制御
小窓から流れ込んでくる喧騒の響き、酒を楽しむ大人達の声。
制御が利かなければ破綻する、自らを制する心・・自制心。
無ければ暴走する、終着駅は無い、ただ破滅に突き進むだけ。
「カスミちゃんが、呼んでるよ~」と休憩中なのか、ハルカがニヤで呼んだ。
私は久々に控え室に入って固まった、カスミが出会った時と同じ場所で、胸元を押さえていた。
「サービス、忘れられたら困るから」と不敵で微笑んで、丸い椅子に座った。
『失礼だなカスミ、忘れる訳ないだろ』と言って近づいて、背中の編みこみをはじめた。
「きつくな、きつく縛って~」と色っぽい声を出した。
『パンツ穿いたのか・・カスミ』と耳元に小さく囁いた。
「残念、穿いたよ」と不敵で小さく答えた。
「あ~、またカスミが変な事させてる~」と蘭が入って来た。
「エースじゃないと、絞めれないって言うんですよ」とハルカが蘭にニヤで言った。
「今夜は仕方ないね~、でもカスミ忙しいから、帰ったらそのまま出なさいね」と満開ニヤで言った。
「了解」と全開不敵ニヤで返し、「蘭姉さん、自分で出来ない事は頼んでいいんですね~」と笑顔で言った。
「しょうがないね~今夜は、私も同じ事帰ってするから」と蘭も満開で微笑んだ。
私が縛り終わり、カスミを見た。
「うん、良い感じ、次は危ない無駄毛を剃ってくれ、下半身は敏感だから注意しろよ」と最大限のパワー全開不敵で言った。
『うん、どれで剃るの?』と私もニヤニヤで蘭を見た。
「だめ~~~、それは私には恥ずかしくて、出来ないから」と蘭が満開で睨んだ。
「話の飛躍が凄すぎて、まだついて行けない」とハルカが笑って、フロアーに戻った。
カスミが靴を履き、鏡で全身をチェックした。
「リンダ、素敵な人だったね、雑誌も見せてもらったよ」と蘭が満開で微笑んだ。
『うん、忘れられない存在になったよ、四季に感謝した』と微笑んで返した。
「良いもの、貰ったんだね」と蘭が満開継続で私の目を見て言った。
『うん、素敵なものを貰ったよ』と笑顔で返した。
蘭の鋭さが嬉しかった、愛されてる実感に包まれていた。
蘭がフロアーに、満開笑顔で手を振って戻り。
カスミが衣装に納得したらしく、化粧の最終仕上げをしていた。
「リョウを見て何感じた、あんだけ抱っこしてたら感じたろ」とカスミが鏡に映る私に言った。
『難しい人だね、どれがリョウなのか分からない感じ』と真顔で答えた。
「全部リョウなのさ、私もそうだったよ酷い時は」とカスミも鏡に真顔で言った。
『そっか、そうなんだね』と笑顔で返した、鏡に映るカスミも笑顔だった。
カスミが仕上がり、マントを纏った。
「少し早いけど、行こう、様子見たいから」とカスミが笑顔で言った。
腕を組んで、人混みを歩き来賓席のテントの椅子に、カスミを座らせた。
「カスミ、こっちにだけ衣装見せろよ」とリアンが言った、全員が笑顔で見ていた。
カスミが立って、五天女を向き、不敵をだした。
「ジャジャーン」と言って見せた、五天女が驚いて、笑顔になった。
「そこまで、そんな服で出れるのか~、そこまで行ってるのか~」とリアンが獄炎ニカで言った。
「エースが、これが好きだって言うから~」とカスミが全開不敵で笑った。
「似合うのが凄いよ、いやらしさまで消せるし」と大ママが微笑んだ、カスミが嬉しそうに微笑んで返した。
私が立ってステージを見てると、後から忍び寄った。
「ピーチは遠いよ、抱っこで行ける?」とリョウが後から耳元に囁いた、完全に胸が背中にあたっていた。
『素敵なサービスだね、リョウ』と言って振向いて、固まった。
その派手な化粧が細面の顔にマッチして、頭に乗せてる虹色の鳥の羽飾りも映えていた。
『可愛いね、リョウ・・覗かせて』とニヤで言った、リョウが涼しげニヤでマントの襟首を右手で持った。
私がニヤニヤで覗いて、固まったリョウの左手がマントの中でサンバっぽい衣装を引っ張っていた。
完全に小さなブラで隠された、綺麗な形の胸が全て見えていた。
「大変、エースが倒れる・・救急車を呼んで」とユリカが爽やかニヤで言った。
『ギリギリセ~フ』とユリカに必死に笑顔で返した。
『リョウ露出狂だね・・今は誰?漢字・ひらがな・カタカナ、どのリョウ?』と微笑んでみた。
リョウはハッとして私を見て、なぜか嬉しそうに笑った。
「今は漢字の・・すずしいの、涼」と涼しげな笑顔で答えた。
『漢字が可愛い露出狂ね、できればいつも漢字ちゃんがいいな~』と微笑んだ。
「そうはいかないんだよ・・主役は私だから」と耳元に囁いた。
恐怖が全身を走った、声のトーンも声質も全く違う声だった。
その声は狭い洞窟を這い上がってくるかのように、反響しながら上がってきて耳に響いた。
小さな無数の虫が直接鼓膜に張り付き、身悶えるような響きだった。
そして完全に誘った、称号を捨てろと、でなければ来いと手を出した。
私には薄い映像が映っていた、血と泥に塗れた女の傷ついた手が。
リョウは体を離し、私に微笑んだ、その涼しげな瞳にに映った物を見て、凍りついた。
私の姿が反映されて映っていた、その私の足を女の手が掴んでいた。
映像に入り込んで来るのか、それとも恐怖が見させるのか。
『あなたは、だ~れ』こう言うのが精一杯だった、瞳に掴まれていた。
「漢字だよ・・狩猟の猟だよ」と真顔で言って、ステージの方に歩き出した。
『難解なり・・・リョウ』と呟いて、笑顔がこぼれた。
「やっぱり危ない男だね、変な性癖持ってるでしょ?」とホノカが目の前に立っていた。
大きなピンクの可愛い帽子を被って、可愛い化粧をして高貴に割った。
『性癖分らない・・ホノカで試して良い?』とニヤで返した。
「それはカスミに言って、絶対変な性癖持ってるから」と華麗ニヤを出した。
「普通だよ、20歳になって制服なんて着ないよ」とカスミが不敵全開で言った。
「かわいそう、似合わないのね、エース私中学のでも大丈夫だからね」とホノカが私の手を取って言った。
『うん、嬉しいよ・・ホ・ノ・カ』と言ってウルウルをした。
「ホノカを良いって言ってないぞ・・エース」と声がした、ジンが立っていた端正な顔で笑っていた。
『ジン、こんばんわ・・ホノカが心配で来たんだね』と笑顔で返した、ジンは五天女に頭を下げて、私に微笑んだ。
「危険な匂いがしたんだよ、最後の挑戦者が挑まなくていいのに、ホノカを知ろうとしそうで」と笑った。
『やきもちだね、ジン』とホノカにニヤした。
「なんで妬くのよ・・NO1が、私なんかに本当は興味ないのよ」とホノカが華麗ニヤをした。
『ホノカ、嘘ついたね、右の鼻だけ動いたよ』とニヤで返した。
「な、なに言ってるのよ、右だけ動くわけないでしょ」とジンと手を繋いで歩いて行った。
「ホノカの負けね、よく短い時間で研究したね」とミチルが微笑んだ。
『得意ですから、研究観察』と微笑んで返した。
「てことは、ここに居る全員の癖は見抜いてるんだな」と立ち上がりながら、カスミが言った。
『大ママとユリさんは分らない、嘘つかないから・・あとシオンも、そして蘭も』と言ってニヤで返した。
「私のを言ってごらん」とリアンが獄炎で言った。
『リアンが1番簡単だよ、拳を握る・・親指を中に入れてね』とニヤで返した。
「えっ!」とリアンが言って、「正解よリアン」とユリカが爽やかニヤで言った。
「自分で気付いてなかったんですね~」とユリさんが薔薇で微笑んだ、全員のニヤが飛んだ。
「きゃしゅみにまで、ニヤされた」とリアンが笑顔のウルをした、皆で笑った。
笑い声に送られて、カスミが私に不敵を出して、ステージ裏に消えた。
「せんせーい、終わったよ、頑張ったよ、疲れたシオン」とシオンが笑顔で来た。
私はその場でシオンを抱き上げた、シオンが嬉しそうに笑っていた。
「酔っ払い酷いね~、あんな事言って」とシオンが頬を膨らませた。
『シオン、酔っ払いが酷いんじゃないよ、制御が利かない人が駄目なんだよ』と微笑んで返した。
「制御ね~、かからない人いるよね」と可愛く笑った。
『シオンは心に制御かけたら駄目だよ、今までかけ過ぎてて、混乱してたんだから』と意識して笑顔で言った。
「かけなくていいの?でも・・」とシオンが考えた、可愛くて少し引き寄せた。
『シオン、シオンの事変に言う人は、シオンが羨ましいんだよ。
シオンみたいに正直に生きれないから、だからシオンを悪く言わないと、自分が嫌になるんだよ。
シオン、この前言ったように、シオンはバカじゃないよ。
心が白いんだよ、素敵な事なんだよ、だから心に制御で色を塗らないで。
シオン、白も色なんだよ、誤解してる人が多いけど、白は色だよ。
子供も頃から絵を書くときに、白い紙に書くから、白が無色と思ってしまうんだよ。
シオン、白は色だから何かを無理に、塗らなくていいんだよ。
シオン、心を制御しないといけない人は、他人を傷つける可能性があるからだよ。
シオンは誰も絶対に傷つけないから、心に制御なんて必要ないんだよ』
笑顔でシオンの可愛い笑顔に言った。
「うん、先生・・やっと分ったよ、白は塗らないでいいんだね」と可愛く笑った。
「完璧な同調、と言うより1つになってた・・感動したよ」とユリカが爽やかに笑った。
「先生、リアン泣かせた~」とシオンが笑った。
「シオン、エースだけは、私を泣かせていいんだよ」とリアンが泣いていた。
その涙を見ていた、妹をどれだけ愛しているのかが伝わって、嬉しかった。
「でも、シオンおバカな発言するから、しょうがないけどね」と笑った。
『シオン、おバカな人って、知ろうとしない人だよ。
シオンは知ろうとして、人と話すんだから、良いんだよ。
誰も最初は知らないんだよ、先生なんか子供だから、知らない事沢山あるよ。
だから知りたいんだよ、シオンがどうして人と、お喋りが上手に出来ないのかな~とか。
どうしてシオンが自分の事、おバカって言うのかな~とか。
シオンが何が悲しくて、何に寂しいと思って、何が楽しいのかな~とか。
それが知りたいんだよ、難しい計算問題の解き方が、知りたいんじゃないから。
シオン、自分をおバカって言うのは、禁止にするからね。
シオンが変な事言ったと思ったら、こう言うんだよ。
シオンは知らないから、知りたいから教えてねってね。
そうしたら人は、シオンをおバカって言わないよ。
今はシオンが先に、自分をおバカって言って、逃げてるだけなんだよ。
シオン、逃げたら楽しくないよ、シオンが逃げなければ沢山友達できるんだよ。
向こうの方から、友達になってシオンって言ってくるよ。
シオン、友達が宝物になるよ。
リアンとユリカを見てごらん、楽しそうだろ。
一人で良いから、最初に友達を作ろうね、それが宿題だよ。
シオンが教えてって言った時に、笑顔で教えてくれる人と、友達になってみようね』
「うん、がんばる~」と言ってシオンが私を見ていた。
私は可愛いシオンの潤む目を見て、感情的になっていた。
リンダのいない寂しさが私に襲ってきた、一人でピンクのリュックを担ぐ背中が見えていた。
映像の制御が出来ない事に気付た、どうしようも無い寂しさに襲われていた。
自分の中にある、リンダの存在の大きさに気付いて動揺していた。
それは恋愛対称でない、自分の生き方として存在した。
もしリンダが、私が必要だから一緒に行こうと誘いに来たら、行ってしまう自分を感じた。
世界に夢を巡らせていた、世界中の子供に会いたいと思った。
もしかして俺でも伝えてやれる事が、あるんじゃないかと感じた。
シオンが愛おしくて、伝えたことで、リンダの本質が少し垣間見えていた。
自分のその旅立つ欲求が怖かったのだ、蘭を愛する事と両立しない事が。
定職など遠い、中学生の私に、生きる本質が迫ってきた。
リンダという、最高峰に立つ女神に会って。
そしてあの記事を読んで、感じていた、なぜリンダと出会ったのかと。
そして私はまた間違いに気付いた、知らなかったと感じた。
なぜ蘭はあの日、徳野さんと揉めたのかと、今の蘭を見たら職場放棄は信じられない。
そして、なぜ若草公園に来たのかと、アパートにも逆方向で、飲み屋も存在しない所に。
運命論を語るなら、そこからだろうと感じた。
その根本的な何かを知らないで、リンダで迷っても仕方ないと感じた。
リンダに合えたのも、蘭を愛したからだと感じて、戻った自分を感じていた。
「お帰り先生、遠くに行かないでね、シオン寂しいから」とシオンが微笑んだ。
私は包まれていた、シオンの感性に、その暖かく鋭い白に。
『ただいまシオン、ありがとう・・行かないよどこにも』と笑顔で返した。
視線を感じてユリカを見た、爽やかな笑顔で頷いた。
その時ステージに最終組3人が上がった、一時審査順にリョウ・ホノカ・カスミの順に並んだ。
その荘厳な光景を見ていた、まだ3人ともマントを着用していた。
それでも、圧倒的に華やかだった。
「はい、いよいよ予選TOP3の登場で~す」と司会者が大声で言った、大きな拍手が響いた。
3人はなぜか全員ニヤニヤしている、お客も時間がかなり経過して酔いも回ってきていた。
「ではリョウちゃんから、マントを取ってマイクに向かって一言アピールして下さ~い」と司会者が言うと音楽が流れ出した。
リョウがマントを投げた、リオのカーニバルさながらのブルーの衣装が登場した。
上下繋がったスパンコールだらけの衣装で、お腹の所が開いていた。
その開きの下がへそよりかなり下で、見えるのではないかと思うほどの開きだった。
加工して開いたスカートの下が見えていて、そのスタイルの良さを主張していた。
両手を頭の上で繋ぎ、綺麗に処理された脇をあらわにして、激しく腰を振りながらマイクに近づいて。
「キャモ~ン・・ヘイ・チェリーボーイ」と少し上を向き、色っぽく言って腰を振りながら帰った。
会場は圧倒されていた、水商売関係者だけ大うけで笑っていた。
そしてホノカがおしとやかにマントを脱ぎ、正座して綺麗にたたんでから立ち上がり。
大きなピンクの帽子も被っているのに、夜空を見上げ眩しそうに手を翳して。
ピンクの日傘をさして、微笑みながら歩いて来た。
これでもかという程のピンクのフリフリワンピースに、ピンクのバッグに靴。
それが大袈裟に見えなかった、ホノカが着ると普通に可愛いのだ。
マイクの前まで来て、モジモジした。
「えっと~、えっと~・・ごめんなさい恥ずかしい」と言って後に走って帰った。
私の後ろの五天女が爆笑して、私もその演技に笑っていた。
そしてまたカスミが静寂を作る、マントを投げて出た衣装が会場を圧倒した。
どこで借りたのか、玩具の大きなマシンガンを担いだ、その姿は雑誌のグラビアのようだと思っていた。
大きなモンローウォークでステージの右から左に歩いて、マイクの前に来た。
そして全力最強不敵を出して、マシンガンを構えた。
「私が欲しけりゃ、死ぬ気でおいで」と完璧な不敵で言った。
五天女だけが笑いが止まらずに、楽しんでいた。
「あの3人はやってくれるんですね、来年は開催されないように」とユリさんが楽しそうに薔薇で微笑んだ。
「しかし、3人も同時に出るなんて、面白い時代になるな~」とリアンも笑いながら言った。
《なるほど~、最初のニヤニヤはぶっ壊すのが楽しみでしてたのか~》と私も笑いながら思っていた。
「それでは、少し質問してみましょう」と恐々の司会者が言った。
リョウは小さく腰を振りながら立ち、ホノカは俯いて手を右手で太股にモジモジを書き、カスミはマシンガンを構えたままだった。
「では会場の皆さんが聞きたい質問を、アンケートで頂いてます・・1つ目は好きな男性のタイプお願いしましょう」と司会者が言った。
リョウ・・「機能できればOK」
ホノカ・・「私の事を一日1000回可愛いって言ってくれる人~」
カスミ・・「財産があって長生きしない男」
「次に・・嫌いな男性のタイプお願いしま~す」司会者も必死になってきた。
リョウ・・「機能できない男」
ホノカ・・「私の事を一日999回しか可愛いって言えない男~」
カスミ・・「貧乏で長生きする男」
「さ~盛り上がって来ましたね~次は好きな食べ物で~す」少し司会者が疲れてきていた。
リョウ・・「ウサギ」
ホノカ・・「スズメ~」
カスミ・・「カエル」
「次は会場の皆さんから質問をいただきましょう」と言って、手を上げた中から若い男を指名した。
「どういう時に男の魅力を感じて、どういう時に幻滅しますか?」とバカな質問を笑顔でした。
リョウ・・「上手い時感じて、下手な時覚める」
ホノカ・・「眠ってる時感じて、起きてると覚める」
カスミ・・「後姿で感じて、前を見て覚める」
五天女は笑い死ぬんじゃないかと思うほど、笑っている。
「残念ですがこの辺で、最後に将来の夢をお願いしま~す」と司会者が逃げに入った。
リョウ・・「玉の輿」
ホノカ・・「お姫様」
カスミ・・「未亡人」
「ありがとうございました~投票用紙をお持ちの方は残り10分になりま~す」と司会者が必死で締めた。
「先に帰りますね、カスミちゃんあのままで、フロアー出てもらってね」とユリさんが悪戯っ子を出した、私もニヤで頷いた。
大ママ、ミチルを見送り、リアンが来てシオンを見た。
シオンは私に抱かれ、かなり前から眠っていた。
「ありがとな、シオン幸せだよ」とリアンが言って、シオンを起こして、私が優しく降ろした。
「先生、またね~」と言った、シオンとリアンを見送った。
「焦ったら駄目よ、制御できるようになるから、それとリンダで悩まないでいいのよ」とユリカが微笑んだ。
『うん、大丈夫・・リンダが心に居る事が嬉しいよ』と微笑んで返した。
「うん、いよいよマミちゃんの源氏名が聞けるのね」と爽やかニヤで言った。
『ご期待あれ~』と笑顔で言って、ユリカに手を振って別れた。
ステージに司会者が上がり、私は用意していたタイガーマスクのお面を準備した。
「発表しま~す、優勝は僅差でしたが・・・・カスミちゃんで~す」と叫んだ。
カスミが笑顔でステージに上がった、そしてトロフィーを受け取って、挨拶を促された。
私はTシャツを脱いで、タイガーマスクを付けた。
カスミは私に気付き、最強不敵で笑って、マイクに向かって。
「タイガ~、助けて~」と叫んだ、私は走ってステージの前に行き。
カスミに両手を広げた、カスミが笑顔で腕を首に回し抱かれて、そのカスミの上にトロフィーを置いた。
カスミを抱いたまま、会場を後にした。
『カスミ、タイガー上にあげて』と息苦しいので頼んだ、カスミが笑顔で上げてくれた。
カスミの顔に疲れの影が見えた、目を閉じて静かになった。
私はPGを通り越して、最上階まで上がって夜景を見ていた。
南風が吹いてきて、微かに夏の終わりを感じていた。
カスミの綺麗なストレートヘアーがサラサラと揺れて、疲れの影を見せた。
「心配するなよ、大丈夫だから・・嬉しかったよ、戻ったと感じたよ」と目を閉じたまま囁いた。
カスミがお腹の上のトロフィーを下に降ろして、目を閉じたまま微笑んだ。
「姫は目覚めん・・どうするのかな~?」と静かに言った。
私は階段に座り、カスミを少し起こした。
『神よ、聞いて下さい、姫が起きないのです。
常に前を向き戦い続けた姫に、どうか褒美を下さい。
いつも私を助けてくれる女神に、不敵の女神に。
私の愛する可愛い女神カスミに、贈ります。
【永遠の憧れ】と言う称号と・・・これを』
そう言って、カスミの唇に浅いキスをした、離れたくなくて暫く重ねていた。
カスミの感情が伝わってきて、嬉しかった。
私も伝えた【大好きだよ、カスミ】と。
夏の終わりを告げる、夏祭りの喧騒が響いていた。
私の夏物語は続く、そして挑む時も近づいていた・・猟という者に。
そしてその正体を知り、私は泣く・・号泣する。
どこかで感情のバランスが崩れていた、この時期の私は。
リンダの影響が強かった、5時間弱の関係で変化していた。
しかし私は、蘭のあの日の行動を聞いて震える。
運命を信じない私に突きつける、運命はあるんだと。
偶然の積み重ねでない、必然もあると。
そして繋がっていく、螺旋のに描かれた時間が。
上の駅の蘭から、リンダまでが繋がる。
そして足りないピースが近づいていた。
月を背負って、歩いていた・・月下の雫。
美しい幻影・・・リンダ分身・・月のマチルダ。