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第8話 最強魔法剣士、魔法を教える

 朝の空気はどこか冷たく、それでいて肌を刺すような鋭さとは無縁だった。太陽がまだ低い位置にあるせいか、街の石畳や遠くの城壁は淡く金色を帯びて見える。そんな中、俺はいつもより少し早起きをして、グラドールの北門近くまで足を伸ばしていた。


 目的はただひとつ――リーシャに魔法の基礎を教えるためだ。数日前にコボルドシャーマンとの戦いを終えたばかりだけど、彼女は「もっと強くなりたい」と意気込んでいたし、俺としても追放されたままで終わるのはつまらんと思っている。だったら俺の独学理論をちょっと分けてやるくらいはいいだろう。


 とりあえず人気の少ない場所がいい。北門を出てしばらく進むと、小高い草地がある。その草地の真ん中にぽつんと佇むのは、朽ちた木の板や石材の残骸――かつて誰かが小屋を建てようとして放り出したのかもしれない。訓練をするには打ってつけの環境だ。


 俺は適当にウォーミングアップなどしながら、時間を潰す。剣を振ることは慣れているが、今朝は魔法理論を口頭で説明する予定。言葉にするのは、案外難しい。自分のなかでは当たり前になっていることを、どう伝えればいいか……まあ、行き当たりばったりでいいか。


 そんなことを考えていると、背後から控えめな足音がした。狼の耳がピンと立ち、長い黒髪を垂らしたリーシャが姿を現す。


「おはようございます……リュオさん。あ、あれ……もう準備、始めてるんですか?」


 彼女は少し眠そうな顔をしているが、それでもちゃんと早起きしてここまで来たのは大したものだ。俺は木の板に腰かけ、軽く手を振った。


「おう。遅かったな。……まあ、約束の時間よりは少し早く来ただけだから、気にすんな」

「そ、そうですか。私、寝坊しちゃったのかと思って……焦りました」


 狼耳をへにゃっと倒して、彼女が照れ笑いする。普段は夜行性が混ざっているのか、朝はそんなに強くないらしい。にしても、最近の彼女は、追放されたばかりの頃とは比べ物にならないほど表情が柔らかくなった。


「さて、早速だが、今日から本格的に魔法の基礎を教える。大丈夫か? まだ眠そうだけど」

「いえ、全然平気です! 昨日からずっと楽しみで……! あ、でも、その……私、本当に魔法って使えるようになるんでしょうか? ずっと『戦力外』って言われ続けてきたので、ちょっと不安で……」


 瞳を揺らしながらそう尋ねるリーシャ。狼系獣人でありながら魔法など触れたことがなかった。冒険者パーティに加わっていた頃も、結局は「物資運び程度しかできない」と見なされていたらしい。


 俺は腰を上げ、彼女の斜め前に立った。朝の澄んだ光が、彼女の長い黒髪にやわらかく差し込んでいる。


「心配いらねえよ。魔法ってのは詠唱や陣が必須ってわけじゃない。俺は理論で一通り習得したからこそ、六属性使えるようになったんだ」

「リュオさんって、昔から天才ってわけじゃないんですか?」

「別に。まあ、貴族の家でもないし、魔法学院にも通ってなかった。全部独学さ」

「そうなんですか……でも、そんな人いるんですね……」

「いるんだよ、ここにな」


 少しクスリと笑いながら、俺は手のひらをひゅっと前に出す。すると、それだけで薄青い光が揺らめき、風の膜が生まれる。軽い魔力の流れを作るだけで、空気が視認できるレベルになる。


「見ろ、こんな具合にな。詠唱しなくても、魔力がイメージに応えてくれる」

「……すごい。いつ見ても不思議です」


 リーシャがまぶしそうに、その小さな渦巻きを見つめる。朝日を透過した光が膜に反射して、虹色の微粒子がぱちぱちと弾けていた。


「こんなのは基礎の基礎。大事なのは『イメージ』と『理論』だ。イメージだけで魔法を起こすのは才能任せだが、理論があれば再現できる」


 狼耳をぴんと立て、リーシャが頷く。彼女の真剣な顔を見ると、思ったより飲み込みが早そうだ。


「わかりました……! じゃあ、まずは何をやればいいんですか?」

「そうだな……。まずはイメージでどこまで行けるかやってみよう。そうだな、風魔法から行くか。お前、獣人だろ? 鼻や耳がいい分、空気の流れを掴むのは向いてると思う」

「耳や鼻が……魔法と関係あるんですか?」

「多少はな。風の流れを感じ取る力は、人間よりお前のほうが上だろ?」

「そうかもしれません。私……追跡とかは、割とできますけど」

「じゃあ問題ねぇ」


 言いながら、俺は両手を軽く合わせてみせる。掌と掌の間に風が巻き起こり、小さなスパイラルを作る。その回転は速く、指先で握りこむと、風の塊がぶわっとほどけて消えていく。


「ほら、こんな感じで、空気に触れるイメージと、そこに魔力を流し込むイメージを重ねる。最初はちょっとした弾を作れたら合格だ」

「弾……ですか?」

「そう。やってみ」


 リーシャは緊張しながら両手を構え、俺がやったように手のひらを向かい合わせにした。瞳を閉じて意識を集中させる。そして、何やら「風……空気を動かす……」と小さく呟き始める。


 しかし、最初の数回は何も起きなかった。すうっと風が吹くだけで、彼女の手に変化が起きる気配はない。


「っ……難しい……どうやって、風をつかむんでしょうか」

「陣や詠唱に頼るなら簡単だろうが、そこを省略してるからな。イメージの補強が必要なんだよ。頭の中で、風を手で捕まえる感じを思い浮かべろ」

「捕まえる……ですね。わかりました……!」


 リーシャは狼耳をぴんと立て、息を整える。そして再び両掌を合わせるようにしながら、ゆっくり目を開いた。彼女の瞳が淡く揺れ――すると、空気がかすかにうねり始める。


「――あ……っ」


 指先のあたりから、薄い風の塊が現れた。半透明の球体のように見えるが、大きさは小指の先ほどしかない。それがぷるぷると震えつつ、リーシャの手にまとわりつく。


「できた……かも……!」


 リーシャが感激した様子で呟く。だが、その小さな球体はバチンと弾け、風圧が彼女の体をほんの少し押し戻す。


「わわっ! あ……」


 彼女は尻もちをつきそうになり、慌てて地面に手をついてこらえた。俺はそれを見て苦笑する。


「最初はそんなもんだ。けど、今ので十分だぞ。少なくとも魔力を風に乗せる感覚は掴めたはずだ」

「は、はい……っ、すごく嬉しいです、私、やればできるんですね……!」


 心底驚いたように笑うリーシャ。ほんの小さな進歩だが、「できない」と思い込んでいた彼女にとっては大きな前進だろう。何より、あの怯えっぱなしだった獣人少女が、こうして意欲を示してくれるのは、見ていて気分がいい。


「でもまだ序盤だ。無理して魔力を引き出しすぎると、すぐに疲労するぞ。朝は軽く慣らす程度でいい」

「はい……了解です。確かに、今のでちょっと息が上がっちゃいました……」


 リーシャが胸に手を当てて、軽く呼吸を整えている。その汗ばむ額には、うっすらと朝日の光が反射していた。


「ま、お前は身体能力が高いし、感覚が鋭い。魔力コントロールを少し覚えれば、伸びしろは大きいはずだ。無理せず、焦らずやっていこうぜ」

「ありがとうございます……! こんなこと、私、夢みたいです。追放されて、何もできないって思ってたのに……」

「気にすんな。誰しも最初は初心者だ。俺だって昔は独学で苦労したんだからな」

「リュオさん……」


 リーシャはこぼれるように微笑みながら、小声で「頑張ります」と自分に言い聞かせるようにつぶやく。朝日の下、その横顔はどこか晴れやかだった。


 ――こうして、朝の訓練は一段落。まだ始まったばかりだが、彼女の成長の糸口が見えてきて、俺としては悪くない滑り出しだ。



 ※※※



 朝の訓練を終えたあと、俺たちは一度グラドールの街に戻り、冒険者ギルドへ向かった。休憩がてら情報を仕入れておくのも悪くないからな。


 ギルドの扉を開けると、まだ時間が早いのか、人はまばらだった。カウンター越しに顔を出したのは、クリーム色のポニーテールが印象的な受付嬢――シェリルだ。


「また朝から訓練してたんですか? えらいですね、お二人さん」

「ま、暇だしな。あと、リーシャに魔法を教えてるんだ」

「魔法……! リーシャちゃんも、やっぱり魔法の素質あるんですか?」


 シェリルがぱちくりと目を瞬かせると、リーシャは少し恥ずかしそうに、「あ、あの、まだ全然ですけど……」と遠慮がちに答える。


「いいですねぇ。最近は魔物も強力なのが増えてるし、遠距離や属性魔法が使えると心強いですよ」

「強力な魔物か……やっぱり、あれか?」

「そうですね、『瘴気の季節』が近づいているんですよ。今年は例年より早いって噂で……ほら、荒野のほう、煙みたいに紫がかってきてるでしょう?」


 シェリルが少し神妙な顔をする。

 瘴気の季節――灰滅の刻以来、大陸の中央荒野を包むようになった瘴気が濃くなる季節のことだ。

 ここグラドールは荒野の南西寄り、地形の関係で瘴気が流れ込みうるため、魔物の活動期には大いに警戒が必要だ。瘴気が強まれば、下級の魔物でも妙に攻撃的になったり、上位魔物が浮上したりする。


「『瘴気の季節』か……コボルドシャーマンなんかはまだ可愛いもんだったかもな」

「リュオさん、その言い方だと……もっとヤバいのが来るんですか?」

「そうなる可能性がある。それに、魔法を使うモンスターも増えるかもしれない」

「そうなんです。ギルドでも大規模な防衛隊の編成を準備しつつありますよ。大きな異変が起きたら、すぐに対応しないと」


 シェリルの声には、うっすらと緊張が混じっていた。そりゃそうだ、毎年の恒例行事と言っても、運が悪ければ街ごと飲み込まれることもある。グラドールの冒険者は皆、それをよく知っている。


「リーシャも、魔法が使えるようになったら役に立つ場面があるだろうな。特に風や水なら、遠距離牽制にもってこいだ」

「あ、はい……そうですよね。頑張ります……!」


 彼女は力強く頷いているが、内心は不安があるのだろう。耳と尻尾がピコピコと落ち着かない動きをしている。しかし、さっきの訓練を見れば、素質は十分ある。あとはどれだけ吸収して、実戦で活かせるかってだけだ。


「ところでリュオさんたち、今日は依頼を受けていくんですか?」


 シェリルが首を傾げながら書類を持ち上げる。俺は掲示板を一瞥するが、「ゴブリン退治」だの「薬草採集」だの小粒な依頼ばかり。まだ大物の動きはないようだ。


「んー、気が向けばな。今日のところは魔法練習を優先させようかと思ってる」

「そうですか。まあ、じっくり基礎を固めるのも大事ですよね。何かあれば声をかけてくださいね!」


 シェリルが明るい笑顔で見送ってくれる。まだ早朝のギルドは静かで、これから昼にかけて冒険者が集まるんだろう。俺たちは軽く一休みしたら、午後からまた外に出て練習するつもりだ。


 魔法が使えるようになれば戦術の幅も広がるしな、なんなら俺には才能がなかった稀少属性を発現する可能性だってある。なんにせよ、楽しみで仕方がない。


 そんな思いを胸に秘めながら、俺はリーシャを連れてギルドを出た。昼までまだ時間はあるし、もう少し彼女を座学で鍛えてやるか――と、頭の中で次のメニューを組み立てる。



 ※※※


 昼を済ませたあと、街の北端近くの空き地へ再び足を運んだ。朝より少し日射しが強く、草が揺れるたびに小さな虫が飛び立つのが見える。遠くでは馬が(いなな)く声が聞こえ、街の方からは商人の声がかすかに届いていた。


「さて、改めてやるぞ。今度は風魔法を弾として扱う練習だ。的に当てるイメージだな」


 俺は持参した木片を地面に突き刺し、簡易の標的を作る。リーシャが距離を測るように少し離れて構えた。午前の練習で感覚は掴めているはずだから、あとは反復あるのみ。


「よし、やってみます……!」


 彼女は短い息を吐きながら、両手を前に出す。朝に比べると、手の動きに迷いがないように見える。すぅっと風が集まり始めるのを感じた。彼女の周囲の空気が微かに震え、うっすらと渦の核が現れる。


「……っ」


 リーシャが静かに魔力を注ぐ。風の塊が、最初はふわふわと漂うだけだったが、次第に弾の形を帯びてきた。彼女はそのまま木片を狙って一気に放出する。


 ――シュッ、と軽い破裂音がして風弾が地を滑り、しかし木片にかすりもせず通り過ぎていった。


「わあっ、ずれました……!」

「まあまあ、初めから当たるほうが珍しい。もう少し照準を意識しろ。あと、弾の速度を上げたいなら、魔力の流し方を一瞬で加速させるイメージだ」

「は、はい……っ」


 額に汗を浮かべながら、リーシャはもう一度チャレンジする。今度は息を止めず、こまめに呼吸をはさみつつ風を練り上げる。斜めに流れる空気を捉えるように、手のひらを微調整して――。


「当たれ……!」


 彼女が小さく叫んだ瞬間、風弾がすっと木片の真横をかすめた。かすかに表面を削り取ったらしく、パキンという音が鳴り、木の破片が飛んだ。


「おおっ……! 今の、当たりましたよね? 当たりましたよね!?」

「かすったな。上出来だ」


 リーシャは嬉しそうに顔を上げる。以前の彼女なら「かすっただけだから……」なんて言いそうだが、今はむしろ成功を素直に喜んでいる。いい傾向だ。


「じゃあ続けて撃ってみろ。精度を上げるんだ」

「はい、やります!」


 幾度か試行錯誤を繰り返すうちに、風弾はより安定してきた。リーシャは集中力を高めて、的の中心を狙う。四発、五発と撃ち続けるうち、だんだんと的付近に命中する回数が増えていく。


 しかし、六発目を撃ったとき、予想外に大きくなった風弾が周囲の草まで刈り取るように吹き飛ばし、リーシャ自身も後方へよろめいてしまった。


「うわっ……!」


 俺は慌てて手を伸ばし、彼女の腕を掴んで転倒を防ぐ。彼女は少し肩で息をしながら、顔を真っ赤にして謝った。


「す、すみません……私、加減がわからなくて」

「いや、むしろ威力が出たのはいいことだ。コントロールを覚えていけば、ちゃんと扱えるようになるさ」

「……リュオさんが独学で身につけたの、すごいですね。私、一回一回ヘトヘトです」

「最初はみんなそうだ。慣れると、風が自分に馴染んだみたいに思えるようになる。っていうか、もう何回かやればコツ掴むだろ」


 リーシャは小さく笑いながら、草むらに目をやる。そこはごっそりと風弾でえぐれ、雑草がなぎ倒されている。見た目は荒っぽいが、実際「なかなかの威力だな」と俺は思った。


「私……何もできないダメな子なんだって思ってたのに……それが、こんな形で魔法まで覚えられるなんて……」


 ふと、リーシャがポツリと呟く。過去の追放エピソードを思い出しているのか、瞳が少し潤んでいた。


「そうか。チャレンジしてみて良かっただろ?」

「ええ……。あの頃の私には、こんな世界があるなんて思いもしませんでした。仲間だと思ってた人たちに『戦力外』って言われるのが怖くて、何も言えなかった。だけど今は……」

「今は?」

「今は、ちゃんと自分で戦おうと思えるんです。リュオさんと一緒に鍛錬をするようになって、わかった気がします。努力すれば、戦い方次第で強くなれるって」


 その言葉には、彼女なりの決意がにじんでいた。俺は大袈裟に褒めたりはしないが、内心「大きく成長したな」と感じる。


「そりゃそうだ。お前はまだこれから伸びる。焦らずに進めばいい」


「はい……! ありがとうございます」


 彼女は尻尾を軽く振りながら微笑む。自分への自信を失っていた少女が、こうして自分の意思を口にできるようになったのは、大きな一歩だろう。


「よし、じゃあもう少しだけ練習して、切り上げるか。風だけじゃなくて、いずれは水属性も教えてやる」

「風と水……両方ですか? でもそんな、私に扱いきれるでしょうか……」

「やってみなきゃわからん。あれだぞ? 俺は六属性使えるんだ。それに比べりゃ二属性くらい楽なもんだろ」

「そ、それもそうですね……ふふっ、頑張ります」


 リーシャは笑顔を浮かべる。そして再度、的に向かって指先を合わせた。彼女の目には迷いのない光が宿っている。これなら、そこそこイケるかもしれないな――。



 ※※※



 夕方に近づくと、雲が西の空をオレンジ色に染め始めた。街道から帰る人々の姿がぼちぼち見られるようになる。俺たちは練習を切り上げて、グラドールへと戻ることにした。


「はぁ……結構疲れました。魔力を使うと、こんなに身体がダルくなるんですね」

「最初はな。筋肉と同じで魔力の総量が増えてくれば、少々じゃバテなくなる。今日はよく頑張ったんじゃないか?」

「……ありがとうございます。リュオさん、何から何まで」

「俺はちょっと教えてるだけだ。最終的に使えるようになるのはお前の努力次第」

「はい、わかってます」


 リーシャは最後にもう一度、朝と同じ笑顔を見せた。街道沿いを歩きながら、俺はふと視線を遠くの空へ向ける。そこには、かすかに紫がかった霞が漂っていた――まるで深い瘴気が外界へ押し広がってきた証のように見える。


 瘴気の季節か……街も、防衛隊も、今のうちに備えを固めるだろう。俺たちもそういう戦いに巻き込まれるかもしれん。

 まぁ、そこら辺は実際に来てから考えればいいか……。


「どうかしました? 難しい顔して」


 リーシャが不思議そうに俺を見る。俺は肩をすくめ、「いや、なんでもねぇよ」とだけ答えておいた。心配させる必要はないだろう。彼女はまだ魔法を覚えたばかりで、これから少しずつ強くなるのだ。早くも瘴気の話で不安にさせるのも悪い。


「そろそろ宿に戻ろうか。腹も減ったし」

「そうですね。おなか空きました……」


 夕焼けに染まるグラドールの街路を歩きながら、俺はリーシャと並んで笑い合う。彼女の尻尾が機嫌よくふりふりと揺れ、その様子を見て思わずこちらまで頬が緩んだ。派手な戦闘もいいが、こうした日常の積み重ねも悪くない。次回の特訓が、どこへ繋がるかを考えるだけで、わりと胸が高鳴るから不思議だ。


 ――そして遠くの空に漂う紫色の霞は、何も語らずただ蠢いていた。瘴気が深まる季節。そんな気配を感じながら、俺たちは一歩ずつ、次のステップに近づいていくのだった。

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