警察小説の歴史
『警察小説ベスト100』から、警察小説の歴史、をたどってみたいと思う。のだが、この本の中に二つのコラムがあって、その二つが歴史の書き方がイコールではないのだ。それらとまとめながら、書いてみようと思う。
1866年にエミール・ガボリオが世界初の長編推理小説『ルルージュ事件』を書く。ちなみにシャーロック・ホームスが登場する『緋色の研究』は、1887年の発表だ。で、この『ルルージュ事件』には脇役としてルコックというパリ警視庁の刑事が登場する。
その後も1920年から40年代にかけて、F・W・クロフツのフレンチ警部、E・D・ビガーズのチャーリー・チャン刑事、マイクル・イネスのアブルビイ警部、クリスチアナ・ブランドのコクッリル警部などが登場している。しかしこれらの刑事は『探偵役』であり、組織捜査を書く警察小説の主役とは言えなかったという。
この流れを変えたのは米国のローレンス・トリートが1945年に書いた『被害者のV』である。この小説によって、作中の警察官は「探偵役」から、警察官になったと言われる。
イギリスでも動きはあり、51年にモール・ブロクターがヘンリー・マルティーノ主任警部を登場させる。それから数か月遅れで、J・J・マリックがギデオン警視を登場させる。しかし、このジャンルの人気を決定づけた作品が、アメリカに登場する。
それがエド・マクベインの『警官殺し』に始まる「87分署」シリーズだ。これは特定の主人公がおらず、架空の都市アイソラにある87分署に務める刑事たちが主役だ。マンハッタン島を逆さにしたような都市で、明らかにモデルはニューヨークだという。87分署シリーズの中では、『キングの身代金』という作品が黒澤明の映画『天国と地獄』になったのも有名である。
こういう正当はの流れとは別に、悪徳警官もののあるという。W・P・マッキーヴァーンは1951年に『殺人のためのバッジ』で、悪徳警官ものを書いた。またホイット・マクスタンやドロシー・ユーナックが女警官ものを書いていたという。こっちの方も、気になる展開だろう。




