⭕ フィールドワーク 2
ミグリ
「 …………出来な── 」
セロフィート
「 怪物の巣窟が近くにあります 」
ミグリ
「 …………怪物の巣窟…?? 」
セロフィート
「 ミグリさんは怪物の巣窟でピクニックをしたいようですね? 」
ミグリ
「 ピクニック……いや…です 」
セロフィート
「 転移してあげます♪ 」
ミグリ
「 嫌…です!!
転移…しないでください! 」
セロフィート
「 はて……空耳でしょうか?
何か聞こえたような? 」
ミグリ
「 うぅ……。
──セロ…ちゃん!
怪物の巣窟は…嫌です! 」
セロフィート
「 怪物の巣窟がどうしました? 」
ミグリ
「 ………… 」
ミグリに対して静かに微笑むセロフィートは、ミグリに「 セロちゃん 」と呼ばせる事が出来て満足しているようだ。
小さな身体をガクガクと震わせているミグリの気持ち等セロフィートは微塵も考えていないのだった。
──*──*──*── 1時間後
怪物の出現がパッタリ止まった。
怪物が落としたレアイテム,ドロップアイテム,素材,死骸は魔法陣に吸い込まれるように沈んで、1つ残らず回収されていく。
倒した怪物は、レアイテム,ドロップアイテム,素材をフィールド上に落とした場合、死骸が残らない。
逆に何も落とさなかった怪物の場合、死骸が残される。
残された怪物の死骸を解体して、素材,臓物類,骨,肉…と仕分ける。
買い取ってもらい金銭を得る為、★を得る為、実に様々な目的で各ギルドへ持ち込むんだ。
マオ
「 ──ふぅ。
結構、倒せたな~~。
オリバ、お疲れ!
最後まで1人で頑張れたな。
偉いぞ! 」
オリバー・デグンス
「 ミグリ、参加しませんでしたね。
どうしたんだろう? 」
マオ
「 う~~ん……。
セロに話し掛けられてたみたいだったな。
セロは読書が好きだから、付き合わされてるのかもな~~ 」
オリバー・デグンス
「 あぁ~~。
絵本を読まされて、感想文を書かされるアレですかね?
読み書きを教えられてるかも知れませんね~ 」
マオ
「 感想文は必要ないと思うんだよ。
手紙でも十分、字の練習になるんだからさ!」
オリバー・デグンス
「 あははっ!
マオ師匠って、絵本を開いても5頁以内で飽きちゃいますもんね~~。
感想文なんて書けませんよねぇ 」
マオ
「 仕方無いだろ!
昔から苦手なんだよ!
オリバ、安全地帯に戻るぞ 」
オリバー・デグンス
「 了解で~~す。
LV上がってると良いなぁ~~ 」
マオ
「 トドメを刺しまくったんだから、5LVぐらいはあがってるんじゃないか? 」
愛剣を鞘へ納めたら、戦闘を終えたオリバーと一緒にセロとミグリが居る安全地帯へ向かって歩いた。
──*──*──*── 安全地帯
マオ
「 セロ──、日も暮れて来たし、そろそろ≪ 村落 ≫
に戻ろう!
夕食前に冒険者ギルドに寄って、★を貰おうよ 」
セロフィート
「 はいはい。
オリバさんも、お疲れ様です 」
オリバー・デグンス
「 ミグリが参戦してくれないから大変でしたよ~~ 」
セロフィート
「 ミグリさんは体調が優れなかったので休ませてました 」
マオ
「 そうだったんだ?
ミグリ、もう大丈夫なのか? 」
ミグリ
「 う、うん……平気… 」
マオ
「 そっか。
体調が悪い時は遠慮しないで、ちゃんと言うんだぞ。
ミグリの分もオリバが身体を張って頑張るからな! 」
オリバー・デグンス
「 ちょっ──マオ師匠ぉ~~!
それはないでしょうぉ~~ 」
マオ
「 弱音を吐くなよ、男だろ。
ハーレム作るんだろぉ~~ 」
オリバー・デグンス
「 そうですけど… 」
セロフィート
「 ミグリさん、転ばないようにワタシと手を繋いで歩きましょう 」
ミグリ
「 ──ヒィッ!! 」
セロフィート
「 はて?
ミグリさん、どうしました? 」
マオ
「 何か脅えてないか?
セロぉ~~、ミグリに何したぁ? 」
セロフィート
「 マオ、ワタシを疑うなんて失礼だと思いません?
ワタシは何もしてません 」
マオ
「 “ 失礼 ” だなんて思うかよ!
前科が有るだろが!
セロがミグリに厭らしい事をしないって事は分かってるけど、“ 脅えてる ” って事は恐がらせるような事をしたんだろ~~ 」
セロフィート
「 してません。
ワタシとミグリさんは仲良しです。
ですよね、ミグリさん? 」
ミグリ
「 えっ…あ…… 」
マオ
「 ミグリが困ってるじゃないかよ 」
セロフィート
「 マオの気の所為です。
“ セロちゃん♥️ ” と呼んでもらえるぐらい仲良しです 」
マオ
「 はぁ~~?
“ セロちゃん ” だって??
ミグリがセロを “ ちゃん ” 付けで呼ぶわけないだろ!!
ミグリを脅して口裏合わせて言わせてるんじゃないのか? 」
セロフィート
「 違います。
ミグリさんは保護対象です。
ワタシがミグリさんを脅す訳ないでしょう?
ですよね、ミグリさん 」
ミグリ
「 …………うん…。
ググは…セロちゃんと仲良し…です! 」
ミグリはセロフィートの傍へ寄ると、両手でセロフィートの手をギュッと握った。
セロフィートはミグリの行動を見て、嬉しそうに微笑むとミグリの頭を優しく撫でてあげる。
セロフィート
「 マオ、どうです?
ちゃんと仲良しでしょう? 」
マオ
「 …………ミグリ、無理してセロに合わせなくて良いんだからな 」
ミグリ
「 ……無理…してない…です 」
オリバー・デグンス
「 ミグリはとうとうセロフィート師匠までも “ ちゃん ” 付けで呼ぶようになっちゃたんだなぁ~~ 」
マオ
「 う~~ん……。
言わせてる感が拭えないんだけどなぁ~~。
ミグリ、笑顔が引き吊ってないか? 」
ミグリ
「 マオちゃんの気の所為…… 」
マオ
「 そうかなぁ? 」
オリバー・デグンス
「 マオ師匠は疑り深過ぎませんか?
“ 打ち解け合えた ” って事で良いじゃないですか 」
マオ
「 オレは疑り深くないよ! 」
セロフィート
「 さぁさ、≪ 村落 ≫へ戻りましょう 」
日が暮れてしまう前に≪ 村落 ≫を目指して歩く。
セロと手を繋いで歩いているミグリの表情が固い気がするのはオレの気の所為じゃないな。
言ってもミグリは否定するだろう。
幸いにも明日はセロが居ない。
折角の機会を無駄にする事もないからな。
明日改めてミグリに聞いてみようと思う。
マオ
「 あっ、そうだ。
セロに聞こうと思ってた事があったんだよ 」
セロフィート
「 何でしょう? 」
マオ
「 うん……。
剣技とか刀技ってさ、閃いたりしないのかな? 」
セロフィート
「 はい? 」
マオ
「 必殺技とか特殊技とか奥義とか秘技とか──、そういう技が有ればさ、戦闘も楽になると思うし、戦い方の幅も広がると思うんだよ 」
セロフィート
「 技に関しても≪ 大陸 ≫に依って異なります。
どんなに剣術を極めても閃かない場合もあります。
≪ オオカザッシュ大陸 ≫にも剣以外に様々な武器が存在してますけど、固有技は存在してません。
技が存在しない分、戦闘時に工夫して戦うのが≪ オオカザッシュ大陸 ≫の在り方です 」
マオ
「 マジかよ… 」
セロフィート
「 但し、裏技もあります 」
マオ
「 裏技ぁ??
それって、どんな裏技なんだ? 」
セロフィート
「 高ランクの怪物の落とすレアイテム,高ランク素材を使い作った武器には、極稀に技を持つ武器が出来上がります。
例え技を閃けなくても、武器に備わっている技を使う事は出来ます 」
マオ
「 おぉっ!!
マジかよぉ!
オリバ、聞いたか?
技を持ってる武器を作れるみたいだぞ! 」
オリバー・デグンス
「 それは確かに凄いと思いますけどぉ~~。
レアイテムや高ランク素材を使って武器を作っても極稀なんですよね?
希望は薄いんじゃないですか? 」
マオ
「 何を言うんだよ!
可能性が有るんだ。
薄い希望なんかないだろ! 」
セロフィート
「 希望は自ら生み出すモノです。
普通の武器職人に依頼をしても技を持つ武器は作れません 」
マオ
「 何だよそれぇ~~。
じゃあ、誰に武器を作ってもらったら良いんだよ! 」
セロフィート
「 ≪ 村落 ≫に着きました。
続きは夕食をしながら話しましょう。
冒険者ギルドへ行きますよ 」
マオ
「 勿体振るなよぉ~~ 」
セロは口元に人差し指を立てて微笑んだまま、武器について話してくれなくなった。




