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【短編】その他の短編

夏の終わりのカレンダー

作者: 烏川 ハル

   

 9月1日の朝。

 目が覚めたユキコちゃんは、微妙な違和感を覚えました。

「……?」

 ただし、一瞬だけです。すぐに事情を理解できました。

 壁にかかっているカレンダーが、昨日と少し違うのです。


 昨日までは、薄青色の背景にアサガオ、ヒマワリ、スイカのイラスト。それが今日は黄緑色をバックに、月見団子、三日月に腰掛けたウサギ、鮮やかなピンク色のコスモスが描かれています。

 ユキコちゃんが眠っている間に、ママかパパがカレンダーをめくったのでしょうね。8月から9月のページに変わっているのでした。


「そうか! 暑い夏が終わって、今日から涼しい秋なんだ!」

 いかにも秋っぽいイラストを目にするだけで、ユキコちゃんは何だか嬉しくなりました。

   

――――――――――――

   

 9月になっても、ユキコちゃんの家では日中、クーラーを使っています。

 涼しい部屋の中でテレビを見ていると、ニュース番組がこの夏を振り返っていました。

「東京都心では、8月は毎日真夏日となりました。1ヶ月の全ての日が真夏日となるのは、観測史上初めての出来事で……」


 ユキコちゃんはハッとしました。

 彼女の家も都内にあるので、これは自分にも関係ある話のようです。ただし彼女には難しい言葉も含まれているため、完全には理解できません。

 それでも「毎日」や「真夏」くらいはわかりますし、隣でママが、

「そうよねえ。本当に暑かったものねえ……」

 と溜息まじりに呟いているので、夏の暑さの話題なのだろうと理解できました。

   

――――――――――――

   

 夕方、ユキコちゃんはママと買い物に出かけました。

 ただし休日のショッピングみたいな大仰な「買い物」ではなく、近所の商店街まで晩御飯の材料を買いに行くだけ。ユキコちゃん自身の洋服やオモチャを買ってもらえるわけではありませんが、ママと一緒におでかけ出来るだけで、ユキコちゃんは嬉しくなります。


 お気に入りの麦わら帽子を被り、リボン飾りのついた赤い靴を履いて……。

「さあ、行きましょう」

 というママに手を引かれて、ユキコちゃんは玄関を出ました。


 その途端。

 ジリジリと強烈な日差しに照らされて、ムッとするような熱気に包まれます。

「えっ、何これ……?」

 ユキコちゃんは、思わず足を止めて呟きました。


「まだ夏だからねえ」

 ママは笑っています。

 ユキコちゃんは内心「今日から9月で、もう秋だよ!」と反論したくなりますが、ママと言い争うつもりはありません。

 だから代わりに、自分を納得させる意味も込めて、別の解釈を口にするのでした。

「季節の神様、カレンダーめくるの忘れちゃったのかな?」




(「夏の終わりのカレンダー」完)

   

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分もユキコちゃんのような気持ちでいた時期があったと思える、子供ならではのくっきりとした感覚にノスタルジーを覚えました。 さすがに三ヶ月ごとに季節が様変わりする、とはならないものの、大人も…
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