第15話 初級ダンジョン(3)
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気を取り直して、日曜日は初級ダンジョンだ。ブーツは一部溶けたままだけど、気にしない。中級と違って上手く立ち回れば、そう危険はないはずだ。
入り口に並んでいると、昨日の夕方のギルドに居合わせた冒険者たちが、ヒソヒソとこちらを見ている。だがしかし問題ない。僕はこれからソロで虫を狩りまくり、「昨日のカエルは本当にコイツが狩って来たんだな」っていうのを証明してやる。
この初級ダンジョンも、もう勝手知ったるものだ。前のループで散々周回した。僕は思い出の1階を素通りし、2階も3階も素通りして、トンボの湧く4階まで降りた。
トンボは不人気だ。状態異常攻撃はないが、なんせ素早く飛ぶので、倒し辛い。よって、4階を狩場にする冒険者は少ない。僕も初日のトンボ事件がトラウマで、土属性と相性のいいモンスターにも関わらず、出来るだけ関わらないようにしていた。だけどその後、隣領の飛行モンスターを狩りまくって、ウィングキラーの二つ名まで獲得した僕だ。トンボなんて可愛らしいもの。さあ、今日からはお前たちは狩る側じゃない。僕が狩り倒してやる。
下層を目指す冒険者から離れて、僕は4階のトンボの湧き場を巡った。30センチほどもあるトンボはグロくてキモくて、しかも複数湧き。虫が苦手な僕は鳥肌が立ちっ放しだが、石礫のレベル2、散弾銃さえ当たれば、こんなに美味しいモンスターはいない。散弾銃は、石礫の石ころが10個ほど発射される、対複数用スキル。今の僕のDEXだと命中率に難があるが、取りこぼしは槍で一突き。トンボは通常2〜4体で発生するため、彼らの攻撃はほとんど喰らうことなく、サクサクと狩って行く。
レベルはなかなか上がらなかった。体感、レベルアップに必要な経験値は、1つレベルが上がるごとに、それまでの総量と同じくらい。上がれば上がるほど上がり辛くなる。そうするともう、後は数でカバーだ。MPが切れるまで散弾銃でトンボを撃ち落とし、合間にスカラベやバッタを槍で狩る。一巡すればセーフゾーンで休憩。昨日カエルを一撃撃破できるまでPOWを上げたので、硬い虫系モンスターも恐るるに足らず。そしてインベントリも地味にありがたい。嵩張るドロップ品や、戦闘中使わないお金なんか、全部放り込んで手ぶら旅だ。
午前中に2レベル、午後に1レベル。4階のモンスターを合計100匹以上は倒したけれど、今日はこれでお開き。前回カエルを倒すために力を主体に上げたので、トンボを乱獲するにはちょっとMPが足りなかった。本当はあと2レベル上げてストーンブラストまで取ってしまいたかったが、また来週のお楽しみだ。
名前 アレクシ・アペール
種族 ヒューマン
称号 アペール商会令息
レベル 9
HP 500
MP 200
POW 50
INT 20
AGI 10
DEX 10
属性 土
スキル
+石礫Lv3
+槍術Lv1
(ランドスケイプ)
(ロックウォール)
(身体強化)
E 短槍
E 胸鎧
E 革の帽子
E 革のブーツ
E マント
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 20
今日の収入だが、トンボが1匹300ゴールドに、ドロップ品の羽が100ゴールド。他は250〜350ゴールド、ドロップ品は50〜100ゴールド。集めると、コインが大体25,000ゴールドで、ギルドに買い取ってもらった素材が10,000ゴールドくらい。カウンターでは、再び注目を浴びた。しかし、昨日の汚名返上という意味で。それはそうだ。昨日冒険者登録した新人が、いきなり中級のドロップ品を持ち込んで、不正やったんじゃないかって噂になってたのが、今日は初級の4階で不人気のトンボを大量に狩って来たのだから。
つくづくこの世界で、ステータス画面が知られてなくて良かった。昨日の朝、正真正銘ヨワヨワのレベル1だった僕が、どうしていきなり中級を目指してカエルを狩って来たかなんて、詮索されても困る。だけど、ステータスさえ見られなければ、「実は冒険者になる前に、人知れず訓練してました」って言えるもんね。
なお支出については、帰りに防具屋にブーツを持ち込んで修理を依頼したので、この二日の稼ぎはチャラになった。丈夫でちょっとお高いブーツだったから。親父さんにはカエルの酸の仕業だとバレて、こっぴどく叱られたが、「防具のお陰で無事生還できました」とリップサービスをすると、多少ご機嫌が治ったようだ。
さあ、あと2レベルで、石礫のレベル4、ストーンブラストが取れる。前ループで散々お世話になったスキル。来週のダンジョンアタックが楽しみだ。
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