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「ねぇお母さん、そういえばさっきの話ってどういうこと?」

「何さっきの話って」

「侑士が私と同じ仕事選んだみたいなやつ!」

 夏海と神田さんがいなくなってからやれやれ、と呆れるお母さんを捕まえて話を聞く。

 お母さんに言われるまで私はたまたま同じ会社に入ったんだとばっかり思っていた。

「あー、それね。実は就活の時、侑士くん商社で内定出てたらしいんよ。でも侑士くんから連絡きた時に『紗奈はメーカー内定もらったみたいでね』って伝えたら次に電話かかってきた時にはあんたと同じ会社の内定を取ってきてね。『お母さん、これも縁なので僕が紗奈さんをサポートします』って言ってくれたの。でもあの時は本当に心強かったわぁ」

「な、なにそれ…」

 全然知らなかった。というか言ってくれてないし。まぁ聞いたとして何かしたかと言われたら…別に何もしてないとは思うけど。

 ていうかなんでわざわざ決まってた内定先を蹴ってまで就活し直したのか。


「え、それみんな知ってたの?」

「うーん、電話でその話した時近くに夏海もいたから夏海には言ったんじゃなかったかな。夏海昔から侑士くんのこと大好きやったし、電話あると『なんだった?!』って聞いてきてたしね~」

 確かに侑士のことが大好きだった夏海はいつも侑士を家に連れてこいと私に言っていた。大きくなるにつれて私と侑士はなんだか気まずくなって積極的に遊ばなくなったけど、それでも夏海は侑士を見かけたら話しかけていたし、侑士も夏海と話すのは楽しそうだった。


「わざわざ就活し直すなんて…」

「まぁ侑士くん元々商社で働くのが自分にとってやりたいことなのかって悩んでたみたいだったから視点広げるって意味でもいろんな業界見たかったんじゃない?」

 それにしてもわざわざ同じ会社を受けることなんてないだろう。入社してからたくさん支えられてきたなと思ってはいたがそうするために入社したと聞いて驚かない人はいないんじゃないか。


「あ、でも…「ごめんお姉ちゃん」

 お母さんの話を遮るようにして夏海は帰ってきた。その後ろには神田さんが立っている。

「お姉ちゃんが侑士くん以外の男の子を連れてきたことにショック受けてちょっと取り乱しちゃった。神田さんから話聞いた」

「あ、そ、そう…」

 神田さんはどこまで話したんだろう。夏海はあれだけ怒ってたし、偽装彼氏のことを伝えて「今日以降はこないから安心して」と言っていてもおかしくはない。

 その会話を想像するとなぜかちょっとだけ胸が痛む。


「すみません、今日来たばかりの僕に任せてもらってありがとうございました」

「いやいや、こちらこそごめんねぇ。夏海昔から暴走しがちでわがままでね」

 お母さんの言葉に怒ったように夏海はぷくっと頬を膨らます。こういうところが可愛くて私は夏海が大好きだ。


「夏海、きっと私のこと心配してくれたんだよね。ありがとね」

 夏海に伝えると照れたように顔を逸らす。神田さんは後ろで微笑みながらその様子を見つめていた。

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