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【完結】ループモブ〜ループに巻き込まれたモブの異世界漫遊記  作者: 明和里苳
界渡り編

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第128話 二度目の界渡り

 知ってる天井のはずだ。だけど思い出せない。どこだ、ここ。


 目をこすって体を起こして、びっくりした。そうか、この天井は子供部屋のもの。ここは実家だ。そして勉強机のカレンダーを見て確認する。


 ———20××年。僕は小学三年生の時点に渡って来た。


 ああ、失敗した。いつの時代に跳ぶか、どうやって岡林君を探すか、もっとちゃんと考えてから跳ぶつもりだったのに。座標のイメージを明確にしないまま界渡りをしたせいで、僕は初めて大学より前の時点に戻って来てしまった。しかしそれは、不幸中の幸いだったと言える。だって僕が岡林君を目撃したのは、たまたまバイトで見たあの一度きりだったから。正直言って、あの一度のチャンスを掴んで彼と旧交を温めるのは不可能に近い。自分でも分かってた。ならば、岡林君と仲良くしていた時代に戻るのが無難だろう。


 しかし、小三はないよな…。


 大学まであと九年。これから先の長い道のりを想像して、僕はため息をついた。




 ところで、こちらに帰って来て気になったことがある。ステータスだ。僕の現時点のステータスは以下の通り。




名前 雨河怜旺

種族 ヒューマン

称号 小学生

英霊の加護

聖霊の守護

レベル 412


HP 3,000(5,000)

MP 12,720(21,200)

POW 300(500)

INT 1,272(2,120)

AGI 300(500)

DEX 600(1,000)


属性 土


スキル

+斥候術LvMax

+ 剣術LvMax


石礫ストーンバレット

(ランドスケイプ)

(ロックウォール)

(ゴーレム作成)

(槍術)

(弓術)

(体術)

(投擲術)

(身体強化)


E パジャマ


ステータスポイント 残り 0

スキルポイント 残り 3,020




 手持ちのアイテムは全部インベントリに入っている。年齢が低いせいか、ステータスは全て6割に制限されているようだ。とはいえ、制限されてなおすごい数値だけど。中級ダンジョンなら、物理でソロ踏破できるほどだ。


 気になったのは称号。僕は前回の界渡りで墓参りをして「祖霊の加護」という称号を得た。その後成り行きでアンチカースを重ねた結果、「英霊の加護」までランクアップした。その称号はあちらに戻っても生きていて、更に再度こちらに渡った今も残っている。しかし今は墓参り以前の時点だ。前回の界渡りの実績が称号として残っているのは、同一ループ内だからだろうか。


 色々考えている間に、だんだん眠くなってきた。時刻は23時。あっちでラクール先生に見つかったのと同じくらいだ。子供の体は眠気に弱い。おやすみなさい。




 朝。目覚ましの音で目が覚めて、一階のダイニングに降りる。運がいいことに、今はちょうと夏休みのようだ。朝食より前にラジオ体操に送り出され、僕はスタンプカードを持って公園に出かける。


「あ、レオくんおはよう」


「岡ば…のりくんおはよう」


 探すまでもない。岡林君がいた。咄嗟に岡林君と呼びそうになって、そういえばこの頃はのりくんと呼んでいたことを思い出した。


 岡林則明くん。僕と同い年。同じ町内のお婆ちゃんの家に住んでいる。僕と彼が一番仲が良かったのは、ちょうど今頃、小学校の半ばくらいだ。高学年、中学校と進んで交友関係が広がるにつれ、少しずつ距離が離れて行った記憶がある。中学生の彼の冷たい眼差し、そして社会人とおぼしき彼の疲れ切った様子を思い出すと、心に苦味が走る。しかし目の前の彼は、少し引っ込み思案で大人しく、どちらかというと可愛らしい感じの少年だ。


「レオくん、今日もうちに来る?」


「うん、朝ごはん食べたら、後でね」


 僕がアプローチ方法を案じるまでもなく、彼の方から約束を取り付けてくれた。ありがたい。


 少しずつ思い出してきた。この夏、僕はほぼ毎日宿題を持って岡林君の家に遊びに行っていた。宿題は言い訳で、ほとんど遊んでいただけだけど。一方うちは、現在専業主婦の母と幼稚園の妹がいる。母の厳しい監視と妹のお守り役があって、遊びも宿題もままならないのだ。


 岡林君の家は快適だった。少し古いけどよく手入れをされた、小さな一軒家。彼はそこに、お婆ちゃんと二人で暮らしている。


 お婆ちゃんは穏やかな人で、僕らに頭ごなしに宿題をしなさいとかガミガミ言わない。だけどちゃんと「今日は漢字ドリルを3ページしてから遊びに行ってらっしゃい」って釘を刺す。僕らは冷たい麦茶を飲みながらドリルをこなし、終わったら水筒を持って外に飛び出すのだ。


 ———しかし。


「レオくん、今日はどこ行く?川?裏山?」


「う〜ん…」


 そうなのだ。今の僕は、体は子供だけど頭は大人。虫を取ったり探検したり、そういうのに全く興味が湧かないお年頃。この暑い中、どうして彼を引っ張り回して外を走り回っていたのか。昨日までの僕の行動原理が理解できない。


「あの、今日は図書館に行きたいんだけど…いいかな」


 そう言うと、岡林君はパアアッと顔を輝かせ、「うん!」と強く頷いた。

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