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神田さんとは取り止めのない話をしていたらあっという間にホテルに到着した。

ホテルの会場に着くと豪華な装飾が目に入る。

「…何回見ても慣れないんですよね」

「分かります。かなり煌びやかですもんね」

神田さんは少し笑うと私の話に同調してくれる。私の手は神田さんの腕にずっと添えられたままだ。


「受付いきましょうか」

神田さんがそういうと慣れたように受付へ向かう。うちのレセプションは初めてかと思ったが何回か来ているのだろうか。


「すみません受付お願いします」

受付の方に声をかけると私と隣にいる神田さんを見て少し目を見開く。気持ちは分かる。私とこんなに素敵な人が一緒にいたらびっくりするよね。

「同伴パートナーは…神田聡様でよろしいですか?」

「はい、お願いします」

聡って名前なんだ~と呑気な事を考える。本当に私は神田さんのこと何にも知らないのだ。神田さんもそのはずなのにどうしてこんなに構ってくれるのだろう。


「武藤さんすみません。ちょっと挨拶にいってきます」

「はい、いってらっしゃい」


神田さんを見送ると歩いているボーイからシャンパンを受け取る。こういうところは飲んで食べてサクッと帰るのに限る。


「…あれムトーさん、結局1人で来たの?」

少し経つと後ろから侑士の声が聞こえた。俺せっかく待ってたのにな~なんて軽口を叩いている。正直今は振り向きたくないがそんなことも言ってられないため何もなかったように笑顔で振り向く。

「いや1人じゃないよ。ちゃんと同伴の方にエスコートしてもらった」

金城さんと一緒にいるのかと思ったが意外と侑士は1人で私のところに来た。まぁ侑士の彼女と話すなんて身内のいけないところを見ているみたいでちょっと気まずいしちょうどいい。


「あ、そうなの。で、相手はどこ?」

「いや…えっと…」

「ここにいます」

できれば神田さんに迷惑はかけたくないなと思っていたのにタイミング悪く神田さんが戻ってきた。侑士は一瞬驚いたように目を開いたがすぐいつもの顔に戻りおかしそうに笑う。

「へぇ。まさか神田サンだとはね。ムトーさんが急に彼氏いるって言い出した時はびっくりしたんだけど本当に連れてくるとはね」

意地悪な顔をする侑士。それはできれば言わないで欲しかったなと思いながら神田さんを見る。神田さんには全くその話をしていないのでおそらくびっくりしているだろう。すみませんという気持ちでいたのだが、神田さんは私の目をじっと見ると軽く口元に笑みを浮かべた。


「紗奈とは最近付き合ったんです。もちろん将来のことも考えてます。照れ屋なのであんまり聞いてあげないでください。私が答えられることならお伝えするので」


あまりの完璧な答えに思わず俯く。多分申し訳ない気持ちで顔も赤くなっている気がする。侑士は面白くないのか、ちょっとだけ嫌な顔をしながら神田さんを見つめた。

「へぇ。じゃあ俺と紗奈の関係もご存じで?」

「えぇ、もちろん」

会社の中では絶対に下の名前で呼ばない侑士がこの場で「紗奈」と呼んだことに思わず反応して顔を上げてしまう。自信満々に間髪入れず答える神田さんをヒヤヒヤしながら見ると神田さんはどこか楽しそうにしている。


「それじゃすみません、私と紗奈は向こうで用事がありますので」

私の手を取るとそのまま神田さんが引っ張ってくれる。侑士とこれ以上話さなくて済むのは正直助かった。


「…なんで聡なんだ」

侑士がボソッと呟くのが去り際の私の耳に入った。

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