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【完結】ループモブ〜ループに巻き込まれたモブの異世界漫遊記  作者: 明和里苳
2周目

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第20話 カバネル先生改造計画

今回も、読んでくださってありがとうございます。

 街へ繰り出して最初に出かけたのは、カフェだ。あろうことか先生は、朝食を食べずに出て来たらしい。官舎住まいの教師も、学園の食堂を使えるはずなのに。サラリーマンは体が資本だ。社会人舐めてんのか。


「いやぁ、こうしてカフェで朝食なんて、デートみたいだねぇ」


 カバネル先生は呑気に笑っているが、僕にそのはない。のんびりオムレツを口に運ぶ先生を横目に、コーヒーをすする。こういう所が浮世離れしているというか、やっぱり貴族の子弟だ。


 今日はカバネル先生の改造計画。まずは美容院だ。僕も前のループまではずっと床屋だったけど、色気付いた学生は、みんな美容院に通うものだ。ループの始まった10月1日、入学式の午後は半休だったため、僕もその足で美容院に飛び込み、髪を整えてもらった。それから約三週間。今回は、僕と先生の予約を入れておいたのだ。




 王侯貴族や豪商って、みんな美形が多い。代々美姫(びき)めとって、美形のDNAを取り入れているからか。カバネル先生も、普段のボサボサ頭と眉を整え、剃り残しの髭を綺麗に剃り落とすと、ちょっとした貴公子に生まれ変わった。いや、こっちが本来の姿というべきか。これまで人生かなり損していると思う。


 美容院が終わったら、今度はテーラーだ。先生は「今持っている服で十分だから」などとホザいているが、その日曜日のテレビの前で転がっているパパさん的なコーデは、一体誰が用意したのだろう。僕はフィッターを呼んで、スタイリングをお願いした。とりあえず、ビジネスカジュアル一式、それからカジュアルコーデを2パターン。靴もそれなりのものを。合計金額は、先生の月収の二ヶ月分ほどになったが、ダンジョンに潜ればこんなの速攻で回収できる。


 次に、おろしたての靴と小ざっぱりしたシンプルコーデに着替えて、魔道具屋。彼の装備は、学園時代に支給された10年ものだ。非常にダサい。特に杖。ここで、指揮棒状の黒檀の短杖に持ち替え。某魔法学園のファンタジーっぽくて非常にサマになる。ついでに僕も、鉄刀木てっとうぼくのものをゲットした。


 昼食を挟んで、いつもの防具屋。親父さんに、先生のマントを見繕ってもらった。ちょうどいい具合に、防刃エンチャントの一級品が入荷していたので、即決定。こちらも月収二ヶ月分ほどになったが、割賦にしてもらって、頭金は立て替えておいた。




「アレクシ君…君は一体、僕をどうしたいんだい…」


 一日ショッピングに振り回されて、カバネル先生はへろへろだ。カフェで泣き言を聞きながら、僕はお茶をすする。彼は甘いものが好きなので、ぶつくさ言いながらもパンケーキを口に運ぶたび、ご機嫌が回復していくのが分かる。そもそも彼も、今日の買い物は満更ではなさそうだ。さっきも防具屋でローブを羽織り、杖を構えてキリリとポーズを取っていた。男は結局、変身ベルトとか、ビームサーベルとか、新しい武器おもちゃに弱いんだ。


 そして彼は、元々の素材が良い。こうして男二人でカフェという寒いシチュエーションにも関わらず、周囲の女性客からはチラチラと好意的な視線を送られている。僕は、一日の最後に、カフェで詠唱の研究を持ちかけようとしたから、ちょっと計算外だ。詳しい話は、また明日の放課後にしよう。




 翌日、職員室と生徒の間で、カバネル先生がちょっとした話題になった。もっさりの代名詞、先生の中でも冴えない部類だった彼が、急に垢抜けてイケメンになったと。放課後、彼はとても困惑していた。男女問わず、いきなり食事の誘いがあちこちから舞い込んだそうだ。


「先生、元の素材がいいからですよ」


 僕は慰めておいたが、ちょっと外見を変えるだけで手のひらクルーに戸惑う気持ちは分かる。僕らは研究室の片隅で、ひっそりと作物の観察に勤しんだ。

今回も、読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ループで学んだことを自身に活かすのは普通のことですけど、意識的に周囲の人間に活かすのは割と珍しいです…よね? 自分に余裕が出来たからやったこと、ではないし。
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