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雨の日の出会い

作者: WAIai
掲載日:2026/10/26

初冬は雨が続いていた。

皆がげんなりする中、小田翔は目を輝かせていた。

歳は14、制服をまとった姿をしている。

彼は傘を出すと、ゆっくりと走り出す。

ー気持ち良いんだよな、これが。

翔の靴は普通のものではなく、ローラーがついていて、勝手に走ってくれるのだった。

「いえーい!! きゃっほい!!」

学校帰りということもあって、翔は浮かれていた。

傘をくるくると回したり、時にはジャンプをしたりしながら、帰り道を歩いていく。

ー魔法の靴! 楽しい!!

靴は濡れることなく、冷たい風をきっていく。

皆、俯いている中、翔だけははしゃいでいた。

ー今日は塾もないし、家でDVDでも観ようかな。

スピードをあげると、いきなり角から来た女の子とぶつかりそうになる。

「あ、危ない…!!」

翔は魔法の靴をギリギリで止めると、長髪の女の子に聞く。

「大丈夫? ぶつかってはいないけれど」

女の子は同じ歳くらいだろうか。

制服に黒いストッキングを履いており、冬の装いだった。

「大丈夫です。何でもありません」

女の子は早口で答えると、翔から離れようとする。

何となく納得しない翔は、女の子に話しかける。

「その制服、明日葉学園のものだよね? 可愛いな」

「…もう話しかけないでください」

女の子はつれなくそう言うと、翔から離れようとする。

翔は舌打ちすると、女の子と別れようとした。

するとその時、

「きゃあ!! だから駄目だって言っているのに!!」

女の子の傘が浮かび、身体が地面から離れる。

翔がびっくりして声を失っていると、女の子が急いで足をばたつかせ、ゆっくりと着地する。

「…今、見ましたよね?」

女の子が窺うように聞いてきたので、翔はゆっくりとうなずく。

「バッチリ。君も魔法が使えるの?」

「君も…? ということは、あなたも…?」

女の子の驚いた顔に、翔はにこりと笑うと、手招きして道の端へ移動する。

それから女の子しか周りにいないか確認すると、足をあげる。

「俺の場合、これ。魔法の靴」

「靴? …本当だ。変わっている」

「最高で60キロ出るの。だから遅刻しそうな時に、遠慮なく使用しているんだ」

空いた手を腰に当てると、冷たい雫が当たる。

雪にはなりそうにないが、雨は人間の体温を奪おうと、次々と降ってくる。

「それで? そっち…名前を聞いていい?」

「えっと…どうしよう」

女の子がしっかり傘を掴みつつ、戸惑う素振りを見せる。

翔は当然の反応だよなと思いつつ、自分から名乗る。

「俺、小田翔。歳は14。あそこの中学校に通っているんだ」

翔が指差すと、女の子が「ああ」と言ってくる。

「風山中学校の人なんですね」

「うん。それで君は?」

翔が興味深そうに身を乗り出すと、女の子は少し考えてから答える。

「あたしは大川めぐみと言います。歳は同じ14」

「やっぱり同じ歳か!! よろしく!!」

翔は喜んで手を差し出したのだが、女の子ーめぐみは傘をしっかり両手で押さえており、飛ぶのを阻止しているようだった。

「…それ、魔法の傘?」

「あ…分かっちゃいましたよね?」

「敬語じゃなくていい」

「分かった。あなたー翔くんの言う通り。これは魔法の傘なの。飛ぼうと思えば、雲の上までいけるの」

「雲の上!! すごいな、それは」

「大変よ? 油断すると、飛ぼうとするんですもの。ーほら」

めぐみが片手を放すと、ふわりと宙に浮かぶ。

翔は「わー」と感心していると、めぐみは傘を押さえ、地面に降りた。

「内緒ね。ばれると怒られるから」

「…ああ、家族に怒られるのか。俺もよく怒られるけど」

何故、大人が怒ってくるのか分からなくもないが、子どもとしては、魔法を使いたくてしょうがない。

便利なものは使ってもいいと思うのだけれど、周りに奇妙だと思われて攻撃されても困る。

ー人の口に戸はたてられないからな。人間は何で面倒くさいんだろう? 言葉を話さなければ、傷つくこともないし、苛々しなくていいと思うのだけれど。

口を歪めると、めぐみが慌てて言ってくる。

「あたし、変なことを言った?」

「え? 別に」

「だって顔を歪めるから…。あたし、よく変わっているとか、おかしいとか言われるタイプだから」

めぐみはそう言うと、濡れた肩の雫を払う。

その姿は美しく、この子でも何か言われるのかと、びっくりする。

「俺が見たところ、普通だけど。変だ、おかしいって言う奴ほど、嫌われているんだな」

翔の言葉に、めぐみは顔を上げ、うなずく。

「そうなのよね。…まあ、あたしも優等生を演じて真面目でいるからいけないんだけどね」

「そうなのか。優等生を演じているの?」

「そう。これでも目立たないようにしているんだけど…。人間って難しい。目立つな、目立つなと思うほど、逆になるんですもの」

「あー、多分、めぐみの場合、無理だと思う。よく告白とかされない?」

「それが…」

めぐみはその後は言わず、足をもじもじとさせる。

どうも言いたくないらしいので、翔は続けて言うのをやめると、明るく振る舞う。

「これからよろしく。俺、他にも魔法グッズを持っている人達を知っているけれど、同い年は初めてだ」

「そうなの? あたしも知らないわけじゃないけど…。同い年ではあたしも初めてかも」

「そうか。よろしくな」

めぐみの二の腕を軽く叩くと、初冬の厳しさを教えるように、冷たい風が割って入ってくる。

風邪をひいたら大変だと思い、翔はめぐみに言う。

「クッキー、好き?」

「え…? クッキー? 嫌いじゃないけれど」

「じゃあ、お店に行こう。良い人がいるんだよ」

「そうなの?」

「そう。教えると、幸せのクッキーを作っている人なんだけど…。知っている?」

「ううん、知らない。幸せのクッキーか…。いいな」

「気になるだろ? よし、これから行こうぜ。俺、知り合いだから」

「楽しそう。でもあたしが行ってもいいの?」

「いいさ。ほら、俺の手を取って」

めぐみは躊躇した後、傘に命じる。

「しばらく動いては駄目よ」

傘は答えるように、静かにめぐみの肩に乗る。

それから翔の手を取ってくると、翔はにやりと笑い、道を滑り始める。

「きゃあ!! あたしまで連れていかれる!!」

「だから言っただろう? 魔法の靴だって。スピードを上げるぞ。早く店に行きたいし」

翔はウィンクすると、めぐみの手をしっかりと握りしめたのだった。

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