(完結)
オチをお楽しみください^_^
「アンディ、ホトケはもういい!
何か他に機能はないの? もうちょっとこう、僕もパパも楽しくなるようなやつ!」
僕の必死の叫びが届いたのか、アンディの音は静まり動きも次第に大人しくなった。
よかった、どうやら円空仏は諦めてくれたらしい……。
「アリマスよ、他に得意な機能!」
パパと僕は、顔を見合わせて大袈裟に頷き合った。
「じゃあ、そっちにしよう。情熱も仏像も要らないから、ね」
「それは、最高ニ人生が満たサレルコト!」
僕もパパもイヤな予感がした。何だか普通のことではなさそうだったから。
「う、うん……。あのね、なんかこう、ひねりとかなくてさ、普通のことでいいんだけどな。
たとえば、美味しい料理を作るとか!」
「そうだな、まなぶ! パパたちはそれが一番嬉しいよな」
「うん、僕たちもう、多機能にこだわるのはやめたんだ」
でも、アンディは僕たちの意見を無視した。
「あんでぃのトビキリの機能! 心を盗ム機能、ツイテマス!」
うわあ! やっぱり変な機能、キタ!
心を盗むって一体何をするんだろう?
疑問しかなかったけど、火に油を注ぐことになりそうだから黙っていた。
すると、アンディの瞳が黒から赤色に変わり、強く輝きだした。その奥に、さっきまでなかった白いうずまきがぐるぐると回っている。
「アンディ!?
こ、壊れちゃったの?
パパ、アンディの目がぐるぐる……」
僕がパパを振り返ると、パパはアンディのうずまきに目が釘付けになっていた。
「ちょっ……!? パパ! パパ! なんだか目が変だよ、パパ!」
なんとパパの黒目も、渦巻きにつられてぐるぐるぐるぐる回りだした。
パパを揺さぶりながら呼びかけたけど、パパはアンディから目を離さない。
ますます、ぐるぐる回るパパの眼球。
そして……。
「アンディーーーーーーー!」
パパは雄叫びをあげ、アンディに駆け寄った。
そして、パパとアンディがひっしと抱き合う。
「え!? ええーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
悲鳴をあげる僕に、アンディがその瞳の光を赤から黒に戻しながら叫んだ。
「見たカ、まなぶ。アンディ、催眠術機能でパパさんのココロを盗みマシタ!」
「なんだそれ! ろくな機能じゃないじゃんか!」
「サア、パパサン! 元妻のトコ今カラ行きまショウ!
アンディと付き合ウから、お前モウ帰ってくるナと伝えにイカないと!」
パパはアンディの言うがままに「うんうんそうだねアンディそうだよね」と、デレデレの顔で頷いている。
相変わらずパパの目はまだ回っていて、ピントが合っていない。
「〝元〟妻じゃないよ、アンディ! パパとママはまだ離婚してないっつーの!
んでもって、パパは潔白なんだから、ママはそのうち帰ってくるんだってばあ!」
僕は涙と鼻水を垂れ流しながら叫んだ。
「知ラン! デハ!」
ウィーン、ウィーンと音がして、アンディの背中からプロペラが出てきた。
プロペラは勢いよく回り、アンディとパパが抱き合ったまま宙に浮いた。
そして二人は、そのまま窓から出て行ってしまった。
「そんなあああ~~~! パパーーーー! パパーーーーーー!」
たった一人で家に取り残された僕は、抜け殻になったリボンと白い布を前に、ただただ泣きじゃくっていた。
完結です。
お読みくださり、ありがとうございました!