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【完結】ループモブ〜ループに巻き込まれたモブの異世界漫遊記  作者: 明和里苳
3周目

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第40話 クララックの上級ダンジョン

「アッハァッ♡ 爽快ですわぁッ♡」


 カロルさんが馬車の窓から身を乗り出してはしゃいでいる。危ないから!


「ごめんアレクシ君…彼女はちょっとお転婆なところがあって…」


 御者ぎょしゃ席の隣で、カバネル先生が遠い目をしている。彼はつくづく女運に恵まれてなさそうだ。女運だけじゃない、これまでのループでも、色々と不遇をかこっていたけども。きっと隠しパラメータで、運に数値を割り振って来なかったんだ。ドンマイ。




 上級ダンジョンの敵は、割といかつい。ここは爬虫類ダンジョン、言い換えるとジュラ紀公園的なところだ。迷宮型なので、雑魚敵は小型の肉食恐竜みたいなのがワンサカ出て来るんだけど、どいつもこいつも素早く獰猛で、結構な迫力がある。僕は魔道具と魔石でチートしてるけども、普通の冒険者なら、ソロ攻略は無理だろう。


 幸いなのは、ここも不人気で、他に人がいないっていうこと。というか、クララック領自体が過疎…いや、自然豊かでのどかな土地柄。冒険者ギルドも役場の中だったし、どちらかというと山に出た魔獣を買い取ってもらう、猟友会みたいなイメージ。必然的に、冒険者なんてほとんどいないわけで、ダンジョン前にギルド職員もいなければ、他の冒険者に出くわすこともない。


 だからこそ可能なのだ。迷宮を馬車で爆走しながら、爬虫類の弱点属性、「氷槍アイシクルランス」を遠慮なくブッパする。


 ドドドドド。


 ガトリングガンよろしく氷柱つららを撒き散らしながら、僕らは迷宮を爆走した。




 ここは上級といっても、どちらかと言うと超級寄りの難易度があると思う。しかも、辺境にある不人気ダンジョン。ざっくりしたマップはギルドに置いてあったが、実は何十年も前にA級パーティーが挑んだ時のメモのようなもので、くまなく探索され尽くしたものではない。一応踏破したようだけど、生還したのはメンバーの半数。結構な犠牲だ。


「気を引き締めて行かないと」


 お昼のキャンプ。カバネル先生は表情を引き結んで言うが、カロルさんは聞き入れやしない。


「何をおっしゃいます兄様。このまま最後まで爆走ですわ!ね、アレクシさん」


 しかしここは、一層一層の広さは大したことないとはいえ、地下50階まであるらしい。1日で回れるかどうかは分からない。僕一人なら、泊まりがけで最後まで回れるのに。途中モンスターハウスでも見つけようもんなら、してやったりなんだけどな。


「踏破するなら泊まりの許可をもらわないといけませんね。今日はここで引き返しましょう」


 尚も食い下がるカロルさんを気合いでねじ伏せ、その日は大人しく帰宅した。しかしカロルさんは、その夜準男爵と「話し合い」で外泊許可を取り、翌朝満面の笑みで子爵邸に現れた。


 彼女を止められる者は、もはやクララックには存在しなかった。




 上級ダンジョンの攻略は、一泊二日で難なくクリアした。地下50階のボス部屋は天井が高く、中にはラスボスのティラノサウルスっぽい奴がいたが、こっちはストーンウォールLv10の城砦シタデルに籠もり、石礫ストーンバレットLv10レールガン連打。安全圏からの大火力でゴリ押し、ワンサイドゲームって気持ちいい。


 正直、頑張れば1日で踏破出来ない道のりではなかったが、余裕を持って40階のセーフゾーンでお泊まり。翌午前中には終わってしまった。ちょうどボス戦で僕のレベルが83に上がり、ちょっと早いけど、キリが良いのでお開き。なお、残り二人のステータスはこんな感じ。




名前 クレマン・カバネル

種族 ヒューマン

称号 マロール領立学園教諭

レベル 25


HP 250

MP 1250

POW 25

INT 125

AGI 25

DEX 75


属性 土


スキル

+ランドスケイプLv5

+石礫ストーンバレットLv4


E けやきの杖

E ローブ

E ブーツ


ステータスポイント 残り 0

スキルポイント 残り 0




名前 カロル・カバネル

種族 ヒューマン

称号 カバネル準男爵家息女

レベル 26


HP 780

MP 780

POW 78

INT 78

AGI 52

DEX 52


属性 水


スキル

+棍術Lv4

+治癒ヒールLv4

+ウォーターボール Lv3


E モーニングスター

E 革鎧

E マント

E ブーツ


ステータスポイント 残り 0

スキルポイント 残り 0




 二人とも結構育った。中級の浅い層ならば、二人で楽しくレベリングデートが出来るだろう。そして先生は、ランドスケイプLv4の掘削、Lv5の土砂除去まで覚えたから、存分に農業に役立てていただきたい。僕の役目は終わった。


「そういうわけで、この5日間のドロップ品を分配します」


 中級に2日、上級に3日。濃い5日間だった。主に彼らのイチャイチャと、僕の気苦労とが。例に漏れず、彼らは分け前を遠慮したけども、婚約祝いだってことで、ボスの宝箱の中身「ダイナソーナックル」と50万ゴールドだけ受け取った。ダイナソーナックルは格闘グローブだけど、そこそこ守備力の高い籠手でもあるので、カロルさんの盾代わりになるだろう。


「あんな馬車で駆け回ってる間に、どうやってこんなドロップ品を?」


「それは企業秘密で」


「ああごめん。冒険者の能力については秘密だったね」


「しかしそのような素材はどうなさいますの?」


「通常は冒険者ギルドで買い取ってもらってランクを上げるんですけど、僕は目立ちたくないので、ひたすら死蔵ですね」


 そう。これが悩みどころだ。1周目では冒険者を志して、途中までランクを上げたけど、所詮3年でリセットされてしまう。2周目では魔道具作りを習得したけど、魔道具で必要なのは魔石やミスリル合金くらい。ドロップアイテムのほとんどは、使い道がないのだ。


「じゃあ、ギルドを通さず直接錬金術師に持ち込んでみては?」


「えっ」


 カバネル先生から、思わぬキラーパスが飛び込んできた。錬金術師だって?!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  前話の末尾は「おや、彼女の様子が…」だったわけですね(笑)
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