(2)
二話目です!
次で完結しますよん
アンディーのハキハキした受け答えに、パパも僕も心が和んだ。
パパはなんて頼もしいロボットを買ってきてくれたんだろう!
「あとさ、アンディーは『多機能ロボット』なんだよね? 家事はまあ今時どのロボットもできるけどさ、君は他にどんなことができるの?」
「イロイロです! 多機能デスカラ」
アンディーは胸を張って答えた。
「はっはっは、すごい自信だなあ!」
パパが喜んで笑った。僕は、気になって続けた。
「たとえば? たとえば? どんなことができるの?」
アンディーは愛らしく小首を傾げた。
「イロイロありますガ……ソウデスネ、おふたりを情熱的に愛スルことがデキマス!」
僕とパパはキョトンとした。
「うん? そりゃ嬉しいけど……『情熱的に愛する』って、君はどんなことするんだい?」
「僕も知りたい。どういうこと?」
するとアンディは、胸のディスプレイに地図のマークのアプリを映した。
「マズ、おふたりのスマホにGPSアプリ入レマス」
「ああ、迷子とかなんないように入れるヤツのこと?」
僕にはGPSアプリが何なのか、詳しくわからない。
まだスマホを持たされてないからだ。けど、僕の横で、パパの顔がサーーーッと青ざめた。
「パ、パパ! どうしたの!?」
「あ、あの会社の女と同じじゃないか!
あいつも俺のスマホをこっそりくすねて、GPSアプリを入れて素知らぬ顔で突っ返してきたんだよ!
それで俺の動きを把握して、あたかも毎日一緒に行動してたかのようにママに言ったんだ!」
「何それ?」
大人の事情は、僕にはもっと分からない。しかし、アンディはニヤリとほくそ笑んだ。
「その女性モパパサンのことを、情熱的に愛シテいたのでしょう」
「わーーーーやめろーーーー!」
「そして、おふたりの部屋に監視かめらをツケマス。
それヲあんでぃの胸のディスプレイで確認するコトできます」
アンディの胸のディスプレイが白く光った。
そして、光が収まると画面には、どこかの部屋が映っていた。
天井の照明は消えていて薄暗く、グレーのデスクの上に、電源の切れたパソコン。
コーヒーがカラカラに乾いたマグカップ。肘掛け付きの椅子はあるけど、誰も座っていない。
「わーーーーーーー、これ俺のオフィスのデスクじゃないか!! しかもリアルタイムか? こんなところにいつの間にカメラなんか仕掛けたんだ!」
「カメラは最初カラついてました。
あんでぃ今、この回線に割込んで通信シテマス。今も誰かがこのかめら回線ヲ使ってマス」
「あ、あの女以外あり得ない!
ちきしょう、警察にも届けてもう俺に近づかないという誓約書まで書かせたというのに……」
今度はパパの顔が真っ赤になった。
さっきからパパは、「あの女、あの女」と言っているけど、それがあのおーえるのことなのかな。
「そして、元妻にあんでぃの存在を知ラせに行きマス。
パパさんもまなぶクンのことも全てあんでぃがやる……だから、この家にモウあなたの居場所はナイと……」
「わーーーーーーーー、絶対にヤメローーーーーーー!」
パパは頭を掻きむしった。
「あ、アンディー! その『情熱的に愛する』ってのはやらなくていいよ! パパ、イヤみたいだよ!」
「ウッソ! ソウナンデスカッ!?」
「うん、見ての通りさ。ねえねえ、他にもいろいろできるんだろ? 他はどんな機能?」
僕はサッカーやけん玉が好きだから、一緒に遊べたら嬉しい。
あとこないだ学校のお楽しみ会で先生がやってくれたマジックもスゴかったから、ああいうのを披露してもらうんでもいいな。
すると、アンディは答えた。
「ホトケを彫レマス!」
「えっ、ホトケ?!」
「ソウデス、あんでぃには仏像ヲ彫るスペシャル高機能ついてマス。ホトケを彫れるロボットなんてソウソウいない。シカモ、ご利益めちゃめちゃアリマス!」
「ロボットが彫る仏像なんて、ご利益あるわけねえだろ!」
パパが怒鳴った。
「僕も仏像なんていらないよ。それなら、パンダのぬいぐるみがいい!」
「緻密なホトケもザックリしたホトケもドチラモ行けます! まなぶクン、パパさんドッチいいか。好きなほうヲ彫ってヤルヨ」
「だから、いらないってばぁ!」
「決メタ! 円空仏彫りマス。素朴な中に味ガあるホトケです。この部屋借りるネ。仏像彫る、集中力要ル。だからドア開けないで!」
それからアンディは、パパの部屋に籠ろうとした。僕たちは慌てて止めた。
「待て、アンディ!
今日は晩ご飯をお前に作ってもらうつもりだったから、パパ、すぐ食べられるもの買ってこなかったんだ。
材料だけは冷蔵庫にあるから、まなぶの誕生日のディナーを用意しておくれ」
「ダメです、ホトケが先!」
僕はもうお腹ぺこぺこ。誕生日の夜がウーバーイーツなのはちょっと淋しい。
「アンディ、ホトケを彫るのってどれくらいかかるの?」
「三ヵ月!」
「長っ!」
三ヵ月もパパの部屋に籠られたんじゃ敵わない。
僕とパパは必死でアンディにしがみつき、引き止めた。
「離セーーーーー!」
アンディの内部から激しいモーター音がぎゅんぎゅんと響き、色んなジョイント部分から黒い煙が上がった。
次で完結です。オチをお楽しみに^_^