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【完結】ループモブ〜ループに巻き込まれたモブの異世界漫遊記  作者: 明和里苳
3周目

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第33話 パワーレベリング(4)

 午前中モンスターハウスに到着して、午後はひたすらトンボ狩り。途中休憩を挟みつつ、念の為魔石袋をこっそり新しいものと入れ替え、周回すること25回。僕は無事レベル11に到達した。ということは、そろそろ先輩もレベル10になる頃だろう。先輩は、これまでの鍛錬の結果、槍術と身体強化の下地があり、レベル上昇と同時に習得、レベルアップの流れになっている。


 僕以外のモブは、みんなステータスやスキルポイントが「自動ポイント分配・オン」のままだ。彼のレベルが9に上がると、槍術Lv3の二連撃に手が届く。前回はそれで殺人熊を撃破出来たようだから、ひとまずこれでパワーレベリングは完了だ。


「本当に、二連撃が出来るようになっているよ…!」


 僕がコイン拾いに勤しむ中、彼はモンスターハウスの中で技を繰り出して、興奮している。これまでお父さんの華麗な槍術に憧れ、鍛錬を重ねて来た彼。感動もひとしおだ。


 帰り際、彼とはコインを山分けして別れた。彼は前ループと同様、しきりに遠慮していたけど、素材は僕がもらうことで押し付けた。トンボ一匹300ゴールド、それがモンスターハウスで一度に36匹。出入りすること25回、こんだけで27万ゴールド。美味しいバイトだ。押し問答の結果、10万ゴールドだけを持って、彼は恐縮しながら寮室に帰って行った。


 そういえば、僕のストーンブラストのことを口止めしておいたけど、彼は嘘がつけない性格で、ちょっと迂闊なところがある。前回も、僕にダンジョンに連れて行かれたことを、ぺろっと話してしまったし。仕方ない。ちょうどポイントも貯まっていたことだし、本当に石礫ストーンバレットを習得して、スキルレベルを4まで上げておくか。ついでに余ったポイントで、槍術も取得。これで、「カミーユ先輩に、槍術の訓練のためにダンジョンに連れて行ってもらった」という言い訳は立つだろう。




名前 アレクシ・アペール

種族 ヒューマン

称号 アペール商会令息

レベル 11


HP 100

MP 400

POW 10

INT 40

AGI 10

DEX 50


属性 土


スキル

-石礫ストーンバレットLv4

Lv1 石礫ストーンバレット

Lv2 散弾銃ショットガン

Lv3 ストーンライフル

Lv4 ストーンブラスト


-槍術Lv1

Lv1 強撃


(ランドスケイプ)

(ロックウォール)

(身体強化)


E 私服

E 魔道具・ストーンブラスト


ステータスポイント 残り 0

スキルポイント 残り 0




 うん、いい感じだ。レベル11まで上げて来て良かった。


 さて、土曜日だけでカミーユ先輩のパワーレベリングが上手く行ったので、日曜日は暇になってしまった。そんな時こそ魔道具作りだ。1周目、冒険者でそこそこ稼いだ僕は、2周目はダンジョン攻略であらゆる問題を解決しようとした。なのになぜか成り行きで「塔」に送られて、魔道具課で過労死寸前。だがしかし、その酸鼻極まる経験が、3周目の僕の糧となっている。今ループは魔道具無双の予定だ。毎度マイブームに流されて行き当たりばったりとも言えるが、僕としては柔軟性に富んでいると表現したい。


 3周目のループに入って2週間弱。ここまでで、未習得スキルだけでなく、自属性でない魔法すら、魔道具で再現出来ることが分かった。しかも、取得条件を満たしていなくてもだ。先週ネズミ退治に活躍した火炎(ファイアスプレッド)の魔道具だが、あれは火属性爆炎(エクスプロージョン)スキルのレベル1。そして爆炎は、取得条件に「Lv10、INT20」が含まれている。あの時僕は、どちらもそれを下回っていた。


 ならもう、これまで使ってみたかったスキルの魔道具を、作りまくるしかないと思うんだ。


 ———そう!僕がずっと求めていた、「ゴーレム作成」をね!




 ゴーレム作成の聖句は覚えている。とりあえず、レベル1のマッドゴーレムからだ。マッドゴーレムは、「小、土、制御、戦士」。魔法陣は複雑だけど、聖句は意外と単純だ。そして、複雑な魔法陣の全てを綺麗に写し取る必要はない。古代語の聖句の部分だけを抜き出して、一筆書きにすればいい。これが、「塔」の魔導士も知らない、僕だけのオリジナル。


 例によって、かまぼこ板に聖句を彫り付け、砂のように細かい魔石片を隙間なく埋め込み、接着剤で固める。先端だけパチンコ玉くらいの魔石、そして反対側には魔石を嵌めるための窪み。土曜日、帰寮後に作ったこれを持って、早速翌日には例の不人気ダンジョンへ。僕以外に誰も訪れず、強い魔物も現れず。ダンジョンだから安心してスキルを試すことができる。上手く行けば、ゴーレムを使役したまま無双出来るかも知れない。わお。


 僕はゴクリと唾を飲み込みながら、魔石を窪みにセットした。途端、目の前の土がモリモリと盛り上がり、マッドゴーレム、すなわち泥人形が姿を現す。やった!


「ゴーレム、前進!」


 僕は意気揚々と、ゴーレムに指示した。しかしゴーレムは、頭部を回転させてこちらを認識すると、べとべとの拳を振り上げて来た。


 べちょお。


「ギャー!」


 僕は魔道具を放り出し、一目散に出口へと逃げた。ゴーレムは追って来なかった。しばらく経って、ソロリとダンジョンの中を伺ってみると、そこには僕が放り投げたかまぼこ板と、泥の塊。そうか。嵌めた魔石が外れたから、スキルが中断したのか。




 僕は思い知った。ゴーレム作成スキルの、「レベル50、INT300」という取得条件。あれは理由があってのことだ。ゴーレムを作れても、それを制御出来ないんじゃ仕方ない。早すぎたんだ。腐ってやがる。


 それにしても、試しに作ったのが泥人形で良かった。ストーンゴーレムとか作ってたら、一撃死しててもおかしくない。マッドゴーレムは、動きが緩慢で攻撃力も低く、戦闘に役立ちそうにない。それが分かっただけでも幸運だったと言える。うん、ポジティブに捉えよう。


 しかし、早速頭から泥だらけ。この状態をどうしてくれよう。生活魔法の清浄クリーンで洗浄しようにも、全部綺麗に落とそうとすると、結構手間が掛かりそうだな。次の魔道具は、清浄の強力な奴にしよう。そうしよう。


 その日僕は、これといった戦果を得られないまま、魔石だけ拾って帰って来た。ドンマイ。

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