第38話 接待レベリング
僕は早速、クララックの冒険者ギルドで付近のダンジョンについて調べ、マップを買い、ダンジョンまでやって来た。
「ダンジョンなんて初めてですわ。ワクワクしますわね!」
「こら、カロル。君は昔からお転婆で」
何でお前ら、もとい、あなた方まで付いて来るんですか。いや、分かるよ。僕には土地勘がないから、ギルドまで案内を買って出てくれた。それは分かるんだけどね。ダンジョンは新婚旅行で行くところじゃないんだよ。
「それより君たち、僕が危険だと判断したら帰る。いいね」
王都で貴族学園に通い、ダンジョン実習で最低限の護身術を身につけて来たカバネル先生。彼はすっかり引率モードだ。
名前 クレマン・カバネル
種族 ヒューマン
称号 マロール領立学園教諭
レベル 5
HP 50
MP 250
POW 5
INT 25
AGI 5
DEX 15
属性 土
スキル
+ランドスケイプLv2
+石礫Lv1
E 欅の杖
E ローブ
E ブーツ
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 10
だがしかし、彼のステータスは超後衛型。正直、足手纏いに他ならない。一方カロルさんは、
名前 カロル・カバネル
種族 ヒューマン
称号 カバネル準男爵家息女
レベル 17
HP 510
MP 510
POW 51
INT 51
AGI 34
DEX 34
属性 水
スキル
+棍術Lv3
+治癒Lv3
+ウォーターボール Lv2
E モーニングスター
E 革鎧
E マント
E ブーツ
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 20
こっちはガチ殴りヒーラーだ。バランスの取れたステータスの安定感と、物騒な得物。さっき「ダンジョンは初めて」っつったけど、本当だろうか。
ちなみに、今の僕はこんな感じ。
名前 アレクシ・アペール
種族 ヒューマン
称号 アペール商会令息
レベル 82
HP 2,000
MP 3,000
POW 200
INT 300
AGI 120
DEX 200
属性 土
スキル
-石礫Lv4
Lv1 石礫
Lv2 散弾銃
Lv3 ストーンライフル
Lv4 ストーンブラスト
-ゴーレム作成LvMax
Lv1 マッドゴーレム
Lv2 クレイゴーレム
Lv3 ブリックゴーレム
Lv4 ストーンゴーレム
Lv5 ゴーレムソルジャー
Lv6 ゴーレムホース
Lv7 ゴーレムナイト
Lv8 ゴーレム馬車
Lv9 一人乗りゴーレム
Lv10 全員乗りゴーレム
-槍術Lv1
Lv1 強撃
(ランドスケイプ)
(ロックウォール)
(身体強化)
E 短槍
E 胸鎧
E 革のブーツ
E マント
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 160
暇さえあれば、人気のないダンジョンでレベリングを繰り返し、僕は念願のゴーレム作成を自力でゲットした。冒険者レベルも、1周目の全盛期に迫る勢いだ。なお、ゴーレム作成スキルのLv9とLv10は、搭乗型。ワクワクしてスキルポイントを振ってみたが、乗り心地が悪くて全然役に立たない。ゴーレム維持のための継続的なMP消費も半端ないし、完全にお蔵入りだ。次ループは取らない。いや、ロマンはあるんだけど。
お金も結構稼いだ。そして、念願の聖銀合金製の回路で作った魔道具もある。だけど、二人が付いて来るならおいそれと出せないじゃないか。リア充は、大人しく屋敷でイチャラブして頂きたい。
とにかく、これで場所は把握したから、明日からはソロだ。今日は大人しく接待攻略に徹しよう。自慢の魔道具は封印、短槍も胸鎧も、子爵家からの借り物で。ガクブルしながら頼れる大人を装うカバネル先生に、前に出たそうなカロルさんを横目に見ながら、レッツらゴー。
「凄いですわ、アレクシさん!まさかこんなにお強いだなんて!」
カロルさんが興奮しながらついて来る。ここはジャングル型のダンジョン。11月、カミーユ先輩に襲いかかった殺人熊なんかが群れで出現する、中級のダンジョンだ。本当は、山ほど貯めた魔石で大火力魔道具をブッパしたいところだけど、二人の前では大人しく槍で戦う。
カロルさんは、ここのモンスターがちょうど力量に合ってるみたい。1 vs 1なら難なく撃破している。一方、いいとこなしなのがカバネル先生。後ろでちょっとしょげている。ああもう。
「先生。この先、スティングビーが出現します。散弾銃の詠唱を終えて準備してください」
「え、でも僕、まだ散弾銃なんて」
鑑定で見えている。彼のレベルはとっくに10を超え、既に散弾銃は習得している。僕は有無を言わさず詠唱を促し、茂みの先に踏み込む。
「先生、今!」
「わわっ、散弾銃!」
さすがINT特化の先生。結構な数の弾が飛んで行き、3匹の蜂に全て命中。キラー属性でクリティカル、蜂はそのままコインと針に変わって落下した。
「クレマン兄様、素敵…!」
「やったのか、僕が?ははっ…」
脚ガクガクで興奮する先生と、ここぞとばかりに抱きつくカロルさん。ああはいはい。仲良くやって下さい。僕がコイン拾っときますんで。
このダンジョンは、一層あたりの面積が広い。僕は物足りずにもっと深く潜りたかったんだけど、もやしっ子のカバネル先生がダウンしたので、今日は地下一階でお開き。まあ、初心者にいきなり中級はキツかったかな。ちょっぴり反省。しかし後ろで二人してラブラブイチャイチャしやがって、ムシャクシャしていたのは事実だ。後悔はしていない。
その日の晩餐、カロルさんは興奮気味にダンジョン攻略について披露した。
「もう、凄いんですのよ!アレクシさんが、殺人熊を一人で何頭も倒してしまって」
「ほう、貴殿がそこまでの手練れとは」
子爵と準男爵の目が光る。やめてくれ、目立ちたくないんだ。
「そ、それよりもほら、カバネル先生の散弾銃が」
「そうなんですの!クレマン兄様が杖をこう構えて、蜂が一瞬で」
「やめてくれよ、カロル。僕は今日、いいところなんか一つも」
「あら、兄様。すごく素敵でしたのに」
「カロルや。もう兄様ではない、旦那様だぞ」
「若い二人はアツアツだな。はっはっは」
照れる二人。囃し立てるオッサンたち。和む食卓。ぼっちの僕。味のしないディナーだった。
そして翌日。
「さあ、今日も張り切って参りましょうね!」
「カロル、あまり無茶をしては」
どうしてこうなった。




