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「…きてしまった」
そう。来てしまったのだ。レセプションの日も。そして30分前にホテルの近くの公園にも。
あれから色々考えたが結局いい案は出ず何もしなかった。というかできなかった。侑士とも仲のいい男友達を誘ってみたが「お前の相手なんて嫌だよ。それに俺まだ死にたくない」と謎の発言をされ断られた。
マッチングアプリなんかも候補にはあったが向こうも出会ったばかりの人に「すみませんレセプションに同伴してもらえませんか?」なんて言われたら困るだろう。それに私も出会ったばかりの人に職場のことは知られたくない。
レンタル彼氏なんていうのも考えてはみたもののあまりに虚しくてやめた。同伴登録はしてしまったことだしもう侑士が行ってくれるならそうしようと思って来てしまったのだ。
「ゆ、ゆぅ…」
声をかけようと手を上げたところで思わず出しかけた声を止めるよう口を塞ぐ。
公園のベンチに座っていた侑士に受付の金城さんが「侑士くん!」と駆け寄ったのだ。
侑士は立ち上がるとよろけたのかフラッとした金城さんを抱き止める。あまりにもお似合いの2人で思わずぼーっと見つめてしまった。
「なーんだ…そっかぁ」
今日私が呼ばれたのは同伴してくれるとかそんなことじゃなかったのか。侑士は私に”これ”を見せつけたかったのか。侑士も結構意地悪いことするな~…
普段の私ならそのまま2人の前に出ていって「なんだ呼び出しといたくせに2人で行くのか!お似合いだね。私はお邪魔だろうし去ります!」なんておどけて見せられたかもしれない。でも今日はどうしてもできなかった。
私が侑士を好きとかそんなのじゃなくて、多分とにかく虚しくて惨めだったのだ。
ずっと仲良くて味方だと思ってた幼馴染にこんなところを見せつけるために呼び出されたなんて。元々は彼氏がいると嘘をついた私が悪いのだがここまで侑士にされるようなことはしていないはず。侑士は意地悪なところはあったけど嫌な気持ちになることは今まで一度もしたことなかったのに。
彼氏がいない自分も、それを気にしていたことを気付かされたことも、裏切られたと感じてしまったことも全部全部自分のせいなのにこんなにも虚しい。
滲む視界を気にしないようにして私は公園から足早に去っていった。