対みんなに愛されるよ、そしてユリちゃんもいるから怖くないよ。

 どうかな~、考えてみてね・・・シオン』


笑顔で優しくシオンに囁いた。

「シオンにいつか出来ると思う?先生が出来ると思ったときに言ってね、シオンはやりたいから」と可愛く微笑んだ。

『出来るよシオン、絶対に近い将来シオンは出来るよ』と笑顔で言った。

そして問われる私の未熟を、白い弾丸が飛んでくる。


「先生が映画見せてくれた時、どうして蘭ちゃんと離れると思ったの?

 そこだけシオン分らなかった、だって先生が行きたいって言ったら。

 蘭ちゃん凄く喜んで自分の用意をするよ、蘭ちゃんって心に従う人だもん。

 蘭ちゃんはシオンの目標だから、分るんだよ。

 絶対そうする、先生は間違ってるよ・・蘭ちゃんは1番に先生を考える。

 先生と一緒だよ、だから絶対先生を引っ張って、世界を巡るよ。

 そしてリンダちゃんは、蘭ちゃんに会った時に思った事が現実になるんだね。

 リンダちゃんが思った、この人と旅をしたいって感じた事が」


私は泣きそうだった、シオンに何発も白い銃弾を撃ち込まれて。

シオンは可愛い顔で、私を見て笑顔で返事を待っている。

シオンを心配させたくなくて、私は涙を我慢できた。

『どうして、蘭と会った時の、リンダの気持ちが分ったの?』と笑顔で優しく聞いてみた。

「えっ、リンダちゃんがそう言ったよ、先生英語少し勉強しなさい」と可愛く睨まれた。

『すいましゃーん』とウルで謝りながら、シオンを見ていた。

そして私は再び反省していた、自分の自信過剰な心を。

《リンダの旅の意味からすれば、俺の何十倍も蘭の方が必要だ・・あの青い炎が》と思っていた。

『シオン、ごめんね・・先生間違ってたよ・・ありがとうシオン』と微笑んだ。

そしてまた問われる、私の未熟をシオンが白い弾丸で問う。


「じゃあ、教えて・・どうして・・・なぜ?

 先生は猟ちゃんが怖いのか教えて、猟ちゃん助けてって言ったのに。

 どうして怖がるの、シオンじゃ引っ張る力がないのに。

 あんなに出たがってるのに、シオンやユリカちゃんじゃ力が足りないのに。

 先生しか引っ張れないの分って、猟ちゃんが頼んだのに。

 どうして、怖がるの?・・なんで先に怖いと思うの?

 あんなに傷ついて、泥だらけで、やっとあそこまで来たのに。

 先生を見つけて、あんなに猟ちゃん喜んだのに。

 どうして、怖いの・・・シオン分らない!」


シオンが泣きながら強く言った。

シオンの強い歌が、心に響き渡り、私は苦しかった。

私は限界を感じて、シオンを抱き上げて、裏階段を頂上まで登った。


『シオン、先生分らなかった・・怖いものを勝手に自分で作ってたよ。

 自分の作ったのが、絶対間違ってないと思ってたよ。

 猟の手は出たくて頑張って登ってきて、怪我してたんだね。

 奥に引っ張ろうとするのは、出たいからなんだね。

 だからシオンは洗ってあげたんだね、先生また間違ってたね。

 先生は猟ちゃんの手は、引きずり込もうとしてるのかと思ったんだよ。

 シオン、大丈夫・・先生が潜って後から猟ちゃんを押して。

 最後に引っ張り上げるからね、心配しないで』


優しく笑顔で言って、シオンを見た。

「うん、頑張ってね先生・・シオンがついてるよ」と涙目で可愛く笑った。

その時の私にとって、どれほどこの言葉が、心強かったか表現できない。

『シオン、ありがとう・・少し充電しなさい』と優しく囁いた、シオンは笑顔で頷き瞳を閉じた。

そして私は思っていた、今までの事を。

私が解放したと言われる、カスミやユリカやナギサの事を。

今の私のように、言葉に撃たれたのだろうかと思っていた。

私の言葉がシオンの言葉ほど、強かっただろうかと自分に問いかけて、自信の無い自分を見た。


《シオンには、固定観念がないんだ。

 イメージなどに左右されないんだ、だから物事をそのまま見る。

 だから全てを直接見れるんだ、俺は先に頭にある経験に照らし合わせてる。

 不必要なイメージが多すぎる、捨てないとこれ以上は望めないのかもしれない。

 自分では好奇心と思っていた、人から探究心と呼ばれるもの。

 それを捨てれない以上、いらないイメージを捨てないと、入りきらない。

 俺の凡人の頭には・・天才のリンダに追いつこうと思ったら、捨てるしかない。

 俺は心で常に追えばいいんだ、リンダを豊兄さんと同じ位置づけにすれば良いのか。

 そうすればリンダに会える、堂々と会えるよね・・ユリカ》


そう思って、遠いユリカの店の、ぼんやりと見える明かりを見ていた。

シオンが目を開けて、私に微笑んだ。

『シオン、猟ちゃんかわいそうだから、絶対助けてあげるね』と笑顔で言った。

そしてとどめを刺される、シオンの白い弾丸が私の心に深く刺さる。


「先生・・人を【かわいそう】って言ったら駄目だよ。

 先生が【かわいそう】って言って良いのは、蘭ちゃんにだけだよ。

 【かわいそう】って言葉は、他の人には使ったら駄目だと思う。

 その人の事をそれからずっと面倒見る人じゃないと、言ったらいけないと、シオンは思う。

 シオン【かわいそう】って言われて、沢山傷ついたよ。

 言うだけだから、言って自分が満足するだけだから。

 リンダちゃんは絶対に言わないと思うよ、どんな境遇の子供に会っても。

 その言葉は言わないよ・・だって自分が負けを認める言葉だもん。

 その言葉を使うぐらいなら、行動するよリンダちゃん。

 シオンはそう思う、人は強くないけど・・弱くもないと思う。

 【かわいそう】じゃない、そう言う人は・・理解してないだけだよ。

 理解しようとしないだけだよ、弱い人の言葉だよ。

 弱い人が、もっと弱い人に言う言葉だよ。

 だからシオンは・・先生には使って欲しくない!」


シオンの涙の叫びの白い弾丸が、私の最も深い所まで入った。

私はゆっくり階段に、シオンを抱いたまま座った。

そしてシオンを抱き寄せて泣いた、未熟な自分が悔しくて。

シオンの言葉が嬉しくて、泣いていた、数時間前にカスミといた同じ場所で。

シオンはハンカチを出して、私の涙を拭いてくれていた。

「もう、泣かないで先生・・ね・・ね」と可愛く微笑みながら。

それを見ながら私は思っていた、シオンのトラウマをもし外せたら。

どんな素晴らしい女性が、現れるんだろうと思っていた。

私に想いのままを話すように、誰にでも話せるようになったら。

この時私は初めて見つける、その人に届くかもしれないと思わせる女を。

《シオンなら・・薔薇に届くかもしれない》そう思っていた。

笑顔で涙を拭いてくれる、シオンを見ながら。


『シオンありがとう・・先生シオンに、ど~んって撃たれたよ・・忘れないよ、シオン』と笑顔で立って、シオンに手を出した。

「シオンなんか先生に、ど~んど~んど~んって、沢山撃たれたよ」と可愛く笑って手を繋いだ。

階段を2人で降りて、TVルームでマダムに言った。

『マダム、シオンちゃんにフロアー見せて良いかな?』と笑顔で聞いた。

「もちろん、いいよ・・シオン綺麗になったね~」とマダムが微笑んだ。

「エースが綺麗にしてくれました~」とシオンが笑顔で返した、マダムも松さんも笑顔で見ていた。


私の指定席にシオンを座らせると、興味津々でフロアーを見ていた。

蘭が素早く見つけて、歩み寄った。

「シオンちゃん、どうしたの?エースにスカウトされたの~」とシオンに満開で微笑んだ。

「うん、もう少し勉強したら、蘭ちゃんと一緒に働けるようになるって言われたの~」と可愛い笑顔で返した。

「楽しみ~、待ってるね~」と満開で微笑んで、戦場に帰った。

シオンのフロアーを見る顔が楽しそうで、私も楽しい気分で見ていた。

9人衆のシオンを意識するのが分った、かなり気にしながら見ていた。

《待っとけよ、もうすぐ最強の爆弾を投下してやるから》とニヤをしながらそれを見ていた。

フロアーの熱は冷める事無く、マミのいない場所には、シオンが座っていた。

その可愛い笑顔で、純な瞳で見ていた、近い未来の自分の姿を。


シオンはその年の11月22日に、PGのフロアーデビューする。


そして私を驚かせ続ける、その可愛さと天然と歌の言葉で。


シオンは翌年の4月に、カスミを指名で一度抜く。


その時のカスミは凄かった、シオンと休日をずっと過ごした。


カスミが辞める少し前に、私にこう言った。


「ユリさんでも追ってみたけど、唯一人追えない女がいた・・・シオン」


「完敗だった、女としても人間としても・・だから私はここまで来れた」


カスミは輝きながらそう言った、嬉しそうな笑顔で。


シオンは約3年PGで勤めた、そして海を渡った。


永い旅だった、ニューヨークのリンダの家に寄って。


リンダと2ヶ月近く旅をしたからだ。


リンダがシオンを表した言葉・・・【Pure White】


白い妖精・・歌う言葉・・観念無き世界


完璧な純粋・・詩音・・ありがとう、伝えてくれて。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ