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【完結】ループモブ〜ループに巻き込まれたモブの異世界漫遊記  作者: 明和里苳
4周目

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第62話 残念なお知らせ

 えー、残念なお知らせがあります。赤い鳥亭(ロワゾー・ルージュ)のローズちゃん、真っ黒でした。


「おェ、俺の女に手ェ出してんじゃねェぞ…」


「ヒイイすみませんすみません!」


 あれから気になって、時折寮を抜け出して歓楽街の上をふわふわ飛んでいると、路地裏で派手な身なりの男が、ガラの悪い男に絡まれていた。怖いね。赤い鳥亭(ロワゾー・ルージュ)といえば、この界隈で結構な高級店みたいなのに。彼は単なるお店の用心棒ってだけじゃなくて、ローズちゃんの情夫のようだ。完全に美人局つつもたせです本当にありがとうございました。


 だけどこれ、どうやって兄貴に伝えるべきかな。「あの子ヤバいよ」とか言ったって、今の僕たちの関係じゃ、聞き入れられそうにないし。しかも彼らが美人局だからって、それをおいそれと糾弾して大丈夫なものなのか。裏社会の抗争とか面倒臭そうだ。ああもう、何でこんなややこしい女の子にハマってんだよ。


 でもまあ、素人の若造じゃ仕方ないかな、とも思う。彼はたかだか二十歳はたちの若造だ。くだんのローズちゃんは、


「アイツさぁ、結構な大店おおだなのボンボンなのに、シケてんのよね」


「もっと引っ張れねェのかよ」


「うふふ。丸裸にしてからが、アンタの出番でしょ。焦んないの」


 とか言ってる。夜の蝶の割にはものすごく清純っぽい外見をしていて、そのギャップの分さらにヤバさ満点だ。やっぱ女の子って怖い。


 ああ…兄貴どうしよっかな…。でもここまで知っちゃったら、知らぬ存ぜぬも後味悪いしな…。




 しかし、上空で物陰に隠れながら思案していて、あることに気付いた。この歓楽街で働く人たち、ほとんどが闇属性だ。


 この世界の住人は、火・土・風・水・光・闇の6属性のどれかを持って生まれて来る。よくラノベなんかで「全属性?!」とかいうヤツを見るけど、僕としてはまだ複数属性を持つ人に出会ったことがない。そのうち光属性と闇属性はとても希少で、光属性は大体1,000人に1人くらいと言われている。7歳になると、教会で洗礼を受けて属性が明らかになるんだけど、光属性の子はもれなく教会に勧誘され、ほとんどが聖職者の道を歩む。普通に平民として生きるより、教会の方が良い暮らしをさせてもらえるからね。例外は、貴族の子弟くらい。


 一方、闇属性の人の実態は良く知られていない。闇属性は不吉とされていて、孤児院に連れて行かれたりだとか、里子に出されたりだとか聞くけど、そういえば学園でも見たことないし、普通に暮らしていて滅多とお目にかかることなどない。


 そもそも属性に関しては、ある程度髪や瞳の色で推察できるものの、プライベートなことなので、みんな大っぴらにするものではない。ごくたまに、火属性魔法のエキスパートとして名を馳せるだとか、水属性のヒーラーとして活躍するだとか、そういう場合に限って属性を明らかにするくらいのもので、例えば僕と同じ土属性の人なんか、土属性スキルを覚えようともしないし、それをわざわざ人に言って聞かせない。だって土属性って、あまり需要がなくて人気がないんだもの。実際はすごく便利なんだけどね。


 ともかく、普段お目にかからない闇属性の人が、歓楽街の住人の多くを占めているというのは、僕にとって意外というか、納得というか。そして兄の問題を解決しようと思ったら、この闇属性の人たちと何らかの対峙というか、渡りをつけないといけないんだろうな。


 と、そこに意外な人物が通りかかった。


 ———あれ?彼はブリュノ?




 ブリュノと言えば、僕が前世の記憶を取り戻す前、経済研究会でずっと一緒にツルんでたヤツだ。人懐っこい陽キャで、人の背中をバンバン叩くのが玉に瑕。経済研究会に所属する子弟はみんなそうだけど、彼の実家もホテル業やら飲食業やらを広く手掛ける豪商だ。人のことは言えないけど、寮を抜け出してこんなところに?もしかして、うちの兄貴みたいに悪い友達とツルんじゃった?


 ハラハラして見守っていて、気付いてしまった。彼、闇属性だったんだ。僕と同じ土属性だって言ってたから、てっきり———


「ブリュノ坊ちゃん、お帰りなさいませ」


「ああ。で、首尾は」


「はい」


 僕の耳は、そんな会話を拾った。学園の彼の面影が一切見られない、低く抑揚のない声色こわいろ。彼は煌びやかな色街いろまちにあって、一見目立たない建物の入り口に吸い込まれて行った。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  特に気に留めていなかった登場人物の再登場、アツい!  アレクシが面倒を嫌って回を追うごとに大人しめになってきましたけど、今ループは潜伏活動が続くようで。簡単に職業欄が塗り替えられるタイ…
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