第17話 パワーレベリング(1)
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二人を案内したのは、地下一階。他の冒険者がゾロゾロと二階を目指すのを尻目に、ピルバグから攻略していく。カミーユ先輩は、槍でサクサクとピルバグを倒し、「ダンジョンってこんなものでいいの?」と拍子抜けした様子。おっかなびっくりついて来たカバネル先生も、杖で恐る恐るダンゴムシを叩いていたが、そのうち慣れてきたようだ。
湧きポイントを2周ほど回って、セーフゾーンで水筒を取り出し、一息つく。パーティー登録をしたので、経験値は按分されるのだろうか、それとも最終アタッカーが得るのだろうか。しかし、自分の経験上、冒険者レベルが1から2に上がるくらいは、回ったと思う。
「今日こうしてダンジョンにお付き合いいただいたのは、他でもありません」
僕は二人にダンジョンアタックについての真意を明かした。
学園で剣術や槍術を学んでも、習得出来る者と出来ない者がいる。僕も初等部から昨年度まで、ずっと剣術を学んでいたが、ついぞ獲得できなかった。しかし、冒険者は皆、何らかの武術や魔術を嗜み、実戦を繰り返すことで強くなる。ということは、槍術のクラスで皆がスキルを獲得できないのは、単に実戦経験や何らかの能力が、槍術を覚える基準を満たしていないだけではないかと。そう説明した後、僕は二人の前で、槍術スキルLv1の強撃を披露した。
「本当だ。君は今年度から槍術を取ったばかりなのに、もう会得したんだね」
そして呑気に拍手しているカバネル先生に向き直り、
「先生も。土属性魔法を農業転用する研究を続けていらっしゃいますが、もしかしたら実戦経験を積むことで、もっと進化した魔法が使えるようになるのではないかと」
「なるほど、だから僕を誘ってくれたんだね!」
彼は「その発想はなかった」という顔をしている。
そもそも土属性の魔導士が「塔」において肩身が狭いのは、実戦が足りないからだろう。僕も前ループで冒険者活動をしていて分かった。土属性は、攻撃スキルが石礫くらいしかなく、攻撃手段としては非常に心許ない。かといって、初期のロックウォールも土壁が作れるだけ。ランドスケイプに至っては、終盤で落とし穴を覚えるまで、まるで戦闘の役に立たない。そして終盤まで上げようと思ったら、膨大な経験値が必要。非常に遅咲きなのだ。土属性の冒険者は居ないこともないが、皆、武術スキルで前衛職。土属性スキルを戦闘に役立てている冒険者を見たことがない。
戦闘で経験を積むことがなければ、スキルは弱いまま。それが土属性の最大の弱点だ。だけど、石礫がLv4に上がってストーンブラストを覚えた途端、風属性の雑魚で無双出来るようになる。土属性が始まるのは、ここからだ。
とりあえず、休憩が終わったら、もう一度一階を巡る。今度は大蜘蛛やカゲロウも相手にしてみた。僕と先輩は槍で、先生は石礫で。温厚な二人だが、やっぱり男子だ。戦闘がサマになってくると、どんどん次に進もうと促されるようになった。
昼食を挟んで、午後からは地下二階へ。デカいヤスデ、コオロギ、カマドウマたちを、キャッキャウフフしながら狩って行く。しかし僕は今日は革靴だし、先生はローブという軽装、先輩に至っては制服なので、無理はしない。彼らのステータスは分からないが、午前中より動きにキレがあるから、いくつかレベルが上がってるんじゃないだろうか。多少物足りなさそうな顔をしているが、今日は無難にコツコツと、経験値稼ぎに徹しよう。
夕方に引き上げる頃には、既に二人とも次のダンジョン攻略の相談をしていた。気に入ってもらえて良かった。なんせ先輩に関しては、来月まであと半月しかない。それまでに、出来る限り経験を積んでもらわねば。ギルドのカウンターでドロップアイテムを売り払い、収益を山分けして、今日はお開きだ。次のアタックは来週の土曜日に決めて、僕らは解散した。
翌日、僕は防具屋で修理の終わったブーツを受け取り、改めてソロでダンジョン攻略。前日はあまり稼ぎにならなかったので、今日は本腰を入れて。ステータスをINTに振るようにしたので、連動してMPも上がっている。石礫Lv2、散弾銃を多用して荒稼ぎだ。結果、前回のトンボ狩りの1.5倍くらいの釣果、およそ160体のモンスターを討伐。目標のレベル11にはあと少し足りなかったが、無理は禁物だ。
名前 アレクシ・アペール
種族 ヒューマン
称号 アペール商会令息
レベル 10
HP 500
MP 300
POW 50
INT 30
AGI 10
DEX 10
属性 土
スキル
+石礫Lv3
+槍術Lv1
(ランドスケイプ)
(ロックウォール)
(身体強化)
E 短槍
E 胸鎧
E 革の帽子
E 革のブーツ
E マント
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 30
来週には、石礫をLv4に上げて、念願のストーンブラストをゲットだ。僕はウキウキとした足取りで、寮に戻った。
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