囚人
草木も眠る深夜の国道10号線を、タクシーが北上していた。
私の肩には生きる為の力だけを残した、可愛い人が乗っていた。
その寝顔をずっと見ていた、疲れの中に寂しさはないのかと。
タクシーが着き、必死で蘭を抱き上げて、部屋の鍵を開けて蘭の部屋に入った。
私は真暗な部屋で、暫く蘭を抱いていた愛おしくて。
『りゃん、お化け怖いかな~』と耳元に囁いた。
「おびゃけ・・きょわい」と涙目で訴えた、私は洗面所で優しく降ろして支えた。
「まっきゃなりんごをほほばりゅ~・・・」と蘭は鼻歌交じりのご機嫌で、化粧を落とした。
抱き上げてベッドに行くと、上着の長いパジャマが用意してあった。
私は蘭の頭から被せて、上着を優しく脱がせた。
「ブリャがきちゅい~」と蘭がトロンで微笑んだ。
『そこまで、レベルUPを要求するのか~』と蘭に優しく微笑んで、背中に手を回した。
何度かやって、やっと外れてベッドの下に落とした。
『りゃん、たっちしてくだしゃい』と蘭に微笑んだ。
蘭は笑顔で立ち上がった、スカートを脱がせてパジャマの半ズボンを穿かせた。
『呼びながら、待っててね』と蘭を優しく寝かせて、蘭の服をハンガーにかけた。
「みゃだ・・みゃだ・・みゃだなにょ」と声を聞きながら、ベッドに入り腕枕で引き寄せた。
『ごめんね、淋しかったね』と泣いている蘭の涙を拭いていた。
「いいことしたにょ、にゃにした?」と満開トロンで聞いた。
『りゃんのブラ外したよ』と微笑んで返した。
「いやん・・はずきゃしい」と私の胸に隠れた。
私は最高に可愛い蘭を見ながら、タイミングを計っていた。
「きゃしゅみが、すきにゃの?」と私を見た、優しいトロンだった。
『カスミ・ユリカ・リアン・ハルカ・マミ・9人衆とマダムにユリさん、そして3人娘全員好きだよ』と微笑んで返した。
「りゃんがいにゃい」と又泣いた、私は蘭の涙を拭きながら。
『りゃんは愛してるんだよ』と耳元に優しく言って、額にキスをした。
「そっきゃー、しょうだよにぇー」と満開トロンで笑った。
『蘭は、カスミが好き?』・・「しゅき」
『リアンは?』・・「しゅき」
『ユリカは?』・・「しゅき」
『ハルカは?』・・「しゅき」
『ナギサは?』・・・・・・・・・・・・・・・・・・「しゅき」と言って大粒の涙を流した。
私は震える蘭を抱きしめて、涙を拭きながら蘭を見ていた。
蘭は私に強く抱きつき、震えていた寂しくて悲しそうだった。
『蘭、ずっと側にいるから・・ゆっくりお休み』と優しく囁いて、蘭を支えていた。
《寂しいね・・蘭、友達に会えないのは》と心で囁いた。
蘭が段々静かになって、寝息を感じた。
私は不思議に思っていた、蘭と添い寝する時は気温の高いのが気にならないと。
蘭も抱かれてるのに、ほとんど汗をかかなかった。
私も蘭の香りに包まれて、目を閉じた。
瞑想の中に浮かんできた蘭は泣いていた、大粒の涙を流し寂しそうだった。
《会いに行くだけ、顔を見るだけにしよう・・ナギサに会いに行こう》と自分に誓って、眠りに落ちた。
翌朝蘭の寝返りで目が覚めた、7時20分だった。
静かに腕を抜いて、蘭を枕に寝かせて洗面所に行った。
歯を磨いて顔をチェックした、綺麗にカスミのキスマークが残っていた。
私はニヤニヤしながら、顔を洗った。
自分の部屋に戻って、窓を全開に開けて日記を書いていた。
8時に蘭の部屋の目覚ましが鳴った、私が蘭の部屋を覗くと蘭が満開で微笑んだ。
『早いね~、お休みなのに』と私は蘭に微笑んだ。
「デパートでバーゲンがあるのよ、カスミと行くの~」と嬉しそうに微笑んだ。
『そっか~、でも午後は少しはゆっくりしてろよ』と笑顔で返した。
「うん・・ブラどうしたのかな?」と少し恥ずかしそうに聞いた。
『ヨッパの蘭が、レベルUPを要求した』とニヤニヤで返した。
「そうなの~、ごめんね」と小動物で舌を出した。
『謝るなよ、楽しかったから・・でもそれ以上は要求しないでね』と微笑んで返した。
「無理かも~、怖い?」とニヤで返された。
『怖くないよ、楽しみだ~』とニヤニヤで返して、キッチンに向かった。
蘭はご機嫌で、洗面所に消えた。
朝食はご飯が有ったので、蘭の事を考えて。
お粥と鮭の切り身と漬物のみの、シンプルで軽い物にした。
蘭が満開で食卓に着き、食べはじめた。
『ホノカの感想は?』と笑顔で聞いてみた。
「驚いたよ、世の中広いね~いるんだよね、凄いのが」と嬉しそうに満開になった。
「そして、カスミと仲良くなるよ、夜街の噂になるの間違いなしだね」とニヤで言った。
『リアンがね、ミチルの店に行って、ホノカの前でPGからお祭り凄いのが出るって、わざと言ったらしいよ』と笑顔で返した。
「さすがリアン姉さん、鋭いんだよね~昔から」と蘭が嬉しそうに満開で言った。
『リアンとユリカの鋭さは怖いよ』とウルで返した。
「ユリカ姉さんは、鋭いなんてレベルじゃないでしょう」と蘭もニヤで来た。
『そうだね、昨日ユリカに褒められた、ユリカを泣かせてしまった』とニヤニヤで言った。
「なに、なに、早く言いなさい」と蘭が笑顔で急かせた。
『初めて心と言葉が重なった人に会ったって、泣きながら褒められた』と笑顔で言った。
「素敵~、最高じゃない・・よくそこまで行ったね、うんうん」と最高の満開で言った。
私も蘭のその笑顔が嬉しくて、笑顔で返していた。
9時20分にケンメリで蘭と出かけた。
『バーゲンって、開店から行くんだね?』と笑顔で聞いた。
「もちろん、だから今週は今日休んだんだから」と満開で微笑んだ。
『蘭、俺馬鹿だから聞いてなかった、蘭の誕生日?』とウルで聞いた。
「そうだったけ~、あなたに出会う少し前・・7月7日七夕娘だよ」と微笑んだ。
『そっか~、じゃあクリスマスが先だね』と微笑んで返した。
「クリスマスは?」と蘭が満開で聞いた。
『毎年贈るよ、変らぬ想いと何か記念になる物・・ずっと、永遠に』と言った時にユリカのビルに着いた。
「化粧落ちるだろ、泣かすなよ」と蘭が満開で手を振った、私も手を振って見送った。
ユリカの店の鍵を開けて、店に入った。
奥のBOXでユリカが何かを書いていた、真剣な表情が可愛かった。
『おはよう、ユリカ』と笑顔で言った。
「おはよう、私のクリスマスは?」と爽やかニヤで来た。
『同じだよ、ユリカに対しても変らぬ想いと記念になる何か』と微笑んで、隣に座った。
「うん、嬉しい~・・集中すると本当に重なるようになったよ」と深く爽やかに微笑んだ。
『ユリカのおかげ、俺は大切な事を学んだし、自分を少し信じれるようになったよ』と真顔で返した。
「本当に感動するよ、今のが重なってた・・こんなに嬉しい事ないんだよ」と可愛い笑顔で言った。
『ユリカは気付いてるよね・・抱っこしていい?』と優しく囁いた。
「もちろん」と爽やかに笑って、私の首に腕を回した。
私は優しく抱き上げて、窓辺に行った。
「本気で会うんだね・・ナギサと」とユリカが私の目を見て強く言った、一瞬で揺り篭に乗せられた。
『俺じゃあ何も出来ないだろうけど、どうしても見たいんだよ』と正直に言った。
「自分を信じるんでしょ、ミチルママが教えたんでしょ?」と優しい響きでユリカが言った。
私は完全なリラックス状態で、完全なる素直な自分を感じていた。
『そうだよ、ミチルが教えてくれた』とユリカに微笑んだ。
「その事に大きな意味があるのよ、ミチルママがあなたならもしかしてって思った事がね」とユリカが優しい波を出してくれた。
『俺は、ただ蘭やユリカやカスミの笑顔が見たいんだよ、悲しい顔は見たくないんだ』とユリカに微笑んだ。
「うん、もう少し抱いていて・・後でリアンを呼ぶから、2人で説明するね」と優しい波の連打で、私の揺り篭は揺れ続けた。
『ユリカ目を閉じて、俺はユリカの少し高い体温の方が気になるから』と微笑んだ。
「そこまで分るの・・ありがとう、本当に嬉しいよ」とユリカも爽やかに微笑んで、瞳を閉じた。
私は揺り篭が気持ちよくて、ユリカの体温が少し高い事に集中していた。
《大丈夫だね、心配するレベルじゃないね》と心で囁いた。
「うん」とユリカが優しく返してくれた。
私はユリカにリラックスしてもらいたくて、何も考えずにユリカの重みと香りを楽しんでいた。
暫くして、ユリカが降りて、電話に向かった。
「リアンすぐに、飛んで来るわよ・・凄く喜んでいたよ」と私の隣に座りながら、爽やかに微笑んだ。
リアンは5分程で来た、私の前に獄炎を強めて笑顔で座った。
「本気だねエース、蘭は逆に傷つくかもしれんよ」と真顔で言った、その美しい真顔の炎に見惚れながら。
『それでも会ってみたい、蘭の為じゃない・・自分のために』と真顔で返した。
「よし、私もミチルママやユリカに乗るよ、あんたに賭ける」と獄炎を強めて微笑んだ。
「ナギサは魅宴に18で入ったんだ。
大ママはその素質と魅力を高く買っていたんだよ、そしてPGに入った蘭を見て。
ナギサを蘭に会わせた、2人はすぐに仲良くなった。
蘭は夜街じゃ、同学年ではナギサしか友達がいないんだよ。
ユリ姉さんも私も、色々探したけど・・蘭に肩を並べられる子を探せなかった。
夜街は特殊な場所だから、レベルが違うと上の人間の負担になるんだよ。
要するに、蘭もナギサも唯一の友同士だったんだ。
ナギサは凄かった、21で魅宴のNO2に成ったんだよ。
魅宴はPGと違って、大ママは重要な客しか相手にしないから、女性同士の戦いなんだよ。
ユリカがずっと断トツのNO1だった、そしてユリカがこの店の開店で辞めたから。
魅宴は戦国時代に入ったんだ、その時に皆が気付くんだよナギサの凄さを。
ナギサは入店3ヶ月でユリカの指名で、ユリカのヘルプになった。
今で言うカスミレベルの女だったよ、蘭とは違う怖いぐらいの華があったんだ。
19歳で【夜の申し子】と呼ばれた、そして蘭に会って変化を繰返すんだ。
圧倒的な温もりの蘭を認めて、同学年の大きな存在が拍車をかける。
そして蘭とナギサは親友になり、あの季節が来るんだ。
蘭の伝説のNO1の季節が、その時のナギサも凄かったよ。
ユリカの次は私の時代だと豪語してるようだった、そこまでは順調だったんだ」
そこまで言って、リアンがユリカを見た。
「私はね、18のナギサを見た時に、この子が魅宴を変えると思ったの」とユリカが私を見ながら話し始めた。
「凄く素直な子で、でも外見がそう見せなかった。
リアンが例えた通り、あなたが出会った頃のカスミちゃんだったのよ。
蘭はあの性格だから、ナギサの悩みを1番理解していた。
でも女性では何も出来ないの、男の視線と感覚が分らないのよ。
私も色々考えたけど、出来なかった。
ナギサはまさに【夜の申し子】だったから、華やかさに隠されてしまうの。
ナギサの内面は純粋に愛を求めるのに、外見がそう見せないのよ。
私が辞めて、忙しくて・・リアンも、ローズの開店で忙しかった。
そしてその時期、蘭もあの時代が来て超多忙だったの。
その時なの、ナギサの心に入った男がいた。
でもそいつはその才能で入っていたの、NO1ホスト・・マキ。
そしてナギサを食い物にする、心も体もお金もね。
私もリアンも、当然蘭も止めたの・・でも無理だった。
その純粋な心が受入れた者を、自分自身で見つめ直す事が出来なかった。
だから蘭はユリ姉さんが復帰した時に、PGの仕事を減らすのよ。
心身ともに疲れていたの、もちろん蘭はあなたが1番知ってるように、傷もずっと抱えてたし。
そして忙しかった事を理由になんて、絶対にしないのよ・・蘭の心は。
蘭は自分を責めていたのよ、ずっと・・その人に出会うまで。
カスミを見た時に、蘭の心は躍ったはず・・でも最初は深い関わりを持とうとしなかった。
それは怖かったの、ナギサと同じ匂いがしたから。
そして出会うのよ、蘭は・・若草公園であなたに。
そしてあなたが蘭の後悔を解くのよ、傷を癒し・・そして。
カスミをあなたに委ねるの、蘭がどれほどの覚悟をしたのか想像も出来ないわ。
そしてあなたはカスミに対し、最高の答えを蘭に見せたの。
蘭は本当に嬉しかったと思うよ、そしてあなたは見せ続けるカスミの変化を通して。
蘭は今、本当の寂しさを感じている、カスミを見る度にナギサを思い出すの。
私はそれだけは分かってた、蘭のその気持ちだけは。
蘭はカスミの変化を心から喜びながら、ナギサの事で自分を責める。
ナギサの事をあなたに言わないのは。
あなたが蘭の悲しみに対しては、全てを賭けると知っているから。
蘭は絶対に、あなただけは失いたくないのよ」
ユリカも美しい真顔で私に言った。
「ナギサの心は今も蝕まれているんだよ」とリアンが言った。
「NO1ホスト・マキはその独特の才能で、女の内面に滑り込む。
しかし痛い目にあってたの、自分の名前を売るために魅宴の女を狙う。
そしてNO1だったユリカを狙うんだよ、馬鹿だから自分の才能に溺れていたんだよ。
そしてユリカに心を丸裸にされるんだ、その貧相な心を。
それでも懲りずに、ユリカが辞めるのを待っていたんだ。
狙ったのは、誰にも本質を理解されていないと判断したナギサだった。
この辺がマキの凄さなんだけど、マキの内面は薄いのペラペラの。
そしてマキは大ママと揉めるのを恐れて、ナギサをナギサ自身で魅宴を辞めさせる。
大ママは事の次第に気付いて、ナギサを夜街の主流店に勤めさせないように、指令を出したんだ。
大ママの優しさだった、魅宴に戻そうと思ってたんだよ。
でもナギサは今も囚われている、マキに操られて自分を見つめられない。
ナギサを救い出す方法は1つ、ナギサの内面に本当に入って。
中に潜むマキを引きずり出せる男・・それは一人しか出来ない。
最後の挑戦者と言われる男にしか」
リアンもユリカも私を真顔で見ていた。
私は嬉しかった、蘭が愛されている事が、何よりも嬉しかった。
『会ってみるよ、その時にしか決められない。
今回一度だけ蘭との誓いを破るよ、蘭に秘密にする。
俺は蘭の笑顔が見たいんだ、その為に最も大切なのは。
俺の存在だと信じて、今回はやってみるよ』
2人に微笑んで、決意して締めた。
「パーフェクト、今の言葉本当に綺麗に重なってたよ」とユリカが爽やかに笑い。
「私もそしてあのミチルママが期待したんだ、私もユリカも今回だけ蘭に黙っとくよ」とリアンが最強獄炎で私を見ていた。
私はナギサを感じようと思っていた、そうして無理だと判断したら諦めようと。
自分に最も大切なのは【蘭】だと、そう誓っていた。
深海の深さと、獄炎の炎の瞳に、誓いをたてた。
私はナギサに出会った時に感じる、なぜ蘭が黙っていたのかを。
私にはナギサとの最初の場面は辛かった、そして愚かにも導き出す・・捌け口を。
NO1ホスト・マキという獲物を、そして不思議な戦いの幕開けに心が躍る。
偽者に対して、自分が本物だと主張する。
マキ・・摩り替えの魔道師・・心無き言葉。
弱肉強食を自ら選んだ、弱者を見つけ。
心踊らせてしまう・・未熟な心を。